背景
THAにおけるDirect Anterior Approach(DAA)とPosterior Approach(PA)には、それぞれ長所と短所があることが知られている。DAAとPAのTHAの比較は、術後早期に広く検討されている。しかし、最低でも5年間の追跡調査でこれらのアプローチを比較した無作為化試験はほとんどない。そうすることで、中期的な結果や合併症の違いを明らかにすることができる。
質問/目的 我々は、THAにおけるDAAとPAを、(1)患者報告アウトカムスコア、(2)EQ-5Dと10m歩行テスト結果で評価したQOLと機能的アウトカム、(3)X線写真分析、(4)最低5年後の生存率と手術合併症の観点から比較する無作為化試験を行った。 方法 2人の股関節専門外科医が、2つの病院で同じTHAコンポーネントを用いてDAAとPAの両方のTHAを行った。選択的THA手術の待機リストに載っていた112人の患者が、この研究に参加した。34名の患者は本研究の対象基準を満たさなかったため除外され、3名の患者は研究への参加を拒否した。参加資格のある残りの75名の患者をDAA群とPA群に無作為に割り付けた。37名の患者が当初DAA THAを受けるように無作為に割り付けられたが、2名がDAA THAを受けずに除外されたため、48%(73名中35名)の患者がDAA THAを受け、52%(73名中38名)の患者がPA THAに割り付けられ、PA THAを受けた。最低5年間の追跡調査の結果,DAA THAを受けた患者のうち3%(35人中1人)が追跡調査不能となり,PA THAを受けた患者では追跡調査不能となった者はいなかった。Per-protocol解析を採用した結果、さらに多くの患者が解析から除外された。73例のうち、1年後の解析対象者は99%(72例、DAA:35、PA:37)、2年後の解析対象者は95%(69例、DAA:34、PA:35)、5年後の解析対象者は72%(52例、DAA:23、PA:29)であった。主要評価項目は、Oxford Hip Score(OHS)およびWOMACスコアであった。副次評価項目は、EQ-5DスコアおよびEQ-5D VASスコア、10mウォークテストの結果、X線写真によるゆるみの証拠(大腿骨:インプラントと骨の境界面に2mm以上のすきま、2mm以上の沈み込み、寛骨臼:移動または傾斜の変化)、全原因による再置換からの5年間の生存率分析、および外科的合併症であった。試験の検出力は、WOMACスコアの10ポイントの差(臨床的に重要な最小差(MCID)に相当)とした。
結果
5年後の追跡調査において、DAA群とPA群の間で、主要アウトカム(OHSおよびWOMACスコア)および副次的アウトカム(EQ-5Dスコア、EQ-5D VASスコア、10m歩行試験結果)に差はなかった。5年後のOHSの中央値(範囲)は、DAA群で46(16~48)、PA群で47(18~48)であり(p=0.93)、WOMACスコアの中央値は、DAA群で6(0~81)、PA群で7(0~59)であった(p=0.96)。EQ-5Dスコアの中央値は,DAA群で1(0.1~1),PA群で1(0.5~1)であった(p=0.45)。また,EQ-5D VASスコアの中央値は,DAA群で85(60~100),PA群で95(70~100)であった(p=0.29)。X線写真でコンポーネントが緩んだ症例はなかった。5年後のコンポーネントの生存率は、両アプローチ間で差はなかった(DAA:97%[95%CI 85%~100%]、PA:97%[95%CI 87%~100%])。DAA群では23人中8人が外側大腿皮神経分布の感覚低下が認められた。
結論
DAAとPAはどちらもプライマリーTHAを行う上で有効なアプローチである。それぞれのアプローチには関連するリスクと合併症がある。THAの選択は、個々の患者の要因、外科医の経験、および共有の意思決定に基づくべきである。初期の登録データによると、DAAとPAのTHAは同等であるが、両アプローチの生存率が同等であると安全に結論づけるには、より多くの患者を対象とした長期的なデータが必要である
<論評>
まあ、そうですよね。
どんなアプローチにも得意不得意、固有の合併症がありますから。外科医が何をどのように学んで適切に手術するか。ということがもっとも大事だと思います。
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