抄録
長期経過したTHAの脱臼には器械的インピンジメント、関節包のゆるみによる生物学的メカニズムに起因すると考えられているがはっきりしない。
セラミックオンセラミックTHAは摩耗、オステオライシスが少ないことで長期の脱臼リスクを減らす可能性がある
本研究の目的は第一にセラミックオンセラミックとセラミックオンポリエチレンの累積脱臼率を比較すること。第二に患者側の要因(年齢、性別、疾患)が脱臼に影響するか、第三に機械的要因(コンポーネントの設置位置、クリープ現象、摩耗による骨頭中心の変化)。第四にセラミックオンセラミックとセラミックオンポリエチレン間生物学的要因(関節包の厚さ、手術時の関節液の除去量、組織学的検査)について調査することである。
方法 169例252関節。セメントインプラント両側THA(セラミックオンセラミック反対側はセラミックオンポリエチレン)
27年間にわたる累積脱臼率(初期脱臼率、反復脱臼)について集計した。カプのポジション、クリープ量、摩耗量、関節包の厚さを再置換時に測定した。
結果
セラミックオンポリエチレンとセラミックオンセラミックの間では脱臼率に差を認めた。(セラミックオンポリエチレン31例、セラミックオンセラミック4例)。長期経過の脱臼率はセラミックオンセラミックは1例も無く、セラミックオンポリエチレンは28例であった。大腿骨頭壊死、年齢、性別が脱臼と関連していた。コンポーネントの丸ポジションは2種類のベアリングの間で差を認めなかった。関節包の厚さはセラミックオンポリエチレンで薄く、セラミックオンセラミックの方が厚かった。
結論
セラミックオンセラミックはセラミックオンポリエチレンに比較し累積脱臼率を低くした。
結果
表1 セラミックオンセラミックとセラミックオンポリエチレンの比較
セラミックオンポリエチレン群では1ヶ月で1%、1年で2%であったが30年では13%まで上昇していた。セラミックオンセラミック群が30年経過で2%であることと比較すると有意に高い値であった。反復性の脱臼は有意にセラミックオンポリエチレンで多かった。累積発生率はセラミックオンセラミックが3.2%であるのに対してセラミックオンポリエチレン群では25%と有意に高かった。セラミックオンポリエチレンの5例はコンストレインカップで再置換された。セラミックオンセラミックは1例のみが反復性脱臼となったが、脱臼を原因とした再置換例はなかった。早期の脱臼例は前方、後方両方に認められたが後期の脱臼は後方にしか認めなかった。
表2 患者側の要因を示す。アルコール性で有ることは脱臼の危険因子であった。高齢患者ででは脳血管病変、神経疾患があることが特に女性ではセラミックオンポリエチレンでは高いリスクファクターとなり得た。
表3 カップの設置については脱臼に影響を与えなかった。カップの外方開角、前方開角はセラミックオンセラミックとセラミックオンポリエチレンの2群で違いを認めなかった。脱臼した群としていない群の間でのクリープ量は差がなかった。
表4 再置換が必要となった例での関節包の厚さ、関節液、組織学的所見の比較。セラミックオンポリエチレンとセラミックオンセラミックについて。
関節包はセラミックオンセラミックが厚かった。関節液の量はセラミックオンポリエチレンの方が量が多かった。デブリスと巨細胞はセラミックオンポリエチレンに認めた。脱臼がない例ではセラミックのデブリスをセラミックオンセラミックで認めた。
<論評>
長期にわたる価値ある研究だと思います。
30年前のポリエチレンですので現在のクロスリンクとは大きく異なりますが、セラミック(アルミナ)の優秀性を示した論文です。
セラミックは破損、スクイーキングなどの問題さえクリアできればよい摺動面だと思います。
セラミックは破損、スクイーキングなどの問題さえクリアできればよい摺動面だと思います。
自分がメインのオペレーターになったときに何を使うかは悩むなあ。