2012年3月25日日曜日

20120325 JBJS(Br) The early management of pts w/ multiple injuries その2

Permissive hypotension

救命の際に、わざと低血圧にして救命しようという方法がある。これは、脳、心臓、腎臓への灌流を保つということ、晶質液による血液の過剰な希釈を避けるということ、最初にできた止血塊を二次出血によって壊さないようにすること、という意味がある。この方法は体幹への穿通創には有用であるとされていた。最近では鈍的外傷、特に重症骨盤骨折においても有効ではないかということが言われている。この手法のキモはまず外科的に早期に出血のコントロールがなされることである。今まではここから普通の血圧まで戻していたが、最近では生食250mlまでとしている。晶質液は病院に来るまでの投与として、2リットル以上は投与しないようにしている。もしそれ以上の投与が必要となった場合には輸血を考慮し、外科的に止血する方法を探る。目標とする血圧は撓骨動脈が触れる程度。収縮期血圧を70−80mmHgにて保つ。もし、頭部外傷が疑われるような場合であれば脳への血液の灌流を保つために90mmHgまで上げるようにする。投与液は血液、もしくは血液製剤が好ましい。外科的手術が最も重要である。外傷チームのリーダーと一般外科医によって手術法を決定する。搬送されてから20分以内には手術室へ搬入できるような体制にしておきたい。

大量輸血のプロトコール
中東での戦争の経験から、輸血に関してのいくつかの新しい知見が得られている。早期からのFFPと血小板の投与が大量輸血をするような患者では生存率を改善し、また必要とする総輸血量をへらすということがわかった。特に大きな違いが出たのは搬入後6時間以内の死亡率であった。早期のFFP投与が重要であることが示唆されている。この大量輸血プロトコールの重要な点は血液の希釈、低体温、凝固異常を避けるために”全血”を投与することを目的としていることである。この大量輸血プロトコールは輸血を管理する技師に連絡をとるだけで開始することが可能となっている。このシステムによって輸血までの時間が大幅に短縮された。
イギリスではさまざまな輸血のプロトコールが用いられている。最も適した輸血の割合について検討が重ねられている。現在筆者の施設では赤血球、FFP、血小板を2:1:1の割合で投与している。これらの管理も技師によって行われている。大量輸血が行われた患者では低カルシウム血症となっていることがあるので適宜測定が必要である。
多発骨折、重症骨盤骨折を受傷している患者においてもこのプロトコールが適切か検討されなければならない。なぜならばこれらの患者ではひどいショックとなっていなくても凝固異常のリスクが高いからである。小児についてはまた別のプロトコールが検討されなければならない。
recombinant factorⅦaが大量出血の際に使われるようになってきている。公式に認められた方法ではないが医師がその個人の責任で使用しているのが現状である。現在の研究では出血による死亡率の減少を認めていが、時折大きな血栓症のリスクをきたすことがあると言われている。まだルーチンで使用することについての同意が得られている状況ではない。
輸血は迅速に加温されなければならない。FFP、血小板は可能な限り早く投与されなければならない。凝固の結果を待つ必要はない。なぜならば大量出血直後ではAPTT,INRとも凝固異常が始まっていても正常値を示すことがわかっているからだ。しかしながら、凝固の血液検査が無駄という訳ではなく、血液が投与されるたびに測定しておいたほうが良い。
トロンボエラストグラフィが最近良く使われるようになってきている。すぐ測定できて、早期での凝固異常の発見に有用であると言われている。

トラネキサム酸(トランサミン)
トランサミンは抗線溶剤として古くから心臓外科の世界で使われてきた。また脊椎外科、関節外科の世界でも術中の出血を減らすということで投与されている。20211例を対象とした外傷性ショックの患者にトランサミンを無作為に投与したCRASH-2という研究がある。1gずつ10分後、8時間後に投与。受傷後1時間以内の早期での死亡率はプラセボ群で7.7%、トランサミン投与群で5.3%であった。相対危険率は0.68.
受傷後1-3時間での出血による死亡率もプラセボ群で6.1%、トランサミン投与群で4.8%と有意に減少させた。この結果は鈍的外傷よりも穿通創でより大きく効果があり、また受傷後3時間以内で投与された方がより有効であるということが言われている。また重大な合併症もなく経過した。以上からトランサミンの投与は重症外傷の患者が来た時には真っ先に考えてもよいオプションであると言える。

<論評>
トランサミン無敵ですね!笑
こんな古い薬なのに、それなりの効果があると言うところでびっくりです。

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