2014年2月8日土曜日

20140207 J Arthroplasty Total Joint Arthroplasty and Preoperative Low Back Pain



腰痛を伴った下肢関節の変形性関節症では実際の股関節、膝関節の状態、その後の人工関節置換術の評価を困難とする。今回の前向きコホート研究の目的は変形性関節症に対して人工関節置換術を受けた患者において有病率を調査し、術後の腰痛の緩和の程度を評価するものである。腰痛の評価にはOswestry Disability Index(ODI)を用いた。ODIは膝よりも股関節で高い傾向にあった。膝関節、股関節とも術後1年でODIは有意に改善した。術後腰痛をもつ人工関節置換術を受ける患者においては併存する脊椎疾患によって術後機能予後が十分に改善しない可能性について通達し、人工関節置換術がうまく言っても腰痛が持続する可能性について前もって話して置く必要がある。
アメリカでは4000万人がOAに罹患していると言われており、そのうちの80%以上が55歳以上である。カナダでも同様の状況にある。末期の変形性関節症に対する人工関節置換術は有効な術式である。しかしながら不幸なことに変形性関節症に腰痛を合併している患者では用つつ疾患のために股関節、または膝関節の評価が困難である。
変形性関節症と腰痛の関連ではいくつかの報告があるが、有病率には大きな開きがある。Parviziらは344人のTHAの前の患者では49.4%に腰痛を合併しており、Heishらは変形性股関節症の末期では21.2%の症例で腰痛をみとめたと報告している。Galimらの症例数の少ない前向き研究では少なくとも中程度の腰痛、脊椎疾患が存在したと述べている。THAと腰痛の関連はしばしば述べられているが、TKAと腰痛の関連についてその要因にはっきりと記載されたものはない。Osteoarthritis Initiativeでは変形性膝関節症の患者57.4%で腰痛を感じたことがあり、WOMACスコアと有意に関連していたと報告している。Wolfeらはリウマチクリニックを訪れた患者54.6%に腰痛の訴えがあったと報告している。Burnettらは74%の患者において腰痛を自覚しており、それはTKAを受ける10年ほど前から発症しており、15%の患者で徐々に悪くなってきたということを報告している。
本研究の目的は初回THAまたはTKAを受ける末期関節症の患者での腰痛の有訴率を調査すること、術後の腰痛の変化を見ること、併存する腰椎疾患が人工関節術後に与える影響について調査することである。
方法
前向き研究。末期変形性股関節症の患者に対して人工関節置換術を行った患者が対象。2009年から2010年までに6人の外科医が手術を行った。診断はいずれも変形性股関節症であった。再置換術、両側同時手術は除外している。腰痛の評価には図を渡して疼痛部位を患者に図示してもらった。腰痛の重症度評価にはODIを用いた。ODIは患者立脚型の腰痛評価法としてよく知られた方法である。術前2週の段階で評価を行った。第二の評価項目としてOHS、OKSを術後6ヶ月、1年で測定した。また客観的評価としてHHS、KSSを用いた。
結果
776人に人工関節置換術を行った。491人がTKA、、285人がTHAであった。表1にその背景を示す。人工関節置換術を受ける患者の52%が腰痛を持っていた。変形性股関節症の患者では60%、変形性膝関節症の患者では42%であった。術前のODIスコアは21.6点であった。重症度は50.4%の患者で軽い腰痛、28.9%の患者で軽度の腰痛、20.7%の患者でひどい腰痛であった。変形性股関節症の患者のほうが変形性膝関節症の患者よりも有意にひどい腰痛の有訴率が高かった。(29%対16%)。反対に変形性膝関節症の患者では83.9%の患者で腰痛がないのに対して変形性股関節症の患者では71.2%にとどまった。(表2)
THAの患者でのODIは26.8、TKAの患者では18.6であった。(図2)。股関節の患者でひどい腰痛の患者が多く、膝関節の患者のほうが軽症の腰痛が多かった。
ODIとHHS、KSS、OHS、OKS、はいずれも有意であったがほとんど相関を認めなかった。
術前のODIが高い患者では有意に術前のOHSが低かった。このような患者では術後6ヶ月、1年でのHHSも有意に低かった。
術後のODIはTHAの患者でTKAの患者に比べて有意に改善した。一段階以上の改善を認めたのがTHAで54%、TKAでは17.7%であった。(図4)。ひどい腰痛を感じていた24例が4例に減少した。原因疾患はLSCS、椎間板ヘルニアなどであった。
考察
変形性股関節症の患者では変形性膝関節症の患者に比べて腰痛の有訴率が高かった。腰痛のために膝よりも股関節の症状が悪化していることがわかった。加えてTHA前の患者のほうがTKA術前の患者よりも腰痛の程度がひどいことがわかった。腰痛は股関節の症状と密接に関連していることがわかった。
反対にTKAの患者では腰痛の程度は軽かった。股関節周辺の拘縮、筋力低下が腰痛と関連している可能性が示唆sれた。
術後THAの患者ではTKAの患者と同様に腰痛が緩和された。THAの患者では腰痛が有意に改善された。Hieshらは97.3%の患者が腰痛が緩和したと報告している。Benらは腰痛が改善したことでTHA後の股関節機能も改善したと報告している。

この研究の限界は術前に腰痛がないとした患者のODIのデータが無いことである。しかしこれはもともとの数が少ないことで相殺されるであろう。もう一つの限界は患者立脚型評価を同時にとっていることである。しかしこれらを分割することは困難である。腰痛がどの腰椎疾患で怒ったかを同定することも行っていないが、これもこの研究の限界である。


<論評>
こんにちわ、管理人です。すっかりご無沙汰しておりましたが久々にまとまって読んだ論文です。
THAと腰痛との関連はよく言われているところであってそれをはっきりさせた論文です。本論文で明日からの日常診療に使えそうなのは術後腰痛が改善する可能性が高いこと、また腰痛の程度が強いと回復が遅くなるということでしょうか。

またぼちぼち読んでいきますね。

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