2014年4月6日日曜日

20140405 BJJ Surgical outcomes of primary hip and knee replacements in patients with Parkinson’s disease

たまたまパーキンソン病を有している患者さんの人工関節の手術をしたので、その予後はどうなのかな。と
術後せん妄に注意か。。。はよ教えてくれなアカンやん。苦笑。

Surgical outcomes of primary hip and knee replacements in patients w/ Parkinson’s disease

フィンランドのレジストリーを用いてTHAまたはTKAを受けたパーキンソン病の患者857例と2571例の患者との比較を行った。
平均フォロー期間は6年(1年から13年)。パーキンソン病の患者は入院期間が長く(21日VS13日)。術後1年での脱臼率はコントロール群と比較して2.33。感染、再置換率、術後1年での再置換率には差がなかった。長期のフォローではパーキンソン病の患者の死亡率が高かった。(ハザード比1.94)。10年後の生存率は34.7%(274例)。パーキンソン病の患者では心血管系合併症、神経疾患によって入院期間が延長し、また心血管合併症によって死亡率が高くなる。

パーキンソン病は寡動、振戦、固縮などが見られるドーパミンが欠損する病期である。60歳以上の1から2%が離間するとされている。ドーパミンの投与によって運動障害は改善するものの病状の進行によって運動障害が明らかとなる。運動障害以外にも認知機能障害、うつ病、自律神経の失調などがおこりQOLを低下させる。しかもこれらの障害によって運動障害そのものも悪化する。
病期そのものの問題だけでなく、パーキンソン病は筋骨格系の疾患を惹起し、慢性疼痛の原因と鳴ることが知られている。フランスの研究ではパーキンソン病の慢性疼痛の主要な原因は変形性関節症であるとする報告をしている。THA、TKAは高齢者の変形性関節症患者に対してQOL、生活機能の改善が可能となる効果的な方法であるが、今までにパーキンソン病と合併した患者での報告はない。またいずれの報告も1970年代から1990年までに行われた研究で現在とは臨床背景が異なる。本研究の目的はパーキンソン病の患者でのTKA、THAについてその合併症について評価することフィンランドのナショナルレジストリーを用いて研究することである。

対象と方法
フィンランドのナショナルレジストリーを用いた。それとフィンランドの人工関節レジストリーwp合わせて検討。合併症の検討にはフィンランドのDPC様のデータを用いた。
1998年から2009年までにパーキンソン病と診断をされTHAまたはTKAを受けた患者の検討。別の関節炎、外傷が原因で人工関節置換術が行われたと考えられた症例は除外した。二箇所以上の手術が行われている場合には最新の手術を対象とした。フィンランドでは慢性疾患に対して42-100%の補助がある。パーキンソン病であれば専門医によって補助の申請が出されているため疾患の確実性については保証されている。そのためこのレジストリーは十分にその質が担保されていると言える。
パーキンソン病の患者一人に対して3人のコントロール群を設定した。交絡因子を排除するためにPropensity スコアを用いた。年齢、性別、住居、合併症などをPropensityスコア設定の際の説明因子とした。
入院期間。合併症として感染、脱臼、再置換、死亡率を調査した。入院期間については術後改善せず長期の入院を必要とした症例は除外した。また術後90日たっても退院できない症例についても調査を行った。感染、脱臼、再置換、死亡率については術後90日、180日、一年で確認。脱臼、再置換、死亡率については全フォロー期間を対象に行った。2010年までのフォローで最長13年の経過期間であった。

結果
パーキンソン病の既往を有するTHA297例。TKA560例。パーキンソン病の平均罹病期間は5.2年。6例の患者が術前から認知症を有し、97例の患者で認知症の悪化を認めた。
患者拝見を表1に示す。THA,TKAともにセメント人工関節が主に行われていた。
再置換術についてパーキンソン病とコントロール群の間に差はない。
脱臼について、術後1年以内で脱臼が起こりやすい(ハザード比2.33)。
死亡率は術後2年までは有意差が無いものの、長期間のフォローで5年生存率が75.1%、10年生存率は34.7%でコントロール群との間で有意差を認めた。
入院期間はパーキンソン病群で有意に延長した。術後うつ、せん妄などの精神疾患の発症率はパーキンソン病群の方で多かった。
感染率には差を認めなかった。
認知症の有無は予後に影響を与えなかった。
死亡率増加の原因について検討を行った。高齢、男性、心血管疾患の既往、糖尿病の既往が死亡率増加と関連があった。特に心血管疾患の既往が早期死亡率と関連していた。
年齢、性別で調整を行ってもパーキンソン病の患者では脱臼、死亡率ともに高かった。(ハザード比2.37、1.77)

考察
パーキンソン病があっても周術期早期の死亡率の増加には関連しないことがわかった。しかしながら入院期間の延長、合併症の増加は認められた。またパーキンソン病患者の生存率は低かった。入院期間の延長は精神疾患の悪化と関連を認め、心血管疾患の既往が生存率との関連を認めた。
本研究のつよみは交絡因子をPropensityスコアを用いて排除していること、国家レベルでの質が担保されたレジストリーをつかった研究であることである。本研究の限界はデータの解析を行っただけであるので疼痛の改善、QOLの改善がどの程度であったか知るすべがないことである。またレジストリーからは術中の合併症についての情報はなく、それで再置換が行われたりした症例があった場合には抜けている可能性がある。
入院期間が延長したことに関して、これは大腿骨頚部骨折、消化器外科、泌尿器科で言われていることと同じ傾向を占めいた。これはもともとパーキンソン病の患者のADLが低いこと、加えてとくに認知機能に問題が有るような症例では急性期のストレスによってより悪化するということが言えるのかもしれない。そこで術前から神経内科医、老年内科医などとの連携が必要となってくる。TKAの術後ではそれらの科と連携することでよりよい結果を得たとする報告がある。またパーキンソン病を有する患者の5-7%では退院後3ヶ月後の認知機能の低下が認められたとする報告がある。
パーキンソン病の患者は術後易感染性にあると考えられるが周術期感染ではパーキンソン病群、コントロール群の間に差を認めなかった。以前の報告はNが少なく、またその感染率もフィンランドのレジストリーよりも低い。これはコントロール群がより重症例がピックアップされてことと関係しているのかもしれない。
パーキンソン病の患者では人工関節の脱臼リスクは約2倍であった。この結果はスコットランドのレジストリーから報告されたパーキンソン病は脱臼のリスクではないとする報告と、またWeberらの報告に有るパーキンソン病の患者の5.6%が脱臼するとする結果よりも悪い。これは脱臼に関して13年間の結果を追ったものであり、その累積での脱臼率であるので高い結果になるのが当然で、この結果がより真実に近いものと考える。
死亡率に関しては単施設からの報告と同様であった。ただ、長期の結果はより悪く10年後には全体の3割しか生存していなかった。心血管新刊、DMが不良な予後に関わった可能性がある。
パーキンソン病が合併していても人工関節全体の再置換率には影響を与えなかった。しかしながら脱臼率は上昇し、心血管疾患の既往、精神疾患の合併が入院期間の延長に関わっている可能性が示唆された。心疾患を合併していると生命予後をより悪化させる可能性が有ることがわかった。

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