2011年3月5日土曜日

20110304 JBJS(Am) Are Dropped Osteoarticular Bone Fragments Safely Reimplantable in Vivo?

抄録
オペ室の床に落としてしまい、汚染された移植用自家骨についての正しい取り扱い方法についてのデータはほとんどない。この研究の目的は手術中に床に落としてしまって汚染された自家骨の適切な取り扱い方法について3段階に分けて検証することである。
方法
第一段階として、手術室の床に落とした自家骨の汚染状況について調査を行った。(N=162)。第二段階として、340の骨片に対して、オペ室で利用可能な方法で洗浄を行い、第一段階と同様な方法で培養してみた。第三段階として洗浄後の骨片の状態に対して病理学的な検討を加えてみた。
結果
床に落下させただけで、70%の自家骨に汚染が認められた。CNSがもっとも多かった。第二段階として、様々な薬品で洗浄を行ったが有意な差は認められなかった。スポンジで擦ったほうが生食で洗っただけよりも有効であった。生食よりも薬品を使ったほうが有効であることがわかった。BetadineとHbiclensが良く、28検体で一つも培養で菌が生えてこなかった。
第三段階で病理的に検索したところ、生食とBetadineで洗った群がもっとも細胞の生存数が多かった。スポンジで擦ったものは、生食で洗ったものよりも軟骨の損傷が多かった。
結論
床に落とした自家骨はほとんどが細菌に汚染されていた。5分間Betadineで洗浄を行い、生食で洗い流すのが最も殺菌と骨、軟骨細胞活性の残存とのバランスが良かった。

(Betadineは、IsodineやJDガーグルの同義語(異表記)です)

<論評>
”おいおい、アメリカ人って、落とした骨片普通に使ってるの?”とビビって読みました。

いくつか得られた知見として、”床に落とすと70%も細菌汚染されている”
普段使うオペ室でこの実験は行われているので、オペ室の床が非常に汚染されている一つの傍証であると考えます。
床に座っていたり、足台を椅子がわりにする人間、オペ室の床が汚れると言って座り込んで床にテープをはっているナースなども同じくらいの割合で汚染されていると考えるべきでしょう。笑

この論文ではその後洗い方、洗う薬剤、薬剤の洗い流しの仕方について細かく分けて検証を続けています。
短い時間では意味がないが、5分以上洗っても細菌の汚染具合には差が出ない。4%のヒビテンは殺菌には最も有用であるが、軟骨細胞の生存には最も厳しい。なのでbetadineを使うと一番バランスが良い、と言っています。

考察の最後に、この骨片の汚染が臨床的な感染の成立と関連しているかどうかは不明である。と書いてありました。

そもそも日本人にはこの発想は受け入れられないような。特に人工関節とかインプラントを使う人はムリでしょう。笑
くれぐれも骨片を落とさないようにするためにはどうしたら良いか、という工夫。例えば骨片を加工するときに骨把持鉗子をつかうとかそういった工夫を極めて行くほうが大事じゃないかと思いました。

まあ、オペ室の看護師さんと話すネタがなくなったときのおともにお使いください。笑

2011年3月4日金曜日

20110304 JBJS(Br) Is routine chemical thromboprophylaxis after total hip replacement really necessary in a Japanese population

<抄録>
薬剤による抗凝固療法は、人工股関節全置換術(THA)においてルーチンに行うよう推奨されている。筆者らの立場は薬剤を使用しなくても理学療法(機械圧迫)で十分ではないかとする立場である。二種類の抗凝固剤をそれぞれ使用し、理学療法のみの群と無作為割付試験で調べてみた。255人の日本人の患者。片側のTHAをセメントレスで行った患者。プラセボ群、フォンダパリヌクス群(アリクストラ群)、エノキサパリン群(クレキサン群)の3群に分けてそれぞれ85人の患者に投与を行った。全員理学療法は同様に受けた。術後11日目で全員超音波によるDVTの検索を行った。12週にわたってフォローを行った。
結果プラセボ群7.2%、フォンダパリヌクス群7.1%、エノキサパリン群6.0%で3群に有意な差は認められなかった。日本人の患者に限れば、THAの後に抗凝固療法を行わずに機械的圧迫だけで効果がえられるのではないかおと考えられた。

<論評>
素晴らしいですねえ。考察で筆者が書いていらっしゃるとおり、サンプルサイズの問題、単施設研究という問題はあるにせよ、一つの施設でこれだけの仕事をなさったと言う事に敬意を評したいと思います。
超音波での検索はほぼゴールデンスタンダードですので、構わないのになあと思いました。

もともとこの薬自体14日間使えとなっていますが、下手したら退院してますしね。
肺塞栓は起こったときの衝撃があまりに大きいので使いたくなる術者の気持ちもわかりますが、厳密には、心血管リスクが高い、再置換術であるなどのもっと明らかにハイリスクな群に使うよう推奨しても良いのかもしれませんね。

僕自身はガイドラインが変わるまでは使い続けると思いますけど。。。(笑)

2011年2月28日月曜日

20110228 JBJS(Am) Osteoporos​is as a Risk Factorfor Distal Radial Fractures

橈骨遠位端骨折は大腿骨頚部骨折、脊椎骨折よりも人生の中で早いタイミングで起こり、橈骨遠位端骨折が骨粗しょう症の一つのサイン、として認識されている。この症例対照研究の目的は橈骨遠位端骨折を発症した男女において、骨密度が健常人と差があるのかということを説明しうる一つの要因となるかを検討することである。
方法
橈骨遠位端骨折の患者、664人の女性、85人の男性。554人の女性、54人の男性を対照群として設定した。これらの患者に骨密度(大腿骨頚部、脊椎)の検査を行い、日常生活についての質問紙法に答えてもらった。
結果
橈骨遠位端骨折を起こした患者で女性では34%、対照の10%で骨粗しょう症が認められた。男性では17%、コントロール群で13%であった。年齢による層別解析をすると、50-59歳では18%と5%、60-69歳では25%と7%であった。ロジスティック回帰分析をすると女性では橈骨遠位端骨折は骨粗しょう症と関連が認められた。これは男性でも同様の結論となった。
結論
橈骨遠位端骨折をきたした女性では骨粗しょう症であることが多かった。また男性でも女性でも骨粗しょう症は橈骨遠位端骨折を起こす危険因子であった。男女を問わず55歳以上で橈骨遠位端骨折を発症した場合には骨密度の計測を行うことが有用であるかもしれない。

<論評>
この研究のMethodを読むと、最初に救急外来にきたひとをregistrationしているというのがこの研究の素晴らしいところであると思いました。実際の臨床により近い状態であったと推測されます
しかし、半分くらいの患者さんがこの研究への参加を断っていることからよりリスクが高い人が残ったためにこういう結果になったのかもしれません。
FRAXでも骨折の既往というのは一つの独立した因子となっておりますのでそれを裏付ける結果となったのかなと感じました。
橈骨遠位端骨折の患者さんをみたら、FRAXに乗せてみるか、または骨密度検診をすすめるかいづれかを行う、というように今後対応していくこととしましょう。

2011年2月25日金曜日

ブログのBrush up のために

僕の尊敬する友人が”いかに論文を読むべきか”ということについて述べていたので一部改変して掲載します。
(resourseはclosedです)

「この論文をなぜ選んだのか」
「どういう対象患者に、どういう介入を行って、どういう結果を得たか(いわゆるPECOとかPICOとか)」
「結果の解釈は統計学的に妥当か」
「その結果は本邦の医療事情ではどのように適用するべきか」
「明日からの自分のプラクティスはその論文によって変わるか」

これからもいろいろな論文を読んでは掲載していきたいと考えていますが、上記のような点に論評で言及しながら読んでいけるよう精進いたします。

2011年2月23日水曜日

20110222 Up to date Overview of diabetic infections of the lower extremitie​s

糖尿病性壊疽で感染を起こしている菌はその時の状態によってさまざまである。
-表層の感染であれば好気性のグラム陽性球菌の可能性が高い。MRSAが存在する可能性も予想しておかなければならない。また創の状態においてはempiricな抗生剤の使用が必要となる
-潰瘍が深部に至っている場合には、上記に加えて緑膿菌などのグラム陰性菌も考慮する。
-創が局所の発赤が強かったり、また全身症状が出現している場合にはさらに嫌気性菌の関与も考える必要がある。

糖尿病性壊疽の診断は感染の成立もしくは発赤、熱感、腫脹、圧痛のうち少なくとも二つの臨床症状があることで可能である。ガス壊疽、虚血、組織の壊死は四肢切断が必要な状態であることを示唆する。

血液検査も診断に有用であり、治療効果を判定するのにESR、CRPはともに有効である。

次のような患者ではすでに骨髄炎を発症してしまっている可能性が高い
・骨が露出している、創から骨に触る
・創の大きさが2センチ×2センチ以上である
・潰瘍の深さが3㎜以上
・創ができてから2週間以上経過
・ESR(60)が70mm以上

これに加えてレントゲン写真の撮影、MRIの撮像を行う。それによって骨生検を行う部位を決定する。

治療は創処置、抗生剤投与、血糖と電解質のコントロールを行う。

膿瘍の形成、ガス壊疽、握雪感の存在、隣接関節を超えるような炎症の波及、壊死性筋膜炎があるような場合には緊急にデブリードマンを行う必要がある。

抗生剤の使用は広域スペクトラムのものをしっかりと使用する(MEPM+VCM など)

20110222 Up to date Diagnosis and evaluation of osteoporos​is in men

Summary and recommendation

骨粗しょう症は骨折が起こるまでは判明しない。疼痛、変形、機能障害、身長の低下といった臨床症状で現れてくる。

診断
WHOによれば大腿骨頚部のBMDを測定することで骨粗しょう症の診断を行う。Tスコアが-2.5以下であれば骨粗しょう症、-2.5から-1.0の間にあれば骨量減少状態にあると診断する。
男性においては定期的な骨密度検診の必要性はない(エビデンスレベル2C)
男性で骨密度を測定することが推奨されるのは、レントゲン写真上の骨量の低下、骨脆弱性骨折の既往。3センチ以上の身長低下。長期間にわたるステロイドの内服、男性ホルモンの低下状態、副甲状腺機能亢進症、ほかに図に示すような内科疾患を合併しているような場合である。






評価
男性で骨量低下状態を見つけたり、骨脆弱性骨折をみつけたときにはまず二次性の骨粗しょう症の除外診断を行うことが必要である。多くの二次性の骨粗しょう症の有無は身体所見と病歴から診断可能である。
加えて男性で骨粗しょう症を見つけた場合には血液検査を追加して行ったほうがよい。測定項目は血算、一般生化学、25-OH ビタミンD、テストステロン、尿中カルシウムの排泄量である。

2011年2月14日月曜日

20110214 Bone Meta-analysis risk of fractures with acid-suppressing medication

PPIやH2ブロッカーで骨折のリスクが高くなる、と言うことが言われてきている。PPIやH2ブロッカーの内服で骨折が多くなるか、と言う事をmeta-analysisで検討してみた。
方法
MedlineでPPI、H2ブロッカーと骨折で検索してみて、そのORを調べた。
結果
12の報告、1,521,062人についてレビューした。PPIでは有意に脊椎骨折のリスクが上昇した。(OR=1.50)。H2ブロッカーでは優位な差は認められなかった。大腿骨頚部骨折に関しても、PPIでは有意に内服群が高かったが(OR=1.23)、H2ブロッカー群では優位な差は認められなかった。骨折全体で見てみたところPPIではOR=1.2。H2ブロッカーではOR=1.08であった。脊椎骨折は別として、様々な要因によって制限が加わっていることは知っておかねばならない。PPIとH2ブロッカーについて調べた論文では股関節骨折においてOR=1.34とPPIのほうが高かった。
結論
PPIで骨折のリスクが高くなるという中程度のエビデンスがあることがわかった。H2ブロッカーでは骨折との関連は認められなかった。脊椎骨折ではその関係性ははっきりしていたものの、その他の骨折では様々な要因が関連しているためにいえなかった。臨床家はもし、骨折のリスクが高い患者ではPPIの代わりにH2ブロッカーを使ってもよいかもしれない。

<論評>
PPIの内服が骨粗鬆症と関連しているのでは、ということはなんとなく話題になったこともありますが、それを裏付けるmeta-analysisです。
プライマリー(診療所、家庭医)で患者さんを見ている先生方に考えていただければと思いました。