Abstract
背景:
臼蓋関節唇は、sealing機能とある程度の股関節安定性に寄与している。
短期成績に限っては、関節唇縫合が切除群と比較して優れていることは示唆されている。
目的:
FAIに対して鏡視下におこなった関節唇再固定と切除群の患者を前向きに比較することで
ある。
研究デザイン:
コホート研究;エビデンスレベル3
方法:
我々は、関節唇縫合術が発展する前に行っていた関節唇切除術を行った患者の成績を報
告した。我々の現在の関節鏡技術で修復可能であると考えられる関節唇断裂を有する患
者を、関節唇縫合を受けた患者コホートと比較した。よりよく2つの群をマッチさせる
ために、関節唇のpincerまたはcombinedタイプFAIの患者だけ対象とした。最初の44股
関節は、関節唇を部分的に切除/デブリした(group1);次の50股関節で、関節唇を縫合した
(group2)。結果は、術前と術後のmHHS、Short Form 12(SF-12)とVASで判断した。
術前および術後のレントゲンは、骨切除を評価するために行った。
結果:
平均年齢は、グループ1は32歳、グループ2は28歳であった。フォロー期間は平均42ヶ月
(24から72ヶ月)。
各術前平均スコアは、群間で有意差がなかった。平均3.5年の追跡調査で、主観的な結果
は、術前スコアと比較して両群で有意に改善した(P<.01)。HHS(P = .001)、SF-
12(P = .041)とVASペインスコア(P = .004)の全ては、ごく最近の追跡調査で切除群
と比較して再固定群で有意によりよい結果だった。
平均3.5年追跡調査で、良好ないし優れた結果は、部分的切除群の68%と再固定群の92%に
みられた(P = .004)。
結論:
他の因子がこれらの結果に影響する可能性があったにもかかわらず、部分的な関節唇切除
の初期のコホートと比較して関節唇再固定群は平均3.5年の追跡調査で良好ないし優れた結
果の割合が高く、より良好なHHS、SF-12とVASペインスケールを示した。
最近の論文では、股関節関節唇が股関節温存処置と股関節の完全性を維持することの重要
な役割を果たす可能性があることを示唆している。Pincerタイプインピンジメントの治療
における関節鏡の部分的な関節唇切除と再固定の患者を評価した著者の先行研究や他の研
究では関節唇の温存/再固定で、より良好な結果を報告している。
本研究の目的は、最小2年のフォローでの関節唇縫合術と部分的な切除/デブリのupdateを
報告することである。
MATERIALS AND METHODS
pincer-typeFAIの鏡視下手術は、2004年11月から著者らによって行っている。
当初は、リム切除に引き続き部分的に関節唇切除/デブリを行っていた。
2006年6月から、acetabular rim overcoverageを切除するために関節唇のtakedownを行い、関節
唇の再固定を行うようになった。
acetabular rim resectionの適応は、画像診断とpincer-type impingementと矛盾しない手術時所見
の組合せとした。
Acetabular retroversionはCOS、PWS陽性、 LCEが25度以上で陽性とした。
Focal anterior overcoverage はCOS、PWS陰性、LCEが25度以上で陽性とした。
Coxa profundaはLCEが35度以上かつtear dropがilioischial lineより内側にある場合とした。
Protrusio acetabuliは大腿骨骨頭がilioischial lineの内側にあれば陽性とした。
camtypeFAIはアルファ角が55以上で陽性とした。
関節唇縫合の適応は、pincerまたはcombinedタイプ、外傷、再固定するだけの十分な
量のintactな関節唇を有することである。再固定のための理想的な関節唇は、有意な内部
実質変性、石灰化、骨化と複合体退行性の断裂であり、典型的な前上方に位置している
ことである。
この方法の結果を比較するために、我々は、関節唇の再固定の現在の基準を満たした関節
唇のデブリで治療された症例を特定するために再固定/修復技術を使用する前に治療された
患者の手術報告、手術時のイメージと術前画像診断研究をレトロに見直した。
camFAIのみの治療において関節唇損傷を治療するとき、異なる技術が使用される可能性が
あるため、pincer-typeまたはcombined type FAIによる関節唇の病変だけが、関節唇の処置技術
に関してよりマッチングするためにに含まれた。
デブリ群のinclusion criteriaは、pincerまたはcombined type impingementにおけるレントゲンや術中所
見や引き続き行った関節唇の再固定や修復の使用前にFAIの鏡視下デブリや処置が含まれている。追加的
なinclusion criteriaとしては、レントゲン上での変性所見のないものや最小2年のフォロ
ーの患者が含まれた。再固定群のinclusion criteriaは、pincer-type またはcombined type FAIの
レントゲン所見や術中所見がある関節唇再固定症例とした。
調査期間内(2004.11-2007.9)では鏡視下処置を行ったFAI症例176股関節(166例)
での変性変化を認めた症例はなかった。我々の以前の報告と比べると、本研究において
は再固定群の調査期間を2ヶ月延長した。この結果、再固定群にて15例追加し、inclusion
criteriaを満たしたのは全100例となった。
われわれの施設にて関節唇縫合の発展する前に73例75股の患者がFAIの関節鏡視下手術
を受けた。部分的な切除、デブリを受けた44例46股はinclusion criteriaに含まれた。2例
2股の患者はフォローを外れ、最小2年のフォローを受けたのは42例44股であった。男性
27例、女性17例で平均年齢32歳(16-57歳)であった。平均フォロー期間は44ヶ月(24-
72ヶ月)であった。術前診断はpincerが10股、combinedとcamが34股であった。術前レン
トゲン画像でtonnis grade0から1が42股、2が2股であった。
再固定するようになってからは、調査期間中ではFAIの鏡視下治療を95例97股に対して
行った。52例54股が関節唇再固定を受け、inlusion criteriaを満たした。4例4股は追跡不
能であった。48例50股が最小2年のフォローを受け、inclusionに含まれた。男性29例、女
性患者21例の平均年齢は28歳(16-52歳)であった。平均追跡期間は、41ヵ月(範囲、24-
56ヵ月)であった。術前診断は8股pincerで、42股がcombinedであった。術前レントゲン
は、48股のTonnisグレードの0~1変化と2股のグレード2変化を示した。
手術はFig1と2を参照。
21歳の大学生のホッケー選手。左股関節のAP像で、combinedタイプ形態を示している。
A)術前APレントゲンでdashed curved lineはacetabular retroversionを示している。white
arrowがcamタイプのFAIを示している。 B)術後APレントゲンでdashed curved lineはanteverted
Acetabulumで鏡視下リム切除を示し、white arrowがhead-neck offsetの改善を示している。 C)術前側
面レントゲンで、white arrowがcam-type FAIを示し、D)術後側面レントゲンは鏡視下大腿骨切除形成術後
のhead-neck offsetの改善を示している。
Fig2では
(A) PincerタイプFAIの鏡視下リム切除(矢印)後の右股関節の術中画像。
(B) 同様のpincerに対して関節唇のtake down後にリム切除して再固定(矢印)した術中所見。
結果は、クリニック診察時、または、メールで集められた。
筆頭著者の診療が3次医療のため、一部の患者は、客観的な追跡調査を受けることができ
なかった。
ごく最近の結果は、デブリ群の29例の患者と再固定群の29例の患者の結果がクリニック訪
問で得られた。ごく最近の結果は、メールでデブリ群の13例の患者と再固定群の19例の患
者で得た。senior authorは、術前および術後2週のAP骨盤とクロステーブル側面レントゲン
上でcamタイプFAIを有する患者のすべてのアルファ角を測定した。
結果
群間の統計的に有意な差が、性(P = .83)、年齢(P = .43)、FAI分類(P = .44)または
Tonnisグレード(P = .998)にて認められなかった。
Table1
Degree (Outerbridge Grade) of Chondromalacia Found Intraoperatively
Outerbridge Gradeはデブリ群と再固定群で有意差は認めなかった。だいたい大腿骨頭は問題なくて、臼
蓋のダメージが多い結果となっている。
Table2
Concomitant Procedures Performed at the Time of Arthroscopic Femoroacetabular Impingement
Correction (Hips)
FAIに対して付随的に鏡視下に行った処置
両群間に有意差はない。現在重要視されている円靭帯のデブリが結構行われている。Microfractureは臼蓋
に行ったかどうかは記載がない。
Fig3
術前のHHSは両群間に有意差なし。スコアは手術後に1年に再固定群で有意により改善し、3.5年の平均追
跡期間で、本研究のそれ以降は全体を通じて維持されていた。mHHSは平均3.5年の追跡期間でデブ
リ群84.9と比較して再固定群94.3で有意に良好であった。
Fig4
術前のSF12スコアは両群間に有意差はなかった。SF-12スコアはデブリ群(82.2)と比較して再
固定群(89.8)で有意により良好だった(P = .041)
Fig5
VASは両群間術前に有意差はなかった。術後3.5年のフォロー時ではでデブリ群(1.7mm)と比較し
て再固定群(0.7mm)で有意により低かった。(P = .004)
Table3
部分的な関節唇切除/デブリ群と再固定群を比較した術前術後結果
再固定群は改善点で、HHS、SF12、VASにおいて有意にデブリ群より改善していた。
ごく最近の追跡調査で、良好ないし優れた結果(HHS .80以上)は、デブリ群の68.2%と
再固定群の92%であった。(P 〈0.004)
FailureをHHS70より小さいまたはopen surgical dislocationやTHAなどのopen surgical
approachへのconversionと定義した。Failure rateは再固定群の8.0%(4股関節)と比較
してデブリ群の9.1%(4股関節)であった。(P = .998)
統計的に有意な差が、アルファ角の減少に関してはなかった。
合併症は、3例の患者で手術後に異所骨化をデブリ群に認めた。
これらの患者の2例は、症候的な異所骨を取り出すために、rivision股関節鏡と術後照射を
その後行った。この合併症を認めた後に、以降の患者は、手術後に3週の間ナプロキセン/
ナイキサン(500mgのBID)で治療した。修復/再固定群の患者は、手術後に異所骨化を生
じなかった。デブリ群の2例の他の患者は、不十分な最初の減圧法のためにrevision femoral
osteochondroplastyを受けた。修復群において、1例の関節鏡検査時の2.5cmの全層寛骨臼
chondral欠損患者は、1年の追跡調査でTHAを受けた。修復群のもう一人の患者は、2.5年
の追跡調査で症候性後方cam病変のために、open surgical dislocationでrevision hip surgeryをそ
の後受けた。修復群のこれらの患者の両方とも、failureと考えられた。
考察
Biomechanicalおよび有限要素モデル分析では、寛骨臼関節唇が股関節安定性と股関節適
合性に寄与する可能性があり、sealing機能を通して滑液を分布させるために機能する可
能性があることを示している。以前読んだ論文ですが、ヒツジ・モデルにおいて、外科
的に誘発された関節唇の断裂は1本のスーちゃーアンカーで修復された、そして、すべ
ての標本がカプセルおよび/またはカプセルの下にある寛骨臼骨に血管結合組織瘢痕組
織を経て治癒するがわかった。
最近の研究では、FAIのarthroscopic managementを受けた最小限の2年(平均、2.44年)
の追跡調査を有する96例の患者で、関節唇のデブリに対して関節唇の修復を評価した。
mHHSは、デブリ群と比較して修復群で有意により良好だったとの報告がある。
関節鏡視下FAIcorrectionの結果を2年以上の追跡調査で調べているもう一つの研究では、
関節唇の修復(デブリよりもむしろ)がより高いHHSの予測因子であることが明らかにな
ったと報告している。
本研究は、関節鏡視下の関節唇のデブリと関節唇の再固定の結果を比較した最初の研
究であったコホート上で、更なる追跡調査を意味する。他の研究は、同じ調査期間のた
め縫合群がたいしたことない損傷に対して行っているかもしれないと筆者らは述べてい
る。
画像評価では3次元的評価をしていないことも問題であると述べている。
本研究の関節唇のデブリの技術が部分的な関節唇の切除から成ったことは注意すべき
である。近年、pincerインピンジの治療における関節唇のデブリ技術は、進化している
ため同じような結果となったどうかわからないと述べている。
まとめ 他の因子がこれらの結果に影響する可能性があったにもかかわらず、関節唇
のデブリ群の初期コホートと比較して関節唇の再固定群では平均3.5年の追跡調査で良好
ないし優れた結果の割合とより良好なHHS、SF-12とVASの結果を得た。
0 件のコメント:
コメントを投稿