抄録
背景
75歳以上の患者に対しては、セメント固定のほうが好ましいとする報告が存在したにも関わらず、2006年から2010年までの人工関節レジストリーデータを用いた2013年の研究では、セメントレスの使用が増加する傾向が報告されていた。特に75歳以上の患者を対象とした2010年以降の固定様式についての報告が必要である。そしてそうすることで固定様式と再置換リスクについての記載が必要であろう。こうすることで、医療政策と実臨床は変化し、外科医はより良いインプラント固定法を選択することができるようになるだろう。
目的
(1) 2010年以降、セメントレスで行われる初回THAの割合は変わったか?(2) 75歳以上の患者行われたセメントレスの初回THAの割合は2010年から変わったか?(3) 年齢で層別化した後、どの固定戦略(セメント固定とセメントレス固定、ハイブリッドとセメントレス固定)が再置換術のリスクが最も低いか?について調査することである
方法
人工関節置換術の国家レジストリーの調査。2010年から2017年までの期間に報告されたデータが3年以上ある英語またはスカンジナビア語で発行された登録簿からデータを抽出した。これらには、オーストラリア、デンマーク、イングランド・ウェールズ、フィンランド、オランダ、ニュージーランド、ルーマニア、ノルウェー、スウェーデン、スイスが含まれてた。固定様式に関連した再置換術(全原因)の発生率、および年齢層別の二次的な再置換術の発生率に関するデータを、レジストリーから直接取得した。リスク推定値は、ハザード比、100構成年当たりの再置換率、またはKaplan-Meierによる再置換の推定値のいずれかで示された。デンマークで比較した年齢層は、50歳未満、50-59歳、60-69歳、70-79歳、80歳以上であり、オーストラリア、ニュージーランド、イングランド・ウェールズ、フィンランドでは、55歳未満、55-64歳、65-74歳、75歳以上であった。
結果
初回THAではセメントレス固定の使用割合は、24%(スウェーデン)と71%(デンマーク)であった。ノルウェー、デンマーク、スウェーデンではセメントレス固定の使用率が増加しているのに対し、イングランド・ウェールズ、オーストラリア、ニュージーランド、フィンランドではセメントレス固定の使用率が減少していることが報告された。75歳以上の高齢者を対象とした調査では、オランダ、スウェーデン、ニュージーランド、イングランド・ウェールズではセメントレス固定の割合に変化は見られなかった。デンマークとオーストラリアでは、セメントレス固定の使用が依然として増加していた。フィンランドでは、2010年から2017年にかけて、セメントレス固定の割合は減少した(43%→24%)。セメント固定を用いた股関節の再置換術のリスクは、非固定と比較した場合、フィンランドのレジストリーの最高齢男性を除いて、調査したすべてのレジストリーにおいて75歳以上の患者で低かった。このフィンランドのグループでは、セメント固定とセメントレス固定の間に差は認められなかった。
結論
本研究の知見は、THAのフィードバックとして医療政策に生かされるはずである。外科医が適切なインプラント固定様式を選択するように指示することで、特に75歳以上の高齢者において、再置換術のリスクを軽減し、初回THAの長期生存率を高めることにつながるはずである。大腿骨コンポーネントの固定様式は、高齢の患者において最も重要な再置換術リスク因子である可能性があると考えられ、今後の研究ではこの観点から検討すべきである。
<論評>
2013年に出た有名な”Uncemented paradox”の更新版になります。
その後もセメントTHAの優位性の報告はでていますが、本邦でもセメントレスステムの使用は未だに増加傾向です。
(矢野経済研究所2018年度報告https://www.yano.co.jp/market_reports/C60107500)
これはやはり、セメント使用でのステム挿入を指導できる人間が少ないから。ということに起因しているように感じられます。
定期的なセメントについての勉強会は必要でしょうね。
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