2010年11月13日土曜日

20101113 JBSJ(Am) Surgical Versus Functional Treatment for Acute Ruptures of the Lateral Ligament Complex of the Ankle in Young Men

活動性の高い若者の3度の足関節外側靭帯複合体の損傷に対しては手術治療を勧める意見もある。今回の研究の目的は足関節外側靭帯複合体の手術治療の長期予後について調査することである。
対象と方法
足関節外側靭帯複合体の3度の損傷をきたした活動性の高い平均年齢20.4歳の男性で調査を行った。無作為に手術治療群25例と保存治療群26例とに分けた。ストレス撮影にて診断を確定した。手術は受傷後1週間以内に靭帯再建を行った。6週間のB/Kギプスで荷重制限なしとした。保存治療は3週間の装具装着とした。最終評価では足関節スコア、X線写真上の変化、MRI所見について比較を行った。
結果
フォローアップ率は手術群が60%、保存治療群が69%であった。両群とも受傷前の活動レベルに復帰し、走ったり歩いたりが可能となっていた。再受傷の割合は手術群が1/15、保存治療群が7/18であった。足関節スコアは両群に有意な差はなかった。ストレス撮影でも両者に差はなかった。二次性の関節症変化は手術群で4/15、保存治療群で認められなかった。
結論
受傷前の競技レベルに復帰する、ということでは手術治療でも保存治療でも変わりはなかった。しかし、手術治療を行った方が再発率は低く、それに伴うかは不明であるが、二次性の関節症変化をきたす事が分かった。


考察
14年にわたる長期フォローの結果としてこの論文は意味がある。
手術をしても、装具で治療をしてもどちらでも受傷前の運動レベルに復帰という目標は達成されていたが、再発率は明らかに手術治療群が低かった。しかし、長期的に関節症変化をきたす例が多かった。
この研究は患者背景がよく似ており、14年もフォローしたことが研究自体の強みである。また、軍人をフォローしたので、もっとも高レベルのアスリートというわけではないが一般男性よりも激しい運動をする群での研究であり、また、無作為割り付け試験を盲検で行う事が出来た。
サンプルサイズが小さい事と、脱落者が多い事がこの研究の問題である。また受傷後の処置に差がある事、足関節スコアが15点満点で差が出にくい事が考えられる。

今までの研究では足関節の外側靭帯複合体に対する治療は、一般的には手術治療と保存治療に差がないものの、高レベルでのアスリートにおいては手術治療の方が好ましいとする報告があった。この報告ではある程度レベルが高い群でもどちらを選んでも差が無い事が分かった。

再発率は手術治療群の方が低かったが、保存治療群で再発率が高いにも関わらずその復帰レベルが手術群と変わらない事は注目に値する。ひょっとしたら足関節ねんざの再発はアスリートにとっては大した問題ではないのかもしれない。主観的評価と客観的評価の違いも興味深い結果となっていた。保存治療群では客観的には大した事が無いにも関わらず、主観的評価としてgiving-wayをなんども繰り返したとする患者が多かった。これは”reinforcement bias”としてとらえられる。これは保存治療群が最高の治療が受けられなかったと後悔しているとのべていることからもわかる

関節症変化が手術群に多くみられたが、これについてはさらなる研究が必要である。

<論評>
面白い論文だったと思います。結局手術治療と保存治療には大きな差がない。というのが結論です。
しかし、高いパフォーマンスを要求されるようなアスリートにおいては不安感だとかそういったメンタルの問題がプレーの質に影響しうるので手術すべき、というのが僕の意見です。

EBMとは目の前の患者さんにいかにこの論文を適応するかである。という事をはっきりとさせてくれたという意味でもよいと思います。

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