背景
人工関節置換術の重篤な合併症である関節周囲感染症(PJI)のリスクは何年も変わっていない。感染リスクを軽減するために、黄色ブドウ球菌の除菌や抗生物質の骨セメントなどの介入が行われているが、これらの努力にもかかわらず、TKAにおける感染の割合は一定である。抗菌ドレープは二重の作用を持ち、手術創の細菌汚染に対抗するための物理的バリアと抗菌性バリアの両方の役割を果たしている。抗菌ドレープの効果を研究するために、我々は術中の汚染を感染の代理として使用した。
質問・目的
(1) 抗菌手術用ドレープは、初回人工関節置換術を受けている患者の術中細菌汚染のリスクを減少させるか?(2) 性別、季節、年齢、人工関節置換術の種類、手術期間などの他の要因は、初回人工関節置換術を受けている患者における術野汚染のリスクの増加と関連しているか?(3) 抗菌ドレープの緩みは汚染リスクを増加させるか?
方法
デンマークの首都と中央部にある5つの異なる病院で、治験責任医師主導の2群非盲検多施設無作為化対照試験が実施された。この試験には24人の外科医が参加した。参加者は、初回人工関節置換術を受けた18歳以上の患者であった。ヨウ素アレルギーのある患者、過去に膝の手術を受けたことがある患者、敗血症性関節炎の既往がある患者、手術の4週間前に抗生物質を服用していた患者、研究参加の意味を理解できない患者は除外した。患者は抗菌薬ドレープを使用した手術(介入群)と使用しない手術(対照群)に無作為に割り付けられた。1769人の患者をスクリーニングしたが、そのうち100人が不適格で、10人が参加を辞退した。全患者の94%(1769例中1659例)が同意し、それぞれ介入群(1659例中51%、838例)と対照群(1659例中49%、821例)に無作為に割り付けられた。全体では、介入群の患者の 36%(1659 例中 603 例)、対照群の患者の 35%(1659 例中 584 例)が最終解析に利用可能であった。クロスオーバーは行わず、プロトコルごとに解析を行った。患者は、器具の不足、新しい電子カルテ(EPIC, Verona, WI, USA)の導入に起因する検査室への途中でのサンプルの消失、外科医の忘却などのロジスティックな失敗のために除外された。術中は、手術部位と外科医の手袋からのリンスの中の細菌を綿棒で吸引した。すべてのサンプルは培養され、コロニー形成単位(CFU)カウント≧1は汚染されているとした。主要アウトカム指標は、術野汚染の割合の違いとし、副次的なアウトカム指標は、性、季節、年齢、使用されたインプラントの種類、手術期間と汚染リスクとの関連性を調査した。他の因子が汚染リスクと関連しているかどうかを調べるために、性、年齢、季節、インプラントの種類、手術期間などの交絡変数をコントロールするためにロジスティック回帰を行った。
結果
ヨウ素化ドレープの使用は汚染を減少させ、ヨウ素化ドレープを使用した手技の10%(603例中60例)で汚染が検出されたのに対し、ヨウ素化ドレープを使用しなかった場合は15%(584例中90例)であった(オッズ比0.61 [95% CI 0.43~0.87]; p = 0.005)、相対リスクは35%(95% CI 12.3~52.5)減少し、NNTは18例であった。性別、年齢、インプラントの種類、手術期間などの交絡変数をコントロールした後、抗菌ドレープを使用しないと、汚染リスクが1.6倍(95%CI 1.08~2.35;p = 0.02)増加することがわかった。女性であることおよび都市部で手術を受けていると有意に汚染のリスクが低かった(OR 0.55 [95% CI 0.39~0.8];p = 0.002およびOR 0.45 [95% CI 0.25~0.8];p = 0.006)。ドレープが皮膚から10mm以上離れている患者では、汚染のリスクが高かった(OR 3.54 [95% CI 1.64~11.05]; p = 0.0013)。
結論
抗菌ドレープを使用した場合、抗菌ドレープを使用しない場合に比べて汚染リスクが低かった。我々の知見は、抗菌ドレープが感染予防に有用であることを示唆しているが、感染に対する抗菌ドレープの効果を調べるためにはさらなる研究が必要である。
<論評>
イソジン含有のドレープと普通のドレープの間での創部汚染についての検討。
イソジン含有のもののほうが創部汚染率が低かったとなっています。感染を主要評価項目としておくべきなのでしょうが、感染の発生率が低く、適切なサンプルサイズのためには10000例以上の検討が必要になるので、創部の汚染を主要評価項目としておいたのでしょうか。
COIはないということになっていますね。
女性と都市部での手術がリスクを下げるとなったそうですが、これはいったいどういうことなんでしょうか。
女性と都市部での手術がリスクを下げるとなったそうですが、これはいったいどういうことなんでしょうか。
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