抄録
背景
THAをうけた若年患者の中で活動量とTHAの長期予後についての論文はほとんどない。活動量を聴取しておくことはTHAの機種選択、手術方法の決定に有用かもしれない。
目的
本研究の目的はTHAを受けた若年の患者を対象として10年間経過した所で機能テスト、患者立脚型成績評価を用いた。ポリエチレンのウェア量を計測し、患者の活動性が合併症や患者の臨床的評価と関連しているかどうかを測定することである。
方法
50歳以下の58股関節を対象に10年間経過観察した。万歩計を21日間装着、6分間歩行テストを行った。10年間連続でレントゲン写真を撮像しポリエチレンのウエア量を計測した。平均年令は39歳、平均BMIは29であった。
結果
歩行量は年間のポリエチレンの摩耗量と相関していた。6分間歩行テスト、UCLAスコア、Tegnerスコアは摩耗量と相関しなかった。6分間歩行テストで335メートル平均歩いていた。これは156万歩一年間に歩いているのに匹敵する。UCLAの平均は6点、Tegnerスコアの平均は3点であった。平均摩耗量は0.266ミリ/年であり、その体積は82.6立方ミリメートルであった。合併症の有無は活動量に関連したものの有意な差は得られなかった。
結論
活動量の測定では万歩計だけがポリエチレン量の摩耗と相関した。万歩計による活動量の測定はTHAの長期の摩耗を測定するのに有用な方法であると推定された。
背景
Charnleyは45歳から50歳までの患者さんに対して手術を考慮する場合それ自身が朝鮮であるということを知っておかねばならない。なぜならば20年以上トラブルなく制限のない生活が送れるようにするためにはあらゆる分野での進歩が必要であるからだと述べている。今までに50歳以下の若年者を対象にして長期成績を報告したものはほとんどない。これらの報告はレントゲン写真、インプラントの生存率などの臨床成績にフォーカスを当てており、患者の活動量までには目を向けていなかった。しかしながら患者の活動量はTHAの長期成績と関連があるとする報告が幾つかある。
本研究の目的は若年者を対象にTHAを受けた患者を対象として10年後の身体活動量をStepActivityMonitor(SAMs)、6分間歩行テスト、UCLAスコア、TegnerLynsholmスコアをそれぞれ測定し、これらの身体活動量を測定するテストのどれがポリエチレンのウエアと関連しているかを測定した。今回の研究では1,どの測定方法が最もポリエチレンウエアと関連しているのか、2,患者立脚型評価はポリエチレンのウエアと関連するか、3,内科的合併症の数は患者の活動性や患者のQOLに影響するかを調べた
対象
対象は50例58関節。50歳以下でTHAを受け最低10年以上のフォローアップが可能であった症例。21日間のSAMsの装着、6分間歩行テスト、SF36、WOMAC、UCLA、そしてTegnarLynsholmスコアを聴取した。
当初73患者、82関節を対象としたものの、6分間歩行テスト、SAMsの装着を拒否したりといった理由で23患者が除外となっている。また数人の患者がクロスリンクポリエチレンを用いたせいで評価不能となったため除外としている。手術は1994年から1999年までの間に行われた。すべて同一機種のセメントレスステムを用いた。DepuyのProdigyを大腿骨コンポーネントとして用い、ヘッドは22ミリまたは26ミリ。27関節でZimmerの臼蓋コンポーネントを、31関節でDuralocを用いた。Zimmerの27関節が空気中でガンマ線処理したもので、Duralocがガスないでガンマ線処理されたコンポーネントとなる。
患者の平均年齢は39歳。36関節が男性、14関節が女性。BMIは29.すべての手術は同一術野により後方アプローチによって行われた。リハビリは6週間の杖歩行ののち疼痛内全荷重を許可している。患者は2年毎にフォローされ、変わったことがあれば適宜フォローを行った。術後10年の時点で電話にてSF36, WOMAC、HHS、UCLA、TegnerLynsolmスコアを聴取した。
UCLAスコアは人工関節置換術の患者を対象とした10点満点でスポーツなどのへの参加を評価するシステムで、Tegnarスコアは膝関節の靭帯再建後などにスポーツ、仕事への復帰を測定する評価方法である。時々人工関節置換術の患者でも用いられる。
術前平均のHHSは48.1点。術後82.3点に改善。SF36は身体が26.1点から49.5点に、精神面のスコアが46.2点から54.2点に改善した。平均のWOMACスコアは疼痛41点、こわばり40.3点、機能43.4点であったものがそれぞれ術後には86.8点、72.3点、78.1点に改善を見せた。UCLAの平均スコアは6点。制限なく家事が可能というレベルであった。Tegnerスコアは6点中3点であった。男女間に差はなかった。
最低10年間のフォローを行い、二人の検者でレントゲン写真の評価を行った。大腿骨側のコンポーネントではすべてboneingrowthが認められた。
また50人の患者を対象としてSAMsによる日常活動量の評価を行った。SAMsは2ヶ月間の歩行について記録が可能である。。歩行前に身長、体重をプログラムしておくことで他の万歩計よりも正確に測定できることが利点である。朝から晩までの21日間記録。これを元に1年間の歩行数を計算した。加えて6分間歩行テストを行った。6分間普通のペースで歩くことでどれくらいの距離が歩けるかを測定するものである。簡易、安価に行える方法として有用であると報告されている。これは健康成人を対象として行った以前の報告と比較を行った。
また合併症の有無と活動量について調査を行った。17人の患者が合併症を有さず、10人の患者が1つの合併症を、23人の患者が2つ以上の合併症を有した。11人の患者が他の筋骨格系の異常をきたしており、39例が異常がなかった。レントゲン写真の評価には以前に報告されたKaboらの方法を用いた。統計処理にはSASを用いた。
結果
SAMsによる歩行数はポリエチレンウエアと相関した。6分間歩行の結果は摩耗量と相関しなかった。平均歩行数年間156万歩。6分間歩行は335m。平均ポリエチレン摩耗量は0.266ミリであった。歩行数と摩耗量は相関した。22ミリ骨頭と26ミリ骨頭の間では摩耗量に差がなかった。患者が申告する活動量と摩耗量との間に相関はなかった。何かしらの合併症を抱えているとHHSは低かった。合併症を持っているとSAMs、Tegnarスコアは有意に低かった。
考察
50歳以下のTHAの患者を対象とした10年間の経過観察においてSAMsによる歩行数が最もよくポリエチレンの摩耗量と相関することがわかった。これらはいずれもコンベンショナルなポリエチレンによるもので、現在用いられているハイクロスポリエチレンでは摩耗量が0.061ミリとなるため評価は困難である。コンベンショナルなポリエチレン群を対象とすることで評価は容易であった。
今まで摩耗量は時間ではなく使用によって決まると言われていた。Schmalzriedの報告によれば使用量と摩耗が関連していたと報告している。GoldSmithらは活動性と摩耗量には関連がなかったと報告している。Sechriestらは摩耗量は骨頭の大きさとUCLAスコアと関連すると報告した。歩行量は関係ないとした。SechriestらはUCLAが摩耗量の測定に有用であると報告している。
本研究では6分間歩行、SF36,などを測定したものいずれも摩耗量とは関連がなかった。
本研究はTHAの患者に対して6分間歩行を行った最も大きな研究の一つである。6分間歩行は簡易に行うことのできる検査である。また6分間歩行は日々の生活を反映すると言われている。いままで6分間歩行は虚弱高齢者を対象として行われていた。
本研究の対象者は健常者よりも6分間の歩行能力は低かった。合併症の数が増えると6分間歩行能力は低下した。筋骨格系の合併症は6分間歩行能力を低下させることがわかった。
内科的合併症の数はすべての評価項目に影響を与えてた。
本研究の最大のLimitationは73人中23人の患者が除外されていることである。また6分間歩行の結果、身体活動量アンケートも最後のフォロー時にしか測定していない。合併症についても高血圧と運動が禁止されるような合併症とは違うが全て一緒にしている。また交絡の可能性は否定出来ない。またノンクロスリンクのポリエチレンは今や使用されていないため現在の患者には反映できない。
まとめとしてSAMsがポリエチレンの摩耗量と相関していた。合併症があると活動性が下がることがわかった。
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