2016年1月29日金曜日

20160129 CORR What safe zone? The Vast majority of dislocated THAs are within the Lewinnek safe zone for acetabular component position

  • 股関節屋のあいだではLewinnekのSafe zoneは金科玉条ですが、ほんとにそれでよいのかの検討。
  • Safe zoneはこれだけではSafeにあらず。他の因子も検討しましょうという論文です。
  • Big Dataとして、多変量で検討できるとどの程度関わっているか分かりそうですね。


  • Abstract
  • THAの安定性には多くの因子が関連している。例えばsプローチ、軟部組織の緊張、患者の理解力、そしてコンポーネントの設置位置である。古くからLewinnekのSafe Zone、外方開角40度±10度、前方開角15度±10度がいわゆるSafe Zoneとして信じられてきた。しかしながらSafe zoneにあっても脱臼する例をしばしば経験する。
  • 方法:レントゲン写真上で外方角、前方開角がTHAの脱臼を減少させることができるかどうかを検討すること。
  • 9784例のPrimaryTHAを対象とした。206のTHA、2%で脱臼を認めた。レントゲン写真上での前方開角、外方開角、回転中心、脚長差を測定した。平均フォローアップ期間は27ヶ月であった。(0−133ヶ月)
  • 結果:脱臼206関節中120例、58%がLewinnekのSafe zoneに入っていた。平均の外包開角は44度±8度に84%が、前方開角は15度±9度に69%の症例が入っていた。後方アプローチでは脱臼例の65%がSafe zoneに入っていた。一方、前方アプローチでは33%しかSafe zoneに入っていなかった。後方アプローチは、前方アプローチより3倍Safe Zoneに入った。一方、後方アプローチは前方アプローチよりも脱臼しやすかった。
  • 結論:いままでSafe zoneとして考えられてきた外方開角、前方開角では充分に安全であるとは言えない。股関節の安定性は他因子であり、幾人かの患者ではSafe zoneはLewinnekが提唱したZoneの外側にあるのかもしれない。さらなる解析が必要である。
  • Introduction
  • 脱臼はTHAの最もよくおこる合併症のうちの1つである。その発症率は0−5%と言われている。脱臼のうち50%が術後3ヶ月以内に起こるといわれており、75%が1年以内に怒ると言われている。術後2年以内の再置換術の原因として脱臼はもっとものその頻度が高い。不幸にして再置換術となってしまった患者では単純にライナー交換から全置換術までその成績は大きく異る。
  •  インプラントの設置位置は、股関節のバイオメカニクスを保持し、適切な軟部組織の温存で緊張を保つことで股関節の安定性に寄与する。加えて、ヘッドの大きさ、カップのサイズ、手術アプローチが股関節の安定性に寄与している。一般にLewinnekの提唱したSafe Zoneが論文には引用される。それは外方開角カップ40度±10度、前方開角15度±10度である。この範囲内にあれば脱臼は少なくなると言われている。Lewinnekの研究は後方アプローチで検討がされている。しかしながらこのSafe zoneに入っていても脱臼はおこっている。
  • 本研究の目的はLewinnekのSafe zoneがTHAでの脱臼を予想することが可能かどうかを検討することである。第二の目的としてはアプローチごとでの安全域を策定することである。
  • 対象と方法
  • 2003年から2012年までに1つの施設で行なわれたPrimaryTHAを対象とした。術後レントゲン写真は3ヶ月、1年、2年、5年、その後は5年毎に経過観察を行った。来院が困難な患者については質問票を送付し、レントゲン写真を送ってもらった。返事がない場合には電話にて聴取を行っている。脱臼の定義は非観血的または観血的に脱臼を整復した例、または再置換術をおこなった症例と定義した。本シリーズではPrimaryTHAに限定し、術後骨折、人工骨頭、表面置換、表面痴漢からの再置換術を除外している。
  • レントゲン写真の評価は単純レントゲン写真の正面像で検討を行った。脱臼前の直近のレントゲン写真での検討を行った。図1に測定方法を示す。外方開角、前方開角の両方を満たすものをCombined Safe zoneを満たす、と定義した。その他にはFemoral Offset,Acetabular offset,大腿骨頭の中心の一、脚長差の変化について調査を行った。全てのレントゲン写真は2名の独立した検者によって行なわれて行なわれ、2週間の間をおいて行なわれた。検者間のICCの0.89、検者内のICCのは0.89であった。85%の患者が術前、術後のレントゲン写真がそろっていた。
  • 結局206例、206関節についての検討を行った。表1に患者背景を示す。9784例の人工関節が行なわれ、5765例が後方アプローチ、3384例が前方アプローチであった。71例が側方アプローチであった。後方プローチでは全例関節包の再建を行っている。
  • 臼蓋コンポーネントは8種類使用されていた。全てセメントレスのインプラントであった。ステムは16種類が使用されており、74%でセメントレスステムが用いられていた。
  • Logrankで統計解析を行っている。
  • 結果
  • 平均のカップの外方角は44±8度、前方開角は15度±9度であった。外方開角に限れは84%が、前方開角に限れは69%がSafe zoneに入っていた。58%がLewinnekのSafe zoneを完全に満たしていた。平均のFemoral Offsetは38ミリ±7ミリ、臼蓋オフセットは32±7ミリ、平均の外方かは6ミリ±4ミリ、平均の脚庁舎は4±7ミリであった。
  • アプローチについて検討をした結果、後方アプローチの92%が外方開角の安全域を満たしているのに対し、前方アプローチでは62%にとどまった。前方開角については後方アプローチの73%が満たしたのに対し、前方アプローチでは49%しか満たさなかった。Combined approach では後方アプローチで65%、前方アプローチでは33%が安全域に入っていた。
  • 後方アプローチは前方アプローチの3倍安全域を満たすことがわかった。しかしながら後方アプローチのほうが前方アプローチより1.6倍脱臼しやすかった。
  • 考察
  • 不安定性はTHAのもっともよく発生する合併症の内の一つである。脱臼の原因として、外点筋力の低下、神経疾患の存在、そして技術的な問題が指摘されていた。技術的な問題としては南部組織の処理、アプローチ、インプラントデザイン、コンポーネントの設置位置が関連すると言われている。1978年にLewinnekがSafe zoneとして臼蓋の設置角度についての報告を行った。いらいこのSafe zoneはひろくうけいれられ使われてきた。
  • 本研究にはいくつかの限界がある。一つは正面単純写真のみでの評価であることである。いわゆるCombine Anteversionについては評価できていない。今後はより精密な画像評価が必要となるであろう。しかし本研究の主たる目的は臼蓋コンポーネントのSafe zoneについての検討である。また本研究の強みはN数が大きい施設での検討であることである。第2にこの結果は他施設で同様に扱えるかどうかは不明であることである。3つ目に多くの術者、インプラントが入っているため一見すると欠点のようにも見えるが、多くの疾患などについて検討したと言える。
  • 多くの臼蓋コンポーネントがSafe zoneに入っているにも関わらず脱臼は怒っていた。Reizeらは同様の研究を報告している。しかしながらかれらは脱臼率についての報告をしていない。Epositoらは57%のカップがSafe zoneにあるにも関わらず脱臼したと報告している。カップの平均角度は44度、前方開角15度でLewinnekの推奨する角度にも関わらず脱臼していた。
  • 本研究では後方アプローチではSafe zoneに入っているにもかかわらず脱臼しやすかった。個の割合は以前の研究よりも少なかった。本研究から言えることは後方アプローチではSafe zoneにある事が脱臼の危険因子ではないかもしれないということである。これは後方アプローチで再設置をすることのベネフィットがない事を示している。
  • アプローチごとの脱臼対処法はさらに検討される必要がある。後方要素の再建は脱臼率を減らす。
  • 前方アプローチについては前方開角が少ない群で明らかに脱臼が多かった。前方アプローチではコンポーネントの再設置を検討してもよい。
  • 解剖学的な位置にコンポーネントを設置することはTHAの不安定性を減少させることに意味がある。今回大腿骨オフセット、臼蓋オフセット、外包化について検討しさらに脚長差についても検討した。大腿骨オフセットは38ミリでほとんど解剖学的に正しい幅に戻っていた。また臼蓋オフセットについても正常範囲内であった。また脚長差も許容範囲内であった。
  • LewinnekのSafe zoneは有効であるが本当にSafe zoneであるかは分からない。Safe zoneにあっても脱臼は起こりうる。本当はSafe zoneというものがあるのかもしれないが、そのためには更なる研究が必要となる。THAのバランスは骨格、筋量、静的動的安定性、軟部組織バランス、リハビリなどが影響している。

2016年1月17日日曜日

新規サイトとのリンク

こんにちは。管理人です。

ふとしたことで新しい整形外科系のブログと相互リンク貼らせていただくこととなりました。

http://sports-doctor93.mods.jp
目指せスポーツドクター〜サッカー日本代表チームドクターを目指して〜

マメに更新されておりますし、真摯にスポーツと向き合われていると思います。

いちど御覧ください。


2016年1月29日

http://sports-doctor93.com

こちらに引越されたそうですので、よろしくお願いします。

2015年12月20日日曜日

2014 JAMA Effect of physical therapy on pain and function in patients with hip osteoarthritis a randomized clinical trial

  • 変形性股関節症に対しての保存療法が有用か?という疑問に徹底的なプロトコールを作成して臨んだ論文。
  • 個人的な感覚としても、リハビリを進めると痛みを訴える人が多くなる。
  • 運動機能は改善するだろうとおもっていただけにややびっくり。
  • THAの良好な予後を考えるといたずらに粘らずに手術を考慮したほうが良いのでしょうか。

  • オーストラリアメルボルンからの報告。
  • 今までに変形性股関節症に対する理学療法について充分なエビデンスはなかった。本研究の目的は変形性股関節症に対する理学療法についての効果を検証することである。
  • RCT.プラセボ二重盲検試験。102人の変形性股関節症の患者を対象。49例の運動療法群と53例のシャム療法群の2群に分けた。12週間の介入を行い、24週間経過を観察した。
  • 12週間で10回の診察、治療を行った。運動療法群は一般的指導、歩行の指導、マッサージ、可動域訓練、自宅での運動療法を指導。シャム群はジェルを塗られておしまい。24週後も運動療法群では指導された通りの運動を行うよう指導。シャム群は週に3回ジェルを自分で塗りこむよう指導された。
  • 13週で痛み、身体機能を聴取。36週で身体障害、パフォーマンス、変化、精神機能、QOLを取得した。
  • 結果13週間で96人、94%の患者が、36週で83人81%の患者がトライアルを完遂した。痛みの改善の具合は2群間で差がなかった。痛みについてVASで評価を行い、運動療法群では開始前が58.8ミリであったものが13週後には40.1ミリに、シャム群では58ミリであったものが13週後には35.2ミリと改善していた。平均の変化値はシャム群で有意に改善を認めた。運動機能は両群で差を認めなかった。運動機能は運動療法群で32.3から27.5へ、シャム療法群は32.4が26.4に改善した。この平均変化値もシャム群のほうが1.4良かった。36週の段階の評価では運動療法群では46症例中19例に何かしらの有害事象が報告されたものの、シャム群では49例中7例にとどまった。(P=0.003)
  • 痛みがあるような変形性股関節症の患者に対する運動療法の価値には疑問がある。
  • Introduction
  • 変形性股関節症のガイドラインでは疼痛、機能障害の程度に応じて非薬物療法を推奨している。しかしながら理学療法にもコストが掛かり、その効果については結論が出ていない。
  • 理学療法は関節可動域訓練、患者教育、杖の処方などが含まれる、しかしながらこれら全てを包括的に行った場合のエビデンスはない。また変形性関節症の患者におけるプラセボ効果は無視できない。そこで本研究ではシャム治療群を設定してリハビリについての検討を行った。12週間の包括的リハビリテーションを行い、その痛み、身体機能についての評価を行うことが本研究の目的である。
  • 方法
  • RCT。二重盲検。
  • 2010年から2012年。50歳以上。レントゲン写真上のOAが存在し、VASスケールで40ミリ以上の痛みがある患者。少なくとも中程度以上の活動量があること。THA、TKAの棋王があったり、腰椎の問題を抱えていたりする患者は除外。患者にはシャム療法よりも運動療法が有効であるかどうかを検討するとつたえ、どちらがどちらかを伝えることはしなかった。
  • 介入方法
  • 8人の理学療法患者。9つの整形外科クリニック。12週間で10のコースを受けた。最初の週は2回受診。その後6週間は週1回。その後2週に1回ずつの受診とした。1つのセッションは45−60分間のリハビリが行なわれた。リガウ療法の内容は股関節の可動域訓練、股関節、腰椎のマニュピレーション、深部筋マッサージ。自宅での運動療法を指導。関節可動域訓練、バランストレーニング、患者教育、杖の使用法の指導を行った。6ヶ月のフォローの間週3回の自宅での訓練を行うように指導された。
  • シャム療法群は股関節の前と後ろにジェルを塗りつけ、動いていない超音波装置を当てられた。特に運動療法などの指導は行なわず。6ヶ月の間週3回5分間その効果のないジェルを塗りつけるように指導された。
  • 13週で診察して評価、36週で評価表を郵送した。VASとWOMACを評価に用いた。その他HOOS,QOL評価表、Grobal rating Scale.万歩計、を用いた。
  • 13週の段階では関節可動域、筋力評価、階段昇降テスト、連続起立テスト、20m歩行試験バランステストが行われた。
  • 有害事象、鎮痛薬の内服状況などについては日記に記載するようにしてもらった。13週、36週の時点で自分がプラセボ群かどっちかということを記載してもらった。
  • 結果
  • 群分けについてフローチャートに示す。1441人の患者に参加希望を尋ねたところ1339人が参加を希望しなかった。102例の患者について群訳を行い、13週で94%、36週で81%の患者がトライアルの参加を完遂した。患者背景を表1に示す。脱落者は有意に若い患者で多かった。運動療法群、シャム療法群の間に差は認めなかった。
  • 2群間で痛みについての差は認めなかった。また運動機能についての差も認めなかった。これらの結果を表2に示す。2群とも疼痛について有意に改善していた。運動療法すんの改善は17.7ミリなのに対してシャム療法群は22.9ミリであった。機能について運動療法群が平均5.2ユニットであるが、5.5ユニット出会った。セカンダリーアウトカムについて13週、36週での違いを認めなかった。表3,4
  • 多重代入法を用いて検討を行った結果、疼痛、機能について2群間に有意な差を認めなかった。また完全に欠損の内データだけでの検討でも同様の結果が得られた。
  • ただし、運動療法軍の46例中19例で何かしらの有害事象が報告されたのに比較して、シャム療法群ではわずか14%、7例の報告に伴った。症状は痛みの増悪、腰痛の悪化であった。内服の使用などは2群間で差を認めなかった。
  • 盲検についての検討も行い、運動療法群では自分が介入群であることが36週ではよくわかってきているものの、受けている治療の正しさを信じることができる割合は低下していた。
  • 考察
  • 症状のある変形性股関節症の患者に対しての包括的リハビリテーションの効果はシャム治療法を超えない。理学療法士との接触時間、その内容、自宅での指導を含めても差がなかった。運動療法群、シャム両方群の2群とも疼痛、運動機能について有意な改善を認めた。比較的軽度な有害事象を運動療法軍に多く認めた。
  • 本研究の結果は統計で言うType2エラーの可能性が指摘される。しかしながらサンプルサイズの設計は統計学的に正しく行なわれており、また95%信頼区間をみても運動療法群にプラセボ以上の効果は認められない。
  • 運動療法群で自宅でまじめにホームエクササイズを行ったのが85%にのぼった結果を持ってしても、2群間に全く差がないので運動療法には本当に差がないといえる。
  • 包括的リハビリテーションはリハビリの基本である。本研究は過去にそれぞれ単独では有効であるとされた治療法を取り入れて包括的にリハビリを行った。しかしながら最近の研究では2つ以上のリハビリを組み合わせてもそれほど効果がないとする結果が出ている。またかえって有害事象が報告されることもあるとする報告も散見される。ひょっとしたら痛みがあり、関節可動域制限が出ているような患者では運動療法は意味を成さないのかもしれない。
  • 膝では運動の強度でそのリハビリ効果に差はなかったとする報告や、理学療法士との接触時間が多いと改善するとする報告がある。股関節で同様のことが言えるかどうかはわからない。
  • シャム療法群でも改善が得られた。これは変形性股関節症に有効な治療法がないことと、また同時にシャム療法が有効であることを氏名している。メタアナライシスでは変形性股関節症ではプラセボ効果が大きく見られることが知られている。このような効果を最大とするような運動療法、薬剤療法を検討する必要がある。今回のシャム療法では皮膚への刺激と手の接触があった。これらの行為が有効であることが示された。患者への配慮がこのプラセボ効果を大きくすることが知られている。保存療法ではプラセボ効果が大きな影響を持つ。
  • いままで変形性股関節症に対するプラセボと比較した二重盲検試験はなかった。いままでの研究は全く治療を市内軍を対象としていた。しかしながら非治療群を対象とすると治療効果が大きく出る可能性があること、また盲検化が困難となる。
  • 本研究の強みは統計家を交えたしっかりとした研究プロトコールの作成にある。本研究の限界は理学療法士が盲検化されていないことである。しかし、理学療法士が熱心にやったほうがよければ運動療法群のほうが良い結果となるため盲検化に失敗したと言うことは言えない。
  • 結論
  • 変形性股関節症に対する包括的リハビリテーションはむしろ有害事象を増やす。これらの患者に対してリハビリが必要かどうかは疑問である。

2015年11月8日日曜日

20151108 ActaOrtho Assocication between change in global femoral offset after total hip arthroplasty and function, quality of life, and abductor muscle strength

  • 気がついたら3ヶ月投稿サボっておりました。
  • 論文を読んでいないわけではないですが、なかなか皆様にお見せできるたぐいのものが少なくて。

良い論文だと思います。しっかりとしたスタディデザイン。仮説の設定もしっかりしていますし。
こういう論文が書けるようになるとイイなあと思いました。

    • Abstract
      • femoral offset(FO)とTHAの臨床成績との関連について一定の見解はない。今回患者立脚型評価、QOL、筋力測定を用いてFOと臨床成績との間の関連について検討を行った。
      • 250例の片側性THAの患者を対象。術前にWOMAC,EQ5Dを測定。術後1年でWOMC,EQ5Dと外転筋力を測定した。222例の患者の測定が可能であった。222例の患者を術前よりFOが5mm以上大きくなった群、変わらなかった群、5ミリ以上小さくなった群の3例に分けて検討を行った。
      • 結果3群とも臨床成績の改善が認められた。FOが小さくなった群でWOMACスコアの低下、外転筋力の低下、補装具使用の増加が認められた。交絡因子を調整した結果、FOの現象は外転筋力低下のみに関わっていた。痛みについて3群間に差はなかった。
      • 5ミリ以上のFOの現象は患者の外転筋力に影響をおよぼすので避けたほうが良い。
    • Introduction
      • 小関節可動域、バイオメカニクスを考慮してカップとステムの設置は行なわれなければならない。FemoralOffseto(FO)は術中の重要な因子の1つとなる。FOは一般的に股関節正面像で大腿骨頭中心と大腿骨髄腔の長軸間距離と規定される。しかしながらこの距離はカップの位置を考慮に入れたものではない。カップの位置はまた別に考慮され、涙痕から大腿骨頭中心までの距離はカップオフセットと言われる。カップオフセットとフェモラールオフセットを足したものがグローバルオフセットとして定義される。
      • THAのあとのオフセットが適切でないと、インプラントの不安定性、股関節のインピンジメント、関節合力の増加、ポリエチレンの摩耗などと関連する。一方、フェモラールオフセットを増加させると関節が安定しポリエチレンウエアが減少するとする報告がある。しかし、いずれのデータも幾つか問題がある。サンプルサイズが小さかったり、後ろ向き研究であったり、コントロール群が不適切であったり、レントゲン撮影が不適切であったりという問題がある。グローバルオフセットと患者の機能評価の間の評価は今までなかった。本研究の目的はスローバルオフセットの変化量と患者立脚型評価の間の関連を調べることである。
      • 2010年から2013年。スエーデンの大学病院での単施設研究。前向き研究。片側OAにたいていTHAを施行された患者において検討。2次性のOA,脊椎、外傷後の患者は除外した。
      • 評価項目はWOMAC。EQ5Dを用いた。また外転筋力を測定した。
      • 術前、術後1年で上記評価を行った。
      • レントゲン撮影については両下肢内旋15度として、115センチの高さから撮影を行った。図1のようにしてグローバルオフセットを測定した。健側とその値を比較した。測定の際には骨頭サイズでキャリブレーションを行った。
      • その上で3群に分けた。5ミリ以上グローバルオフセットが減少した群、グローバルフセットが変わらなかった群、グローバルオフセットが5ミリ以上増加した群の3寸である。
      • 術後12ヶ月の時点でWOMAC、EQ5Dを取得し、その他に杖歩行の有無、股関節の痛み、鎮痛剤の使用について聴取した。
      • 筋力測定については2005年のあさやまの方法を参考にした。
      • 統計学的にはSPSSを用いて行った。サンプルサイズも事前に計算し、各群65例が必要であるとした。
      • hrier and Platt 2008の方法を用いて交絡因子についての再検討を行った。
      • 結果
      • 286例の患者を候補として採用した。21例の患者が反対側の股関節疾患、脊椎疾患のため除外された。15例の患者が研究への参加を拒絶。250例の患者にて研究を開始し、1年後に222例の患者で解析を行うことが出来た。79%の患者でセメントステムが用いられ、115例が男性患者であった。
      • オフセット減少群が71例、変化なし群が73例、増加群が78例であった。術前のWOMACスコア、EQ5Dについて3群間に差を認めなかった。
      • 交絡因子調節前の術後の結果では、オフセット減少群でWOMAC、EQ5D、外転筋力、杖歩行の割合が有意に多かった。交絡因子の解析を行うと外転筋力のみが有意な因子としてオフセット減少群で低下を認めた。
      • 考察
      • グローバルオフセットの減少はおおまかにQOLの低下、患者立脚型評価による成績の低下、外転筋力の低下、また杖歩行の割合の増加を認めた。オフセットが変化しない群、増加した群ではその成績に変化はなかった。女性、高齢者では臨床成績の低下を認めるので、交絡因子の調整を行うとグローバルオフセットの減少により外転筋力の低下を認めた。
      • グローバルオフセットは術前計画をたてる際にも重要である。CTで測定するのが正しい測定方法であるが、単純レントゲン写真での測定でもその信頼性、妥当性は示されている。単なるステムオフセットよりも骨性インピンジメントなどの可能性を排除するにはこのグローバルオフセットが有効である。今回5ミリで群分けしたのは以前の報告で5ミリで群分けしていたためでそれを踏襲した。
      • グローバルオフセットが減少しても外転筋力以外の項目は変化が認められなかった。WOMACの悪化はこの筋力低下を反映しているものと考えられる。オフセット量の保持と関節可動域、筋力との間には正の相関があることが他の研究でも示されている。一方、他の研究ではオフセットを減少したほうが術後の疼痛は少ないとする報告がある。また、6から12ミリのオフセットの減少で歩行に変化が出たとする報告もある。
      • オフセットの変化はQOL、患者立脚型評価に影響を及ぼさなかった。
      • 脱臼率にも変化はなかった。これはグローバルオフセットの減少が脱臼などには影響を及ぼさないことを示唆している。
      • 本研究はグローバルオフセットの保持を手術の際に心がけることを目標としている。しかしながらこれを実際に実現するのは難しい。術中にイメージ、ナビを用いるのは良い方法である。しかし結局術者の技量、経験に依存する
      • 本研究の限界は単純レントゲン写真のみでの評価を行っていること、WOMACスコアの天井効果があることなどである。しかしながら前向き研究。充分なN数のある研究であることが本研究の強みである。
      • グローバルオフセットを減少させると外転筋力の低下を生じることがわかった。

2015年8月26日水曜日

20150826JBJS(Br) A patient's recollection of pre-operative status is not accurate one year after arthroplasty of the hip or knee

今自分がやっている研究に関連する論文です。
患者アンケートは1年たったところで集めないといけませんよという話。


  • もしTHA、TKAの術後に術前の状態を思い出すことができるのであれば臨床、研究の両方の点において有用である。本研究はTHAまたはTKAを受けて1年たった患者を対象に1年前の状態を思い出して記載してもらった。実際に1年前に記載した内容と、1年後に思い出して記載した無いように有意差は認められなかったものの絶対値の違いは大きかった。また相関係数は小さく、OHS、OKSの回答で一致していたものはOHSで半分、OKSで2/3であった。術後に術前の状態を思い出させて記載させた患者立脚型評価の内容はあてにならない。
  • THA、TKAとも良い手術で年々その数は増加傾向にある。臨床成績評価のためにPROMが用いられる。その中でOHS、OKSを今回は用いた。これらの評価は患者の状態を表しているものの、術前にPROMが取得されて居ないこともある。そのため経時的な評価が困難なことがある。術者は術後の状態に興味があり、術前の状態を重視しないということもある。術前のデータがないと横断研究または後ろ向き研究となってしまう。そこで、術前のデータを術後にとることが出来ないかということを考えた。もしそれが可能であれば術後に術前のデータを取得することもできるようになる。記憶をさかのぼって記録をとることにはいくつかのバイアスが存在し、それらはrecall biasと呼ばれる。患者は痛みを強く訴え、機能がより良かったと報告する傾向にある。年齢、精神状態などにも影響される。recall biasはアウトカムにも影響を与える。本研究の目的はOHS,OKSのような疾患特異性患者立脚型評価がTHA、TKAを受けたような患者で思い出して記載すると実際にどうなるかを示した研究である。
  • 対象と方法
  • 2011年から2013年までにTHAまたはTKAを受けた患者のうち、本研究への参加を希望した患者。術後1年の段階で術前の状態を思い出して書いてくださいとお願いした。
  • 英語ができない患者、術後に影響するような疾患に罹患したような患者を除外。
  • 146例の患者。79例THA、67例TKA。術後1年で外来受診した45例の患者、外来受診しなかった101例の患者においては郵送にて質問票を送付。8例の患者で郵便が届かず、21例の患者が研究への参加を拒否した。76.4%の患者で回答を得た。また回答を得た患者の中で質問への回答が不十分だった4例を除外し全体で113例の患者で検討を行った。THAの平均年齢は63歳、TKAの平均年齢は68.5歳であった。MDSはOHSで5点、OKSで4点であった。
  • また患者がどの程度自身をもって思い出せたかを4段階に評価してこれも評価した。
  • 統計的にはまず、相関係数を用いて検討を行った。またそれぞれの評価項目についての検討ではΚ係数を計算した。最期に多変量解析を行いどの程度思い出せるのかの検討を行った。
  • 結果 図1 OHS、OKSの術前との点数の違い
  • 表1で図1の説明。Recall difference は Actual スコア-Recall スコア。
  • Absolute differenceは絶対値。
  • Recall differenceでは有意差はないものの、絶対値にすると有意差が出た。これがまたMDSより大きな値であった。ピアソンの相関係数も0.7、0.61と低かった。
  • 表2 各設問に対するκ係数を示す。0.4以下であると一致率が低い設問である。
  • McNemars Index biasは0であればあるほどよい。図2に実際の回答の正答の割合をしめす。多変量解析を行った結果では自分の記憶に自信があると答えたかどうかと術前のOxfordスコアが有意な関連因子であった。
  • 考察
  • 本研究は1年後に思い出した患者立脚型評価の回答が正しいかどうかの検討である。思い出した値そのものに有意差はなかったものの、実際の会いたいと思いだした値との間には有意な差を認め、その値はMDSよりも大きく、相関係数も小さかった。またOHSの設問のうち半分で、OKSの設問の2/3でその一度は低かった。以上から術後に術前の状態を思い出してデータを回収するとその値は不正確になると考えられる。その値は大体10%ほど乖離することがわかった。
  • 以前の状態を思い出してそのデータを使用する、という問題についてはいくつかの異なる見解がある。Howellら、MarshらはOHS、WOMAC、SF12を用いて術後3ヶ月、6週の段階ではそのICCは極めて高く、臨床の現場でも後ほど思い出して書いてもらっても良いのではないかと結論づけている。また反対にTKAの患者では術後3ヶ月ではModerateな一致率を、術後2.5年の段階ではFairな一致率しかなかったと報告しているものもある。
  • THAについて最低1年後にフォローを行うというのは一般的で推奨される方法である。術前のデータが必要となる場合には当然術前にとるべきであるが、術後3ヶ月程度までは許されるのかもしれない。
  • 本研究の強みは各設問ごとについての一致率を検討したことである。ここまで細かく検討した研究は初めてであり、こうすることで全体の一致率で有意差が出なかったものの、詳細な検討によって差が出ることがわかった。
  • 患者の正確や社会的な背景が結果に影響を与えうる。75歳以上、もともと運動能力が低かった人は思い出して行った回答でより低い値が出た。性別などは影響しなかった。患者の状態は回答を思い出し回収するときには検討項目に入れた方が良いのかもしれない。
  • 痛みが強く、動きのよい患者ではSystemicBiasがかかる。思い出した際になぜ痛みが出るのかはよくわからない。TKAの患者でこの問題がより多く出ているのはTKAのが術後1年でも痛みの程度に差があるからであろう。
  • いくつかのLimitationがある。OHS,OKSのみで評価し、認知機能の評価は行っていない。術前の状態をAnchorとして記録していくことが必要である。多くのデータが誘導で行なわれたので思い出し具合には違いが出ているのかもしれない。
  • 術前にしっかりとPROMは聴取することが必要である。

2015年7月24日金曜日

20150724 JBJS(Am)Does Zolendronate Prevent femoral head collaps from osteonecrosis


  • 抄録
  • 特発性大腿骨頭壊死症は若年者の人工関節置換術の主要な原因の一つである。ビスフォスホネート製剤により圧潰の発生を遅らせることができるとする論文がある。今回はRCTにてゾメタがTHAの率を減らすことが出来るかを検討した
  • 壊死範囲が30%を超えるような症例を対象。ゾメタ群とコントロール群に分けた。2ミリ以上の圧潰の発生をエンドポイント。2年間の観察を行った。
  • 110例の患者をランダム化。55例にゾメタの投与、55例を観察群とした。2年間でゾメタ群の29例、コントロール群の22例で圧潰が認められた。ゾメタ群の19例、コントロール群の20例がTHAへ移行した。
  • 比較的大きな壊死範囲をもつ大腿骨頭壊死症の患者に対してゾメタの投与は有用でない。
  • 方法
  • 2008-2010年。韓国で行われた9つの施設による多施設RCT。ほとんどの患者がアルコール性の大腿骨頭壊死
  • 考察
  • BP剤の投与が有効かもとする報告は、2006年の西井先生の報告、2005年のAgarwalaさんの報告がある。
  • アレンドロネートが有効でないとする報告は2012年にChenさんがしている。
  • 2年の経過でゾメタは有効でなかった。
  • 本研究はノバルティスの提供で行われています。

<論評>
ノバルティスの後援があるにもかかわらず有意差が出なかったということでホントに差が出なかったのだと思います。
研究終了してから3年間も陽の目を見ない理由はDisclosureの問題があったからのようですね。
とりあえず、大きな大腿骨頭壊死症にたいして内服治療は無効で、何かしらの手術治療が必要であることは間違いなさそうです。

こういった多施設共同研究、RCTなどは韓国がだいぶ先に行っているという思いを拭えません。悔しいですね。

本邦では厚生省の特発性大腿骨頭壊死研究班があります。
日本の名だたる施設が多数参加しています。
手術、内服治療などのの多施設RCTを手術治療で検討すればよいのになあと感じた次第です。

20150724 JBJS(Am) Management of hip fractures in Elderly

  • AAOSから大腿骨頚部骨折/転子部骨折ガイドラインが出てました。
  • ガイドライン策定の元になった論文は明らかではありません。

  • 術前術後の疼痛管理の必要性とリハビリについて以前のガイドラインよりは踏み込んだ内容となっていると思いました。
  • 研究のタネもそこら辺かなあと思いました。

  • AAOS 大腿骨頚部/転子部骨折ガイドライン
  • recommendation: Strong
    • 周術期のしっかりとした局所の疼痛コントロールが必要
    • 手術の麻酔は全身麻酔、腰椎麻酔でも術後成績に差はない
    • 転位のある頚部骨折には人工骨頭が適応になる
    • 転子下骨折、逆斜型転子部骨折は髄内釘が適応となる。
    • 輸血はHb8g/dlを閾値として。症状がなければ投与の適応なし。
    • 退院後もしっかりとしたリハビリの介入は有効
    • 認知症があった場合には多方面からのケアプログラムの策定が有効
    • 術後の多剤併用疼痛緩和は有効
  • recommendation: Moderate
    • レントゲンではっきりしない骨折はMRIを撮像すると判明する
    • 術前のルーチンの牽引を指示するエビデンスはない。
    • 手術は入院後48時間以内に行った方がよい。
    • 転位のない頚部骨折でも手術をした方がよい。
    • UnipolarでもBipolarでも術後成績に差はない
    • 高齢者に対しては症例を選んでTHAを考慮してもよい
    • セメントステムの方がよいかもしれない。
    • 後方アプローチの方が脱臼が多い
    • 安定型の転子部骨折であればCHS、ネイルのどちらでもよい
    • 不安定型の転子部骨折はネイルの方がよいかもしれない
    • リハビリによるアドバイスは術後の機能、QOLを改善するかも知れない
    • 適切な栄養の介入は死亡率を減らすかもしれない
    • 術後はビタミンDの投与とカルシウムの投与を行う。
    • 術後に骨粗鬆症の検査、治療をおこなう。
  • recommedation: Mild
    • 抗凝固療法中の患者の手術のタイミングは遅らせた方がよいかどうかは不明
    • 術前にアルブミンやクレアチニン値で患者のリスク評価を行うことが妥当かどうかは不明