2012年2月2日木曜日

20120202 JBJS(Am) Evidence-based orthopaedics Optimizing the management of rotator cuff problems

腱板損傷に対するAAOSの臨床ガイドライン

本文はクリニカルクエスチョンの話で書かれていますが、ここでは推奨度の強い順に並べます。

・Strength of recommendation:moderate(それなりに推奨できる)
●画像上明らかな腱板の全層損傷がなく、腱板に伴う症状があるような患者ではまずは運動療法とNSAIDsの投与をそれぞれ、または併用して行なう。
●労災で治療する患者の予後は悪い
●手術の際にルーチンで肩峰形成術を行なう必要はない
●治療の際に異種移植片移植はおすすめできない(訳者注 人工真皮の使用のようなものか)

・Strength of recomemndation:weak(エビデンスがないわけではない)
●慢性の痛みがあるような腱板の全層断裂は手術治療の適応がある場合がある
●急性外傷の際の腱板損傷を受傷早期に再建してもよいかもしれない
●高齢であることと、MRIでのある形態の損傷はそれぞれ術後成績が不良となる因子となりうる
●修復しきれない腱板損傷に対して部分再建術、関節内デブリードマン、腱移行などを行なうことを考慮してもよい

・Strength of recommendation:consensus(エビデンスはないけれど全体の同意が得られている事柄)
●画像上腱板の全層断裂があっても症状のない患者に対して手術を行なうのはどうかとおもう
●術後に局所の冷却療法を行なうことは術後疼痛を軽減するのかもしれない

・Strength of recommendation:inconclusive(まだその内容について議論の途中である)
●腱板損傷の患者に対して運動療法をおこなった方がよいのかどうかは不明である。
●腱板損傷の患者に対して肩峰下滑液包に関節内注射を行なった方がよいかどうかは不明である。
●腱板損傷の患者に対してNSAIDsの使用、積極的運動療法、温冷療法、マッサージ、TENS、低周波、超音波療法を行なうことはとくに支持するエビデンスがない
●糖尿病が併存していること、その他の併存症、喫煙、感染、頚椎病変の存在が手術成績と関連するかどうかは不明である
●同種移植は有効かどうか不明である
●術後の外転枕か、一般的な三角巾のどちらを使用した方がよいかということは不明である
●術後どの程度安静にしていたらよいか、いつから運動療法を開始するかと言うことも不明である。
●術後の疼痛管理に肩峰下にカテーテルを留置し、鎮痛剤を投与する方法が有効かどうかも不明である。

【論評】
肩の痛み(腱板損傷)も腰、膝におとらずそのblack boxが多いことを再確認しました。
保存療法においても膝よりも全体にエビデンスが少ないこともよく分かりました。
また手術療法についても膝のTKAのような絶対的な方法がないことも難しさの一つなのかなと思います。
逆にいえばまだ議論されている内容について少しずつ、症例対照研究の形でもよいので積み重ねていくことでより根拠のある医療を提供できるのではないかと考えました。

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