静注のビスフォスフォネートが大腿骨頚部骨折後の死亡率を下げることはよく知られている.今回は209人の患者を対象に、経口のビスフォスフォネートを投与して死亡率が下がるかどうかを検討した.相対リスクで8%の死亡率の低下を認め、一年間においては60%の死亡率の減少を認めた.
はじめに
静注用のビスフォスフォネートが大腿骨頚部骨折後にその死亡率を下げることは知られている.今回は経口のビスフォスフォネートで死亡率の減少や新規骨折の予防が可能かどうかを検証した.
方法
220人の患者を無作為に2群に分けた.110人に対して骨量を測定し、ビスフォスフォネートの内服を始めた.3年間にわたって経過観察を行った.
そして死亡率、新規骨折の発症率についての調査を行った.
結果
最終的にフォロー可能であったのは209人であった。65%が女性。50%が75歳以上。43%が何らかの認知症を有し、18%がやせ型であった。
36%の患者で骨脆弱性骨折の既往があり、81%の患者が骨粗鬆症であった.
101名の患者(46%)が骨粗鬆症の治療を開始し、そのうちの64%が最終評価時まで内服を継続した.
最終的に11%の患者が死亡し、9%の患者が再骨折を来した.
無治療群と治療群を比べると、16%と7%で有意に死亡率が下がった.
結論
経口のビスフォスフォネートも死亡率を下げたり、再骨折の予防に働く。
考察
HORIZONstudyで静注のビスフォスフォネートが頚部骨折のあとに死亡率を下げたり、再骨折を減らすのに有用であることが示された.そこで今回は経口のビスフォスフォネートで検証したところ、月8%の相対危険率の減少と60%の全体の死亡率の相対危険率の減少を認めた.(HR=0.92)
特にこの死亡率の減少は高齢の男性、やせがたの群で顕著に認められた.一般にこのような研究では、ビスフォスフォネートを飲めるのは健康なひとだけであったり、不必要なヒトに飲ませたりといったことがあるが、今回はそういうことはなかった。
この研究は患者背景をほぼ同一にし、ビスフォスフォネートが内服できるような健康な患者さんをえらんだことに意義がある.今までは無作為抽出ではない研究が数本あるだけであった.
この研究の限界は幾つかあり、一つは健康な比較的若い老人ばかりを対象としたこと、もう一つがほんとうにビスフォスフォネートのおかげで死亡率が下がったとは言い切れないことである。3爪にはどれくらいビスフォスフォネートを飲めていたかのデータがないこと、また骨量に関するデータもないことが問題であろう.
ビスフォスフォネートが死亡率を下げる、というのはいくつかの機序が提唱されている.一つはスタチンのような機序で動脈硬化に影響する、貪食細胞などの免疫系に作用する、あとはホルモン剤に似た働きをするのではないかと推定されている.
いずれにしてもこの研究でハッキリと死亡率が下がるということを示したことに意義がある.
<論評>
考察で筆者が述べているとおりだと思います.
高脂血症の治療では、その患者のリスクを考えて薬を処方すべし、となっております。骨粗鬆症の治療もまた然りではないでしょうか.
骨折をして、再骨折のリスクが高いこのような群で差が出ているので、このような対象にある患者に骨粗鬆症の治療は与えられるべきではないでしょうか.
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