2011年9月19日月曜日

20110918 骨折治療学会研修会アドバンスコースを受講してきました。その2

上腕骨近位骨折は夜に出たハンズオンセミナーで慶応大学の池上先生が説明してくださった部分も含めてまとめてみます。

上腕骨近位端骨折はplate VS nailの流れは続いている。
nailはストレートタイプのnailにかわってきているというのが世の趨勢らしい。
欧州での最近の報告ではややnailの方が優勢らしい。これはひとえにインプラントトラブルが多く、”disaster”と表現されるほど合併症が多いことが問題となっている様子。

大結節、小結節の整復がとにかくキモ。なぜならば骨頭壊死に至っても大結節と小結節がしっかりしていれば人工骨頭へのrevisionが容易におこなえるからである。
プレート法を用いるのであれば必ず縫いつけること。
SynthesのPHILOSは不親切設計で、先に糸を通しておかないと通せなくなるので注意。ジンマーとスミス&ネフューはそこの部分は改善してある。
小結節と肩甲下筋腱の引き出し。難しければLHB切除=>その後結節間溝に固定。
上腕骨頭は20度後捻。後方オフセットと内側オフセットに気を配る。
後捻があるので、本来はプレートはど真ん中ではなくすこし後方にスクリューが多い方が望ましい。Synthesからもその左右非対称性を考慮したプレートが今後発売される。

腋窩神経の取り扱い。帝京大学の小林先生の方法。
deltoid spritであけて、三角筋上のbursaを切開。指を突っ込んで皮下を探ると索条物が触れる。これが腋窩神経。内側から探る方法は有用であるが、怖いものを先にみておくのもよいというのは池上先生のtips。末梢神経切離しても縫合すればよい。というのはhand surgeonだからいえるのでしょう。

骨頭壊死するかどうかは骨折型と内側のヒンジがあるかどうかで決まる。

プレート固定の大きな問題としては内反変形。30−40%に発症するとの報告もある。
内反変形を予防するためには骨性のinfero-medial supportが必要。

上腕骨遠位端骨折
上腕骨遠位部の解剖学的特徴。
6度内反。前方にオフセットあり。上腕骨小頭の方が少し前方に出ている。(内側オフセット)
肘は屈曲したときに外反していくと顔に手がつかなくなることを想像するとこの解剖学的特徴が理解できる。

関節面の整復について。滑車切痕がせまくなって、尺骨の座りが悪くなることがある。関節面骨片同士をスクリュー固定する際には圧迫を強くかけないようにする。
尺骨神経は前方移行はデフォルト。皮切をおいて皮下を展開。内側で三頭筋から出てきたところが一番尺骨神経を見つけやすい。Osborne靭帯のところで見つけるのは結構大変。遠位までしっかり展開。近位では内側筋間中隔を切離して内側上顆の前方までしっかり移行し、筋膜を2、3針縫っておく。

骨幹端部は強固な固定を要する。場合によっては短縮も辞さない気持ちが大事。
高齢者ならTEAも考慮してよいか。

3 件のコメント:

  1. 管理人様

    あちきはしがない整形インプラントメーカーの人間でありんす。
    商売上の下心は一切ございませんので、ご安心くだせぇ。
    一人の肩関節オタクとして相手していただければ幸いです。
    見ず知らずのあちきの質問に対して、もしお答えしていただければ本当に感謝感激ですわ。
    管理人さんの上腕骨近位部FXにおける肩骨頭への適応についてお聞かせいただきたく質問コメントさせていただきます。

    1・小結節と肩甲下筋腱の引き出しが難しければLHB切除=>その後結節間溝に固定。とありますが、肩甲下筋が付着したまま骨折転移した内側に転移している小結節を引っ張り出すのに、LHBってそんなに邪魔になるのでしょうか?

    2・上腕骨近位部FXは骨折型と内側の支持性の有無で骨頭壊死の可能性を考慮されていますが、どのような骨折型に人工骨頭を選択されてます?
    3・プレート固定と、人工肩骨頭の術後、肩の挙上の成績はどちらがいいのでしょうか?もちろん症例によって全く違うとは思いますが、全般的な成績としてどっちなんだろうか?と疑問に思っておりました。

    すみませんが、もしよろしかったらお答えください。
    ではでは。

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    1. こねこのパン屋様
      コメントありがとうございます。管理人のがみたけです。

      1,講演でそうやっておっしゃっておられました。講演された池上先生はこの分野の第一人者のお一人ですので、そのような先生のところにはより困難な症例が集まっているものと想像されます。
      私のように一般病院で働いている人間が今までLHBを外してまで整復困難であった。ということは全く経験したことはありません。
      ただ、それはあくまでも僕自身がそのような経験がない。というだけですのでひとつのオプションとして持っていたらよいのかな。よりexpertな手技の一つと考えています。

      2,上腕骨近位部骨折の骨接合と人工骨頭の適応
      4partで脱臼しているもの。CTを撮像し骨頭の骨片が小さく固定性に不安が有るような場合に選択することがあります。これは骨頭壊死と内反進行によるカットアウトのリスクが高いと考えた場合に行います。

      3プレート固定と人工骨頭
      直接にプレート固定と人工骨頭のいずれが良いか。という文献は見つけることができませんでした。
      人工骨頭のSystematic review(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/18978256)
      によれば疼痛の除去はかのうであったが、術後の自動可動域は大きく制限されていた。ということです。Constantスコア(肩関節の評価方法のひとつ)では100点満点で57点平均ということで思ったほどの成績ではないようです。

      これにたいして骨接合群では海外の100例以上骨接合術を行った施設での報告ではConstantスコアが70点を超えているのが普通のようです。

      ただし、骨接合群よりも人工骨頭群の方がより重症な例に対して選択されている可能性があること。骨接合群では7‐14%のインプラントに伴うトラブルが報告されていることから一概にどちらが優れている。というのは難しいと思います。

      ただ、私個人の意見として人工骨頭では明らかな限界があることから骨接合術の方がより優れた臨床成績をえることができるのではないかと考えます。

      パン屋さんのご質問にあった挙上については人工骨頭で明らかに制限されることがわかっていますので、骨接合群が勝るのではとおもいます。

      お答えになっていない部分もあるかもしれません。
      またご不明な点はお伺いくださいませ。

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  2. がみたけ先生

    大変丁寧なで興味深いご回答を、まことにありがとうございます。
    自分はトラウマ製品部門から最近関節インプラントに移ったもんで、関節の勉強を急いでやっております。

    上腕近位部骨折において人工骨頭の適応は、最後の手段になることが多いので、やはり成績は骨接合インプラントのほうが断然上ですよね、、
    術後の成績は大小結節骨片の大きさ、付着している腱板の状態、そしてインプラテーションを行った際の腱板縫合をどこまでやるか、多種多様の要素が絡み合ってるため、一概にプレートは何点、ネイルは何点、骨頭は何点で出されている成績がすべてではないですね。
    「できることなら患者さんの骨を温存してあげたい」
    という考え方には私も賛同できます(やったことありませんが、、偉そうに言わせて下さいwww)
    しかし、術後のネクロシス⇒リオペの危険性による患者さんへの負担を考えると、術後虚血性因子が懸念される症例には、思い切っての人工骨頭もありなんじゃないかとも思いました。
    人工骨頭は腱板が付着した大小結節、グレノイドとの位置関係を解剖学的に再現しなければならないため、ヘッドの高さ、サイズ、偏心位、ネックの後捻角度と様々な条件をすこしでも受傷前の状態に近づけなければなりません。これらを実現するため最近の肩骨頭は後捻角度、ヘッドサイズ、偏心選択、高さ選択と術中いろんなことが出来る優れたものもかなり出ていると思います。
    4part等、近位部がバラバラになってしまい、受傷前の骨頭の位置を知る指標もない状況からこれをやり遂げる先生方の技術と知識、そして努力には、いつも敬服しております。
    トラウマ時代、2part(外科頚fx)、3part、4part症例でプレート固定をされるオペに何度となく立ち会ってきましたが、、プレートにあるスーチャーホールを利用しての腱板縫合はほとんどの場合やられてませんでした。プレートを介さない腱板縫合はしていたと思いますが、なにせ我々はただのメーカーですので、術野からかなり離れたところにおり、ほとんど見えないんですよね。
    粉砕が強い症例において、プレート施術後のレントゲンを見させて貰ってもプレートに押されて内反気味の整復位になってしまったり、骨折線の割れ目にスクリューが入り込んで、整復位がずれていたり、スクリューが前後方OBしていたこともありました。内側の支持性が期待できず、プレートやスクリューが折損してしまったり、カットアウトしたこともあります。全般的に先生方からの評価はあまり高くはありませんでした。先生方も術中あれだけ苦労してインプラテーションしても、患者の満足度は低いオペだと愚痴を零されてもおりました。

    お聞きしたいことが山ほどありますが、何でもかんでも先生に頼るわけにはいきませんので、自分で出来る限り勉強していき、詰まった時にまたご教授頂ければありがたいと思います。

    このたびは本当にありがとうございました。

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