2010年12月15日水曜日

20101215 Rheumatology International : Evaluation of metabolic syndrome in patients with chronic low back pain

慢性の腰痛患者でのメタボリックシンドロームの評価

Abstract
この研究の目的は慢性腰痛を有する患者でどれくらいメタボリックシンドロームがあるかということと、またメタボリックシンドロームの有無で慢性の腰痛患者の臨床的、機能的なパラメーターにどれくらいの違いが出るかということについて調べることである。
最低2か月の腰痛を訴える患者をこの研究では対象とした。機能的評価としてRoland-MorrisのDisability score、イスタンブール腰痛評価、Oswestryの障害尺度を用いた。抑うつ状態の評価のためにはBeckのうつ尺度を用いた。メタボリックシンドロームの定義としてはNCEPが2001年に提唱したものを採用した。(上前腸骨棘での腹囲、血圧、随時血糖、中性脂肪、HDLコレステロール)。60人の患者、うち51人が女性がこの研究に参加した。
慢性腰痛の患者で、メタボリックシンドロームの有無について調べたところ、BMI、年齢、腹囲、罹病期間で有意な差が得られた。ほかのパラメーターでは有意な差が得られなかった。腹囲が大きい肥満の患者で腰痛の訴えが多かった。
この研究から言えることは慢性の腰痛の患者、高齢の患者、BMIが高い患者ではメタボリックシンドロームの危険性が高いと言える。このような患者ではメタボリックシンドロームに対するスクリーニングをしっかりと行い、予防策を講じることが必要である。

考察
メタボリックシンドロームは脂質代謝、炭水化物の代謝の異常により、低いレベルでの炎症状態が惹起されているものと考えられている。メタボリックシンドロームとほかの疾患についての関連については様々な論文があるが、腰痛に関してのものはなかった。
今回の研究では慢性腰痛の25%の患者でメタボリックシンドロームを発症していることが分かった。欧米社会では全人口の20%にメタボリックシンドロームを発症しているといわれており、その数は急速に増大している。今回の研究では15人の患者でメタボリックシンドロームを発症しており、うち14人が女性であった。メタボリックシンドローム自体女性に発症しやすることは知られている。今回も53.3%の患者で腰椎椎間板ヘルニアが指摘された。
TNFαが肥満、インスリン抵抗性と関連があることが知られている。またTNFαが腰椎椎間板由来の腰痛で重要な役割をはたしているとする論文も散見される。最近ではTNFαブロッカーによる腰椎神経根痛の治療もおこなわれている。この研究からは同様の機序でTNFαが関連し、メタボリック症候群と腰痛とに影響していると考えられた。これにはさらなる研究が必要である。
BMI30未満で腰痛の発症リスクが減少し、40以上でリスクが上がった。メタボリックシンドロームの患者ではBMIが高かった。
この研究ではメタボリックシンドロームかどうかで腹囲に差が認められた。これはメタボリックシンドロームの診断基準として腹囲を入れているからである。他の研究ではウエストが太い女性では腰痛の発症頻度が高いということが報告されている。
メタボリックシンドロームの患者で、腰痛を持っている患者の平均年齢は高い傾向にあった。慢性腰痛の危険因子はメタボリック症候群とよく似ており、高齢であること、喫煙歴があること、日常生活の活動性が低いこと、太っていることが挙げられている。
メタボリックシンドロームで腰痛をもった患者では血糖値が有意に高かった。
またメタボリックシンドロームで腰痛を持った患者の罹病期間は有意に長かった。これは慢性の腰痛のために活動性が下がり、メタボリックシンドロームの危険性を上げたものと考えらえた。


<論評>
メタボリックシンドロームと腰痛を結びつけた、という着眼点が面白いとは思います。
この論文に難癖はいくらでもつけられそうですが。。(サンプルサイズ、考察の論理性など)

まあ、なんにしてもデブはいかん。ということですね。

0 件のコメント:

コメントを投稿