背景
現在、国際的なガイドラインでは、早期急性期(術後)と後期急性期(血行性)の両関節周囲感染症(PJI)に対して、外科的脱血、抗生物質、インプラント保持(DAIR)が推奨されている。しかし、感染症の病態が異なるため、異なる治療戦略が必要となる場合がある。
目的
(1) 早期急性期PJIと比較して、後期急性期PJIはDAIRの失敗リスクが高いか?(2) 微生物別に層別化した場合、晩期急性期のPJIでは黄色ブドウ球菌感染症との関連性が高いのか?(3) S. aureus感染症患者を解析した場合,DAIRの失敗と独立して関連する因子は何か?
方法
この多施設観察研究では,DAIRによる治療を受けた早期急性期および後期急性期の急性期病変をレトロスペクティブに評価し,治療施設,診断年,感染原因微生物に応じてマッチさせた.複数の照合が可能な場合は、診断年が後期急性期に最も近いと診断された早期急性期病変を選択した。合計 132 組が含まれた。治療の成功は、フォローアップ期間中に抗生物質抑制療法を必要とせずにインプラントを保持したことと定義した。
結果
晩期急性期PJIは、早期急性期PJI(76%[132例中100例])に比べて治療成功率が低かった(46%[132例中60例])が、OR 3.9[95%CI 2.3~6.6];p<0.001であった。 001)であったが、後期急性期PJIの治療成功率が低いのは、Staphylococcus spp(S. aureus:34%対75%;p<0.001;coagulase-negative staphylocococcci:46%対88%;p=0.013、それぞれ)が原因である場合にのみ観察された。多変量解析では、S. aureusが原因の場合、後期急性PJIはDAIRの不成功と関連する唯一の独立因子であった(OR 4.52 [95% CI 1.79~11.41]; p < 0.001)。
結論
DAIRは早期急性期PJIの治療には成功しているように思われるが、Staphylococcus sppが原因の場合には後期急性期PJIへの使用は再考されるべきである。 我々の結果は、手術前に原因微生物を分離することの重要性を提唱している。
<論評>
抗生剤の発達により、感染性人工関節はDAIR(交換できそうなインプラントの交換をしてデブリと洗浄を行う)とこで治療されることが増えてきました。その限界についての報告。
やはり早期感染症よりも晩期発生の感染症のほうが良くないですね。ブドウ球菌はやはり油断ができません。
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