2011年5月16日月曜日

20110515 J​BJS(Br) Th​e failure of survivorsh​ip

人工関節の耐用年数は再置換までの年月を用いて客観的に評価されることが多い。しかしインプラントの耐用年数だけを評価するのはあまり適切でなく、また感度に欠ける態度である。
なぜならば再置換に至る例は少なく、機種間での違いを明らかにしようとすれば多数の対象と長い年月でのフォローを必要とする。
15年間もてば人工関節としては成功である、とされるがその期間ずっと痛みがあるようであればとても成功した手術とは言えないのではないだろうか。
整形外科医が耐用年数だけの見方と、患者側からの見方(Patient reported outcome measures:PROM)というものは大きく異なっている。
PROMに従ったリサーチを行ってみるとTKRを行った患者の約10-30%、THAを行った患者の10-15%が絶え間ない痛みと機能制限に悩んでいることが分かった。
ある研究によればエンドポイントを再置換すかどうかというところにおくと、7年後の人工関節の生存率は98%であるが、第二のエンドポイントを疼痛としてみてみると75%までその率は低下した。
別の研究では人工関節の生存率は96.7%であったが、VASを用いた患者満足度は73.3%に過ぎなかった。
ほかの研究でも満足度は68%-80%にすぎないという報告がある。
PROM単独でも問題がある。データを集めることに多くの費用がかかったり人手を必要とする。またほかの様々な要因にも患者の見方は左右される。
Oxford hip scoreは術後の機能評価として用いられるが、それぞれの患者の環境などへの配慮はなされていない。
人工関節の耐用年数を調査していくことは今後も必要である。
ただし、単に人工関節のライナーを変えただけの手術か、人工関節全部を再置換したのかという違いはあるし、ある部分が別の部分に悪影響を及ぼしたのかもしれないということには留意が必要である。
非感染性のゆるみが生存率にカウントされるが、それ以前におこっている脱臼や感染といった悪い事象についても合わせてカウントしておく必要がある。
ジャーナルとしても今後は人工関節の生存率だけの報告は採用せず、加えてPROMに配慮した臨床研究を採用、公表していく予定である。

<論評>
journal of bone and joint surgery (British edition)の巻頭の一言です。
人工関節がどれが有用であるという時代は終わりを告げたので、次はこのような方針でやっていきますよという意思表示です。
こういうものをチェックしておかないと投稿してもrejectされ続けるということが起こりえますので、編集方針というものも常に確認しておく必要があると思います。

実際の生活が満足度にどれくらい影響を及ぼしているかということについて調べてみるというのも面白いかなと思いました。

0 件のコメント:

コメントを投稿