- 股関節屋のあいだではLewinnekのSafe zoneは金科玉条ですが、ほんとにそれでよいのかの検討。
- Safe zoneはこれだけではSafeにあらず。他の因子も検討しましょうという論文です。
- Big Dataとして、多変量で検討できるとどの程度関わっているか分かりそうですね。
- Abstract
- THAの安定性には多くの因子が関連している。例えばsプローチ、軟部組織の緊張、患者の理解力、そしてコンポーネントの設置位置である。古くからLewinnekのSafe Zone、外方開角40度±10度、前方開角15度±10度がいわゆるSafe Zoneとして信じられてきた。しかしながらSafe zoneにあっても脱臼する例をしばしば経験する。
- 方法:レントゲン写真上で外方角、前方開角がTHAの脱臼を減少させることができるかどうかを検討すること。
- 9784例のPrimaryTHAを対象とした。206のTHA、2%で脱臼を認めた。レントゲン写真上での前方開角、外方開角、回転中心、脚長差を測定した。平均フォローアップ期間は27ヶ月であった。(0−133ヶ月)
- 結果:脱臼206関節中120例、58%がLewinnekのSafe zoneに入っていた。平均の外包開角は44度±8度に84%が、前方開角は15度±9度に69%の症例が入っていた。後方アプローチでは脱臼例の65%がSafe zoneに入っていた。一方、前方アプローチでは33%しかSafe zoneに入っていなかった。後方アプローチは、前方アプローチより3倍Safe Zoneに入った。一方、後方アプローチは前方アプローチよりも脱臼しやすかった。
- 結論:いままでSafe zoneとして考えられてきた外方開角、前方開角では充分に安全であるとは言えない。股関節の安定性は他因子であり、幾人かの患者ではSafe zoneはLewinnekが提唱したZoneの外側にあるのかもしれない。さらなる解析が必要である。
- Introduction
- 脱臼はTHAの最もよくおこる合併症のうちの1つである。その発症率は0−5%と言われている。脱臼のうち50%が術後3ヶ月以内に起こるといわれており、75%が1年以内に怒ると言われている。術後2年以内の再置換術の原因として脱臼はもっとものその頻度が高い。不幸にして再置換術となってしまった患者では単純にライナー交換から全置換術までその成績は大きく異る。
- インプラントの設置位置は、股関節のバイオメカニクスを保持し、適切な軟部組織の温存で緊張を保つことで股関節の安定性に寄与する。加えて、ヘッドの大きさ、カップのサイズ、手術アプローチが股関節の安定性に寄与している。一般にLewinnekの提唱したSafe Zoneが論文には引用される。それは外方開角カップ40度±10度、前方開角15度±10度である。この範囲内にあれば脱臼は少なくなると言われている。Lewinnekの研究は後方アプローチで検討がされている。しかしながらこのSafe zoneに入っていても脱臼はおこっている。
- 本研究の目的はLewinnekのSafe zoneがTHAでの脱臼を予想することが可能かどうかを検討することである。第二の目的としてはアプローチごとでの安全域を策定することである。
- 対象と方法
- 2003年から2012年までに1つの施設で行なわれたPrimaryTHAを対象とした。術後レントゲン写真は3ヶ月、1年、2年、5年、その後は5年毎に経過観察を行った。来院が困難な患者については質問票を送付し、レントゲン写真を送ってもらった。返事がない場合には電話にて聴取を行っている。脱臼の定義は非観血的または観血的に脱臼を整復した例、または再置換術をおこなった症例と定義した。本シリーズではPrimaryTHAに限定し、術後骨折、人工骨頭、表面置換、表面痴漢からの再置換術を除外している。
- レントゲン写真の評価は単純レントゲン写真の正面像で検討を行った。脱臼前の直近のレントゲン写真での検討を行った。図1に測定方法を示す。外方開角、前方開角の両方を満たすものをCombined Safe zoneを満たす、と定義した。その他にはFemoral Offset,Acetabular offset,大腿骨頭の中心の一、脚長差の変化について調査を行った。全てのレントゲン写真は2名の独立した検者によって行なわれて行なわれ、2週間の間をおいて行なわれた。検者間のICCの0.89、検者内のICCのは0.89であった。85%の患者が術前、術後のレントゲン写真がそろっていた。
- 結局206例、206関節についての検討を行った。表1に患者背景を示す。9784例の人工関節が行なわれ、5765例が後方アプローチ、3384例が前方アプローチであった。71例が側方アプローチであった。後方プローチでは全例関節包の再建を行っている。
- 臼蓋コンポーネントは8種類使用されていた。全てセメントレスのインプラントであった。ステムは16種類が使用されており、74%でセメントレスステムが用いられていた。
- Logrankで統計解析を行っている。
- 結果
- 平均のカップの外方角は44±8度、前方開角は15度±9度であった。外方開角に限れは84%が、前方開角に限れは69%がSafe zoneに入っていた。58%がLewinnekのSafe zoneを完全に満たしていた。平均のFemoral Offsetは38ミリ±7ミリ、臼蓋オフセットは32±7ミリ、平均の外方かは6ミリ±4ミリ、平均の脚庁舎は4±7ミリであった。
- アプローチについて検討をした結果、後方アプローチの92%が外方開角の安全域を満たしているのに対し、前方アプローチでは62%にとどまった。前方開角については後方アプローチの73%が満たしたのに対し、前方アプローチでは49%しか満たさなかった。Combined approach では後方アプローチで65%、前方アプローチでは33%が安全域に入っていた。
- 後方アプローチは前方アプローチの3倍安全域を満たすことがわかった。しかしながら後方アプローチのほうが前方アプローチより1.6倍脱臼しやすかった。
- 考察
- 不安定性はTHAのもっともよく発生する合併症の内の一つである。脱臼の原因として、外点筋力の低下、神経疾患の存在、そして技術的な問題が指摘されていた。技術的な問題としては南部組織の処理、アプローチ、インプラントデザイン、コンポーネントの設置位置が関連すると言われている。1978年にLewinnekがSafe zoneとして臼蓋の設置角度についての報告を行った。いらいこのSafe zoneはひろくうけいれられ使われてきた。
- 本研究にはいくつかの限界がある。一つは正面単純写真のみでの評価であることである。いわゆるCombine Anteversionについては評価できていない。今後はより精密な画像評価が必要となるであろう。しかし本研究の主たる目的は臼蓋コンポーネントのSafe zoneについての検討である。また本研究の強みはN数が大きい施設での検討であることである。第2にこの結果は他施設で同様に扱えるかどうかは不明であることである。3つ目に多くの術者、インプラントが入っているため一見すると欠点のようにも見えるが、多くの疾患などについて検討したと言える。
- 多くの臼蓋コンポーネントがSafe zoneに入っているにも関わらず脱臼は怒っていた。Reizeらは同様の研究を報告している。しかしながらかれらは脱臼率についての報告をしていない。Epositoらは57%のカップがSafe zoneにあるにも関わらず脱臼したと報告している。カップの平均角度は44度、前方開角15度でLewinnekの推奨する角度にも関わらず脱臼していた。
- 本研究では後方アプローチではSafe zoneに入っているにもかかわらず脱臼しやすかった。個の割合は以前の研究よりも少なかった。本研究から言えることは後方アプローチではSafe zoneにある事が脱臼の危険因子ではないかもしれないということである。これは後方アプローチで再設置をすることのベネフィットがない事を示している。
- アプローチごとの脱臼対処法はさらに検討される必要がある。後方要素の再建は脱臼率を減らす。
- 前方アプローチについては前方開角が少ない群で明らかに脱臼が多かった。前方アプローチではコンポーネントの再設置を検討してもよい。
- 解剖学的な位置にコンポーネントを設置することはTHAの不安定性を減少させることに意味がある。今回大腿骨オフセット、臼蓋オフセット、外包化について検討しさらに脚長差についても検討した。大腿骨オフセットは38ミリでほとんど解剖学的に正しい幅に戻っていた。また臼蓋オフセットについても正常範囲内であった。また脚長差も許容範囲内であった。
- LewinnekのSafe zoneは有効であるが本当にSafe zoneであるかは分からない。Safe zoneにあっても脱臼は起こりうる。本当はSafe zoneというものがあるのかもしれないが、そのためには更なる研究が必要となる。THAのバランスは骨格、筋量、静的動的安定性、軟部組織バランス、リハビリなどが影響している。
2016年1月29日金曜日
20160129 CORR What safe zone? The Vast majority of dislocated THAs are within the Lewinnek safe zone for acetabular component position
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