2022年1月23日日曜日

20220123 JBJS Functional Outcome After Nonoperative Treatment of a Proximal Humeral Fracture in Adults

 背景

 上腕骨近位部骨折の非手術治療後の機能的転帰とそれに影響を与える因子は十分に評価されていない。本研究では受傷後1年の患者コホートにおいて,患者立脚型評価(PROM)を前向きに評価することを目的とした.

方法

上腕骨近位部骨折を受傷した成人患者774名。1年後にOxford Shoulder Score(OSS)、EuroQol-5 Dimensions-3 Levels(EQ-5D-3L)、痛み・健康・総合治療満足度の視覚アナログスケール(VAS)評価などPROM評価を実施した。

患者の平均年齢は65.6歳で、73.8%が女性であった。

OSSとEQ-5D-3Lに及ぼすと背景、レントゲン写真および合併症の影響を評価した。

結果

1年間の平均得点は、OSSが33.2点(95%信頼区間[CI]、32.1~34.2点)、EQ-5D-3Lが0.58(95%CI、0.55~0.61)であった。報告されたスコアにはかなりのバラつきがあった。

社会的依存度が高い、社会的剥奪指標、感情(気分)障害の既往があるという3つの人口動態変数が最も一貫して予後不良と関連しており、スコア変動の37%から43%を占めた。

最初の骨折の転位の程度は偽関節になる9%~15%を占め、結節骨折の転位は臨床成績のの変動の1%~4%を予測する因子であった。

OSSにはceiling effectを呈し、238人(30.8%)の患者が47点以上のスコアを得たが、平均転帰満足度は72.9点に留まり、この効果は若くて活発な人により顕著であった。一方、239名(30.9%)がOSS≦24点と回答し、120名(15.5%)がEQ-5D-3Lスコアが「死亡より悪い」と回答していた

結論

 上腕骨近位部骨折の非手術的治療は、1年後の肩特異的および一般的な健康状態にかなりのばらつきがあり、かなりの割合の患者が知覚的な機能的転帰が不良であった。転位の少ない大多数の骨折の転帰は、主に既存の患者関連の心理社会的要因に影響されるが、転位、非結合、および結節の転位という骨折関連の要因は、重症患者において少しであるが影響している


<論評>

2015年に上腕骨近位端骨折については手術治療と保存療法の予後に大きな差がないとする報告があり、大きなインパクトを与えました。

本研究は保存療法での実際のQOL評価となります。上腕骨近位端骨折は保存療法でも十分な成績が得られず、また転位がある場合にはそれがフォロー後の成績に影響することを明らかとしました。

すなわち、上腕骨近位端骨折は手術をしても保存でもまだ十分な成績が得られないことを明らかとしたものといえると思います。

新しいデバイス、手術ストラテジーの介入の余地があり、まだまだ面白い分野ですね!



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