アルツハイマー病、パーキンソン病、脳卒中後の患者において大腿骨頚部骨折の予防には日光にあたることが重要である。
抄録
栄養不良または、日光に当たらなくなると結果として低ビタミンD血症となり、この低ビタミンD血症は骨吸収を増加させ、骨密度の低下をきたす。特にアルツハイマー病、パーキンソン病、脳卒中後の患者では転倒の増加につながっていると報告されている。本研究の目的は日光に当たることがそのような神経内科的疾患を有した患者の大腿骨頚部骨折のリスクをへらすことが出来るかどうかを調べることである。
方法はメタアナライシス。pubmedを使って大腿骨頚部骨折と日光への曝露を行った無作為割付試験を抽出し、95%信頼区間と相対危険率を計算した。
結果:3つの無作為割付試験が該当した。いずれも日光にあたることで低ビタミンD血症が改善し骨密度の増加が認められた。アルツハイマー病の患者で相対危険度が0.22、パーキンソン病の相対危険度が0.27、パーキンソン病の相対危険度が0.17出会った。全体をまとめたデータでは相対危険度は0.23であった。危険低下率は77%と考えられた。
結論:今回のメタアナライシスの結果からはアルツハイマー病、パーキンソン病、のウソ中後の患者では日光にあたることで大腿骨頚部骨折の危険性を減らせる可能性が示唆された。
序論
骨粗しょう症は脊椎、手関節、股関節骨折の主要な原因です。骨粗しょう症を有する患者が大腿骨頚部骨折を罹患すると他の骨折よりも多くの医療コストがかかることが知られています。大腿骨頚部骨折後の機能的予後は不良であり、大腿骨頚部骨折後の死亡率は高くなります。アルツハイマー病、パーキンソン病、脳卒中後などの神経内科的疾患を有する高齢者での大腿骨頚部骨折危険性が高いことはよく言われています。これ骨脆弱性が増すことと転倒のリスクが高くなることが原因です。このような神経内科的疾患を有する患者さんたちに対しての大腿骨頚部骨折予防のための何かしらの予防策が必要。
低ビタミンD血症は食事摂取不良、日に当たれなくなることによって生じます。低ビタミンD血症の結果として骨密度が低下し、神経内科的疾患を持った患者では特に大腿骨頚部骨折のリスクが高くなることが知られています。ビタミンDサプリメントの内服、日光への曝露が神経内科的疾患をもった患者において重要な役割を果たします。今までのメタアナライシスによってビスフォスフォネート製剤、ビタミンKが神経内科的疾患をもった患者では大腿骨頚部骨折を減少させるということが明らかに成っている。しかしながら日光曝露を介入する因子としたメタアナライシスは今まで行われていないのでこの報告では神経内科的疾患を持った患者で日光曝露をしたら頚部骨折予防になるかということを調査した。
方法
日光曝露とアルツハイマー病、パーキンソン病、脳卒中でpubmedで検索した。検索した文献で無作為割付試験を行ったものをピックアップして検討を行った。
それぞれの研究について相対危険度と95%信頼区間を検討し、最後にまとめて検定を行った。intention-to-treatで分析を行い、Cochraneのχ2乗検定にて異質性の検定を行った。検定にはSASを用いて行った。
結果
3つの文献が採択されています。一つ目の論文がアルツハイマー病についての論文で262人のアルツハイマー病の患者について、2つ目の論文がパーキンソン病の患者について、3つ目の論文が脳卒中後の患者についてです。すべて日本の病院または施設入所中の患者を対象とした。
アルツハイマー病の試験では全患者でビタミンDとカルシウムのサプリメントを内服させていましたが残りの2つの試験では内服させていません。これは高カルシウム血症をおこす危険性を回避するためです。
アルツハイマー病の患者では血清ビタミン25‐OHビタミンDが上昇し、PTHは低下し、血清カルシウム値も上昇して筋力の増加をみとめ転倒が予防されました。BMDは日光にあたった群で2.7%増加したのにたいし日光に当たらない群では5.3%減少しました。パーキンソン病群では血清ビタミンDが増加し、BMDが日光あたる群で3.8%増加したのに対し日光にあたらない群では2.6%減少しました。大腿骨頚部骨折のリスクは日光当たる群とあたらない群を比較するとその相対危険度は0.27でありました。脳卒中群では血清ビタミンDが増加し、骨密度は日光あたる群で3.1%上昇し、当たらない群で3.3%減少しました。大腿骨頚部骨折の相対危険度は0.17となりました。
メタアナライシスを行った結果これらの3つの研究で異質性は認められず総合した頚部骨折の予防効果は相対危険度で0.23、77%減少させることがわかった。
安全な太陽のアテ方
経過中に4%‐16%の患者が多の疾患でドロップアウトしているものの太陽に当てているせいでおこった合併症はなかった。
考察
メタアナライシスを行った結果、神経内科的疾患を持った患者では日光に当てることで大腿骨頚部骨折の予防ができることがわかった。その相対危険度は0.23であり、危険率の減少は77%に登った。
血清25-OHビタミンDは皮膚の日光への曝露、食品から得られる。低ビタミン血症の患者においてビタミンDを補充すると転倒の危険率が減ることが知られている。最近の研究では日光に暴露することでアルツハイマー病、パーキンソン病、脳卒中後の患者の低ビタミンD血症を改善することが知られている。日光に曝露するだけでアルツハイマー病の患者では転倒の危険率が減少し、アルツハイマー病とパーキンソン病では筋力も強化されることがわかっている。脳卒中の患者に対しては転倒、筋力についての検討はなされていないものの低ビタミンD血症が引力低下を引き起こし、転倒をしやすくなるということが言われている。
低ビタミンD血症は副甲状腺機能亢進症を引き起こす。これによって骨密度の低下が引き起こされる。ビタミンDとカルシウム製剤の内服は栄養不良があり、日光にあたることの少ない患者では必要であろう。パーキンソン病の患者と脳卒中の患者では動きが乏しいことによる骨吸収の増加、高カルシウム血症の可能性が高いと考えられたためカルシウムのサプリメントを投与しなかったが、アルツハイマー病、パーキンソン病、脳卒中のいずれでも骨密度が増加した。
相対危険減少率は77%であった。メタアナライシスを行った際に大きな問題と鳴る統計的な問題はなかったが無作為割付試験としてはサンプルサイズが小さかったため有意な差が出ないところもあった。
日光への曝露と骨密度についての無作為割付試験はいままでになかった。今回の研究ではいずれも大幅に骨密度の改善が得られたがさらなる調査が必要であると考えられる。
1,25-oHビタミンDと筋組織の特異的核内受容体との間には密接な関連があると言われている。
アルファカルシドールの様な活性型ビタミンDも処方されているものの、これらは高カルシウム血症をきたす可能性があるため動きの少ない患者は適当ではない。
大腿骨頚部骨折、転倒は多因子の要因で起こりうり、これらの予防法にはヒッププロテクターを含めて多くの方法が報告されている。運動療法はこのような神経内科的疾患を持つ患者では困難であるためこのような日光にあたるという方法が現実的である。
この研究の限界はRCTのレベルが低い論文を3つ集めて来ただけである。またサンプルサイズが小さい。すべての研究が日本で行われたもののために世界中に応用不可能である。
結論として神経内科疾患を抱えた患者にたいして日光に当たらせるようにすることで大腿骨頚部骨折のリスクを77%減少させることができた。日光の照射は大腿骨頚部骨折の患者において重要である。
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