2014年2月17日月曜日

CORR 2014 Magnetic Resonance Imaging of the Hip: Poor Cost Utility for Treatment of Adult Patients With Hip Pain

<論評>
MRIをとりまくってるけど、そもそも最初にレントゲンくらいとれや!という論文です。確かに股関節MRIが役に立つ頻度は膝と比べると少ないですよね。しかも治療法がアメリカならTHA一択なので治療方針の決定には役立たなかった言いきっちゃうあたりがさっぱりしていて良い感じです。苦笑。

抄録
背景
MRIは股関節痛の診断をする際によく用いられる検査方法であるがその費用対効果については知られていない。
方法
本研究は後ろ向き研究。40-80歳までの患者。整形外科医と非整形外科医の間でMRIのindicationが異なるかどうか。治療方針の決定にもっとも影響を与えた検査はなにか。単純レントゲン写真を別とした場合にどの程度MRIが治療方針の決定に影響を与えているのか。股関節のMRIのコストが治療方針にどの程度影響を与えているのかを調査することである。
213人、218股。単施設で5年間の調査を行った。カルテ、単純レントゲン写真、MRIを後方視的に調査。MRIがどの程度治療方針の決定に関わったかを計算した。インパクトスタディの計算にはMRI単価(436ドル)と整形外科または非整形外科医のどちらであるかということも勘案に入れた。
結果
非整形外科医臨床的診断を行わずにMRIをオーダしていることがわかった。(72%対30%)しかも単純レントゲンを取る前に撮像していることも多かった。(29%対3%)。そしてMRIが治療方針の決定に与えた影響は小さかった。(6%対15%)。股関節MRIは腫瘍を疑われるときに最も治療に影響を与えていた。(58%)。また感染の際にも治療方針の決定に影響を与えていた。(40%)。疼痛の評価には股関節のMRIはほとんど影響を与えなかった。股関節MRIはは単純レントゲン写真と分けるとわずか7%しか治療方針の決定に影響を与えなかった。股関節MRIは悪性腫瘍を診断するときにはその単価は750ドルであったが、原因不明の股関節痛に対してMRIを撮像すると59,000ドルであった。整形外科医がとるとMRIのコストは2800ドルであったが非整形外科医が撮像すると7800ドルにコストが増大した。
結論
MRIはある状況であれば非常に有用な診断機器であるが股関節痛のスクリーングには向かないことがわかった。40-80代の患者では病歴、臨床所見、単純レントゲンの所見を補助するものでない。

はじめに
MRIは股関節疾患の診断に有用な診断機器である。大腿骨頚部の不顕性骨折、大腿骨頭壊死のステージング。最近では子お関節の変形、軟骨疾患、股関節唇損傷、炎症性疾患、メタルオンメタル人工関節の反応性の評価などにも用いられている。しかしながらMRIは特異的な疾患の診断には有用であるが、40-80代ではOAの罹患率が高く、そのような場合にはわざわざMRIを撮像する必要はなく、MRIの費用対効果がどの程度かということは不明である。本研究の目的は40-80代の患者を対象として1,MRIのインディケーションが整形外科医と非整形外科医の間で異なるのか。2,MRIが治療方針に影響をあたえるような臨床的な状況はどのような場合か。3、すでに単純レントゲン写真が撮像されている場合にMRIが治療方針にどの程度影響を与えているか。4オーダした人間によってMRIが治療方針決定にあたえた影響とMRIのコストがどの程度かを概算した。

対象と方法
213例、218股の単一施設、5年間でMRIまで撮像された患者を対象とした。1.5TのMRIで撮像された。MRIは骨盤でオーダーされたものではなく、股関節にフォーカスされたMRIとした。MRIの読影は施設内の放射線医によって行われた。MRIのレポートで患者の年齢、MRIをオーダした医者の属性、MRIをとった理由、MRIの診断を調査した。放射線科の記録から単純レントゲン写真がMRIのオーダの前に撮影されているかを確認した。電子カルテでMRI撮影後に治療方針がどのように変化したかを確認した。単純レントゲン写真からだけでは診断できなかった治療の経過についてMRIがどのように影響したかを評価した。
患者の平均年齢は60歳。プライマリーケア、嗅球、非整形外科医が179のMRIをオーダしていた。整形外科医は39例のMRIをオーダしていた。MRIの157例のうち72%はOA、または構造的な問題が無いのに行われていた。54MRIがレントゲン写真を撮影する前にMRIが撮像されていた。3症例が明らかな異常を認めていた。213例、77%の患者で単純レントゲンが撮像されていた。31%の患者で異常が無く、46%の患者では診断がついていた。213例中55例で進行期OAであった。14例で進行した大腿骨頭壊死症であった。28例13%の患者で腫瘍、感染、骨折など病歴で診断がつくものがあった。34例、全体の16%の患者で手術治療が行われた。25例の患者が手術の前に単純レントゲンで診断がついていた。24例でTHAが行われていた。内一例はMRIで大腿骨頭壊死が判明した患者であった。
MRIのコストは、一例あたり436ドルとして以下の計算式に基いて行われた。この計算式は検査の総数を、役にたった検査数で割ったものに436をかける。これを整形外科医、非整形外科医で比較を行った。

結果
痛みの評価の耐えに非整形外科医は整形外科医よりもMRIをより多く撮影することがわかった。(72%対30%)。非整形外科医はレントゲンを取る前にMRIをとることが多いことも分かった(29%と3%)。また進行期のOAに対してもMRIを撮像していることがわかった。整形外科医にとってMRIはより診断に寄与するツールであった。(15%対6%)。非整形外科医は28例で脊椎、膝なども同時に撮影しており、これらのすべてで画像上全く正常であった。
MRIを撮影する理由は136例(69%)で疼痛の精査であった。大腿骨頭壊死(30例)、腫瘍(12例)、関節唇損傷(11例)、感染(10例)、骨折(9例)が判明した。(表2)
これらの82MRIのうち15例が診断の確認のために行われたものであった。最初に診断がついておらず結果が出たのは136例中1例に過ぎなかった。腫瘍の診断、感染の診断、大腿骨頭壊死の診断に有用であった。
股関節MRIはほとんど治療方針の決定に寄与していなかった。34例の患者でのみMRIの結果で治療方針に影響があったが、16例の患者では治療方針を変えることはなかった。
表3に検査をオーダした業種ごとでの費用対効果を示す。股関節痛だけでMRIを撮像した場合にはその総コストは59296ドルにもなった。しかしながらある程度診断をつけてから行われたMRI検査の総コストは2383ドルであった。MRIは腫瘍が疑われる患者でもっとも費用対効果が良かった。非整形外科医がMRIをオーダすると整形外科医の3倍のコストが掛かることがわかった(7804ドル対2834ドル)

考察
MRIはなにか疾患を想起して特異的におこなう場合には有用であることがわかった。病歴、臨床所見、単純レントゲンで臨床的が付いている時にMRIは確定診断、術前計画策定に有用である。本研究で言えることは臨床的な診断がついていないのにとるMRIは非常に無益な検査であることがわかる。
本研究にはいくつかのlimitationがある。1つは後方の観察研究であることである。60歳代の男性が多かったことで年齢、性別のバランスが撮れなかった可能性がある。その2として初診医はコンサルとする前に撮像しており、整形外科医は紹介されてから撮像しているために特異度が上がっている可能性はある。その3として陽性所見のみを取り上げたが、なにもないことを確認するという意味はあったのかもしれない。その4として今回の診断以外にかかっている間接的な費用(例えば復職の許可など)について評価することは困難である。その5としてかかった費用はMRIの撮像比だけど下が本来はその他の診療費などもかかっているということである。
非整形外科医は整形外科医よりも疼痛の評価のためだけにMRIを撮像することが多かった。単純レントゲン写真を取る前にMRIをとることも少なくなかった。単純レントゲン写真で進行期から末期のOAである場合でも見受けられた。整形外科医は診断においてMRIを用いることが非整形外科医の3倍多かったものの、手術をするかどうかについては単純レントゲン写真で決定していた。MRIで手術するかどうかを決めたのは13%に過ぎなかった。膝の場合にはMRIをとるかどうかの基準は整形外科医と非整形外科医の間には違いがない。膝のMRIは関節鏡手術に至る患者の減少という形で全体のコストの減少に関わっている。これに対して股関節MRIは整形外科医に相談する前に撮像されており、加えてMRIから得られる情報量にも違いがあった。
本研究ではMRIの後に手術に至るかどうか、また特異的疾患の診断にMRIが役立っていることがわかった。股関節の診断の際に前もって診断を予測していないと股関節MRIは無駄な検査に終わることがわかった。またMRIをとっても手術治療に至るかどうかは決まらなかった。いくつかの報告で大腿骨頚部の不顕性骨折を見つけるのにMRIが有用であると報告されている。しかしながらそれだけずれていない骨折であれば手術治療の必要もないし、現実MRIで骨折が見つかったけども手術に至ったのは11%に過ぎなかった。大腿骨頭壊死についても40歳以上はすべて人工関節にしてしまうのでMRIの結果が治療方針決定に影響しないのである。関節唇損傷についても軟骨損傷を伴わない場合には関節鏡手術の適応としないので治療方針に影響を与えなかった。まず最初にレントゲン写真をとることが重要であると考えられた。この結果は病院内に通知してある。
股関節MRI は診断が有る程度わかっており、侵襲的な治療をおこなうかどうかの決定には役立つ。当病院で無駄なMRIと考えられた検査を除外すると59,000ドルに登る。高齢者のMRIについてMRIの撮像基準を決定すると大きな医療費の削減が可能となるかもしれない。股関節MRIは病歴、臨床所見からまず診断をある程度決定し、その上で撮像すると費用対効果が高くなる。



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