記念すべき200post目です。
なんだかんだ言っても外傷が好きな自分がおりますので、外傷に関連した最新のJBJS(br)を斜め読みしてみます。
抄録
この10年間で重症外傷に対する救命、早期の治療については大きな進歩があった。ドイツ、オーストラリア、アメリカのような国では重症外傷を受け入れるための救急サービスの再編成が行われ、救命センターでは日々集中した治療と研究が行われている。
紛争が続く中東では重症外傷に対する専門的な知見が大量に積み重ねられている。先の戦争では生命の危機にあったような兵士が今では生きていられるようになっている。そしてこの戦場での経験が一般市民に対しての治療にも反映されるようになってきている。
本研究の目的は重症多発外傷に対してのevidenceに基づいたガイドラインを一般整形外科医に向けて提供することである。ただし、このエビデンスはある医療圏の中で十分に経験を積んでおり、また人的資源が十分な所でのエビデンスであり、自分に与えられている医療資源を十分に勘案してエビデンスは用いてほしい。
・外傷チーム
多発外傷を受け入れる病院はいくつかの多発外傷チームを持っておく必要がある。このチームの人員は救命、外傷の評価を速やかに行う能力をもっている必要がある。このような外傷チームを作っておくと生命に危機が及んでいるような患者に対して速やかに治療を開始し、その救命率を上げることができることが知られている。
チームの中でよいリーダーシップを取ることも必要である。そしてそのリーダーはいくつかのサブスペシャリティを持っている必要がある。もし適切に訓練されているのであれば、アメリカやドイツでは一般外科医として訓練された外傷外科医がその役割を担う。イギリスやオーストラリアでは麻酔科医、一般外科医、整形外科医を含んだチームによって方針を決定する。またこの中には放射線医、脳神経外科医をも含む場合がある。経験のあるナース、麻酔補助士もまた重要な役割を担う。このようなメンバーによって多様な受傷をしている患者に対して適切に専門医にコンサルとして協力して治療に当たる。
外傷チームは患者の到着前には受け入れ態勢を整えておく必要がある。この受け入れ態勢の整え方はセンターによって違いはあるが、受傷起点、身体所見、解剖学的要素からどのようなチームを編成するかを決める。いくつかのセンターでは二段階に準備するシステムとなっており、”外傷チーム配置につけ”と”外傷チーム準備を開始せよ”と段階に分けていることもある。すべてのメンバーが自分の役割を前もって決定しておくべきである。整形外科医は重症骨盤外傷、セカンダリーサーベイにおいて重要な役割を担う。四肢外傷、脊椎外傷についても担当となる。整形外科医といえども、気道確保、胸腔ドレーンの挿入くらいはやれるようにしておくべきであろう。
Primary Survey
戦場以外の場所で吹き出すような大出血をみることは稀ではあるが、ないわけではない。戦場では気道確保と同様の重要度で止血が行われる。四肢においては直接圧迫法をまず試みる。もしあればターニケットを装着する。ターニケットは装着した時間を記録する。油性マジックで患肢に記載しておく。できるだけ早く手術室で止血を行わなければならない。手術室に待機しているチームは患者が運ばれてきたらすぐ手術できるように準備して置かなければならない。
気道確保、呼吸についてはAdvaned trauma life supportを参照すること。日本ならJATEC。頚部、脊椎、骨盤は移動の際には愛護的に行う。ケイツは硬性カラー、砂袋、、テープで固定。脊椎骨折の除外診断は安易に行わず、British orthopaedic association(BOA)のガイドラインかEASTのガイドラインにそって固定は外すようにする。
Circulation
外表性の出血はすぐ止血する。あまりにも大量の出血があるような場合には気道確保に優先する場合があってもよい。鼠径、腋窩、頚部などターニケットが使えないような場所では直接圧迫法にて止血する。市中で見られるような鈍的外傷ではほとんど見られないが、銃創ではよく見られるので覚えておいてもよい。この数年凝固因子を誘導するような外用止血剤が開発されている。これらの止血剤は3種類あり、凝固因子を集めるタイプのもの、癒着を促進するもの、凝固因子の前駆物質を供給するものである。これらの使用によって出血が早期に止めることが出来ればよいが、実際の使用についての臨床上の情報は殆ど無い。
その2へ続く
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