2016年7月9日土曜日

20160709 CORR The natural histry of osteoarthritis: what happens to the other hip?

  • 変形性股関節症の予後についてはまだまだ未知の部分が多いですが、THAを行った症例について10年間のフォローを行い、健側の股関節の変形についてフォローしたもの。
  • 思ったよりあまり進行しないなあというのが感想。痛みがなければその関節は長持ちする。という僕の仮説はなんとなくあっていそうです。
  • 変形性股関節症で男性例が多いこと、DDHが基盤となっている本邦とは趣を異にします。本邦でも二番煎じで同じ研究ができそうですね。
  • 研究手法はしっかりしていると思います。特に脱落群についての取り扱いが丁寧です。同じ研究をされる方は参考にされると良いのでは無いかと思います。
  • 結局、OAが進行するのは41%。反対側のTHAが必要となるのは19%であった。関節裂隙、CE角、head-to-neckratioが関連しているものと考えられた。というのが結論です。
  • 余談になりますが、独特のIntroductionと考察の流れは読んでいて少しクスっとなります。Introductionが格調高くなく、普通の臨床医の目線で始まること、考察で突然同時期の自分たちのやった手術の結果(当然unpublished)を持ちだして考察しているところなんてドキドキします。苦笑。

以下本文
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  • Abstract
  • 変形性関節症は人工関節置換術の主な原因の一つである。片方の人工関節置換術を受けた患者は反対側の関節の予後について心配になる。手術が必要となるのか、もし必要となるのであればいつかということが心配となる。単純レントゲン写真で反対側の関節の変化について評価した論文はほとんどない
  • 本研究の目的は片側のTHAを受けた患者において反対側の変形性股関節症の有病率を調査し、反対側の股関節の進行について臨床的、画像的な評価を行うことである。
  • 1998年から2010年。398例の片側の人工股関節置換術を受けた患者。手術時に全く症状がない患者を対象とした。367例の患者が最低2年間のフォローを可能であった。平均11年のフォロー。31例が脱落。THAをエンドポイントとして関節生存率を作成。リスク因子について検討を行った。
  • 結果 10年間の経過観察で、59%の患者が全く症状がなく、また81%の患者でTHAを行うことなく経過していた。関節裂隙の狭小化、CE角が小さいこと、Head-neck ratioが小さいこと、骨棘が存在することが危険因子であった。BMI,年齢などは危険因子ではなかった。
  • 結論 将来的にTHAが必要となる因子を明らかとした。ラウエン像でも評価が必要であろう
  • Introduction
  • 日常診療で「私の反対側の股関節は手術が必要ですか?」と聞かれることは少なくない。Ritterらは10年間の経過観察で、37%の患者でOAが進行し、8%の患者でTHAが必要となったと報告している。Vossinakisらは寛骨臼形成不全がある患者でより関節症の進行が必要となったと報告している。SahinらはFAIが存在していると関節鏡を行った反対の関節でOAが進行するということを報告している。
  • これらの報告は症例数が少なく、統計的なパワーにかける。またもう一つの論文は原因が含まれていて危険因子の検討がなされていない。それ故にこれらの研究では患者さんの疑問に答えることには不足している。そこで長期間の縦断研究を計画し、反対側の股関節が変化するかどうかを調査した。また患者の因子やレントゲン写真上の特徴がOAと関連しているかの研究はない。
  • 本研究の目的はTHAの反対側の関節の生存率について調査を行い、臨床上、レントゲン写真上の特徴についての検討を行うことである。
  • 方法
  • 1998年から2010年。398例の片側THAが行われた患者。またTHAの時点で反対側に全く症状がない症例を対象とした。レントゲン写真上で異常があっても痛みがないものも対象に含んでいる。367例の患者が最低2年間の経過観察が可能であった。平均フォローアップ期間は11年である。295例の男性、72例の女性。平均年齢は54歳±8歳。身長177センチ、体重86㎏。BMIは27であった。フォローは当初の5年は毎年受診し、その後2から4年毎の受診とし、臨床スコア、レントゲン評価、UCLAスコアの聴取を行った。歩行障害が出るような痛みをChanleyBとした。
  • 一方を手術してから反対側を手術するまでの時間を測定した。単純レントゲン写真で、関節裂隙、CE角、head -to -neck ratio、骨棘の存在、骨嚢胞の存在について検討を行った。関節裂隙は1ミリ以上を測定した。
  • 31患者が脱落した。これらは年齢、性別、BMI、関節裂隙、CE角、head-to-neck ratioで差を認めなかった。14例の患者が10年間フォローできず、脱落と判断した。また80例の患者が最近5年間受診していなかった。これらの患者は2年フォローできた場合には検討群に組み入れた。既に関節裂隙が2ミリ以内に狭小化していいたもの、骨棘が形成されていたものも疼痛がなければ検討群に組み入れた。
  • 一方のTHAを行った後、同じように悪くなれば手術することを患者に伝えた。同時に悪くなるかどうかについては不明であることも伝えてある。術後の患者はアスリートレベルのスポーツは避け、インピンジメントを避けるために内旋はしないように指導した。
  • 0.5ミリの関節裂隙の狭小化が見つけることができる最小の患者数は32名であった。
  • カプランマイヤーで生存曲線を描いた。1つはChanleyB(痛みがでる)、1つはTHAへの置換である。
  • 62名の患者がCE角が25度以下であった。
  • 結果
  • 殆どの患者が疼痛無く経過し、THAを行なわずに経過した。症状が全く無く経過したのが5年で73%、10年で59%、15年で39%であった。疼痛が出るまでの平均期間は44ヶ月であった。THAへの置換について、THAに置換せずに済んだ群は5年で87%、10年で81%、15年で75%であった。59名の患者がTHAに置換され、置換までの平均期間は58ヶ月であった。
  • THAの危険因子は最小関節裂隙、CE角、骨棘の形成、Head-to-neck ratioが小さいことであった。CE角が大きい群、小さい群でサブグループ解析を行ったところ、CE角が小さい群では関節裂隙だけが関連する因子であったが、CE角が25度以上でサブグループ解析を行うとHead-to-neck ratioが関連因子として抽出された。
  • 考察
  • 今までの研究は統計的な問題があったりOAの評価に問題があったりした。
  • 本研究のLimitationはまずレントゲン写真がAP像のみであること絵ある。CamタイプのFAIはOAの原因となる。本研究では健側の側面像の撮影が行われていなかった。一般的臨床医は正面像だけで予後を判定すると思う。なので正面像だけでもいいと考える。また痛みはないがレントゲン写真上でOAをきたしている症例について、骨棘などが測定に影響を及ぼした可能性はある。評価を術者が行っていることも問題であろう。
  • また80例が最近5年間受診しておらず、14例がフォロー不能であった。これらの患者は手術が受けられないので実際のTHAへ至る率は下がることが考えられる。また人種の問題は考慮されていない。
  • 今回の結果は今までの報告に近いものであった。
  • また危険因子についての検討で、関節裂隙が1ミリ大きくなると疼痛のある股関節症への進行が0.7倍に減ることがわかった。また最大関節裂隙と最小関節裂隙の差が大きい症例でもOAの進行の可能性が高いことがわかった。
  • 年齢性別は関連しなかった。
  • CE角が小さい症例ではhead -to -neck ratioは関連しなかったが、CE角が大きい症例ではhead- to-neck ratioが関連した。DDHの有無についてはしっかりと診断しておく必要がある。
  • 結局、OAが進行するのは41%。反対側のTHAが必要となるのは19%であった。関節裂隙、CE角、head-to-neckratioが関連しているものと考えられた。

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