2009年12月9日水曜日

2009.12.10 Up to date. Treatment of calcium pyrophosphate crystal deposition disease

ピロリン酸カルシウム塩の結合織への沈着(CPPD)は何かしらの臨床的な症状をきたしうる。
これらの疾患はピロリン酸カルシウムによる疾患という風に分類される。臨床症状やレントゲン写真から代わりの名前をつけられているが、その適用には限界がある。
そのようなものとして偽痛風、軟骨石灰化症、ピロリン酸関節症といった名称がある。
・偽痛風はCPPDの滑膜炎による急性の発作のみを指す。それは尿酸塩の発作と共通点がある。ただ、CPPDの発作の場合には患者は今までにそのような病歴がないといったことがある。
・軟骨石灰化症とはレントゲン写真上での硝子軟骨、線維軟骨へのカルシウムの沈着を指す。これらはたいていCPPD沈着による病気の患者で認められるが絶対の特異性があるわけでなく全部が患者に対して影響を与えているわけではない。
・ピロリン酸関節症とはCPPDの結晶の沈着によって起こされたとする関節の障害、もしくはレントゲン写真上の異常を指す。しかしながらこの名称は病態という点で正しく表現されていないが、CPPDの沈着での病因における常軌を逸した無機物リン酸カルシウムの代謝が証明させることでこの単語を使うことを正当化できるようになるのかもしれない。

要はCPPDによる疾患の名前はさまざまあるが、CPPD沈着による疾患として今後記載し、この項ではその治療についてのみ述べる。

もし、CPPDによる疾患が惹起されるような基礎疾患が背景にある場合にはその疾患の治療が優先される。

またこれらの治療については経験に基づいて述べており、コントロールされた研究が行われたわけではないことも付け加えておく。

急性の偽痛風の治療。
アルゴリズムにしたがって行う。(図1)。
・慎重な関節穿刺を行い、吸引を行う。
・NSAIDS,コルチヒンの投与を行う
・関節内ステロイド注射
・安静

推奨
可能であればいつでも診断と治療を目的として関節穿刺を行っている。ついでにステロイドの関節内注射も行っている。このとき1から2mlのキシロカインと40mgのケナコルトを混ぜて注射している。注射は肩関節を含めた大関節に行うこととしている。
上肢、下肢の小関節では量を減らして対応する。荷重を禁止し、2,3日安静にするように指示。シーネによる安静も考慮。
2関節以上が罹患している場合には関節注射はあまりよい方法でないので、痛風発作に準じた薬の投与を考慮する。その詳細については以下のとおり。
・NSAIDsまたはコルヒチンが好ましい。
・患者の年齢、状態が内服できないような状態であればステロイド、ACTHの全身投与が適応となる。しかしこの方法はより根拠がない。
・コルチヒンの静脈投与は偽痛風による炎症を減らしてくれる。ただしアメリカではコルチヒンの静脈投与という方法自体がなくなりつつある。

偽痛風の予防
偽痛風の再発予防にはコルチヒンの内服(0.6mgを一日2回)を推奨している報告がある。ということで、筆者らは2回以上の偽痛風発作がある場合にはコルチヒンを予防的に内服することをおススメしている。
0.6mgを一日2回内服すると高齢者では胃部不快感や下痢を起こす。そのような場合には1日1回に減量したりするとよい。ただし1日1回に減量したときのエビデンスはない。

慢性、進行性のCPPDの治療
急性期の偽痛風の治療が成功してもCPPDの慢性化、進行を止められるわけではないし、現在沈着しているカルシウムを除去してくれるわけでもない。現在細胞膜輸送でのアニオンギャップを阻害するプロベネシドを用いて細胞外でのピロリン酸の同化を遅らせようという興味深い研究があるが、現在進行中である。

ヘモクロマトーシス、上皮小体機能亢進症、甲状腺機能低下症などのような代謝性疾患に伴って起こるカルシウムの沈着は原疾患の治療を行うことでは石灰化をとめられない。または新しい石灰化すら生じてくる。しかし、いくつかの例では石灰化が自発的に再溶解したとする事実を報告しているレポートもある。

・低マグネシウム血症に対してマグネシウムの投与を行ったところ半月板の石灰化が消失した。
・マグネシウム製剤を内服させたら全身症状は改善したがレントゲン写真上の変化は認められなかった。

関節の変性があってCPPDである場合には変形性関節症に準じて治療する。

1 件のコメント:

  1. 《論評》
    慢性のCPPDに対してよくモービックのようなNSAIDSを漫然と投与していたが、コルヒチンを試してみるのはひとつかな。と思った。偽痛風に対してはエビデンスレベルの高い報告が何一つないので、上手に条件をそろえて研究してみると面白いかとも感じた。

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