2019年8月25日日曜日

20190825 CORR What Factors Are Associated With Neck Fracture in One Commonly Used Bimodular THA Design? A Multicenter, Nationwide Study in Slovenia

抄録
いわゆるモジュラーネック型のステムは患者の大腿骨の前捻に一致させることができる。しかしながら様々なレジストリーにおいてこのようなモジュラーネック型のステムはモノブロックのステムに比較してヘッドネックジャンクションのトラニオンの摩耗腐食によって高い再置換率が報告されている。しかしこれらのステムは未だに市場で発売されている。
本研究の目的はモジュラーネック型THAの無菌性ゆるみの危険率について調査し、ステムネックジャンクションの破綻率の調査、またその破綻に関わる因子の検討である。
方法:スロベニアの国家レベルのレジストリーの後ろ向き研究。2767例のPrfemurZステムの平均8年の経過観察。2002年から2015年までで26132例のTHAが登録されていたので、11%の症例で使用されていた。79%の患者がOAであった。チタン年句が90%の患者で、10%がコバルトクロムの症例であった。
結果:55例、2%の患者において無菌性の緩みが認められた。12年でのステム生存率は97%と算出された。ネック部での破綻を認めた患者は23例(0.83%)であった。23例中20例が男性で19例が長いネックを用いていた。男性、長いネック、若年、コバルトクロムネック、長いネック、手術からの期間が危険因子として抽出された。
結論:ProfemurZのゆるみ、破綻率は他の報告よりも低いものであった。しかしながら若年、コバルトクロムのネックではそのリスクが高くなった。多くの患者ではリスクが有益性を上回っており、もし別のステムが用いられていればこのようなリスクが生じなかったことを肝に命じておくべきである。

Introduction
モジュラーネックは大腿骨の前捻を調整することで脱臼防止に効果があるのではないかということで開発された。一つはヘッドとネックの部分の腐食によりMoMのARMD。もう一つがステムのネック部分での破綻である。2010年にProfemurZのチタン製のネックが骨折することが報告された。この報告では1.4%の症例においてネックの破綻が起こると報告している。ProfemurZは、2002年に開発され、692例の報告では12年間での再置換率が0.3%と報告された。2010年にチタンネックでの破綻が報告されたあとには2015年にはコバルトクロムネックはより高い破綻率によりリコールされている。
Patient and Methods
スロベニアの国家レジストリー。2457例、2767股に対して初回THAのステムとしてProfemurZが用いられていた。全体の登録数が26132例であったので、使用割合は11%である。78%の患者が一次性のOAであった。再置換をエンドポイントとした。平均フォロー期間は8年。48%が男性に用いられていた。
男性の平均年齢は60歳。女性の平均年齢は63歳であった。平均BMIは29であった。ProfemurZは22種類のネックを選ぶことができる。3例ではMoMTHAが行われておりこれは除外した。
Result
12年でのステム生存率は97%である。再置換までの平均期間は4年。再置換の主な原因はネックの破綻であった。ネックの破綻は23例(0.83%)で認められた。コバルトとチタンのネックで破綻までの期間に差はなく4年であった。男性、長いネック、若年、コバルトクロムネック、長いネック、手術からの期間が危険因子として抽出された。
考察
モジュラーネックTHAはいくつか使用されていたが徐々にその合併症が多数報告されるとともに使用頻度が下がってきた。新しいデザインのモジュラーネックはその成績は明らかとはなっていない。本研究はその新しいデザインのモジュラーネック型ステムの成績を国家レベルのレジストリーで明らかとした。本研究の限界は、患者の活動性について明らかとしていないこと。また大規模病院を中心としたレジストリーであるので中小病院での成績が不明なこと。ネックの詳細までは不明であったためどのようにネックが挿入されていたかが不明なことである。ステムの生存率は97%。またネックの合併症率は0.83%と以前なされた報告よりも良好なものであった。
ルーチンでのモジュラーネックステムの使用は行うべきではないと考える。今後テクノロジーが進歩したとしても特に前捻が強い患者のみを対象とするなど適切に患者選択が行われたほうが良い。


論評
スロベニアからの報告。
日本でも発売されているPrfemurZのネックでの破綻について。中期成績は他のステムと同様のものであったとのこと。
ただし、論文執筆者が述べているように、前捻を大きく変更しないと脱臼してしまうとかそういったこともないのにむやみにモジュラーネックを使うのは患者に不必要なリスクを負わせていることになるので現に慎むべきと考えます。
日本でも人工関節レジストリーが深化していきますがこのような危険なステムの抽出が行われ患者さんが無用な不利益を被ることがなくなると良いと思います。





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