2009年11月19日木曜日

2009.11.19. Elbow fracture distal humerus.J Hand Surg. 2009

上腕骨遠位端骨折は治療に難渋する障害である。上腕骨遠位部の解剖は非常に複雑で、橈骨と尺骨と関節をつくり、多平面での運動を可能にしている。さらに、粉砕や骨減少症が骨幹端-骨幹部の結合を弱くし、適切な安定化を困難にする。様々な外科的固定法がデザインされており、bicolumnar platingが最もpopularである。固定法の議論や、あらかじめ骨形態にあわせたplateやlocking plateを含めた新しいimplantが紹介され、様々な固定概念の生体力学的なテストに新たな焦点が当てられている。適切な再建や固定の不成功は、骨移植や創外固定、症例によっては人工肘関節置換術などの付加的手段で対処できる。関節面は垂直せん断力によっても障害され、冠状面で上腕骨小頭や滑車の骨折を引き起こす。ここでは上腕骨遠位端骨折の診断、分類、治療、転帰についての最新の論文をレビューする。
上腕骨遠位部骨折は頻度が増している、治療にしばしば難渋する骨折である。成人におけるこの骨折の発生率は100,000例に5.7例だけと報告されているが、長期にわたるかなりの機能障害を引き起こす。上腕骨遠位部骨折の受傷患者は2峰性の分布を取り、若年者の高エネルギー外傷と、高齢の骨粗鬆症患者の、典型的には低エネルギーの転倒である。どちらも骨折型は単純な関節外骨折から、骨幹端-骨幹部の粉砕と骨欠損を伴う広範な関節面の破壊をきたす複雑な骨折型まで様々である。複雑な骨折の解剖も困難さを深める。遠位である事と関節面を含むことが、非観血的治療がうまくいかず、しばしば骨折の固定が困難になる原因となる。

 ここでは上腕骨遠位部骨折の診断、分類、治療、治療転帰について最新の論文をレビューする。
Diagnosis

上腕骨遠位部骨折の診断の主力はレントゲンであり、手関節・肩関節に合併損傷がないか除外するための撮影もそれに含まれる。標準的な撮影法であるAP像、側面像、斜位像により、上腕骨遠位部骨折の診断確定と分類の一助となる。しかし、高度の粉砕と短縮を伴う骨折では、骨片が重なり合い、問題となる部位がはっきりしなくなる。関節部の粉砕のない場合、術中に牽引して撮影すると、大きな骨片のラインを描くのに有用である。

 上腕骨遠位部関節面のせん断力による骨折では、橈骨頭-上腕骨小頭のviewが有用である。側面像を修正したこのviewは前方45°から放射線を照射し、腕橈関節・腕尺関節の重なりを防ぐ(Fig.1)。これにより関節軟骨の多くを構成する上腕骨小頭の小骨片をよく描出する。Double-arc signは上腕骨小頭と滑車の頂部の骨折を示唆する。「double arc」は小頭と滑車頂部の軟骨下骨のレントゲン濃度の増加を表す。

 CTは上腕骨遠位部骨折の特徴をとらえるのに強力なツールである。2-D CTは多面的な骨折の正確な評価を可能にし、しばしば手術のplanningに用いられる。しかし、上腕骨遠位部の解剖学的な複雑性のため、粉砕や転位により歪みの評価を混乱させ、正確な評価を困難にする。3-D再構築は解剖学的構築をみることができ、橈骨や尺骨をimageから差し引くことができる(Fig.2)。この方法は骨折型の正確な評価の向上に寄与すると考えられている。Dornbergらの研究によると、上腕骨遠位部骨折において単純レントゲンや2-D CTに3-D再構築を加えると、評価者自身の信頼性は向上するが、評価者間の一致性は向上しない。この所見はVannierらの所見、つまり3-D CTは複雑な関節面の骨折において従来の方法と差異がないということを支持するものである。
CLASSIFICATION

 上腕骨遠位部骨折は大きく顆上、通顆、顆間骨折に分けられ、それぞれ肘頭窩上、肘頭窩を通るもの、上腕骨顆部を通るものである。より包括的で一般的な分類はAO分類である(Fig.3)。Type Aは関節外骨折、type Bは関節面に及ぶもの、type Cは骨幹部から関節面が完全に分かれたものである。付随する1から3までの数字は粉砕の程度でさらに分類するもので、3が最も高度に粉砕している。顆間骨折はRiseboroughとRadinの分類で、顆上部を含んださらに詳細な分類となっている。Type Ⅰは小頭と滑車の間に転位のない骨折、type Ⅱは顆部の転位はあるが回旋のない骨折、type Ⅲは転位・回旋のある骨折、type Ⅳは片側または両側の関節面の高度な粉砕である。
NONSURGICAL TREATMENT

 上腕骨遠位部の転位のない骨折では、保存的治療が文献上支持されている。これは外固定を一定期間行ったのち、装具で治療するものである。しかし、関節に近づくと、functional braceで遠位部骨折をコントロールするのは困難または不可能である。さらに、long-arm castによる外固定では、拘縮予防の肘の早期可動域訓練はできない。我々の経験では、しっかりした外科的固定が好ましい。転位のない骨折ではより高度な骨折と比べ手術に関連した合併症は少なく、安定した骨折部は早期の運動と治癒の信頼性が高い(Fig.5)。

 転位のある上腕骨遠位部骨折に対する保存的治療は限定的である。

SURGICAL APPROACH

 転位型の上腕骨遠位部骨折では外科的手術が標準的と考えられている。アプローチにはいくつかの方法がある。単純な関節外骨折よりも、複雑な関節内粉砕骨折では展開も大きくなる。死体を用いてWilkinson、Stanleyはtriceps-splitting(三頭筋縦割)、triceps-reflecting(三頭筋反転)、olecranon osteotomy(肘頭骨切り)のどれが複雑な骨折型にもっとも有用か調査した。メチレンブルーで露出した関節面をpaintingすることにより、他の2法と比べ肘頭骨切りがもっとも展開がよかった。しかし三頭筋反転では統計学的有意差には至らなかった。我々の経験では三頭筋縦割と三頭筋反転は滑車の後方部分が見えるようになり、骨切りだけが滑車と小頭の前面に到達できる。

 縦割法は近位の筋の神経支配を利用することにより、腱と遠位の筋での神経障害なしでの縦割を可能にしている(Fig. 6A-C)。多くの外科医は肘頭の頂点までで切開を止めておく。この方法は関節面の展開には制限があり、関節内の粉砕を伴わない例で用いられる。Ziranらは縦割法を行った34骨折に対して、レビューを行った。より大きな展開も行い、三頭筋を肘頭から剥がしたり、両側側副靭帯を上腕骨遠位部から剥がしたりした。これにより上腕骨前面の骨折の確認と固定が可能になった。1例異所性骨化(HO)、1例尺骨神経麻痺、5例癒合不全、4例内反または外反不安定性があった。

 我々は通常三頭筋の剥離はせず、側副靭帯のreleaseもためらわれる。内側、外側に三頭筋腱を動かすことにより、2つの”window”が追加して見え、整復がかなり容易になり、implantの設置が正確になる(Fig. 6D, E)。さらに、約1cmの肘頭頂点の切離により滑車が見やすくなる。この展開法は近位に及ぶ骨折、関節外骨折、単純なT-typeの骨折で関節面滑車後面のみ見て整復されているようなものに用いてきた。

 BryanとMorreyは後方の”triceps-sparing”アプローチを考案した。これは肘の再建、特に肘関節全置換術のために最初はデザインされた(Fig. 6F, G)。これは近位尺側の骨膜との三頭筋腱の連続性を維持しつつ、内側、外側で肘頭から三頭筋腱を持ち上げるものである。操作が終わったら、ドリルホールに縫合糸を通して近位尺骨に腱を再建する。このアプローチを用いたAO type Cに対する1人の外科医の機能的転帰についてのレビューで、7名の患者で臨床的に良好、median arc of motionは90°、異所性骨化はなしであった。しかし、その筆者の考察では、外側の顆部骨折にこのアプローチで固定しようとすると難しいとしていた。他の研究では、triceps-sparing、tricepds-splitting、V-Y approach後の三頭筋腱の強度を評価している。全てのアプローチで強度は著しく落ちていたが、triceps-reflectingが腱を分ける方法よりも統計的に強度がよかった。このアプローチの適応としては、近位に及ばない関節外骨折と非観血的に整復される単純な関節内骨折と考える。筋をretractする際は、外側に注意を払う。Homan retractorを外側皮質骨にかけた2例で一過性の橈骨神経麻痺を認めた。

 肘頭骨切りは全ての上腕骨遠位部骨折に用いられるが、特に関節面の粉砕がある骨折に用いられる。以前の研究では高い癒合不全について記載されていた。癒合不全は肘頭のchevron-shaped osteotomy(山形の骨切り)と適切な骨切り部の固定により減らすことができる。骨切り後、三頭筋が全て上腕骨遠位部後面から持ち上げられ、上腕骨遠部が露出される。交差する橈骨神経を障害しないよう近位から上腕骨の遠位4分の1は切らないように気をつける。骨切り部はscrew、plate、wireを用いて再建する。

 Colesらは、橈骨遠位部粉砕骨折に対して肘頭骨切りを行った患者についてretrospectiveにレビューを行った。67名の患者で骨切り部の治癒までフォローできた。骨切り部は全て治癒したが、2例で整復位保持できず再度骨接合術を早期に要した。ほとんどの症例で、骨切り部は1本の髄内スクリューとワッシャー、尺骨背側の8の字で安定化できる。プレートは初期の固定が不適切であった場合に用いる。Implant irritation(インプラントの刺激)が再建の大きな要因のようである。8%の患者でhardwareの刺激のみでimplantの抜去を行った。

 近年ではこうした方法のさらなるvariationが報告されている。関節内骨折で骨幹部に及んだものに対する方法として、肘頭骨切りにtriceps-splittingを組み合わせて行う。肘頭骨切りでの肘の麻痺を注意することは、ひいてはtriceps-reflectingから経肘頭の方法に至るまで全ての方法でflapの適応ということになる。
ULNAR NERVE

 アプローチ法に関わらず、上腕骨遠位部の展開では尺骨神経の同定と保護が必要である。整復時とimplant設置時に危険にさらされる。術式の最初に尺骨神経を授動させ、vessel loopでタグしておき、多くの場合前方化しておく。Doornbergらは尺骨神経を移動させずに治療した上腕骨遠位部関節内骨折について12-30年経過観察した結果を報告した。尺骨神経の合併症を生じたのはたった1例であったと報告しており、その症例は有痛性のneuropathyを示し、尺骨神経の前方化を要した。尺骨神経の移動は安全な展開と十分な転帰を得るのには必要でないかもしれないが、再建術をするには安全で容易になる。
STABILIZATION OF BONE

上腕骨遠位部は内側と外側のcolumnからなっている(Fig. 7)。関節面は内外側の骨幹端部を通って骨幹部につながる。顆上部の中心部は鉤突起と肘頭窩の間にある薄い骨なので弱くなっている。骨量減少患者では特にこの部位は薄くなる。骨幹部と骨幹端部のcontactは安定性に重要で、治癒の可能性が高まる。

 沢山の固定法が上腕骨遠位部骨折に対して考案されている。Y-shaped plateやminifragment fixationなどである。しかし、多くのpopularな方法は内側columnに1つ目のplateをあてて、2つ目を外側columnにあてる方法である(Fig. 8)。筆者は内外側面に平行にplatingする方法と同様に、内側と後外側のcolumnへ直角にplatingする方法(90-90 technique、perpendicular(垂直) plating)をお勧めする。Parallel platingの提案者は、外側に設置したplateは外側から内側皮質へ長いスクリューでよいが、後外側に設置するplateのスクリューは短くしなければいけないと述べている。Arnanderらは、エポキシ樹脂の上腕骨で3.5mmのreconstruction plateを用いてperpendicular(垂直)とparallelの剛性を調べた。Parallelの方が統計的有意差を持って強固であった。

 外側面にplateを設置するのは技術的に難しく、外側上顆縁から軟部組織を除去する必要がある。近年の解剖の研究で、上腕骨遠位部の骨幹部への血液供給は1本の栄養血管で行われている。遠位部はこの点で沢山の貫通血管を通して灌流されている。外側columnは外側区域の顆部貫通血管により灌流されおり、骨膜が持ち上げられるとそれはなくない、癒合遅延や癒合不全のリスクを増加させる。さらに、両方の方法での固定の程度は早期運動と骨折治癒のために閾値を超えている必要がある。我々の経験では、単純なT型骨折はbicolumnar fixationのほぼどの方法でも(Y plate、dual reconstruction plate、3-5mm dynamic compression plate、precontoured plate(事前に曲げてあるプレート)などをparallelでも垂直方向でも)適切に治療可能である。T型顆部骨折に対して1/3 tubular plateを用いて癒合しなかった症例を沢山見た。もっとも手腕を問われる骨折はlow distalの粉砕を伴った上腕骨関節内骨折である。われわれはその骨折に対し、parallelで、precontouresd plateを用いた場合最も良い結果が得られた。

 高齢者の上腕骨遠位部の治療での最大関心事項は、骨粗鬆症の骨における適切な固定である。Schusterらは従来のreconstruction plate、外科医によりbendingした3.5mm locking compression plate、precontoured locking plateを様々な骨密度の死体標本を用いて剛性について比較した。剛性は3群間で統計的有意差はなかったが、繰り返し荷重下での骨折率は従来のreconstruction plateより上腕骨遠位部プレートの群でより低かった。Locking compression plateと従来のreconstruction plateで統計的有意差はなかった。しかし、この研究の筆者は骨密度が低い場合、上腕骨遠位部プレートとlocking compression plateは従来のものより優れていると結論付けた。骨粗鬆症の骨で生体力学的優位さを認めるにもかかわらず、臨床ではlocking plateはscrewの角度が決まっているので挑戦的になる。このことがscrewの挿入位置を次善の部位にしてしまうことにつながる。このように、必要ないチャレンジを行わないようにする一方で、外科医は角度が決まっていることのbenefitを最大限生かせるようにlocking plateを正しく使用するよう評価しなくていけない。

 固定技術に関わらず、粉砕、骨欠損、骨質の悪さは内固定の不適切さや癒合不全のリスクを引き起こす。いくつかの報告で、遠位部骨片の固定の欠損がまず起こるとしている。Hinge付き創外固定は肘の動きを可能にしつつ、固定の安定性を高めると報告されている。Deuelらは死体を用いた生体力学的研究で、創外固定はどんなレベルの内固定でもその安定性を高めるか調べた。それによると創外固定を固定力の弱まったreconstruction plateに追加すると、最善の内固定だけと同程度かまたはそれより有意に優れた安定性を持つ。

 上腕骨遠位部の関節面の再構築は、関節症を避けるのに重要である。通常関節部分は骨幹部への再接着に先立って再構築する。関節面の粉砕がある場合、関節面の圧迫を避け、幅と輪郭を変えないように注意しなくてはいけない。このために、関節部はフルスレッドのcortical screwで固定する。上腕骨遠位の高度に破壊された表面は、関節部は通常の内固定では整復できないかもしれない。腸骨のtricortical bone graftを粉砕部分に用いる。橈骨頭の部分を外側の滑車の欠損部に用いるという人もいる。まれな例では、

骨軟骨の同種移植も適応となるかもしれない。

ELBOW ARTHROPLASTY

 適切な患者に対する上腕骨遠位部骨折の管理の方法として、primaryでの人工肘関節置換術が行われてきた。一般的な適応は関節内粉砕骨折で適切な固定が不可能な場合で、特に65歳以下の低活動性の患者である。高齢者では症候性の関節症でも治療手段となる。禁忌は感染の存在、高活動性、訴えがない患者、二頭筋が機能してない患者、また開放骨折でも禁忌とする人もいる。我々はまず固定を試み、手術室にtotal elbowのimplantを準備している(Fig. 9)。

 Mullerらはprimaryに人工肘関節置換術を行った43骨折を平均7年フォローして報告した。平均可動域は24°-131°であった。49名中32名で追加手術なく、愁訴は見られなかった。5名で再建を要した。

 癒合不全をきたしサルベージとして人工肘関節置換術行った92肘のレビューで、Cilらはほとんどの患者で改善したと報告した。74%で痛みはないか軽度、85%で主観的に満足であった。屈曲-伸展は平均113°であった。しかしCilらは合併症発生率にも注目し、32例で再手術をした。合併症は12例で無菌的にimplantのlooseningが生じ、65歳以下の若年層および尺骨componentをprecoatingするセメントテクニックでそのリスクは高くなった。5例でimplantの折損が起こった。Implantの不具合のレビューで、十分な支持のない部位での固定における接合部での骨折が起こっていることから、折損は骨折による骨欠損に関連しているとわかった。さらに、implantの折損はすべてextrasmallまたはsmall titanium implantで起こっているため、できる限り大きなimplantを使用し、動かないように正確に接着させることが勧められた。他の合併症としては4例でimplant周囲の骨折、12例で軟部組織や創部の合併症、2例で一過性の神経麻痺、1例でC-ring fracture、1例でbushing fracture、1例で橈骨頭切除を要する近位橈尺関節の痛みがあった。implantの耐用期間は、2年で96%、5年で82%、10年・15年で65%であった。

 PrasadとDentはretrospectiveに上腕骨遠位部骨折に対してprimaryにtotal elbow arthroplastyを行った場合と遅発的に行った場合を平均観察期間56カ月で比較した。Mayo Elbow Performance Score(MEPS)で両者に統計学的有意差はなかった。Implantの耐用期間も同様であり、前者では88カ月で93%、後者では76%であった。注目すべきは、32名の患者で、10名に合併症が報告され、そのうち5例が無菌的なloosening、2例が感染、1例がHO(heterotopic ossification)、2例が尺骨神経麻痺であった。Implant不良のリスクで報告されているものは、65歳以下、2回以上の手術の既往、感染の既往である。いくつかの報告ではこの難しい問題について希望的観測を持っているが、骨折に対する関節置換においては注意が必要である。患者は合併症発生の可能性や制限を守ることの重要さについて適切に話をされなくてはいけない。

 上腕骨遠位部骨折の骨折型によってはいくつかの新しい治療法が提唱されている。Kalogrianitisらは上腕骨遠位端骨折に対しprimaryにunlinkedのtotal elbowを行っている。9名9肘を平均4年観察した。最終評価において9肘全てで安定性・除痛とも満足いく結果であった。AdolffsonとHammerは上腕骨のhemiarthroplastyを4例で行い、短期フォローではgoodまたはexcellentとなっている。これらの手技の有用性をきちんと判断するにはさらなる研究や長期的な観察が必要である。
OUTCOMES

 報告されているoutcomeは、広範な損傷形態や治療がありそれを解釈するのは難しいものがある。さらに、発表されている論文は比較的規模の小さいものが多い。しかし、最近の報告では、適切で強固な固定による骨癒合率は優れており、91-100%と報告されている。いくつかの研究では客観的に測定したoutcomeと同様に患者報告型のoutcome scaleに基づいてoutcomeを評価している。複雑な上腕骨遠位部骨折に対してparallel platingを行い平均2年観察した報告では、34名中27名(79%)でMEPSに基づく評価においてgoodまたはexcellentの結果であった。これは84-100%がgoodまたはexcellentであったとする他の研究と同様である。客観的評価としては内固定後の平均flexion arcは90-106°、平均回内-回外arcは150-165°であった。関節内骨折に対する手術後12-30年のoutcomeの報告では、Doornbergらは腕、肩、手のdisability score、American Shoulder and Elbow Surgeons score、VASで30名中26名(87%)が短期的にgoodまたはexcellentであったとしている。しかし、適切な手術治療にも関わらず80%の患者で外傷後の関節症をレントゲン上示した。
COMPLICATIONS

 上腕骨遠位部骨折の治療中は様々な合併症に遭遇し、その割合は高く48%と報告されている。明らかになっているリスクには、高エネルギー外傷、開放骨折、保存的治療がある。大多数の患者は治癒するが、12週の時点で9%に癒合遅延があり、そのうち半分は24週までに追加手術なしで治癒すると報告されている。もう一つ常に報告される合併症としてHOがある。Goftonらは13%でHOが見られ、術後24時間でindomethacin 100mg×2/日、6週まで25mg×3/日の予防的投与を行うことで発生率が低下する傾向があることを示した。他の報告ではHOは可動域制限をきたすもっとも重要な合併症としている。他に頻度の低い合併症としては感染、尺骨神経麻痺がある。

≪論評≫
上腕骨遠位端骨折のレビュー。よくまとまっていると思いますのでご一読を。

1 件のコメント:

  1. Twitterからこちらのブログ発見しました!
    岡山大学整形の杉本佳久といいます。
    僕も今年から「整形外科医のための英語ペラペラ道場」というブログ更新中です。お互い頑張りましょう!

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