2011年12月24日土曜日

20111224 Up to date Vitamin D insufficiency and deficiency in children and adokescents

ご無沙汰しております。
JBJSも良いですが、少し視点を変えて、骨・関節に関わりのある全身疾患について勉強してみたい!と考えました。

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Summry and recommendation

・母乳で育てられた乳児、ベジタリアンの肌の浅黒い小児、高い緯度の地域に住んでいる小児、吸収障害があるような疾患をもつ小児はビタミンDの不足の危険群である。
・上に記したような状態に当てはまる小児はビタミンDの毛中濃度を測定した方が良い。その際、スクリーニングとしては25(OH)Dの値を測定するとよい。
・ビタミンDの基準値はまだしっかりと定義されたものはないが、以下のような基準で判断する。
   ・25(OH)D>20ng/ml(50nmol/L) ビタミンDが十分足りている
   ・16ng/ml(40nmol/L)<25(OH)D<20ng/ml(50nmol/L) ビタミンDが十分ではない
   ・25(OH)<15ng/ml(37.5nmol/L) ビタミンD不足

・すべての小児(学童期を含む)は、一日少なくとも400ユニットのビタミンDを摂取すべきである。現在アメリカ医学研究所では生後から18歳までの間、600ユニット以上の摂取を推奨している。ビタミンD不足の危険が高い群では25(OH)Dが十分量に達するまで摂取する。
・おもに母乳で育てられた乳児については一日400ユニット分のビタミンDサプリメントを摂取するように推奨する。一日1000ml以上の母乳を摂取出来ていない限りはサプリメントを摂取した方がよい。完全に母乳だけで育てられている場合には母体の摂取量が一日4000-6000ユニット摂取していれば避けられるかもしれない
・乳児、小児で25(OH)Dが20ng/ml以下であれば、ビタミンD補充療法が勧められる。年齢、不足量に応じて1000-7000ユニットの間で6週間の連続投与を行った。維持量として400-1000mgの投与を行う。
・適宜フォローアップの採血を行う。
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骨密度は1~4歳、思春期にスパートをかけて増加することがしられています。(2011骨粗鬆症ガイドラインより)
ビタミンDは腸管からのカルシウム吸収促進、腎でのカルシウム排泄抑制に働きます。ですので小児期にビタミンDの不足は将来的な骨粗鬆症の可能性を惹起する危険性があると考えます。

長期的なコホートが可能であれば、ビタミンDが不足している小児が低骨密度となる、ということが追えるとよいのになあと思いました。

ビタミンDの投与はアメリカでは強く推奨されていますが、日本ではその測定も自費であることから進んでいないのが現状かと思います。
小児整形外科の分野で日本でのビタミンD量についてのデータ。日本人でビタミンDをサプリメントとして摂取することが必要なのかどうかという研究をしてみるのも面白いかと考えました。

2011年12月10日土曜日

20111210 JBJS(Am) A prospective RCT : nonoperative treatment w/ volar locking plate fixation for displaced distal radial fractures over 65

A Prospective Randomized Trial Comparing Nonoperative Treatment with Volar Locking Plate Fixation for Displaced and Unstable Distal Radial Fractures in Patients Sixty-five Years of Age and Older

抄録
拝啓
高齢者の橈骨遠位端骨折に対して掌側ロッキングプレートの有用性は言われているものの、手術治療が保存治療に勝る、とした適切なRCTに基づいた研究は勿った。今回は転位のある不安定型の橈骨遠位端骨折を受傷した65歳以上の患者に対して、掌側ロッキングプレートに対する治療とギプスによる保存療法との間でその臨床成績を比較することを目的とした。

方法
73人の65歳以上の橈骨遠位端骨折の患者。うち36人に掌側ロッキングプレートによる治療を。37人にギプスによる治療を行なった。治療判定にはpatient-related wrist evaluation(PRWE)、DASHスコア、疼痛のレベル、手関節可動域、合併症発生率、レントゲン写真上での評価を行なった。

結果
観察期間中に両者の間の疼痛レベルには優位な左派認められなかった。術後早期で手術群の方がPRWE、DASHスコアにて低い値を示したが、6ヶ月以降は両者間に差を認めなかった。握力の回復は手術群の方が良好であった。レントゲン写真上の評価は橈骨の短縮、背側へのtilt、radial inclinationの全てで手術群の方が優れていた。手術群の方が有意に合併症の発生率が高かった。

結論
12ヶ月間の経過肝s夏において、関節可動域、疼痛レベル、PRWE、DASHスコアの何れでも手術群と保存療法軍の間には有意な差を認めなかった。手術群の方が握力の回復では優れていた。この研究では解剖学的に整復、固定することが必ずしも患者のADL、関節可動域の改善につながらないと言うことがわかった。

考察
ロッキングプレートの導入以来、撓骨遠位端骨折は手術されることが多くなってきている。若年の患者においては手術治療によって機能予後の改善が認められ、また変形治癒にともなう変形性手関節症は機能予後を悪化させ、痛みのある手関節としてしまう。若い患者においては撓骨の長さを保つこと、関節適合性の改善が必要となる。
しかしながら高齢者について、解剖学的整復が必要かどうかと言う研究は殆ど無い。
Jupiterらは背側転位型の撓骨遠位端骨折に対してORIFを行い、治療成績を報告している。術後の矯正損失、撓骨神経障害、長母指屈筋の断裂、背側の疼痛による抜釘を経験している。Jupiterらは保存的治療を行い、その結果が好ましくないものに対して手術治療を行うべきであると結論づけている。
Beharrieは平均71歳の18人の患者に対して手術治療を行っい、その良好な成績を報告し、高齢者でも手術を行ったほうがよい、と結論づけている。
Youngらは60歳以上で高度の手関節機能を必要としない患者での撓骨遠位端骨折に対して保存療法を行った。そこでわかったことはレントゲン写真上での解剖学的整復の程度と臨床成績との間に相関がないことである。10人中6人が手関節OAとなったがウチ二人だけがOAの症状を訴えた。神経学的症状が残ったのは12%。明らかな臨床的な変形は56%に見られたが、手関節の見た目について不満を述べる患者は居なかった。Gartlandのスコアリングシステムでは88%で優、もしくは良の成績が得られた。
Rouemenらは55歳以上の撓骨遠位端骨折の患者に対して前向き研究を行った。すべての患者にたいして非観血的整復を行い、ギプス固定とした。2週間後に再度整復。43%の骨折で再転位が認められた。50%の患者が創外固定で治療され、50%の患者がギプス固定を続行した。創外固定群のほうが解剖学的整復位を得られていたが、臨床成績はギプスて治療した群と変わるものではなかった。
Egolらは後ろ向き研究で65歳以上に対してギプス固定群、手術治療群に分けて調査を行った。24週の時点で、手関節背屈について手術群が優っていたが、一年後の両群の成績に差はなかった。手術群の方が握力に関して優っていたが、疼痛、機能評価で両群に差を認めなかった。
我々の研究でも2群に臨床成績の差が出なかった。当然、OA変化をみるのに6.7年は短いという議論もある。しかしながらOAが存在したからといってソレがすぐ手関節機能の低下につながるわけではない。今回も53%の患者でOA変化を生じているが、一人も症状を訴えていない。
掌側ロッキングプレートは優れた手術方法である。しかしながらその臨床成績はギプスで治療した群と大きく変わるものではない。


<<論評>>
とにかく手術のほうがすぐれているのだ!とする最近の骨折治療に対する一つのアンチテーゼであると思いました。
現在田舎の小病院に勤務しているブログ主の実感にも一致する所があります。

数年前、富山で行われた骨折治療学会で同様のテーマでお話がありましたが、その時は”手術をしなければばOAで、手の専門医が困る!”という意見がありました。
日本の場合は65歳どころか80歳以上でも積極的に手術しているのではないでしょうか。

高齢化が進み、医療費も右肩上がりで増加している現在、何でもベストの治療を無制限に考えなしに提供するのはいかがなものかと考えています。
特に人生の先がある程度決まってきている、手関節機能を多く求めないような患者さんに対しては今回の論文の結果を参照としていただいて治療方針を決定しても良いのではないでしょうか。

もし、優れているとするのであればそれなりの研究デザインを組んで優れている、と主張することが科学者でもある医師の勤めではないかと考えます。

2011年11月11日金曜日

20111111 JBJS(Am) revision surgery following op. for LSCS

抄録
腰部脊柱管狭窄症の患者で、注意深く診察されたうえで手術に臨んだ患者は保存療法よりも除圧術の方がよりよい臨床成績を得ることができる。しかしながらいく人かの患者は合併症や持続する症状のため再手術を受けることになる。今回の研究は再手術にいたる因子として患者の年齢、合併症、以前の手術、手術方法との関連を調べた。
方法
Medicarewp用いた後ろむき調査。2004年に行なわれた31543例を対象とし、2008年まで追跡した。手術方法は除圧術のみ、2椎間までの単純な固定術、2椎間以上の固定または前後方固定術のような複雑な固定術の3つに分類した。再手術率は各々の年毎に計算し、ハザードモデルを用いて解析した。
結果
患者の年齢が高くなる、または合併症が多くなるほど再手術率は高くなった。年齢ごとに層別化して以前に手術したことがあるかどうかで分けてみると、以前に手術を受けている人は17%、以前手術を受けていない人は10%と有意に手術をうけた人は多数回手術をうける傾向にあることがわかった。
術後1年以内であれば除圧術のみ受けた人の再手術率が高いが、術後4年では除圧術のみ、単純な固定術の群はほぼ再手術率が同じになり、複雑な固定術を受けたひとの再手術率が有意に高くなった。
固定術後に再手術になった例で、デバイスによるとらぶるは29.2%にのぼった。
結論
年齢が高くなり、合併症を有すると再手術になることが多くなり、これが大きなリスクになりうると考えられた。最大のリスク因子は以前に手術の経験があるかどうかであった。術後1年の段階では固定術は再手術のリスクとはなりえないが、術後4年の段階では複雑な固定術を行なうことは再手術のリスクになるものとかんがえられた。 

考察
LSCSの再手術例は11~13%と報告されている。リスク因子としては年齢と合併症が考えられ、最も再手術にいたる因子は以前に手術をうけているかどうかであった。
黒人群で白人群よりも再手術率が低かったが、この理由については不明である。ただ社会的な要因、保険の内容、医師患者関係なども影響しているのかもしれない。
手術方法による違いはあまりなかった。多椎間手術で術後1年の時点で差が出なかった理由についてはわからない。
後ろ向き研究であるので、バイアスはかかっているので注意が必要である。
今後は一度再手術をうけた患者だどうしてまた再手術に臨むのかということについて調べることである。また、固定術の基準についても明らかにしていく必要がある。

<論評>
そもそもの再手術の多さに驚きました。アメリカだから、ということは影響しているのでしょうか。
他の因子についても検討してもらえるとおもしろかろうなあ。と思いました。

2011年10月26日水曜日

20111028 JBJS(Br) Does cementing the femoral component increase the risk of peri-operative mortality for femoral neck fracture patients

抄録
大腿骨頸部骨折の人工骨頭挿入術を行う際にセメントを使うと死亡率が上がるかもしれない、という警告がなされている。今回100以上の病院が参加している、National hip fracture databaseを用いて調査を行った。
骨セメントを用いて大腿骨頸部骨折の患者に対して人工骨頭置換術、またはTHAを行った患者。これらの対象に対して混合ロジスティック回帰分析を行った。129病院、16496人の患者。
結果わずかであるが統計学的に有意にセメント群の方が予後がよかった。(オッズ比0.86、95%信頼区間0.72−0.96)。死亡退院と関連する因子は年齢、アメリカ麻酔学会評価(ASA)、性別、屋外歩行が可能であったかどうか、人工関節であった。これらの因子とセメントしようかどうかということは関連しているものの、このモデルでは改善できなかった。
今回の研究ではセメント使用による死亡率の上昇は認められなかった。

考察
骨セメントはTHAの時には死亡率も低いことは知られている。大腿骨頸部骨折では患者の年齢が高くなるので、循環の問題や骨質の問題が生じてくる。
骨セメントを使用してもその死亡率が上がらないことは報告されているのも関わらずイギリスの健康保険省はセメント使用による注意勧告を出している。
NHFDはイギリスの大腿骨頸部骨折を2007年からまとめたデータベースである。イギリスの病院の90%が参加、登録している。
セメント使用による調整を加えない死亡率のオッズ比は0.66と大きな差が出た。しかし、セメント使用するかどうかは患者の背景に左右される場合があるので、調整を行った。セメントレス使用群はやや高齢でASAグレードが高い傾向にあった。しかしながらそのような因子についても調整して検討をおこなったがセメント使用群の方が死亡率が低いことがわかった。
この研究はいくつかの限界がある。一つはあまりにも大きなmassでの検討なので、細かい変化はわからないことである。
また死亡退院とエンドポイントを決めると、術中のトラブルだけでなく、その他の合併症での死亡も含まれてしまう。
この結果を単純に健康保険の場に持ち込むことには問題がある。あくまでもセメント群で少し死亡が少なかった、というだけでその医療機関、患者さん個々に対して同じように当てはめることができる訳ではないからだ。
大腿骨頸部骨折に対して骨セメントを使用することは死亡率を上げる訳ではない。

論評
どうやらイギリスの厚生省から、骨セメントの使用注意勧告が出たために、それに対する意見論文といったところでしょうか。
内容はさておき、最近統計に興味をもっているのでその部分で面白く読めました。

2011年10月24日月曜日

20101024 JBJS(Am) The effect of weekly Risedronate on periprosthetic bone resorption following THA: on RCT

Abstract
骨欠損とそれに伴う人工関節周囲骨折はセメントレス人工関節でおこることがある。この研究の目的はrisedronateを投与して人工関節周囲の骨吸収の状態を観察することである。

方法
40〜70代の変形性股関節症にたいしてTHAをうけた73人。端施設での二重盲検RCT。6ヶ月間35mgのrisedronateを週1回投与する群とプラセボ群とに分けた。プライマリーエンドポイントはGruenのzone1と7での骨密度の変化とした。骨密度は手術2日前、6ヶ月後、1年後、2年後で測定した。セカンダリーエンドポイントは大腿骨ステムの偏位と臨床症状とした。

結果
73例中70例の追跡が可能であった。Risedronate群33例、プラセボ群37例。zone1での骨密度はRisedronate群がプラセボ群よりも術後6ヶ月の段階で9.2%、1年の段階で7.2%、高かった。zone7での骨密度は術後6ヶ月で8.0%、1年で4.3%高かった。セカンダリーエンドポイントは両群で差が認められなかった。

結論
THAを受けた患者でのRisedronateの週1回投与は術後の臨床症状に悪影響を与えることなく、セメントレスステムの周囲の骨密度の減少をa緩やかにした。今後は実際にrevisionが減少したか、ステム周辺骨折が減ったか、ということについての経過観察が必要となる。

考察
週1回のrisedronateの投与はTHAの大腿骨近位の骨吸収抑制に術後1年の段階では有用であることがわかった。
同様の研究が以前大腿骨頸部骨折に対して行われたのだが、その研究よりも骨吸収抑制効果は高かった。より大規模にして実際にステム周辺骨折を防ぎうるかどうかを観察せねばならない。
bisphosphonateを用いることでのstress-shieldingが減少することはいくつかの研究で明らかとされている。また動物実験レベルではosteolysisも減らしている、という報告もある。
nation-wideに骨粗鬆症患者でTHAを受けた患者にbisphosphonateを投与してaseptic looseningが減少するかどうかを調べたところ、有意な差はなかったが、サブグループ解析ではrevisionの数を減らした、とする報告がある。
術前の骨密度と術後の骨密度との間に関連があることも今回の研究でわかった。術前から骨密度の低い群ではステム周囲の骨欠損がおこりやすい。術前から骨密度が低い群ではbisphosphonateの投与を行ったほうがよいのであろう。
現在bisphosphonateによる大腿骨骨折の報告が相次いでいるが、まだbisphosphonate製剤の投与のメリットが勝っていると考え、長期間投与を行った。
骨内架橋(spot welds)はプラセボ群の方に多く認めた。しかしながらステムの固定に関しては両群に差はなかった。この原因としては、プラセボ群の方が骨吸収が進んでいてspot weldsの観察が容易であったこと、bisphosphonate製剤によってリモデリングの過程が抑制された可能性を考える。
カップ側についても今後検討を加える必要がある。


<<論評>>
セメントレスステムはどうしてもストレスシールディングが起こり、それを防ぐ方法としてbisphosphonate製剤の投与を考慮された、ということでしょう。プライマリーエンドポイントとして骨密度となっているのは、超長期の経過観察ともっと大きなサンプルサイズがないとステム周辺骨折についての考察が困難であるから、と考えます。
大きな有害事象もないようですので、投与を検討する価値がある、と考えます。

2011年10月23日日曜日

20111023 JBJS(Am) AAOS clinical practice guideline : Treatment of osteoporotic spinal compression fractures

毎度おなじみAAOSのクリニカルガイドラインです。
今回は骨粗鬆性の脊椎圧迫骨折についてです。

余談ですが、診療ガイドラインは日本でも多く発売されるようになって来ました。診療ガイドラインに書いてあることは診療を行なっていくうえでの最大公約数、にすぎないと感じています。
ガイドラインに書いてあることは熟知していて、最低限医療者として提供すること。そしてその患者さんの個別性に合わせて必要な医療が提供できること。が僕の考えるEBMです。

閑話休題。

(エビデンスレベル:strong)
・神経学的な欠損がなく、画像上の圧迫骨折と一致する臨床症状がある患者にたいして椎体形成術を行なうことを推奨しない。

(エビデンスレベル:moderate)
・神経学的な欠損がなく、画像上の圧迫骨折と一致する臨床症状がある患者に対して4週間連続でカルシトニンを投与し治療することは勧められる。

(エビデンスレベル:weak)
・Ibandronateとストロンチウムの投与は画像上の圧迫骨折と一致する臨床症状のある患者に対して一つのオプションとして考慮されてもよい
・L3、4の圧迫骨折に対してL2の神経根ブロックを考慮してもよい
・kyphoplastyであれば考慮してもよい

(エビデンスレベル:inconclusive)
・ベッド上での安静が推奨できるかできないかをいうことはできない。
・装具による治療方法を推奨するかどうかはいうことをできない。
・急性期の運動療法が有効かどうかをいうことはできない。
・電気療法をおすすめできるかどうかをいうことはできない。
・後弯変形を矯正したほうがよいかどうかはいうことはできない。
・特別にこの治療法が効果がある、ということを腰椎圧迫骨折ではいうことができない。


最後の一文がすべてかも知れませんね。笑
エルシトニンの注射の話とかは全く出てきませんねええ。

2011年10月22日土曜日

20111022 JOS Thoracolumbar injury classification and severity score: a new paradigm for the treatment of thoracolumbar spine trauma

Abstract
胸腰椎骨折のメカニズム、自然経過、治療方法などは徐々に明らかになってきているものの、胸腰椎骨折の分類は単純すぎるかもしくは複雑すぎて実用に供しにくい。
そこでSpineTraumaGroupが胸椎骨折の新たな分類を考案し、治療方針の決定に用いてみた。
Thoracolumbar injury classification and severity score(TLICS) を作成した。
受傷形態、神経学的損傷、後方要素の破綻の三つの要素に対してそれぞれポイントを与え、合計点数で治療方針の決定を行なえるようにした。
今後この評価方法の妥当性と再現性。術後の長期予後についての評価が行なわなければならない。

TLICS:5点以上で手術、3点以下で保存的治療。4点であれば施設、術者の判断による。

TLICS


骨折型


(ともにhttp://www.springerimages.com/より引用)

2011年10月19日水曜日

20111019 JBJS(Am) A prospective RCT Comparing OT w/ independent exercises after volar plate fixation of a fracture of distal parts of radius

橈骨遠位端骨折術後にOccupational therapy(OT)によるリハビリと自分でリハビリを行った場合を比較したRCT

Abstract
橈骨遠位端骨折術後のOTの関与によるリハビリの効果ははっきりとしていない。今回はOTにリハビリを依頼した群と自律でリハビリを行った2群に分けて比較を行った。

方法
不安定型橈骨遠位端骨折に対して掌側ロッキングプレートにて手術治療を行った94例。OTによるリハビリ群と自律リハビリ群の2群に分けて6か月後の手関節機能を評価。評価項目は掌背屈の覚悟、握力、Gartland and Werleyのスコア、Mayoの手関節機能評価、DASHスコアを用いた。

結果
掌背屈でOTによるリハビリ群で118度、自律リハビリ群で129度と有意な差を認めた。術後3か月の時点で平均ピンチ力、握力、Gatland and Werleyのスコアでも自律リハビリ群が有意に良好な成績であった。術後6か月の時点で背屈、尺屈、回外、握力が自律リハビリ群で良好であった。DASHスコアでは差を認めなかった。

結論
橈骨遠位端骨折に対して掌側ロッキングプレートを用いた症例に対してOTによるリハビリは効果が見込めない。

考察
橈骨遠位端骨折術後の患者にOTによるリハビリテーションをおこなってもあまり有効でない、という結論となった。これは橈骨遠位端骨折の保存的治療を行われた患者でも同様の結論が前に報告されている。
他の研究では物理療法を行った群よりも自律でリハビリテーションを行った群のほうが良好な成績を得たとする報告もある。他の研究ではあまり差を認めていない。
今回の研究で興味深いところは、自律のリハビリテーションでより良好な成績を得たことである。その原因として考えられることは(1)術後は患者自身でリハビリを行ったほうが有効なリハビリとなりえるのではないか(2)OTはトラブルにならないように丁寧にリハビリをしすぎているのではないだろうか。ということである。
今回の研究では19%の患者の追跡が行えなかった。治療方針に不満を持っていた可能性がある。EPBの断裂を起こし、抜釘をおこなった患者がいるため成績に大きな差が出た可能性。症例が少なくαエラーの可能性がある。術者がかなり”痛みなしでは得られるものはない”ときついことを言ったことも影響しているのかもしれない。
今回の結果からはリハビリテーションについて術者が正しく介入できればOTの関与は不要であるということである。よりよいコーチングの方法がより良好な臨床成績を得るために必要となるかもしれない。


<論評>
アメリカからの論文です。医療体制が大きく違うので一概には言えないかなあとも思いますが、面白い結果だと感じました。
手術をやりっぱなしでいいよ、リハビリにおまかせでいいよということではなく、より良い機能を回復するためにはどうしたらよいかということを術者自身が患者さんに丁寧に伝えることが必要ですよ。ということが伝えたい論文なのではないかと感じました。
一昔前にはやったビリーズブートキャンプのようにだいぶスパルタでリハビリを進めるのだなあというのはすこしほほえましくも感じました。笑

2011年9月21日水曜日

20110922 骨折治療学会研修会アドバンスコースを受講してきました。その3

あまりにも内容が多く、十分にまとめきれませんが、とにかく自分が興味をもったところだけまとめていきたいと思います。

踵骨骨折 岡山医療センター佐藤先生、独協医科大学越谷病院 大関先生

踵骨骨折のアプローチはL字拡大皮切、横切開のいずれでも関係ない。とお二人の先生ともおっしゃっていたのが印象的。

・後方関節面の正確な整復
・外側壁のしっかりとした再建

についてお二人ともおっしゃっていたと思います。

距骨、踵骨はねじれの位置にある。まず外反変形を直すこと、ついで後方関節面の整復。

初診時のレントゲンは側面、Anthonsen像、軸位、踵立方関節像の4方向を。depression typeであればCTも必須。3DCTは客観的な評価には使えない。
波状皮切アプローチ。腓骨頭のすぐ遠位で皮切。腓骨筋腱をretractして関節包切除。posterior facetを展開。

外側から距骨下関節の整復をとにかく頑張る。内側から少しずつ戻してゆく。距骨下を鋳型にして押しつけていく感じ。

外側壁の整復はベーラーclampや、しっかりとしたプレート固定が必要。
クジラプレートではだめ!とのこと。(なじみのあるプレートだけにショックです。。。。)

足底筋の運動も重要。足底のコンパートメント症候群でclaw toeになる。

距骨下関節、股関節、脊椎の3つだけが人間の左右のバランスをとるために必要な関節。なので踵骨骨折で距骨下関節が機能しないと片脚起立が不能となり、高所での就労不可となってしまう。

機能予後は整復と関連しない。。。。

術後CT MPRでの評価をして自分の手術についての振り返りをしっかりと行うこと。

大腿骨遠位部骨折 岡山大学 野田先生、瀬尾記念病院 野々宮先生

プレート、髄内釘のそれぞれの限界を見極めて機種を選定すること。

プレート:ロッキングプレート、MIPOがよく用いられるようになってからさまざまな問題が出現。
MIPOにこだわるあまり十分な整復位が得られないまま固定してしまっている例も時々見られる。
abusolute stability~relative stability~intabilityの幅が非常に狭く、しっかりと整復位が得られていないと容易に偽関節化する。
1年から1年半以上たったところでインプラント折損などの大きなトラブルも起こることがあるので注意深い観察が必要である。

髄内釘は究極のMIPOであるという言葉にははっとさせられました。軟部組織の重要性が最近よく言われていますが、髄内釘は優秀な道具であると思います。

整復位の確保が気も。ジョイスティックテクニック、ブロックピンテクニックを用いる。
ネイルはできるだけ長いものを使用すること。
顆部スクリューをもちいた顆上骨折の圧迫手技もあるよ、とのこと。

2011年9月19日月曜日

20110918 骨折治療学会研修会アドバンスコースを受講してきました。その2

上腕骨近位骨折は夜に出たハンズオンセミナーで慶応大学の池上先生が説明してくださった部分も含めてまとめてみます。

上腕骨近位端骨折はplate VS nailの流れは続いている。
nailはストレートタイプのnailにかわってきているというのが世の趨勢らしい。
欧州での最近の報告ではややnailの方が優勢らしい。これはひとえにインプラントトラブルが多く、”disaster”と表現されるほど合併症が多いことが問題となっている様子。

大結節、小結節の整復がとにかくキモ。なぜならば骨頭壊死に至っても大結節と小結節がしっかりしていれば人工骨頭へのrevisionが容易におこなえるからである。
プレート法を用いるのであれば必ず縫いつけること。
SynthesのPHILOSは不親切設計で、先に糸を通しておかないと通せなくなるので注意。ジンマーとスミス&ネフューはそこの部分は改善してある。
小結節と肩甲下筋腱の引き出し。難しければLHB切除=>その後結節間溝に固定。
上腕骨頭は20度後捻。後方オフセットと内側オフセットに気を配る。
後捻があるので、本来はプレートはど真ん中ではなくすこし後方にスクリューが多い方が望ましい。Synthesからもその左右非対称性を考慮したプレートが今後発売される。

腋窩神経の取り扱い。帝京大学の小林先生の方法。
deltoid spritであけて、三角筋上のbursaを切開。指を突っ込んで皮下を探ると索条物が触れる。これが腋窩神経。内側から探る方法は有用であるが、怖いものを先にみておくのもよいというのは池上先生のtips。末梢神経切離しても縫合すればよい。というのはhand surgeonだからいえるのでしょう。

骨頭壊死するかどうかは骨折型と内側のヒンジがあるかどうかで決まる。

プレート固定の大きな問題としては内反変形。30−40%に発症するとの報告もある。
内反変形を予防するためには骨性のinfero-medial supportが必要。

上腕骨遠位端骨折
上腕骨遠位部の解剖学的特徴。
6度内反。前方にオフセットあり。上腕骨小頭の方が少し前方に出ている。(内側オフセット)
肘は屈曲したときに外反していくと顔に手がつかなくなることを想像するとこの解剖学的特徴が理解できる。

関節面の整復について。滑車切痕がせまくなって、尺骨の座りが悪くなることがある。関節面骨片同士をスクリュー固定する際には圧迫を強くかけないようにする。
尺骨神経は前方移行はデフォルト。皮切をおいて皮下を展開。内側で三頭筋から出てきたところが一番尺骨神経を見つけやすい。Osborne靭帯のところで見つけるのは結構大変。遠位までしっかり展開。近位では内側筋間中隔を切離して内側上顆の前方までしっかり移行し、筋膜を2、3針縫っておく。

骨幹端部は強固な固定を要する。場合によっては短縮も辞さない気持ちが大事。
高齢者ならTEAも考慮してよいか。

20110918 骨折治療学会研修会アドバンスコースを受講してきました。その1

骨折治療学会が主催する骨折治療学会研修会アドバンスコースを受講してきました。

骨折治療学会研修会HP

アドバンスコースの受講生だけで300人!!
脊椎を除く全ての骨折をこの2日間だけに!ということです。
しかも各分野のエキスパートを連休のさなかにあつめていただけるとは幸せだなあと感じました。
これだけの多くの人数に対して研修、教育を提供しよう!という関係者各位の熱意にはホントに頭が下がります。

ただ、多くの人に、一度にたくさんのことを提供しよう!としすぎている感は否めませんでした。
折角各分野のexpertの先生方のお話なので、一人1時間くらいあっても良いかなあと。そのために、上肢と下肢にコースを分けるとかの工夫はあっても良かったかなあというのが一日目を聴講させていただいた感想です。

さてさて、セミナーのまとめです。

総論 帝京大学 渡部先生
海綿骨を層で考えると軟骨直下の層は壊れることなく、4番目くらいの層に応力が集中して壊れる。これが脛骨高原骨折で関節が落ち込むときによくみられる形。半月板は応力の緩和効果に優れる。

joint congruityの計測評価
・整復の程度をX線写真だけで評価することは難しい。
・癒合した骨折の評価はもっと難しい。
・CTを用いると計測精度が高くなる。

過去の臨床研究からの知見として得られていることが、整復が良いからと行って臨床成績が必ずしも良いわけではなく、レントゲン写真でOAになっていても必ずしも臨床成績が悪いわけではない。

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関節内骨折の発表はCTを用いるべきかと考えました。
確かに、外傷を扱っている人間として悩ましいところで、綺麗に骨癒合が得られていても痛みが残ったりすることは稀ならず経験します。ひとつは多変量解析などの統計学的手法を用いて新たに手術以外にも介入できるポイントを探すことが一つ。もう一つは手術の技量をあげて低侵襲で正確な手術を粛々と行うというのが僕達にできることでしょうか。

関節内骨折の診断と分類 君津中央病院 田中先生
レントゲン写真を読むときにはまずは軟部組織から”s-ABC”
soft tissue,alignment,bone,cartilage
CTは絶対必要。また術中には透視で評価をするため、斜位像もとっておくと術中イメージ像との比較ができて役立つ場合がある。
骨折の分類はAO/OTA分類を。この分類に加えて各骨折の特異的な分類を用いる。

肩甲骨骨折”関節窩骨折並びに肩甲帯部複合損傷の治療”
順天堂大学付属静岡病院 最上先生

肩甲部複合損傷の治療目標は肩関節のcongruityとpower translationの再建が目標。
再建の順序としては鎖骨骨折の修復が鍵。
近位から遠位へ。前方から後方へ。

アプローチは肩甲窩前縁と烏口突起の骨折は前方アプローチで。それ以外の肩甲骨骨折は後方アプローチで。
後方アプローチは側臥位。肩関節挙上後方アプローチで。

2011年9月14日水曜日

20110914 JBJS(Am) PTH(1-84) Accelerates fracture-healing in pubic of osteoporotic women

Abstract

PTHは骨粗鬆症の患者でその骨折する率を下げるだけでなく、骨折治癒を促進することも知られている。PTH1-84を用いて閉経後女性で骨盤骨折を受賞した患者の骨折治癒率と機能予後についてのRCTをおこなった。

方法
65人の患者。21人を治療群。44人をコントロール群とした。治療群では1日1回100μgの注射を2日以内に開始。すべての患者に1000mgのカルシウムと800IUのビタミンDを投与した。評価は4週ごとにCTによる評価。仮骨形成がある、とするまでとした。また機能評価としてはtimed up and go testを用いた。

結果
骨折治療までの期間は、治療群が7.8週なのに対しコントロール群では12.6週であった。(P<0.001)。8週の断簡で治療群は全骨折が治癒していたのに対し、コントロール群では4例にとどまった。疼痛のVASスケール、timed up and go testはいずれも治療群がコントロール群を上回った

結論
骨粗鬆症をともなう高齢者の骨折でPTH1-84の投与は骨折治療を促進し、機能予後を改善する可能性がある。

discussion
PTHには骨密度の回復だけでなく骨折治癒を促進させる効果があることが知られている。そこで本研究では骨盤骨折を起こした高齢女性に対しその効果を調査した。
PTH1-84は骨盤骨折の骨盤骨折の治癒までの期間を短縮させることが分かった。
PTH1-34はラットの研究において骨折治癒機転を促進することが知られている。最近橈骨遠位端骨折に対してPTH1-34を投与し、その骨折治癒が促進されたという研究結果が報告されている。
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/19594305
橈骨遠位端骨折にテリパラチドを使ったら骨癒合促進
PTHの1-84と1-34のはその構成が異なる。それぞれ重度の骨粗鬆症の治療に用いられる。PTH1-34はヒトOTHホルモンの最初の35個のアミノ酸で構成されている。残りの50個のアミノ酸は活動しないPTHとされている。PTH1-84は完全な形のPTHである。これらの薬剤の使い分けについてはまだはっきりとした結論は得られていない。
骨盤骨折を今回対象として選んだのは、長期間の画商を余儀なくされ、高齢者であれば機能予後、生命予後ともに大きな影響を及ぼしうると考えたからである。
今回の研究で、PTHの使用に期間制限を設けなかった。前の研究では骨折治療前にテリパラチドの投与を中止した。
サンプル数が少ないのでαエラーの可能性は否定できない。

<論評>
キタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━ !!!!!

といった感じでしょうか。笑
脆弱性骨折(大腿骨転子部骨折、脊椎圧迫骨折、上腕骨近位端骨折)で同様の研究プロトコールで研究を行うことができそうですね。
脊椎の固定術後にも同様の使用方法で早期の骨癒合を期待するということができるかもしれません。

機能評価としてどんな施設でも容易に行えるtimed up and go testを用いていることも好感が持てます。本邦でもロコモティブシンドロームの診断基準の一つとなっているテストです。
http://www.japanpt.or.jp/esas/pdf/e-sas-s-tug.pdf

整形外科医たるもの、レントゲン上で骨癒合が得られた、というところに満足せず、より患者さんのADL回復につながる指標で評価をしたいものです。

PTH1-84は本邦ではまだ使えないようです。しかし、PTH1-34は発売されています。
まだ発売されて間もない薬ですので今後どのような副作用が出てくるやもしれず、慎重な経過観察は必要かと思います。

20110915 JBJS(Am)  Risk factor for postoperative infection following posterior lumbar instrumented arthrodesis

抄録

脊椎手術の創部感染は術後の重篤な合併症である。後方アプローチ、固定術、インストゥルメントの使用、年齢、肥満、糖尿病、喫煙歴、手術室の環境、術中出血などが今まで感染のリスクとしてあげられていた。今回の研究の目的は脊椎のインストゥルメントを用いた後方固定術における個々のリスクファクターについて明らかにすることである。

方法
3218人の患者。2000‐2006年までに脊椎の後方固定術を受けた患者の後ろ向き研究。2.6%(84人)の患者で感染が認められた。多変量ロジスティック解析を用い、脊椎手術の危険性について個々の因子について検討した。

結果
肥満、術中の出血量、手術中に10人以上が出入りするような手術室、硬膜損傷、糖尿病の既往、COPDの既往、冠動脈疾患、骨粗鬆症の患者であることが脊椎手術での創部感染のリスクであることがわかった。肥満とCOPDの存在が脊椎手術後の感染において最も大きな要因であることが明らかとなった。感染の原因菌で最も多かったのはMRSAで34.5%を占めた。


考察
今回の研究で新たに明らかになったことはCOPDの存在と骨粗鬆症、硬膜損傷が脊椎手術後の感染のリスクファクターとして明らかになったことである。今後はこれらの分野の研究調査も必要となる。

<論評>
時代はmass study と 多変量解析の時代に突入したのかなあ。と感じさせました。
PCの性能が向上して、いままで大きなPCでしかできなかった多変量解析を例えば僕のPCのような誰もが持っているPCでもできる様になってきたことがこの変化の一要因だと思います。
そのためには大規模なデータベースが必要で、そのデータベースに権利をもった人が誰でもアクセスできるようにすることが重要かと思いました。
さて、論文の内容ですが、術後感染のように多様な因子が関わるような出来事は何か一つを改善したからと行って劇的な改善が得られるわけではありません。
やれることを少しずつ改善することで初めて効果が現れてくるものだと思います。
まずは、手術中にBCRに出入りする人間の数を減らしますか。笑

2011年9月8日木曜日

20110908 Up to date: cervical spondylotic myelopathy

Summary and recommendation
・頸椎症性脊髄症は椎体と椎間板の加齢による変性、神経・血管の圧迫によって引き起こされる病態である。
・頸椎症性脊髄症に特異的な決まった臨床症状はない。徐々に進行する歩行障害ではじまり、感覚障害、筋力低下、頚部から上肢に疼痛を伴った手の筋肉の萎縮。その他頸髄症に特異的な診察所見で明らかとなる
・頸髄症はALSやその他の頸髄疾患と鑑別されなければならない
・頸椎症性脊髄症は特異的な臨床症状とMRIなどで認められる脊髄の圧迫所見を認め、脊髄症に特異的な臨床所見を伴った時に診断される。
・頸椎症性脊髄症の臨床変化、予後についてははっきりとしたものはない。徐々に症状が悪化し、長期間まったく安定していたところから階段状に悪化することもある。また軽微な頚部の外傷で症状を急激に悪化させることがある。
・治療方針を決定づけるうえでの大規模な無作為化試験は存在しない。神経学的予後を保つために、悪化する前に軽度の圧迫があるような患者では手術を行ったほうがよいとする報告がある。手術を行わずに経過をみる場合にはより細かに神経学的な変化に注意を払いながら外来でのフォローを行わなければならない。保存療法としては頸椎装具、疼痛コントロール、危険なスポーツへの参加の禁止などがある。より深刻な脊髄症がみられる患者では除圧術を考慮すべきである。
・急速な症状の進行、急性発症した脊髄症では神経学的救急の対応が必要となる。MRIを撮像した後に速やかに脊椎外科医へのコンサルトを必要とする。このような場合にはメチルプレドニゾロン大量投与療法を行うほうがよいかもしれない。

<論評>
頸髄症についてのまとめを読んでみました。
頸髄症はその鑑別がまず問題になる、ということが分かります。
脊髄炎、脊髄梗塞、血管奇形、亜急性連合症候群、脊髄空洞症、髄膜へのがんの転移、多発性硬化症、ALSが鑑別となります。
次に、頸髄症の治療についてです。どのタイミングで治療を行うとよいか、ということはまだ議論の対象である、と理解しました。
明らかな痙性が出ているもの、歩行障害が強い例では手術治療をおすすめしますが、手の使いにくさ、しびれを訴えるような例ではどうするか?高齢者や合併症が多い例で手術に踏み切ることができないときにどう対応するか?というのは悩みどころです。
最後にメチルプレドニゾロンの大量投与療法(いわゆるNASCIS2)が推奨されていますが。。。最近アメリカの脳神経学会でその有効性には疑問がつけられているはずです。
 

まだこれからの大規模な臨床研究に期待。という分野ではないかと考えます。

2011年9月4日日曜日

20110904 JABO advanced courseに参加しました。

JABO(Japanese association for biological osteosynthesis)の主催するセミナーに出席してきました。

JABOとは 

JABOは骨折治療のセミナーの中でもAOととも有益なセミナーのうちの一つです。
年に数回主要な骨折についてそのメカニズムから治療法までハンドアウトを用いて教えてくださる素晴らしい団体です。
私このセミナーはほとんど受講しておりましたが、3年前からAdvancedコースが始まったとのこと。
早速受講して参りましたので、その勉強した内容をまとめてみたいと思います。

”難しいピロン骨折の治療”

Pilonとはフランス語ですりこぎの棒のことらしい。
関節内骨折であること、荷重関節であること、下腿遠位は被覆する軟部組織が薄いことなどから非常に治療に難渋する骨折のうちの一つとして知られている。

この骨折の治療のキモはとにかく軟部組織(Soft tissue)

軟部組織は外傷によってダメージを受けるため、そのダメージから回復する時間を稼ぐために、現在ではStaged surgeryが提唱されている。(Sirkin JOT 1999)

・第一段階 受傷早期に創外固定、牽引による短縮の回避。(可能であれば腓骨の固定、関節面整復。ここが難しいので後述)
・第二段階 definitive surgery(プレート固定、イリザロフ法)

第一段階から第二段階まで平均10‐14日は待機。皮膚の腫脹が軽減し、シワが出てくる頃までは少なくとも待つ。(Wrinkle sign)

第二段階でのアプローチ。
・Antero-medial(古典的なアプローチ)
・Antero-lateral
・Extensile approach(Modified antero-lateral)
関節面の整復、骨片の状態、皮膚の状態(水疱、壊死)などに合わせて選ばなければならない。
この時腓骨側の皮切との距離は一般に7センチと言われているが、5-7センチおいてあればよいとする報告もある。ただし感覚はあいていれば開いているほどよい。

術前評価に3DCTは必須。詳細な計画をたてるためにもStaged surgeryにして時間を開けることは重要。


第一段階の手術では創外固定。腓骨はできるだけ固定された方がよいが、次の手術の戦略が立てられない時や腓骨が粉砕して解剖学的な整復位を確保できないのであればK-wire髄内釘のみとし、プレートは当てない。
関節面の整復もプレート設置の邪魔になることがあるので、第二段階の手術の計画が完全に立たないのであれば行わない。

第一段階から第二段階までは患肢挙上、cooling、自動運動を励行。福山市民病院の小川先生の開発された”やぐらいらず”はユニークな方法。創外固定の部品で腓腹部の後面にやぐらを組んで除圧。

骨折型の評価
・内反変形(tension failure):medial butress plateが有用。
・外反変形(compression failure):こちらの骨折型は腓骨の粉砕を伴うので第一段階での手術で腓骨を固定するときには細心の注意が必要。
medial butress plateでは外反転位を防げないので前方からのアプローチ、固定が必要。脛骨外側columnの再建を。

CTでのチェックポイント
・key fragment( Tillaux結節を含む骨片。前脛腓靭帯付着部)。コレを翻転もしくはよけて関節面を整復。粉砕が強い時にはこの骨片から整復を行ってゆく。

LCPはこの骨折に関して言うとかなり合併症が多いことに注意。

関節面は内外のコーナーの再建をしっかりと。ここに距骨からの負担が最もかかる。鈍のみをもちいて細かい骨片は面で距骨に押し当てるとよい。


とにかく大事なのは腓骨の処理。
腓骨の長さが足りていないと早期にOA変化が出現。
透視下にMoteise view にて距骨と内果の距離が4mm以下になるように。腓骨と距骨のBall signも参考になる。
粉砕していたらDCPのような厚いプレートで。1/3円プレートを用いるのであればラグスクリューテクニックを併用。腓骨骨幹部により近く横骨折で80%以上の皮質の連続であればK-wire髄内釘でも許される。

脛骨を止める絶対的なプレートはない。

骨幹端部の骨欠損には骨移植を。量が少なければ脛骨近位端外側からでもOK。

<まとめ>
まずは創外固定で軟部組織の保護を。しっかりとしたプランニングを。といったところでしょうか。

非常にタメになる会でした。年に1回しかありませんが、興味があるかたは是非ご参加を。笑

2011年8月19日金曜日

20110824 JBJS(Am) Evidence based orthopaedics: Bisphosphonate use for >5 yrs increased risk for subtrochanteric or femoral shaft fractures

閉経後の女性で長期間にわたってbisphosphonate(以下BP剤)を服用していると転子下骨折、または骨幹部骨折のリスクが高くなるか?

カナダのオンタリオ州で行われた地域ベースの症例対象研究。7年間フォローされた。

症例はBP剤を飲んでいて大腿骨転子下骨折、骨幹部骨折を起こした68歳以上の205,466人。コントロールとしてはそのような骨折を起こしていない5人を年齢をマッチさせてそれぞれ割り当てた。
骨軟化症、甲状腺機能異常、てんかんなどの既往がある場合には除外した。
 
研究の参加者をBP剤の内服期間に応じて、長期(5年以上)、中期(3-5年)。短期(3年未満)の3群にわけた。これらをそれぞれ内服して100日未満のグループと比較を行った。

primary outcome は大腿骨転子下骨折、骨幹部骨折で入院したかどうか、secondary outcomeとしては骨粗鬆症による大腿骨頚部骨折、転子部骨折による入院とした。

結果
7年間フォローしたところ、BP剤を飲んでいる高齢者は全体の0.35%、716人が大腿骨転子下骨折、または骨幹部骨折で入院した。5年以上内服した群では大腿骨転子下骨折、骨幹部骨折のリスクが高くなった。secondary outcomeとしては9723人が大腿骨頚部骨折、転子部骨折で治療を受けた。長期間内服したほうが骨折のリスクを減らせる(0.76CI 0.63-0.93)が、短期間内服ではそれほどの意味はなかった(0.93CI 0.81-1.07)。

結論
5年以上のBP剤の内服は大腿骨転子下骨折、骨幹部骨折のリスクを高くする

今回の結果から導かれたこと
・BP剤の長期投与を行ったほうが骨粗鬆症による骨折を減少させることができる
・5年以上の内服を行った群のみで非定型的な骨折が起こりうる。(500人中1人くらい)
・非定型的な骨折自体は稀であるので、その治療効果とリスクとを天秤にかけて使用すること


<論評>
一時期話題をさらったBP剤による大腿骨転子下骨折と骨幹部骨折の話の大規模な研究です。
僕の意見も結論と同様です。可能であれば積極的に治療を継続する以外にはないと思っています。
リスクが上がるといっても、転子下骨折をおこす!ということを予見する方法がない限りは、難しいですよねええ。

2011年8月14日日曜日

20110815 JBJS(Am) AAOS guideline : The diagnosis of periprosthesis joint infection of hip and knee

AAOSから出た人工関節感染の診断についてのガイドライン

Evidence level

<<Strong>>

・人工関節感染を疑った時には、血沈、CRPの測定をおこなうことを強く推奨する。
・膝の人工関節置換術後の患者で、感染が疑われているような場合には関節穿刺を行うことを強く推奨する。また同時に穿刺で得られた関節液を培養に出すことと、白血球数を含めた成分分析を行うことを強く推奨する。
・股関節の人工関節感染が疑われるような場合には、別の表に示すようにその時々によってアプローチの方法を変える。
・人工関節感染を否定するために術中にグラム染色を行うことは全く推奨できない。
・人工関節感染と確定診断に至っていない患者で、再手術中に人工関節周囲の組織を凍結迅速病理診断に出すことは強く薦められる。
・再手術の最中に複数個所から細菌培養の検体を提出することを強く推奨する。
・提出した培養の結果が出るまでに適当な抗生剤を用いて治療をすることは全くお薦めできない。



<>

・股関節の場合、見た目の人工関節感染の可能性と穿刺液の培養の結果が食い違うようであれば再度穿刺を行ったほうがよい
・関節穿刺を培養に出すときには最低2週間は抗生剤の使用を止めておいたほうがよい
・感染している可能性が低く、人工関節感染と診断され、再手術を受けている患者でも術前の予防的抗生剤投与は行ったほうがよい。

<>
・核医学検査は診断が確定しておらず、再手術の予定もない患者では診断の助けになるかもしれない

<>
・CT,MRIは診断の助けになるのかどうかは結論が得られていない

<>
・股関節の場合、感染していなさそうで、血液検査でCRPまたは血沈のどちらか一方だけ異常値である場合には3か月以内に定期的に採血を行い再評価を行ったほうがよいかもしれない
・膝関節の場合、見た目の人工関節の可能性と穿刺液の培養の結果が食い違うようであれば再度先生を行ったほうがいいだろう、という意見がある。



<論評>
人工関節感染ガイドラインですが、あまり大したことは書いてなかったですねえ。

2011年8月13日土曜日

20100813 JBJS(Am) Total Joint arthroplasty in patients w/ Hepatitis C

Virus (www.bums.nu)

抄録

C型肝炎は全世界で見られる病気であるが、C型肝炎に罹患している患者が人工関節置換を行われた場合の予後についてはほとんど知られていない。今回HCV陽性でC型肝炎になっている患者でTHA、TKAが行われた場合の術後合併症について調査した。

方法
1995-2006年までに手術を受けた71人の患者。40人がTHA、21人がTKAを受けた。血液検査では肝機能異常は指摘されていない。HIV、HBVの混合感染は除外。血友病も除外。HCVグループに年齢、BMI,性別、手術を受けた年、糖尿病、RA、免疫抑制状態などを2:1でマッチさせて症例対照研究を行った。

結果
HCV感染群では、THAを受けた15%の患者で抗生剤の内服、創洗浄、デブリードマンを行われた。10%の患者でインプラントの緩み、インプラント周囲骨折、脱臼などの機械的な合併症が起こった。これに対して対照群では創感染は3.8%、機械的合併症が起こった患者は3.8%であった。
TKAに関してはHCV群の9.4%の患者に機械的な合併症がおこった。対照群は4.7%に創感染を発症し、1.6%で再置換を必要とするような深部感染を発症した。
HCV感染は入院期間の延長、周術期、晩期合併症の増加、再手術、再置換率の増加を有意に認めた。

考察
HCV感染は関節置換術に置いて危険因子の一つであると言える。しかしながらその理由については不明であるのでさらなる研究が必要である。

Disscution
HCV感染は全人口の1.8%に存在する比較的よく見るウイルス感染症である。
HCVは肝硬変のリスクとなりうるが、今回の手術群では肝機能はすべて正常範囲内であった。肝硬変や、肝炎の状態にない患者でも入院期間の延長、合併症の増加などのリスクが高くなることが今回の研究で明らかになった。
最近知られてきている事実として、HCV感染は多様な肝臓以外の症状を引き起こす。
例としては甲状腺炎、糖尿病、凝固異常、血管炎、腎糸球体炎、炎症性の筋炎、関節痛、MCTDなどなどである。
血小板機能が低下することも知られており、今回、合併症がHCV群で多かったのは出血コントロールが付きにくい事も影響しているのかもしれない。ターニケットを用いたTKA群では創治癒不全が生じなかったことから凝固系の機能低下が関連しているのかもしれない。
HCVには糖尿病が合併しやすい事が知られている。糖尿病は手術の危険因子となりうる。実際、HCV群の21%(アメリカ全体で糖尿病の罹患率は約10%)と高かった。しかしながら今回は前もって対照群も糖尿病を有する群をあてはめてあるのでこの議論については結論を出すことができない。
この研究の限界点は後ろ向き研究である事である。
今後HCV陽性であることでどうして術後合併症の発生率が高くなるのかという研究がなされる必要がある。

<論評>
やられたなあと言う感じです。笑
日本の病院はほとんど術前にHCVなどをスクリーニングとして採血をしていますが、このように術後の成績に影響を与えうる。というところまでには頭が及びませんでした。
HBV,HCV,HIVはいずれも関節症状をきたしうるウイルス群ですので、何かどこかで影響しているのかも知れません。
脊椎、手の外科などの神経を扱う手術ではHCV陽性ならどうなるのだろう、大腿骨頸部骨折では?多発外傷では?と言うのが新しい疑問として湧いてきますね。
後ろ向きの症例対照研究ですので、このpaperのプロトコールに沿って行えばすぐ出来ますしね。

2011年8月7日日曜日

2010807 Up to date Lumber spinal stenosisの続き

手術治療
LSSに大して手術治療は症状を軽減し、機能の回復の面で有効な手段の一つである。手術治療は保存治療が限界となったところで行なわれる。LSSを保存治療を行なうと約30%の患者が手術治療を希望する。
緊急手術は神経外科学的欠損、膀胱直腸障害が出現した場合に行なわれる。腰椎の変性でおこることは稀で腫瘍や脊髄円錐症候群として起こる。手術後の予後は手術までの時間と麻痺の程度によって決まる。
手術治療としては椎弓切除が考慮される。固定術は腰椎の側弯がある場合に考慮される。側弯がない場合には固定をしない方が合併症の発生率が少ないため、旧来の椎弓切除の方が好ましい。

椎弓切除術
LSSに対して手術治療が有効であるとするシステマティックレビューがある。
60―90%の患者で術後症状が改善していることが様々なコホート研究で言われているが、疾患の性質上試験の再現性に乏しく、また患者個々の状態が違うため比較、評価することは困難である。

棘突起拡大インプラント
最近開発されたインプラントで、MISの一つといわれている。
良好な成績も報告されているがその長期成績、副作用についてはまだまだ不明な点も多い。

側弯をともなったLSS
何かしらの固定を用いられる。
インプラントを用いることで骨癒合率の改善を認めたが、そのことによる臨床成績の影響を調べた報告はない。
合併症を集めた報告では全体の13%に血腫を含めた合併症が生じる。

また非常に高価な手術となることが多い

患者の選定
LSSの手術に関してはそのメリット、デメリットについてよくお話しておく必要がある。
15―25%の患者で再手術を受けることになる、ということも同時にお話しておくべきであろう。

手術による合併症での死亡率は0.5―2.3%
感染、深部静脈血栓症などの重大な合併症が起こる可能性は12%
患者の年齢、併存症が手術の危険性と関連。インプラントを用いるか、手術する脊椎高位、数が合併症率に影響する。
術後成績に影響する因子はシステマティックレビューでえられている。

手術成績に負の影響を与える因子
・うつ病の既往
・歩行能力に影響をあたえる併存疾患の存在
・心血管系の合併症を有する
・側弯症の存在

手術成績に正の影響を与える因子
・男性
・若年
・歩行能力が保たれている
・自らの健康に対して自信があるタイプの性格
・併存症が少ない
・狭窄が画像上でも明らか

喫煙はいかなる場合でも術後の成績不良因子として挙げることができる。

2011年8月6日土曜日

20110806 JBJS(Br) Operative vs non-operative treatoment of acute rupture of tendo achillis

アキレス腱断裂はスポーツ好きの中年に良く発症する外傷である。治療方法としては再断裂が少ないという理
由で手術治療がすすめられることが多く、また最近では経皮的に縫合する方法も散見される。
しかしながら最近のメタアナライシスでは手術治療でも、保存治療でもその治療成績には差がない、とする報告がある。早期復帰についてもその成績は同等であった。とされている。
今までの報告は合併症に焦点を当てて報告がなされていたが、今回は機能予後について注目して、手術療法と保存療法の二つを比較検討してみた。

Patient:60歳未満。受傷後10日未満で、RA、腎機能障害、ステロイド注射などの他の治療を受けていない患者80名
手術群か保存療法群かはカードを引いて決定

Setting:イギリスの900床以上の大病院での単施設研究

Intervention:
手術群は観血的に皮切を加えて吸収糸で縫合。術後は完全尖足位で4週間、半尖足位で2週間。ギプス除去後から全荷重可
保存療法群は4週間の完全尖足位ギプス、4週間の半尖足位ギプス、2週間の中間位ギプス固定を免荷で行った。

評価はVAS、関節可動域、トルク、筆者がShort muskleskeletal function assessment questionare(SMFA)を用いて評価した。

1年間にわたるフォロー。12週、16週、26週、52週で評価を行った。
Result:
Intention-to-treatの原則に従って結果を評価。
患者背景に有意差なし。
VAS有意差なし。
足関節可動域は3カ月までは変わらなかったが、半年後には手術群の方がわずかに良かったが、有意な差を呈するには至らなかった。
トルク(筋力)はほとんど差が生じなかった。
SMFAは3カ月の時点で有意な差を生じたもののそれ以降は同様の成績であった。
再断裂率は手術群5%、保存療法群10%で有意な差にはなりえなかった。

結論:手術をした方がよいという積極的な根拠を認めるには至らなかった。ルーチンに手術療法を行うことはおすすめ出来ない。

<論評>
少し前から言われていたことの追試、といった役回りでしょうか。
これ以外の患者群の設定の場合にはどうなるかということは分かりませんが、一般的には手術を強くおすすめすることは無くなってゆくのでしょうねえ。

2011年8月4日木曜日

20110804 Up to date. Lumber spinal stenosis: treatment and prognosis

Summary and recommendations
腰部脊柱管狭窄症(LSS)は腰椎の変性のために起こり、60歳以上で罹患することが一般的である。

・腰部脊柱管狭窄症の神経学的な予後自体は良好である。多くの患者さんが数年のフォローアップの間は特に症状の悪化なく経過する。しかし、一部の患者さんでは症状のためADLの低下が見られることがある。
・進行性に悪化する神経学的症状のないLSSの患者さんでは、保存療法を行なうべきである。理学療法や、鎮痛剤が用いられることが多いが、その効果について確固たるエビデンスはない。
・手術治療は適切な保存療法を行なったにもかかわらず症状の軽快が認められない患者、進行性に悪化する神経症状を認めた場合に考慮される。
側弯を認めない場合、何かしらの固定法を用いいない椎弓切除術は,インプラントを用いた他の方法より好んで行なわれることが多い。
・進行性の馬尾症状、脊髄円錐症候群、新規に生じた膀胱直腸障害を稀に生じることがあるが、このような場合には緊急手術の必要性についてコンサルトすべきである。

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LSSの予後
32人の患者を49ヶ月間フォロー、70%の患者で症状は変化せず。15%の患者で改善。15%の患者で症状の悪化をきたした。症状が不変であってもLSSによる不快感のためにADLが低くなった患者さんもいた。
(Johnsson KE The natural course of lumber spinal stenosis. Clin orthop relat Res 1992)

LSSの保存療法
理学療法、薬物療法、硬膜外ブロックなどがあげられる。

理学療法
理学療法は保存療法としてよく行なわれるが、その根拠は不明である。運動療法のレジメもないが、ストレッチ、筋力強化、有酸素運動などがよく勧められる。治療の目標は筋力の改善と姿勢の改善である。
腰椎の可動域の回復と腰椎の前弯の解消を主たる目的とする。体幹コルセットによって腰椎の前弯の解消に役立つものの帰って腹筋などの筋力低下につながるのではないかと危惧されている。
(Willner S effedt of a rigid brace on back pain Acta orthop scand 1985)
無作為試験でトレッドミルによる歩行訓練と腰椎のストレッチを行なった群との比較では歩行群の方が改善が良かった。(1年後には両群に差はなかったが。)
(Whitman JM A comparison betmeen two physical therapy treatment program for patinet w/ LSS ,RCT Spine 2006)

決まったレジメはないものの、これらの報告を参照して患者指導に用いると良いか。

薬物療法
NSAIdsなどが使われるが、その効果効能、副作用についての詳しい調査はない。また神経学的予後にどう影響するかという報告もない。

硬膜外ブロック
LSSに対する硬膜外ブロックの効果について確固たるエビデンスは存在しない。いくつかの限定的なエビデンスがあるのみである。(後ろ向き研究では効果があるとするものもあるが、小規模のRCTでは1ヵ月後にはプラセボと変わらない効果とされている。)


<論評>
腰部脊柱管狭窄症についてのUp to dateの記載です。
まだまだ分かっていないことがほんとに多いことを実感。
保存療法についても多施設でプロトコールを組んでやれると面白そうですね。

2011年8月1日月曜日

20110801 JBJS(Am) Comparison of total hip arthroplasty performed w/ or w/o Cement.RCT, 20 years F/U



抄録
THAのインプラントはすばらしい長期成績が報告されて来ているが、そのインプラントの固定法については未だ議論がなされている。250例の変股症の患者に対して無作為にセメント固定群とセメントレス群とにわけ、Kaplan-meier生存分析を用い平均20年間のフォローを行った。結果、セメントレスステムの生存率は99%であった。レントゲン写真上セメント固定ステムの95%に、セメントレス固定ステムの88%にいくらかのstress-shieldingを認めた。Grade3以上のstress shieldingはセメントレスステムの12%に認めた。

Malloy head total hip システムを使った20年の成績。
セメントレスシステムはセメント固定ステムの成績を上回った。このセメントレスTHAの生存率の全体の改善は大腿骨側ステムの長期成績が確保できたことが最も大きな容易であると考えられる。(ステム生存率は99%)
カップ側の置換率はともに大きな違いは認められなかった。
この研究の限界は、ステム以外はもう現在使われていないデザインであるということ。この研究はMalloy-headについてのみ、の検証であり、他のシステムについて同じことが言えるかどうかは不明である。

<論評>
股関節に興味をもっている人間として、読んでみました。

セメントレスステムの長期成績はものすごく安定している。と言うことがひとつ言えます。
以前このブログでも書いた記憶があるのですが、人工股関節の寿命がどれほど長いかを競う時代は終わりを告げようとしているのではないでしょうか。
人工股関節の生存に関する成績自体は安定しています。
やはり、人のQOLに関わる仕事をしているからこそ、その部分に着目した評価を行うべきでは無いかと考えています。

僕が考えるセメントレスTHAとセメントTHAの利点、欠点について
・セメントレスTHA
利点
・優れた長期成績
・手術時間が短い
・手技がセメントTHAよりは容易
欠点
・modular neckでない限り、ステムの太さとネックのオフセットが比例するので高齢者で髄腔の太いタイプでは大きなオフセットになりがち。
・脚長差、術後大腿部痛の出現はある一定の頻度で出現
・初期固定性が得られないと結構miserable
・髄腔の形状にステムの前捻、設置場所が規定される
・臼蓋側も同様に高位設置気味にならざるを得ない。
・revisionはfull porusタイプではとても大変。しっかりとした骨への固定性はrevisionの際の抜去困難と同義
・stress shieldingによる骨萎縮の問題

・セメントTHA
利点
・フレキシブルに脚長、前捻をコントロールできる。
・revisionがしやすい
欠点
・とにかく煩雑。手術チーム全体がセメントTHAに対する理解がないとトラブルが頻発
・セメント手技にともなう重大な合併症の可能性(血栓症など)
・手術時間が長い。

あくまでも僕の考えるところですので、機種の選定は術者がその機種についてしっかりと理解した上で行うべき。と考えますし、手術はナースや麻酔科の先生方の協力あって初めて成り立つものですので、チームとしてどうしたいかというコンセンサスを得ることも非常に重要であると考えました。

2011年7月21日木曜日

20110721 整形外科と漢方



整形外科は”痛み”と向きあうことの多い科です。
痛みは他覚的に評価することが困難です。またその原因もはっきりしないことも多いです。

整形外科は数多くある運動器疾患の痛みのうち、治せる一部のものを取り扱っています。
それは同時に、多くの”手術では治ることのない痛み”の患者さんが大勢いることを意味します。

僕はこの田舎にいて、”治せない”患者さんと多く向き合ってきました。
MRIで脊柱管が狭くないのに両下肢がしびれてしまっている人。
多発圧迫骨折後で慢性の腰痛を抱えている人。
90歳を超えた末期の両変形性膝関節症の人。

現代医療から外れてしまい、治療法がない人たちに、違った見方から何かしらの医療を提供できないかと考えて、今回は漢方について勉強してみました。

漢方の最大の問題は”エビデンスがない”ことです。

漢方の処方を僕達整形外科医が行うときには、まず、一般的に成績の得られているエビデンスがある治療を提供すべきと僕は考えます。
それでもダメなときのオプションとして、隠し持っておく意味はあるかなと思って提示しました。

皆様のご意見いただければ幸いです。

2011年7月20日水曜日

20110720 Up to date Acute compartment syndrome 続き

ACSの解剖と臨床症状との関連



下腿は4つのコンパートメントに分かれる。前方、外側、後方、深部後方。
前方コンパートメントは最もACSが起こりやすい。4つの伸筋腱、前脛骨動脈、深腓骨神経を含む。
前方コンパートメントACSが起こると第1趾、第2趾のつま先の感覚低下、足関節の背屈が困難になり、時間経過と共に下垂足、鉤状足となる。
外側コンパートメントは足関節の外転、腓骨動脈、浅腓骨神経、深腓骨神経の近位を含む。深腓骨神経が傷害されると前方コンパートメントと同様の症状が起こる。浅腓骨神経の障害では下肢、足の感覚低下が起こる。
深部後方コンパートメントは足底の底屈、後脛骨動脈、ひ骨動脈、脛骨神経を含む。このコンパートメントの障害では足底の感覚低下、足指の屈曲力の低下、他動的に足指を曲げると疼痛が誘発されるといった症状がある。
後方コンパートメントでは神経血管束を含まない。この部分でおこるACSは頻度が低い。

(前腕、大腿についても記載がありますが、読者の皆さんが希望されれば提示します。笑)


ACSの臨床症状
起こりうる症状
・我慢できないほどの痛み
・長く続く深部の焼け付くような痛み
・感覚障害(ACSが発症してから30分から2時間程度で発現)

他覚所見
・コンパートメントに関連する筋を他動的に動かすと疼痛が誘発される
・触診で”木材を触るような”感覚がある
・動脈の拍動低下(ほとんどみられない)
・感覚の消失
・筋力低下
・麻痺

一般に古来から言われるACSの5P(pain, pallor, pulselessness, paresthesias, paralysis)は正しくない。
Systematic reviewで感度、特異度とも低いことが分かっている。コンパートメント圧の測定のみが確定診断に役立つ。
”我慢できないような疼痛”はACSの早期の発見に役立つ。しかしその特異度はあまり高くない。
患肢の屈曲による疼痛の誘発はACSの診断に有用であるとされているが、再現性に乏しい。圧痛はコンパートメントの上昇を示唆するが、深部コンパートメントの診断には役立たない。
神経学的所見としては、ACSとひ骨神経麻痺との鑑別が難しい。2点識別能の低下はACSの可能性が高いとされている。
筋力低下は外傷があると評価困難である。

臨床的に信じられているいくつかの誤解を下記に記す
・開放骨折ではACSにならない
・酸素飽和度の値を測っていれば良い

血液検査の値でACSを診断することは出来ない。CKが上がっていれば横紋筋融解を起こし、そのためにACSを起こす可能性はあるといえる。

測定方法

ACSの危険性があると考えられるような症例では継続的に繰り返しコンパートメント圧を測定する必要がある。
直接法と間接法がある。
直接法はコンパートメントに直接針をさして行う方法
間接法は正常コンパートメントが0-8mmHgであることを利用して、
・末梢毛細血管が20mmHgで阻害される
・20-30mHgまで圧をかけたら疼痛が誘発される
・30mmHgまで圧をかけたら虚血になる
ことを観察する方法である。

治療はとにかく覆っているものをなくすことが肝要である。
どのコンパートメント圧で筋膜切開を行なうかということについては一定した見解はない。

2011年7月19日火曜日

20110719 週間医学界新聞より サンプルサイズの計算方法

http://www.igaku-shoin.co.jp/paperDetail.do?id=PA02937_06


週間医学界新聞さんへのリンク 
  
週間医学界新聞に統計についての面白い連載が載っているのでご紹介します。

今回はサンプルサイズの計算方法です。

いまやこんな便利ソフトまで出ているのですねえ。ビックリです。

コレをつかって、後は論文を書くだけですねえ。。。。。笑

2011年7月18日月曜日

20110720 Up to Date. Acute Compartment Syndrome

コンパートメント症候群はいつ、どうやって切るか、ということを自信を持って他の人に伝えることが出来ませんでしたので、権威の力を借りてコンパートメント症候群にいかに対応するかについてまとめてみたいと思います。

Summary & recommendations

・急性コンパートメント症候群(以下ACS)は何らかの原因で筋膜内の圧を逃がすことが出来なくなり、コンパートメント内の圧が上昇して阻血障害や、組織の機能障害を起こしうる病態である。ACSは外科緊急疾患である。
・ACSは下肢の骨折、前腕の骨折などの重症外傷にともない早期に発症する。また、軽微な外傷、もしくは外傷が全くないような症例でも生じうる。(例としては、虚血性障害、凝固障害、動物咬傷、薬剤の点滴漏れ、長い間の下肢の圧迫など)
・ACSでは進行する耐え難い疼痛が早期の症状として現れる。これは筋の腫脹のためにおこる膜の伸張による疼痛であると考えられている。ACSは急速に進行していくが、多様な症状は数時間経ってから出現する。診断を確定させようと待つことは患者を危険な状態にしておく、ということになる。
・ACSが疑われるような症例ではコンパートメント内圧を測定すべきである。一度測定し、その値が正常であったとしてもそれはその瞬間には値が低くても、進行する直前であるかもしれない。つまり値が正常であったもがACSを除外診断できた、ということにはならない。重要なことは、ハイリスクの患者であれば継続して何箇所からでも測定を行なうことである。
・コンパートメントの正常圧は0-8mmHgである。大体20mmHgを越えたあたりからACSの症状や兆候が現れてくる。しかし、その兆候が現れてくるまでの圧は様々でもともと高血圧をもっているような患者では末梢神経障害が起こるまでにより高い圧を必要とするし、一方、四肢の虚血性疾患を合併しているような患者ではより低い圧でACSが起こりうる
・どれくらいの圧になれば筋膜切開をするべきかというコンセンサスは得られていない。ある専門家は収縮期血圧と測定したコンパートメント圧の差を、また別のある専門家は拡張期血圧とコンパートメント圧の差を使っている。その差も20mmHgとするか、30mmHgとするかも分かれている。
・ACSの治療は、すべてのコンパートメントから、コンパートメントに圧をかけているものを除去することである。ギプス、シーネなど覆っているものは除去されなければならない。下肢は決して挙上してはならない。鎮痛薬の投与と酸素投与も行う。低血圧になると灌流が低下するので生食の持続投与を行う。
・多くの症例で、筋膜切開を行うときには、関係すると考えられるすべてのコンパートメントの開放を行うことが最終的な治療となる。筋膜切開をためらうことは機能障害の残存につながる。

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・コンパートメント症候群(ACS)の疫学
ACSは一般的に骨折をともなうような大きな外傷で起こるが、小さな外傷もしくは外傷の内容な症例でも起こりうる。一般的に前腕、下腿で好発するが足、大腿、臀部などでも起こりうる。
・ACSは35歳以下で起こりやすい。若い男性は大きな事故に合いやすく、また筋量がおおいことがACSの起こりやすさに関連しているのかもしれない。

ACSの75%に骨折を合併している。粉砕型の骨折であること、脛骨の骨折であることがリスクを高くする。
脛骨骨折の1‐10%にACSを合併する。ついで前腕にACSは起こりやすい。特に小児では上腕骨顆上骨折に合併するACSが多い。

開放骨折、閉鎖性骨折のいずれに関わらずコンパートメント症候群は起こりうる。骨折の治療をできるだけ早期に行うことが必要である。
非観血的骨折整復術をおこなうと、コンパートメント圧が上がっていたコンパートメントの圧を低下する効果がある。ある観察研究では、撓骨遠位端骨折で整復をおこなった例では整復直後にギプスを巻くまでの間でコンパートメント圧は最大になる。第二のピークは4時間後に現れ、その後徐々に消退していくことが知られている。過度のギプス固定はコンパートメント圧を上げる。
観血的な骨折の整復固定はコンパートメント圧を上昇させうる。脛骨髄内釘挿入時にはコンパートメント圧は髄内釘挿入時に最大となり、以後36時間かけて減圧していく。撓骨遠位端骨折術後では24時間程度で減圧する。

骨折を伴わないACS
・直接外力
・熱傷
・過度にきつくまいた包帯
・穿通外傷
・四肢血管へのダメージ
・その他軽微な外傷

外傷のないACS
・再灌流障害
・凝固障害
・ネフローゼ
・点滴、注射薬の血管外漏出
・動物咬傷


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長いので次回に続きます。笑

2011年7月14日木曜日

20110714 Up to date. principles snake bite

ブログの管理人です。
必要に迫られましたので読んでみました。(笑)



Summary and recommendation
・初期治療の目的は、蛇毒の全身への拡散を遅らせながら、一刻も早く病院へ連れてゆくことである。
・圧迫固定法は全身症状の出現や、壊死などの局所所見があるときにのみ用いたほうがよい

様々な臨床症状が問題となるが、主要な問題としては神経毒、ショック、凝固異常、横紋筋融解と腎不全の出現である。

その地方ごとに蛇の種類について知っておくことが重要である。もし蛇咬傷の治療経験に乏しいようであれば専門家に早めに相談するほうがよい。蛇の種類に応じて臨床症状、血液検査などをおこなってゆくとよい。

抗血清の使用についてはその益と害についてよく検討された上でなされなければならない。局所の症状が著しい場合や全身症状の出現など、投与したために生じる有益性が害を上回る際以外には投与しない。

専門のWebサイトで調べたり、聞いたりすることが重要である。

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・野外で行えること
できるだけ速やかに適切な医療機関に搬送することがもっとも重要である。

基本原則
-蛇の縄張りから傷病者を脱出させること
-受傷部位を心臓より低く保ち、安静を保つこと
-持っている薬剤などの情報提供ができるようにしておくこと
-もし可能であれば、デジカメなどで蛇体の一部でも写真に撮れるとよい。死んでいても決して蛇には触らない。(死んだ直後だと咬む反射が残っているため)
-とにかく早く病院へ運ぶことが重要

圧迫固定は全身症状が出現している場合、壊死などの重篤な局所所見が生じている場合に考慮すべきである。

口や、機械的に毒を排出することは推奨されない。ターニケットによる阻血も神経障害を悪化させるだけであるので行わない

・病院で行うこと
蛇の種類、それぞれの蛇毒によって起こりうる症状に応じて対応する

まず牙痕の確認。局所症状に乏しい場合もある。重症な全身症状が、嘔気、腹痛、頭痛などの非特異的な症状から発症することがあるので十分な注意が必要である。
各毒による特異的な症状
・神経毒:複視、眼瞼下垂、進行性の球麻痺
・凝固異常:凝固亢進、線溶系の低下ともいずれとも起こしうる。血液検査を継時的に行うことで評価可能である。
・血圧低下、ショック
・横紋筋融解:CK上昇、高カリウム血症の存在。尿検査で潜血反応が見られた時には注意が必要
・腎機能低下:蛇毒、血圧低下、横紋筋融解など様々な原因で腎機能低下が起こりうる。12歳以下、抗血清の投与が遅かった場合、CKが2000以上になった場合には腎機能低下をきたしやすい。90ml/h以上の補液を行う必要がある。

症状が乏しくてもとにかく慎重に経過観察が必要である。周囲の医療環境を勘案してそれぞれの医療施設ごとでの帰宅許可基準の作成が必要である。

酸素投与は神経毒による呼吸不全の症状をマスクしてしまう可能性があるので、ルーチンには行わない。
抗生剤のルーチンな投与は疑問がのこる。RCTでは感染、膿瘍の形成を低下させたというデータはない。

抗蛇毒血清についてはその投与については慎重でなければならない。(高い確率で何かしらのアレルギー反応をきたしうる)
・ショック、凝固異常のような明らかな全身症状が出現しているとき
・壊死などの重篤な局所障害が出現しているとき
にのみその使用を考慮

血清を使用したさいにおこる有害反応は下記の3つのパターンがある
・急性のアレルギー反応
・発熱反応
・血清病

これらの反応を予防するために1、ボスミンの事前皮下注。2、抗ヒスタミン剤の事前投与などにはその有効性はない。
ただ、何が起こってもよいようにボスミンを手元に準備しておいてから血清は投与すること。

それぞれの病変への対応
・局所
筋膜切開は明らかなコンパートメント症候群の兆候が表れるまでは行う必要はない。
・神経症状
呼吸筋麻痺に伴う症状が問題となる。呼吸数の低下などに注意が必要。挿管などの準備をしておく
・凝固異常
血清の使用なしには凝固異常の改善は望めない。発症したら血清をまず使用。そのうえで血漿交換などを考慮。ヘパリンの投与は有用ではない。
・血圧低下
必要に応じてIVHを確保
・横紋筋融解
しっかりと生食で補液を行う。マンニトールの使用は特に有用ではない。
・腎機能低下
循環血症量の保持。必要に応じて透析を考慮。

<追記>
ジャパンスネークセンター(㈶日本蛇族学術研究所)のHPの中にある”ヘビ百科”がよくまとまっているのでそちらも参考にしてください。電話しても詳細に教えてくださるそうですので日中であれば考慮すべき価値があるかと思います。

2011年7月13日水曜日

20110711 JBJS(Am) Reducing Perioperative Blood Loss and Allogeneic Blood Transfusion in Patients Undergoing Major Spine Surgery その5

・MIS
MISを行うことで術中の出血量は減少する。(MEDでもインプランテーションでも。)
しかしながらMISが万能なわけではなく、昔ながらの方法に比べて明らかに難易度が高くなっている。ラーニングカーブもあるので、慎重に適応を検討すべき。

・術後赤血球回収
脊椎手術の分野ではほとんど報告がないため、評価が困難である。
ある報告では同種輸血の量を30%減らしたとする報告がある。
細胞のカス、骨髄脂肪、フィブリン、など有害な物質が紛れ込むことがあるかもしれないが40マイクロのフィルターでこの問題を解決している。
この方法がどの程度費用に見合うのかも不明である。

・輸血基準の厳密な設定を行うこと
近年は輸血の基準が厳格化しており、輸血をどのタイミングで行うかと言うのは議論に成っている。
カナダの集中治療ガイドラインでの輸血に関しての研究では、Hbが7g/dlまで輸血しない群と、いつでも輸血して良い群の2群で死亡率に差がなかったと報告している。
イギリスでは7g/dl以下で、アメリカでは6g/dl以下で強く輸血を推奨。ともに10g/dl以上では輸血は不要と結論づけている。6‐10g/dlでは心筋梗塞などのリスクファクターがある場合には輸血を行うこととしている。
脊椎手術での基準は定められていないが、同様の基準で行えば良いのではないだろうか

2011年7月11日月曜日

20110711 JBJS(Am) Reducing Perioperative Blood Loss and Allogeneic Blood Transfusion in Patients Undergoing Major Spine Surgery その4

術中の対応
・患者の体位
硬膜外静脈叢が下大静脈と弁のない経路で交通していることはよく知られている。伏臥位では腹圧の上昇が下大静脈の厚上昇につながり、そのために硬膜外静脈叢の循環血漿量を増加させ、出血量の増加につながる。古くはHallフレームが腹圧の低下につながり、出血量を有意に減少させたとする報告がある。最近ではWilsonフレームで広いパッドか狭いパッドのいずれが有効かという研究が行われ広いパッドの方がより出血量が少なかったとする報告がある。術中の出血量と腹圧との間には密接な関係がある。

・手術方法
皮切部からのウージングを抑えるために50万倍のボスミンの局注を行うことがある。傍脊柱筋への栄養血管は脊椎のすぐ近傍を通っているため骨膜下で剥離するようにするとこの血管を損傷せずに出血量を減らすことができる。適切な手術手技を習得することで出血量は減らすことができる。
固定術ではしばしばデコルチケーションを行わなければならない。この時には骨の表面から出血してしまう。そこでこの手技を一番最後にすると出血量は抑えられる。そして創部をwatersealする程度まできつく縫合し、タンポナーデ効果が得られるようにすることが必要である。熱凝固で出血を止めたり、骨蝋も骨からの出血を止めるために少量使うことも差し支えない。硬膜外出血はバイポーラで止める。もし、下大静脈圧が十分に低ければ、創部に生食を満たせばその圧だけでも硬膜外出血のコントロールは可能である。

・局所止血剤の使用
様々な注意を払っても止血困難な出血はある。そのような場合には止血剤の使用が考慮されることとなる。
これらの止血剤は大きく二つのタイプに分けられる。passiveなタイプと、activeなタイプの二つがある。
passiveなタイプは血小板凝集を促進するタイプの製剤である。activeなタイプとは凝固系を促進してフィブリン塊を形成するようなもののことをいう。
passiveなタイプにはコラーゲン性、ゼラチン性、セルロース性のものがある。
いずれの商品も多くの症例で10分以内で止血を得ることができる。
局所止血剤は有用であるがいくつか有害な点を潜在的に有していることには注意が必要である。passiveな止血剤では神経の圧迫のリスクがある。また異物反応、慢性の炎症、感染のリスクもある。
局所止血剤は必要最低限の使用にするほうが良い。

20110709 JBJS(Am) Reducing Perioperative Blood Loss and Allogeneic Blood Transfusion in Patients Undergoing Major Spine Surgery その3

・モルヒネの髄内投与
全身麻酔に硬膜外麻酔や脊髄麻酔などを追加すると術中の出血が減少するということがメタアナライシスで示されている。このことは局所麻酔の追加で低血圧麻酔のような状態になるために出血量が減少するためと考えられている。また、局所麻酔の追加とは別に髄腔内にオピオイドを投与することで低血圧を惹起することなく出血量の減少が得られることが知られている。3つの無作為試験でそのことが示されているにもかかわらず、機序については全く不明である。

・低血圧麻酔
低血圧麻酔は整形外科手術で昔から使われてきた方法である。動脈圧を下げることで全体の出血を減少させる効果があるとされている。しかしながら、硬膜外静脈叢、骨髄内の血圧は動脈圧と全く関連していないため、脊椎手術の手技に関わるデコルチケーションなどでは低血圧麻酔にすることがどれほど意味があるかは不明である。
低血圧麻酔が危惧される一つの理由としては、術後の失明の可能性があることである。その発症率は0.09%程度であるが脊椎手術では腹臥位であること、貧血の進行が脊椎の大手術では予想されること、血液が希釈されることなどからそのリスクは高くなる。
また低血圧麻酔による脊髄神経そのものに対する影響も考えられる。神経が低酸素状態となることから何かしらの影響があるのかもしれない。今のところの研究では、普通に低血圧麻酔を行う限りでは神経に影響はないとされているが、さらなる研究が必要である。

・体温保持
低体温は凝固系の異常をきたしうることが知られている。この凝固系の以上は血小板機能が失われることが主体であり、凝固因子の影響はわずかである。
軽度の低体温は輸血の必要性を増加させることが知られている。THAでも同様の結論が得られている。
あらゆる手術で、体温が1度下がるごとに出血量が16%増加し、輸血の可能性が22%増加することが分かっている。
脊椎手術で体温を保持することがどれほどの意味があるかはまた研究がなされていないが、検討に価するものである。

2011年7月9日土曜日

20110709 JBJS(Am) Reducing Perioperative Blood Loss and Allogeneic Blood Transfusion in Patients Undergoing Major Spine Surgery その2

術中の管理
・術中希釈式自己血輸血
希釈式自己血輸血は腰椎固定術、側弯症手術において有用であると言われている。この方法を行うと凝固能が30%上昇するという報告もあり、このために術中出血量の減少が得られるのかも知れない。この方法は患者の状態に左右され、またその性質から貯血型自己血輸血とは併用が困難である。

・術中赤血球回収(セルセーバー®か?)
術中の赤血球回収が同種輸血の回避につながるかどうかというのは議論の残るところである。有用である、とする報告はなされており、また、コクランを含めた様々なレビューが行われているが、研究の質が一定していないためはっきりとしたことは言えない。
Gauseらが行った後ろ向き研究では、術中赤血球回収を行うと輸血量が減らないばかりか術中出血量の増加すら認めている。この原因についてははっきりしないが、術者側の気持ちの問題や回収血では凝固能が低下するといった問題がひょっとしたらあるのかもしれない。
またコストの問題もあり、希釈式自己血輸血法の方が安価である。2単位以上の回収が見込まれる時にのみ、回収法のほうが安価となる。
また腫瘍、感染の手術、局所止血剤を使用した際には禁忌である。

・止血剤の使用
抗凝固線維融解素
コクランレビューでもAprotinin(トラジロール®)とtranexamic acid(トランサミン®)が側弯症手術の際の出血を減少させる、ということが報告されている。他のメタアナライシスでも脊椎手術においてトランサミンとepsilon-aminocaproic acidは血栓症などの有害事象を増やすことなく出血量を減少させたという報告がある。

・トラジオール
2000ml以上の出血をきたしたような脊椎の大手術でトラジオールを使用したところ出血量が少なかったという報告がある一方、輸血量に関しては変わらなかったとする報告もある。
また、心臓手術で使用された際に心筋梗塞、アナフィラキシー、腎障害をおこしたという報告や、脊椎の矯正手術で用いた際には急性腎不全の発症、血栓症の発症が報告されている。現在FDAでは使用中止を勧告している。
・トランサミン
抗線溶として働く。以前から人工関節置換術ではその効果について言われていたが、脊椎の分野では最近報告がなされるようになってきた。
明らかな合併症も無く安価で安全に使える薬剤であるとされてきつつある。
(高用量で使用している。)
・epsilon-aminocaproic acid
日本ではアミノカプロン酸として目薬のなかに入っているようですけども。。。すいません、商品名が分からないです。

・Recombinat factor Ⅶa(ノボセブン®)
重大な有害事象がおこったために中止された研究がある。後ろ向き研究ではその効果は証明されているが、血栓症のリスクがあること、また非常に高価な薬剤であるため適応外での使用を推奨しない。

・Desmopressin(バゾプレッシン)
von Willebrand病で使われることから脊髄手術にも応用してみた研究がある。出血量の減少を認めたがその効用を確立するには至っていない。

20110709 JBJS(Am) Redusing perioperative blood loss and allogeneic blood transfusion in patients undergoing major spine surgery その1

JBJSのCurrent Concept Review
"脊椎の大手術を受けた患者で同種輸血を回避する方法"



術前の準備

・術前の休薬など
アスピリンや、clopidogrel(プラビックス®)は心血管疾患を合併している患者でよく処方されている。
これらの薬剤を中止するかどうかは術前のリスク評価を行って決めなければならない。抗血小板剤の投与によって10.2%の血管系のイベントが予防できていると考えられている。しかしながら、これらの薬を継続しながら行う手術では出血にともなう有害事象はあまり増加しない、と言われている。
Chassotらは、7日前からのアスピリンの中止を基本としているが、6週間以内に心筋梗塞の既往がある場合、または12か月以内に薬剤溶出型冠動脈ステントを留置した場合にはアスピリンを中止せずに手術を行うこととしている。
アスピリンと脊椎手術における出血量の関連を調べた研究はない。
ちなみに脊椎外科医にアンケートをとって見たところ、アスピリンを飲んでいると聞くと2/3の脊椎外科医が術中出血量が多くなると感じ、また半分以上の術者が出血のトラブルに遭遇したと回答した。
clopidogrelの場合には術中出血量、輸血の割合が増加したものの、死亡率、合併症率には変化が見られなかった。
整形外科医がよく処方するNSAIDsもアスピリンとほぼ同等の抗血小板作用がある。ただし休薬して24時間以降であればその効果は消失している。血小板機能評価装置などを使って術前に評価をしておくほうが妥当であろう。

・自己血貯血
自己血貯血は確立された安全な方法である。腰椎固定術や側弯症手術で同種輸血を回避するのに効果的であるとされている。
しかしながらBrookfieldらの676例の後ろ向き研究によれば自己血貯血を行った群と行っていない群では輸血の行った率に差は見られなかったとする報告もある。
鉄剤の投与、エリスロポエチンの使用は必須である。

2011年7月1日金曜日

20110701 JBJS(Br) Is a fracture of transverse process of L5 a predictor of pelvic fracture instability



不安定型の骨盤骨折を早期に認識し、治療につなげることは死亡率や機能障害を減少させるために必要なことである。今までL5横突起の骨折があると、それは不安定型の骨盤骨折を指し示していると信じられてきた。しかし、このことを担保する根拠は殆ど見当たらない。そこで今回は本当にL5横突起の骨折が不安定型骨盤骨折の予測因子となりうるかと言うことについて検討した。
2006‐2010年の80人の患者。カルテレコードによる後向き研究。32例が男性、48例が女性。平均年齢は40歳。殆どの患者が交通事故、高所からの転落により受傷。41例、51%の患者が骨盤骨折以外のその他のケガを受傷。骨盤骨折の分類にはBurgess&Youngの分類を用いた。45例の安定型骨折と35例の不安定型骨折。L5の横突起骨折は17例に認められた。不安定型の骨盤骨折の患者のうち40%でL5横突起骨折は認められた。L5の横突起骨折があって、不安定型の骨盤骨折であることはオッズ比として9.3、相対危険度として2.5であった。
よってL5横突起骨折が不安定型の骨盤骨折の時に存在すると言うことができ、スタッフ間の危機意識の共有において有用であるということがわかった。

考察
不安定型の骨盤骨折であることを早期に診断し治療につなげることが重要である。
L5横突起骨折と骨盤骨折に関するバイオメカてきな考え方として、骨盤後方の構成要素は前方よりも複雑で安定性に貢献している。後方の構成成分はちょうど吊り橋の様に成っている。後上腸骨棘を柱として腸骨仙骨靭帯を横ざさえのようにしている。そしてL5の横突起をふくむ腸骨腰靭帯がつり上げているような働きをしている。L5横突起の骨折はこの後方成分の破綻を意味する。

<論評>
L5横突起の骨折が不安定型骨盤骨折を示唆するというのが当たり前だと思っていたのですが、証明されていなかったのですね。笑
こう言った臨床であたりまえだと思っていても、研究として形づくられていない事柄というのはたくさんあるのかも知れません。

写真をアップロードしたのは杉本先生のマネッコです。笑

2011年6月29日水曜日

20110629 JBJS(Br) Patient-reported outcomes in Swedish Hip arthroplasty register

スウェーデンで行われた国家規模の前向き観察研究。

スウェーデンでは国家全体で人工関節の登録を行い、その経過観察を行っている。2,002年からはpatient reported outcomes measure(PROM)(患者申告型術後機能評価)を追加し、前向き研究を行って来た。
使用した方法としてはEQ-5D、Chanleyのカテゴリー分類、Visual analog scaleを用いて評価を行った。
34,960例を対象として術前、術後1年の時点でのPROMを測定した。
THAをうけた患者の術前に強い疼痛と低いQOLの状態にあった。年齢、性別による補正を行いEQ-5Dを解析したところQOLの向上が認められた。
男性、高齢、Chanleyのカテゴリー分類でA,Bに当てはまる人よりも女性、若年者、Chanleyのカテゴリー分類でCに当てはまる人のほうが術前のEQ-5Dが低い傾向にあった。多変量解析をおこなったところ男性、高齢、Chanleyのカテゴリー分類でCに当てはまるひとが術後の改善に乏しい傾向にあった。
国家規模で行うPROMの収集は有効である。患者からの反応もよい。今後は国家規模で生活、仕事にどれくらい復帰できたかを調査していくつもりである。

<論評>
スウェーデンで行われた国家規模での患者登録は、以前から知っていたのですが、合わせてPROMを実施していたと言うことがオドロキです。
患者立脚型機能評価は今後の整形外科領域の主要な評価方法になるのではないかと個人的に考えています。
本邦で国家規模で、というのは難しいですが、多施設共同研究のような形で様々な疾患に対しておkなっていけると良いのではないかと考えました。

2011年6月22日水曜日

20110622 JBJS(Am) Radiation exposure issues in orthopaedics




整形外科領域の被曝としてはCTとC-armによるものが問題となる。

C-armを使って仕事をしている整形外科医は病院内で放射線を利用している部署の5倍も癌死が多い。
FDAからも不要なCTの撮像、透視の使用を減らすこと、シンチグラムなどを減らすようにアナウンスしている。
実際の対応方法
どれくらいまでの被曝量なら大丈夫か、という点についてはいまだ議論の残るところであるが、被曝量を低減することやその方法について知っておくことは必要である。
被曝線量を減らすためには”DEBT”の4つの要素に気を配ることが重要である。
D:Distance ,E:Exposure, B:Bareer, T:technique
D:distance and positioning
まずは線源から距離をとることが重要である。放射線はほとんど直進するが、一部分散している。放射線量は距離の2乗ずつだけ減衰するので、2倍距離をとれば放射線量は1/4となる。昔から”6フィート(約2m)線源から離れなさい、こうすれば放射線のリスクはゼロになる”と言われているが、最近の研究によればその格言に従うと、20フィート(約6m)はなれた場合の40倍の放射線量を浴びているということとなってしまう。
道具の使い方をいくつか工夫するだけで放射線量の低減につながる方法がある。
放射線の発生する側をテーブルの下に回すこと。イメージインテンシファイアと患者側と同じ側に立つと劇的に被曝量が減少する。
この方法は容易に行うことができ、全身の被曝量低減には有効である。しかしながら体の保護されていない小さな部分ではかえって被曝量が上がることがある。そこで、適切なポジショニングを行うことでスタッフの被曝量を減らすようにしなければならない。
Carmの弧の中の放射線量は極めて高い。イメージインテンシファイアと透視部位との距離をなるべく近くすることで被曝量が減少する。

1センチでもいいので、放射線源から離れるような努力が必要である。古くから言われている先に記載した”6フィートルール”で、十分なほど線量の低減は得られるものの、全くゼロではないと言う事をキモに銘じておく必要がある。

E:Exposure
どの程度の時間被爆するとどれくらいの影響があるのか、と言う事については分かっていない。しかしながら透視の時間を減らすようにすると被曝量が低減するというのは本能的に理解できる。
そこでとりうる方法としては連続で透視を出しっ放しにするのではなく、スポットタイプのものに切り替えるとよい。アラームは5分ごとになるようなものを採用したほうが良い。オペレーターがイメージの画面を見ていないときにはスイッチを入れっぱなしにしない、という工夫だけで十分な放射線量の減少が得られる。

B:using of Barrier
鉛入りのエプロンを使用することは有用である。1mmの鉛の暑さがあれば90%の散乱放射線を防ぐことができる。しかし鉛のエプロンですべて防護できるわけではない。
片付け方が悪かったり、折り曲げてしまってしまうとその防護効果は減少してしまう。AAOSの最近の報告では30‐60%程度しか被曝量が減少しなかった、と言う報告もある

Carmを操作する人が被曝量の低下では最も重要な役割を担う。鉛の板や、コリメーターと言った器械を使うことで少しでも放射線の減少に努めなければならない。散乱放射線がこのような機器を使うことで減少するため患者全体への被曝量も低減することが予想される。

T: Technique
既に分かっているところではイメージを使わないようにする。
倍率を上げる機能を使うと放射線量が多くなるのでできるだけ使わないようにする。




<論評>
少しの工夫でだいぶ被曝量は下がるようです。

この対策を実施する前と実施したあとでどれくらい被曝量が変化しているか調べてみると良いと思います。

また術中CTなどはものすごい被曝量になっているのではないでしょうか。一度ガイガーカウンターを持っておじゃましたいところです。笑

2011年6月9日木曜日

20110610 Mendeley使ってみました Mendeleyこんなトコロからも情報ゲットできるよ!

実は、今回のMendeley特集は”日本語文献だと読み込めない”というお題で書きこもうとしていたのですが、なんと読み込めてしまった!ので急遽お題を変更してお送りしたいと思います。

research tutorials Mendeley’s one click web importer

Mendeleyはこの上の図で示したサイトからなら、Web importerでその文献情報、URLを持ってきてくれます。

それは英語、日本語かかわりなく導入可能です。

日本語としては、医中誌さんにも頑張ってもらいたいものですが。。。。

そろそろ、自分の論文を書きながら実際にどのようにMendeleyを使うのか、などについても記していきたいと思います。


2011年6月8日水曜日

20110608 Mendeley使ってみました 実践編 その2 Web clipper(ウェブクリッパー)機能

大学院入学のお願いに行ったところ、知り合いにあって”ブログ見てますよ”といっていただき、少しやる気が増したがみたけです。

今僕の中で盛り上がっているMendeleyについての集中投稿第3弾です。
今日は”Web clipperを使って文献情報を取り込んじゃいましょう”です。

Mendeleyは文献管理ソフトです。僕が考えるに主な目的としては”論文を書いたときにその文献情報を過不足なく論文内に挿入すること”を目的として作られています。

紙で印刷された論文そのものだけがあって、その論文の基本情報を情報を自分の書いている論文の中に打ち込むのには一手間かかります。(論文を書いた経験がある人は結構この作業で挫折感、ひと手間感を感じられたと思います。)

そこで、論文の題名、著者、誌名、発行年月が挿入するというのは大事な機能では、と考えます。

このWeb clipperがあれば、ワンクリックで論文の基本情報がMendeley内に送信することが出来るのです。
あとはcitation機能を使って実際の論文に挿入するだけですが、そこはこの連載の続きで提示出来ればと思っています。

閑話休題。では、早速やって見ましょう。
まずは自分の使っているブラウザに、Web clipperを導入します。

僕はWindows Vista。インターネットブラウザはGoogle Chromeを使用しています。
(FireFox、Internet Explorerの方、Macのかたはスイマセン。ただ、同じ方法でできると思いますので参考にしていただければと思います。)

1,googleで”web importer mendeley Chrome”と検索


そうすると検索の一番上に”Chromeウェブストア”が出てきますので、早速訪れます。

2,Chromeウェブストアで、”Mendeley Web Impoter”を導入。




クリックすると、この上の図でも分かるように、ブラウザの右上にMendeleyのアイコンが導入されます。
分かりにくいので、拡大してみると



このようなボタンが導入されれば成功です。
では、早速使ってみましょう。

3,論文情報をWeb clipperを使って導入してみる。
"Pubmed"を使って論文を検索してみます。
ちょうど稀な撓手根関節脱臼の症例を診る機会があったので、Pubmedで検索してみます。

ここで、おもむろに、先ほど導入したボタン(下図①)をクリックしてみると。。。


しばらく時間が経つと上図②のウインドウが立ち上がってきます。
図をクリックして拡大していただければ分かりますが、”Import Successful”と出ていますので、Mendeleyのホームページに行って確認してみると。。。。



こんな感じで論文がよみこまれたことが分かります。

便利ですねえ。

これでWeb clipperを用いた論文の導入はオシマイです。
最初の導入は手間ヒマがかかりますが、苦労するだけの価値はあるかと思ってオススメさせていただきmす。

次回は”日本語論文をどう取り扱うか”を投稿したいと思います。

2011年6月6日月曜日

20110606 Mendeley使ってみました 実践編 その1 基本的な使い方?

一つ書き忘れていたことがあって、Mendeleyは英語対応のみなんですねえ。
(日本語でも使えますが、限界があるよ。ということについて次々回くらいに記載したいと思います)

日本人のユーザーが増えると、Mendeleyの中の人達も”日本語のインターフェースをつくろう”という気分になってくれるかもしれません。笑
僕がこのブログに投稿している目的でもあります。笑

さて、Mendeleyをダウンロードしたら早速使ってみましょう。

今回は実践編 その1と言うことで、ダウンロードしてきた文献のPDFファイルをMendeleyに落としこむ、というところまでやってみたいと思います。

先程のデスクトップ上のアイコンをクリックしてみてください。

こんな画面が出てきます。

さて、早速使ってみましょう。

自分のPC上に保存してあるPDFファイル(JBJSなどの公式サイトからダウンロードした文献に限る)をドラッグ & ドロップしてみてください。


するとどうでしょう!(テレビ朝日系 ビフォー・アフター風に)

論文の題名、誌名、発行年、著者が自動に認識されます。
(Mendeleyが自分で探してきてくれるのです。Abstractまで付けてくれることも)

ここで右クリックをして”Copy Citation”を選ぶと、文献が”View”→”Citation Style”で設定したとおりに貼りつけられます。

また、文献をダブルクリックすればPDFファイルに蛍光ペンで色をつけたり、付箋をつけたりといったPDF編集機能がついてくるではありませんか!!



タグで並列にならべて、論文書くときなんかには同時にPDFをいくつもみることが可能になってきます。
(Chromeを使っている人には違和感なくいけるかもしれないですね。)

次回は”Mendeley使ってみました 実践編 その2 ウェブクリッパーすごいなあ”
をお送りしたいと思います。


20110606 Mendeley使ってみました! 準備編

いつもとは少し違う感じの記事を載せてみたいと思います。

              


”Mendeley”という文献管理ツールを使ってみたら、コレが結構良かったのです。
そこで皆様にもその使用感をお伝えしようと思いブログにアップして見たいと思います。


まず、”Mendeley”とは、オンラインで配信されている、無料の文献管理ツールです。

文献管理ツールとしては”EndNote”,"Papers"などが他にもあります。
またPDF管理ツールとしては”Evernote”があります。

ここらへんについては、
  -科学者のつぶやき-
”最強の文献管理ソフトはコレだ!”
http://www.chem-station.com/blog/2010/04/post-155.html
によくまとめられていますので、そちらをご参考ください。

僕の場合
”Evernote” と ”Mendeley” を使い分けています。

今回は”Mendeley”の使用感について述べていきたいと思います。

Mendeleyはまずダウンロードして、登録する必要があります。
この手順については

  -水の中が落ち着く”
”Mendeleyの使い方”
を参考に登録してください。

登録すると、デスクトップ上に


のようなアイコンが出てきますので、コレで準備は完了です。


2011年6月3日金曜日

20110604 JBJS(Br) The Canadian orthopaedic society

JBJS(Br)の6月号に載っていたAnnotationです。

僕自身の意見として、
”手術を行うような医療機関は集中されるべき。地方の小病院で術者がそれぞれの経験のみで治療を行うことは決してベストな方法とは思えない。”
”小さな成功体験ばかりを集めた学会なんかは意味が無い。たくさんの症例を多施設で集めて予後調査を行いすこしでも良い方法、妥当な方法を患者さんに提供すべき”


”整形外科医のための英語ペラペラ道場”の中でも、杉本先生がOSGについていくつかpostしていらっしゃいます。
こう行ったコミュニティを整形外傷の分野でも出来ないかな、というのがいまのところの僕の目標です。

最大の問題は、そのための方法も仲間も何もいまはもっていない、という現実ですかね。笑
少しでも実現できるようにこう言った内容の文献を読み続けて、仲間が増えればいいなと考えています。

以下論文の要約です。

カナダ整形外傷学会(COTS)は骨折に関して、十分な症例数と共に最高レベルの調査を行なっている。無作為化のみならず術者、研究者間の開かれたディスカッション、また長期間にわたるフォローアップ率など世界の研究の中でもリーダーとなりつつある。このような素晴らしい調査チーム、コミュニティをつくるために必要なもの、について今回は語ってみる。

Key to success
COTSのプロジェクトがうまく入ったのにはいくつかの理由がある。
1.カナダの健康保険システムが完全に公的負担となっているので治療のオプションが少ない。このおかげで多くの術者がコンセンサスに基づいた治療を行うことが可能となる。
2.カナダの教育機関が優秀な研究コーディネーターが確保しやすい状態となっている。コーディネーターのおかげでグループ間のコミュニケーションが可能となったり情報の共有が可能と成っている。
3非常に優秀な仲間を集めることができたこと。たくさんの優秀な研究者が参加することで同時に症例数の増加もあった。
4.患者の地域間移動が比較的少ないためにフォローアップが比較的容易である。
5.カナダ整形外科学会からの後押しがある。
6.カナダ整形外科基金からの資金の提供があった。
7.企業からも制限の掛からない資金の提供がある。
8.チームが分裂しないように心をくだいた。誰がauthorになるかなど。論文はCOTSグループの業績と言う形で雑誌に投稿し、その業績は同時に個人の職務経歴書に記載が可能である、という規定とした。



どこまで参考になるかは分かりませんが、情報発信を続けていくことで日本からのエビデンスの発信が出来ればと考えています。

2011年6月2日木曜日

20110602 JBJS(Br) Annotation: Multicentre randomised clinical trials in trauma care

外傷に対する他施設共同研究は今後質の高いエビデンスを構築するために重要となってくると考えている。

エビデンスに基づいた治療を行うためには、まずは質の高いエビデンスの構築が必要となる。そのためには無作為割付試験(RCT)がバイアスを排除するためには必要となってくるのであるのだが、整形外傷領域の研究でRCTを行った研究は殆ど見当たらない。(外傷領域がRCTには不向きであると言うことも関連しているのであろう。)
90%が観察研究である。

整形外科領域で質の高いエビデンスを構築することが求められている。
とくに必要とされている一つの領域は脆弱性骨折の分野、もうひとつの領域は多発外傷を含んだ重症外傷分野である。
脆弱性骨折の分野は年々その数が増加し、医療資源を逼迫しつつある。
多発外傷を含んだ重症外傷分野では、多くの医療資源を必要とし、各医療機関ごとの治療方針に左右されることが多い。
イギリスではこれら二つの分野について新しい機関が設立され、研究が始まっている。

ProFHER trial:Handoll H, Brealey S, Rangan A, et al. Protocol for the ProFHER (PROximal Fracture of the Humerus: Evaluation by Randomisation) trial: a pragmatic, multi-centre
randomised controlled trial of surgical versus non-surgical treatment for proximal
fracture of the humerus in adults. BMC Musculoskelet Disord 2009;10:140.

United Kingdom Clinical Research Network. Portfolio database. http://public.ukcrn.org.uk/Search/Portfolio.aspx (date last accessed 18 January 2011).

無作為割付研究も行われているが、単施設ではどうしてもサンプルサイズが小さくならざるを得ない。
そこでより妥当な研究を行うために多施設共同研究が必要となるのである。

2011年5月23日月曜日

JBJ(Am) ACL reconstruction w/ ST provided similar stabiity and knee function and problems w/ kneeling compared w/ BTB

Anterior cruciate ligerment reconstruction with semitendinousus graft provided similar stability and knee function and fewer problems with kneeling compared with the bone-patellar tendon-bone graft

Question
前十字靭帯の再建で半腱様筋(ST)と骨付き膝蓋腱(BTB)のどちらを使ったほうがQOLの向上に寄与しているのか。

Patient
二つの病院での結果。164人の患者を無作為に割付。2年間の経過観察

Intervention
ACLをBTBとSTでそれぞれ再建。

Major Outcome
膝の機能評価のスコアをいくつか使用した。
(Lysholm score, Tegner activity score, International Knee documentation committee score, )

Main result
8年のフォロー。膝を付くこと、膝蓋大腿部の疼痛、膝をついて歩くこと、感覚障害の有無の点に関してSTとBTBで有意な差が生じた。いずれもST群の方が優れていた。
その他の結果では差が認められなかった。

Conclusion
8年間のフォローの結果、ST、BTBのいずれもその安定性には差は認められなかった。感覚障害、膝をつくといった動作でわずかにBTBの方が障害を生じた。

<論評>
僕自身もACL再建しているので興味深く読みました。僕自身はSTで再建していますが、特に困ったと言う経験をしたことはないですね。
ただACLの場合には僕の場合にはレクリエーションレベルでのスポーツ復帰でしたが、より高いレベルを求めるような場合には強固な固定、早期復帰を目指してBTBと言う選択もあるのかもしれません。
STを採取するとバレエ、体操選手では脚のラインが美しくなくなるというのはほんとでしょうか?

2011年5月22日日曜日

JBJS(Am) Combined treatment with Corticosteroid injection plus Exercise and Manual therapy was similar to exercise and manual therapy alone .....

Combined treatment w/ Corticosteroid injection+Exercise and Manual therapy was similar to exercise and manual therapy Alone for shoulder pain at 12 wks

Question
肩のインピンジメント症候群の患者に対してステロイド注射を行って、運動療法を処方した方がよいのか、運動療法だけで経過を見てよいのか

Patient
40歳以上(平均年齢)232人の患者。セッティングとしてはプライマリーケア(診療所またはクリニック通院)程度。痛みの程度は中から重度の疼痛があり、肩関節の関節包パターンでない拘縮を認める。外旋は25%程度に制限されており、Neer、Hawkins徴候は陽性。

Intervention
レダコート®とキシロカインを混ぜたものを肩峰下に注射してから運動療法を行った群と、運動療法のみとを行った群とに分けた。

主要アウトカム
Shoulder pain and disability Index (SPADI)を用いて12週後に評価を行った。
付随アウトカム
肩関節可動域

結果
1~6週までは有意に注射群の方が改善が得られたが、12週の段階では有意な差がなかった。

考察
インピンジメント症候群の患者では注射をしてもしなくても12週の段階では運動療法群と有意な差はない。

<論評>
”evidence-based orthopaedics”シリーズ第二弾です。
短期間での改善はステロイド投与群で得られていますけど。。と思ってしまいました。表題に引っ張られてい舞いましたねえ。
この原文はBMJからきているようですが、24週の時点でも20%弱の患者さんが問題を抱えていて、72%の患者さんが改善しているにも関わらず治療を継続していたとの記載があったとコメント欄に書いてあります。

原因としては、肩の痛みを診断することのむずかしさが根底にあるのではないかと考えました。
インピンジメントだけではなく、関節包の拘縮、腱板損傷、関節炎なども肩関節の痛みの原因となりうります。なので一概に”リハビリだけしていればよいよ”というのはあまりにも乱暴な結論ではないでしょうか。

以前どこかのSystematic reviewで肩関節の痛み(原因は問わない)にヒアルロン酸の関節注射を6カ月継続するとよくなったとするものがありましたので、そちらの方が実際の臨床の現場に近いのではという印象を持ちました。

運動療法を否定するつもりはありませんが、エビデンスでがんじがらめにされずに患者さんの症状に応じて適切な手段を講じることができる、というのがよき臨床医であると思いました。

JBJS(Am) A Splint was not inferior to a cast for distal radial fracture in children

Question 
小児の橈骨遠位端の若木骨折または横骨折の患者。ギプスによって治療するか、装具で治療するかで機能回復に差が出るかを調査した。

Patient
カナダの子供病院を受診した5-12歳までの小児100名。無作為割り付け試験。
多発外傷、先天性障害、成長軟骨に及ぶような症例を除外。92%のfollo-upを完遂。

Intervention
4週間プラスチック製の装具かまたはギプス固定にて経過観察。その後2週間追加で骨折部に負担のかかるような日常生活動作を制限。

Main outcome
Active scales for Kids(ASK)を用いて主要アウトカムを測定。付随するアウトカムとして転位の残存、VAS、手関節の可動域、握力を測定した。

Result
Intention to treat が行われた。二群に有意な差は認められなかった。付随するアウトカムでも違いは認められなかった。

Conclusion
ほとんど転位のない小児の橈骨遠位端骨折であれば装具による治療もギプスと治療成績には差がない。

<論評>
JBJSの"Evidence-based orthopaedics"シリーズからの抜粋です。今月号には3本このEBMシリーズが載っているので紹介していきたいと思います。
最後のコメント欄にもありますが”ギプス治療でも良好な成績を収めている。この研究結果はプライマリーケア、または救急外来で単純な横骨折を見たときに装具で帰宅させたからといって悪くはないよ、ということを言っている”とありますが、その通りだと思います。
25度までの変形は許容したとありますが、日本の医療体制では許されない可能性があります。(日本は皆保険制度により専門医の受診が極めて容易なため)
ギプスを嫌がる子に無理につけることはないよ、という程度の理解にしておいた方が妥当ではないか、というのが私の意見です。

2011年5月18日水曜日

20110518 JBJS(Am) Trends in the Management of Open Fractures. A Critical Analysis

推奨
・開放骨折の患者では感染のリスクを減少させるためにできるだけ早期に抗生剤の投与を行うべきである。
・開放骨折の患者はできるだけ早期に手術室で治療を開始されたほうがよい。 患者の状態、オペ室の準備などあらゆる状況が斟酌された上で治療にあたるべきである。
・創部の洗浄に関しては洗う溶媒、方法については未だに検討中である。
・早期の創閉鎖、適切なデブリードマンが予後を改善する。
・rhBMP2のような補助療法が開放骨折の治癒を促進するかもしれない。(コレは先日否定された。)




<論評>
2007年の時点でのJBJSでのまとめです。
今回読んだ論文では局所へのrhBMP-2の投与は有効でないと言うことが示されていました。

開放骨折は適切な施設へ送られ、そこで緊急の手術が行われるべき。と言う事で、やはり外傷センターのような存在は必要であるとしみじみと感じます。
小さな病院で経験に基づいてなんとかやる。というのは良くないなあというのは僕の意見です。

2011年5月17日火曜日

20100518 JBJS(Br) Epidemiology and outcome of fracture of the hip in women aged 65 years and under

6782例の大腿骨頚部骨折のデータのウチ、65歳以下の327骨折(うち315例が女性)について前向きコホートで調査を行った。対象として65歳以上の4810骨折(4542例が女性)を対照として研究を行った。
45歳を頂点とした骨折の著明な増加が認められた。これは骨粗鬆症のスクリーニングが開始される50歳よりも若い年齢であった。若年者での大腿骨頚部骨折の原因としては基礎疾患があることが多かった。大腿骨頚部骨折をきたした女性の死亡率は同年代と比較して46倍であった。喫煙歴の存在は若年での大腿骨頚部骨折のリスクと強固に関連していた。
ラグスクリューを用いた固定が最もおおおく行われていた。一般的な周術期合併症の合生は少なかった。再手術としてはセメント人工骨頭を行った。転位のある大腿骨頚部骨折に対してラグスクリューで固定した場合、5年間再手術にならなかったのは71%に過ぎず、今後の手術方法については議論の余地があるものであった。

若年女性での大腿骨頚部骨折は稀な疾患である。高齢者とは違い、若年での大腿骨頚部骨折は社会経済学的な問題がより大きく生じる。大腿骨頚部骨折事態の数の増加が認められているが、これはベビーブーム世代の高齢化と関連している。
若年世代での骨折は転移性骨腫瘍によるものが多かった。高齢者ではあまり影響を与えないが、若年者では死亡率に大きな影響を与えた。若年者では高エネルギーでの受傷が多いと考えられていたが、今回我々の研究ではそのような症例はなく、すべて室内での転倒など軽微な外傷によるものであった。骨折の年齢分布は単峰性に増加するものであった。この分布は脛骨高原骨折、上腕骨近位端骨折が二峰性なのとは趣を異にした。このことは大腿骨頚部骨折は年齢に伴う骨粗鬆症の結果として軽度から中程度の外力で起こりうるものであるということが推察される。
より若い年代であつので一般的にはもっと高い活動性が予想されるのであるが、今回の症例の半分以上が室内での骨折であった。何かしらの社会的、精神的な問題があるのではないだろうか。
一般的に欧米での骨粗鬆症検診は50歳から行われているが、それよりも低い年齢で骨折が発症していた。。
また65歳以上の骨折を起こした分では明らかに喫煙歴があるものが多かった。また1/5の患者でアルコール依存が認められた。アルコールも大腿骨頚部骨折のリスクとなりうる。
ラグスクリューによるこていを行い、全身の合併症の発症率は低かった。転位した関節内骨折にも骨接合術を行った。今後治療方針については議論がなされるであろう。

<論評>
誰も手を付けなかった分野であるので、面白く拝見いたしました。
今後日本でも同じネタでやる価値はあるでしょう。
若くても骨折する人には何かしらのバックグラウンドがある。ということがよく分かりました。
70%の骨癒合が得られるのであれば最初に骨接合を選ぶというのは妥当な選択だと思うのですがいかがでしょうか。

2011年5月16日月曜日

20110515 J​BJS(Br) Th​e failure of survivorsh​ip

人工関節の耐用年数は再置換までの年月を用いて客観的に評価されることが多い。しかしインプラントの耐用年数だけを評価するのはあまり適切でなく、また感度に欠ける態度である。
なぜならば再置換に至る例は少なく、機種間での違いを明らかにしようとすれば多数の対象と長い年月でのフォローを必要とする。
15年間もてば人工関節としては成功である、とされるがその期間ずっと痛みがあるようであればとても成功した手術とは言えないのではないだろうか。
整形外科医が耐用年数だけの見方と、患者側からの見方(Patient reported outcome measures:PROM)というものは大きく異なっている。
PROMに従ったリサーチを行ってみるとTKRを行った患者の約10-30%、THAを行った患者の10-15%が絶え間ない痛みと機能制限に悩んでいることが分かった。
ある研究によればエンドポイントを再置換すかどうかというところにおくと、7年後の人工関節の生存率は98%であるが、第二のエンドポイントを疼痛としてみてみると75%までその率は低下した。
別の研究では人工関節の生存率は96.7%であったが、VASを用いた患者満足度は73.3%に過ぎなかった。
ほかの研究でも満足度は68%-80%にすぎないという報告がある。
PROM単独でも問題がある。データを集めることに多くの費用がかかったり人手を必要とする。またほかの様々な要因にも患者の見方は左右される。
Oxford hip scoreは術後の機能評価として用いられるが、それぞれの患者の環境などへの配慮はなされていない。
人工関節の耐用年数を調査していくことは今後も必要である。
ただし、単に人工関節のライナーを変えただけの手術か、人工関節全部を再置換したのかという違いはあるし、ある部分が別の部分に悪影響を及ぼしたのかもしれないということには留意が必要である。
非感染性のゆるみが生存率にカウントされるが、それ以前におこっている脱臼や感染といった悪い事象についても合わせてカウントしておく必要がある。
ジャーナルとしても今後は人工関節の生存率だけの報告は採用せず、加えてPROMに配慮した臨床研究を採用、公表していく予定である。

<論評>
journal of bone and joint surgery (British edition)の巻頭の一言です。
人工関節がどれが有用であるという時代は終わりを告げたので、次はこのような方針でやっていきますよという意思表示です。
こういうものをチェックしておかないと投稿してもrejectされ続けるということが起こりえますので、編集方針というものも常に確認しておく必要があると思います。

実際の生活が満足度にどれくらい影響を及ぼしているかということについて調べてみるというのも面白いかなと思いました。

2011年5月7日土曜日

20110508 JBJS(Am) Recombinant Human Bone Morphogenetic Protein-2: A Randomized Trial in Open Tibial Fractures Treated with Reamed Nail Fixation

背景
recocmbinant human bone monophogenetic protein-2(rhBMP-2)は、脛骨開放骨折に対するunreaming nailの時に高い治癒率を示した。今回reamingした髄内釘挿入術時にはどうかと言う事を調べた。
方法
無作為に、普通に軟部組織で覆う方法をとった群(SOC群)と吸収性のコラーゲンにrhBMP-2を吸収させたものをその治療に加えた群(rhBMP-2群)の二群に分けた。骨折の重症度に応じて層別化した。rhBMP-2を吸収させたスポンジは骨折部において創を閉鎖した。最終的に創が閉鎖できたところから13週、20週の時点でのX線上、臨床上での評価を行った。
結果
277例。intention-to-treatが行われた。全体の13%がGustilo3Bの骨折であった。rhBMP-2群とSOC群のそれぞれの治癒率は、13週の段階で60%と48%、20週の段階で68%と67%であった。それぞれの群の12%がなにかしらの再手術を必要とした。nailの入れ替えなどより大きな侵襲を必要としたのは、rhBMP-2群では30%、SOC群では57%(P値は0.12)であった。感染はそれぞれrhBMP-2群で19%、SOC群で11%認めた。有害事象全体でみると両群に差は認められなかった。
結論
reamingをもちいた髄内釘のとき、rhBMP-2をスポンジに含ませて骨折部に置く方法では骨折の治癒を促進させる、ということは認められなかった。


考察
rhBMP-2をスポンジに含ませて置く方法では明らかな臨床的な違いを認めることができなかった。術後早期ではrhBMP-2群が高い治癒率を示したものの、有意差を示すまでには至らなかった。喫煙をしている群、骨折がより重症な群で両群の違いはより認めにくかった。以前に行われたBESTT試験でもreamingした場合には違いがでなかったが、この時にはnの数が小さいため、と判断されていた。BESTT試験は1996年に行われているので、再手術の基準などは現在と違っている。
結論としてはreamingした髄内釘ではrhBMP-2の効果は認められないということである。
1996年よりも全体に感染率が下がっているということは現在行っている開放骨折の治療は以前よりも改善が得られているということだと考えられる。


<論評>
残念な結果でした。rhBMP-2は骨折を薬で治せるような時代の先駆けとなるのではと考えていましたが、あまりよい結果を残せなかったようです。

この論文では1996年よりも2001年の方が一般的な開放骨折の治療においても改善が得られている。としているところは注目すべき点だと思いました。
一度開放骨折の治療について再度まとめてみます。

2011年5月2日月曜日

20110501 Foreign Body Migration Along a Tendon Sheath in the Lower Extremity

7歳女児、カーペットの上に落ちていた爪楊枝を刺したということで救急外来を受診。大きな木片は除去されたものの、翌朝になって足部の腫脹とホ発赤が出現した。レントゲン写真では異常なく、抗生剤投与にても改善なく切開したところ10センチの爪楊枝の破片を摘出した。長母指屈筋腱の腱鞘内を貫通していた。

考察
この症例は下肢の腱鞘内を異物が貫通した、という世界で初めての症例である。上肢の腱鞘内を貫通したという症例は散見される。1983年のロシアの症例報告では前腕の筋にそって36センチも小さな金属片が混入したという報告や、30年前に混入したガラス片が屈筋腱の損傷を起こした
超音波でも受傷後2週間の時点では陰性であった。
非金属性の異物を検索するため手段については、MRIもしくは超音波によっての検索がよいとする報告がある。超音波であれば5mm以上の木片であれば93%の再現性をもって発見することができる。とする報告がある。所見としてはlow echoic areaにアコースティックシャドウをともなったような像としてみられる。
足部に混入した木片は長期間放置されることがある。腫瘍とまちがえられ切除された例も少なくない。この場合も超音波での診断が有用であった。


<論評>
ちょうど手で同じような症例を経験して、地方会にだそうかと思ったので調べてみました。
四肢での異物腫瘍(gossipiboma)じたいが珍しい、とただそれだけです。

2011年4月30日土曜日

20110430 JBJS Can Vitamin C Prevent Complex Regional Pain Syndrome in Patients with Wrist Fractures? A Randomized​, Controlled​, Multicente​r Dose-Res

抄録
CRPS タイプ1は症状に応じて様々な治療がなされている。筆者らは以前にビタミンCの内服によってCRPSの予防ができそうである。ということを報告している。(Lancet 1999)。今回は容量依存性にその効果が出るかどうかをRCTで評価した。
方法
doubule-blind、 prospective、 multicenterという研究デザイン。416例、427骨折がプラセボとビタミンC(200㎎、500㎎、1500mg)を50日間毎日連日投与された。CRPSと年齢、性別、骨折型、ギプスに伴うトラブルとを評価した。
結果
317患者、328骨折に対してビタミンCが投与された。99患者99骨折に対してプラセボが投与された。ビタミンC投与群ではCRPSの発症率が2.4%、プラセボ投与群では10.1%で有意な差が認められた。すべて高齢女性であった。容量については200㎎群で4.2%、500㎎群で1.8%、1500㎎群で1.7%であった。早期にギプスについての愁訴があることはCRPS発症の予測因子となりうることも分かった。
結論
ビタミンCの投与は手関節骨折のCRPSの発症を現象させることができる。容量としては500㎎/日を推奨する。

考察
救急外来でこの条件に合う患者さんにたいしてインフォームドコンセントをとることが大変だったと。
予想よりもCRPSの発症率が低かったが、これはビタミンCのサプリメントをとることがオランダでも習慣となりつつあることと関連しているのかもしれない。
ビタミンCはヒト血漿内で200㎎/dlの定常状態にすぐ落ち着く。50、60㎎の内服を行ったところでそれが関連しているかは不明である。
ビタミンCの内服は500㎎でNNT(Number needed to treat)が12と良好な成績であった。
ギプスに対する愁訴がある患者ではCRPSを発症しやすかった。早期にギプスの愁訴を訴える高齢女性では注意が必要である。
CRPS発症と診断するまでの期間は平均76日であった。ビタミンC内服群では平均68日、プラセボ内服群では平均83日であった。
ビタミンCが体内でどのように働いているかは不明である。ラットを用いた研究では骨折治癒に有効に働いたとする研究があるが、今回の報告では骨折の治癒までに差はなかった。
虚血ー再灌流障害にともなう好中球産生の活性酸素による血管内皮の損傷を防ぐ働きがあるとも言われており、コンパートメント症候群で同様に言われている

<論評>
AAOSの橈骨遠位端骨折ガイドラインで気になったので探して読んでみました。この論文の前にLancetで同じ内容が報告されていたのですね。知りませんでした。
研究デザインとしても妥当ですし、limitationについてもしっかり記載されていたので、明日から橈骨遠位端骨折の患者さんが来たらビタミンCを投与してみようと思いました。

保険収載されているビタミンC(アスコルビン酸)にも効能効果として”骨折時の骨基質形成・骨癒合促進”と書かれているではありませんか。

ほかの骨折でも出して調べてみる価値はありそうですね。まずは足関節骨折のような頻度の高い骨折で調べてみると面白いかもしれません。

2011年4月27日水曜日

20110427 JBJS American Academy of Orthopaedic Surgeons Clinical Practice Guideline on The Treatment of Distal Radius Fractures

AAOS(アメリカ整形外科学会)からの橈骨遠位端骨折に対するガイドラインとそのエビデンスレベル

・コンセンサスが得られているもの
15.保存的治療が行われた橈骨遠位端骨折は3週間でレントゲン撮影を行い、ギプスを除去する。
20.橈骨遠位端骨折の患者で絶え間ない疼痛を訴える場合には再評価を行う必要がある。
22.橈骨遠位端骨折と診断がついた後からは患肢の手指の自動運動を進める。

・中程度のエビデンスがあるもの
3.整復後、ギプス固定のうえレントゲン撮影をし、レントゲン写真上で3㎜以上の短縮、10度以上の背屈転位、関節内軟骨の2㎜以上のずれが認められる場合には手術治療を考慮する
7.転位のある橈骨遠位端骨折の保存治療では取り外しのできる装具よりもしっかりとしたギプス固定のほうが好ましい。
19.非観血的整復を行った患者ではDRUJのアライメントを手関節側面像で評価しておく必要がある。
23.観血的手術後に早期のROMを無理に進める必要はない。
26.CRPSのような予期せぬあり得ないような痛みが生じるのを予防するためにビタミンCによる補助療法が有効である。

・弱いエビデンスのあるもの
8.全く転位のない橈骨遠位端骨折であれば取り外しのできる装具で治療可能である。
10.関節内骨折を伴うような橈骨遠位端骨折では術中に手関節鏡による評価は有用。
11.手関節周囲の靭帯(TFCC、SILL)などの修復を術中に行うことが有用な場合がある。
12.手関節鏡は術中に靭帯損傷の評価を可能とし、術前のCTで関節内骨折の評価が可能となる。
21.自宅でリハビリプログラムを行うことは悪くない。

・結論の出ていないもの
1.整復後に神経障害を訴えるような例について神経の除圧術を行うべきかどうかは不明。
2.適切に整復された不安定型の撓骨遠位端骨折をそのままギプスだけで治療してよいかどうかは不明。
4.一つの手術方法のみが適切と言えるかどうかは不明。
5.55歳以上の患者さんにたいして手術療法を行ったほうがよいかどうかは不明
6.55歳以上の患者さんで掌側ロッキングプレートを用いたほうが良いかどうかは不明
9.肘上ギブスを巻くことが有用かどうかは不明
13.ロッキングプレートで固定した際に骨移植や人工骨移植を行ったほうがよいかは不明
16.経皮的鋼線刺入法が有用かどうかは不明
17.撓骨遠位端骨折が将来の骨ぜい弱性骨折の予測因子となりうるかどうかは不明
18.DRUJを骨接合の際に観血的に整復した方が良いかは不明である。
25.創外固定を用いた際には過矯正したほうが良いかどうかは不明
28.撓骨遠位端骨折にともなった尺骨茎状骨折を手術したほうが良いかは不明である。
29.月状骨面の陥没や、4part骨折を創外固定で治療した方がよいかどうかは不明である。


<論評>
AAOSからでた撓骨遠位端骨折の治療ガイドラインです。
番号順だと分かりにくかったのでエビデンスの強さに応じて並べ変えました。
普段の日常で当たり前だとおもって治療していたこともほとんどがinconclusiveになっていることにオドロキでした。
逆にいうと日常臨床での結果を論文にまとめることで少しづつエビデンスが強化されていくのではないかと考えましたので、社会に貢献できるように頑張りたいと思います。

26.ビタミンCがCRPSの予防に有効というのは初めてききましたので元論文を探してみたいと思います。

2011年4月11日月曜日

20110411  Cochrane reviews : spinal manipulative therapy for chronic low back pain

慢性腰痛に対する整体、カイロプラクティックについて

spinal manipulative therapy (SMT) は世界的にいろいろな方法で、様々な人によって行われている方法である。この方法が効果があるかどうかは議論の余地がある。

腰痛では一般的に疼痛により日常生活が傷害され、個々もしくは社会に経済的損失を与えうる。QOLの低下をもたらし、失業に至ったり、さらなる医療費の支払いあが必要となる。
この研究の目的は12週以上にわたる腰痛を慢性腰痛と定め、はっきりとした原因に基づいた腰痛は除外した。腰痛は狭義の背部痛だけでなく、臀部、下肢への放散痛があるものも含む。

SMTは脊椎を”手で押したりする”ことによって行われる治療として知られている。整体、カイロプラティックなようなものである。セラピストが患者の脊椎の可動域を広げるような運動を行う。セラピストがゆっくりと他動的に徐々に関節可動域をひろげていくイメージである。マニュピレーションはセラピストが可動域の最後に直接的にぐっ、と力を加えるような運動である。この際によく”ポキッ”とした音が聞こえる。

26のRCT、6070例についてこのreviewでは調査を行った。様々な整体師、カイロプラクティターによって治療が行われた。9つの研究だけが十分にバイアスが除去されていると判断された。

結果
運動療法、内服/外用、物理療法と同様に改善が得られる。という結果が得られた。しかしながらほとんどでどのようにプラセボと介入を区別したかについてははっきりと描いては居なかった。研究の2/3がバイアスがかかっているので、今回の結果を完全に受け入れられるものにはできなかった。あきらかな有害事象はSMTでは認められなかった。

まとめると、SMTはいまある治療法と比べて良くもなければ悪くもない。

<論評>
コクランに載っていたので読んでみました。

結果は妥当であると考えました。
よく、整体やカイロプラテックに対するその効用の有無が問われますが”わからない”が正しいのでしょう。

まあ、有害事象がないので、薦めても罪はないのかと。
ただ、エビデンスがない以上保険診療が用いられてはならない。と思います。
自費で患者さんが受けられるのであればいいのかなと思います。

余談になりますが、こういった研究は難しいのはたしかに事実かと。
マッサージでRCTをやるとすれば、
施術前に”今からマッサージをします。あなたが受けるマッサージは①上手な施術者か、②素人かのどちらかが行うものです。どちらがやるかは無作為に決まります”と言われてからうけるマッサージは①、②のどちらに行われても、少なくとも気持ちよくはないだろうと想像されます。苦笑
プラセボの効果と言うものは全くバカにできない。
患者さんが”これ、気持いいなあ”といっているものに大して、医療者側から”それはエビデンスがありませんよ”と言うものは野暮である、と考えます。

まあ、患者さんが”気持ちいい”といっているのなら”良かったねえ。よく効いて”といってあげるのがあるべき姿かと思います。

ただ、僕自身の意見として、このプラセボ効果を悪用し、”このレメディーがきく”、”このグ◯コサミンがよく効く”と言っている業者には強い怒りを感じていることはハッキリと言っておきます。


最後にサイモン・シンが書いた”代替医療のトリック”という本を紹介しておきます。
ありとあらゆる代替療法に対して一つづづエビデンスの有無を調べ、それを物語として提示しています。
EBMってなにかなあと疑問に思ったときには最も端的に答えてくれる一冊であることは保証しますが、かなり厚い本ですので注意が必要です。

またご希望があればこの本の内容について抜粋して提示しますので、コメント欄にご記入ください。

http://webcache.googleusercontent.com/search?q=cache:5vT7ERcbzCQJ:www.amazon.co.jp/%E4%BB%A3%E6%9B%BF%E5%8C%BB%E7%99%82%E3%81%AE%E3%83%88%E3%83%AA%E3%83%83%E3%82%AF-%E3%82%B5%E3%82%A4%E3%83%A2%E3%83%B3-%E3%82%B7%E3%83%B3/dp/4105393057+%E4%BB%A3%E6%9B%BF%E5%8C%BB%E7%99%82%E3%81%AE%E3%83%88%E3%83%AA%E3%83%83%E3%82%AF&cd=1&hl=ja&ct=clnk&gl=jp&source=www.google.co.jp

2011年4月8日金曜日

20100408 JBJS The Increased Financial Burden of Further Proposed Orthopaedic Resident Work-Hour Reductions

背景
週80時間以内に研修医の拘束時間を減らす、という試みが行われたが、それにともなう卒後研修に関わる費用は増加しなかった。多くの教育研修施設では研修医の労働時間の短縮に対応して、co-worker(NPなど)を雇うことで対応した。現在研修医の就業時間を56時間まで減らそうという提案がある。今回の研究はこれ以上の労働時間の短縮が費用に与える影響について調査することである。
方法
80時間制限後からco-workerを雇うことでその問題に対処した152施設に調査票をおくった。36施設、1021人のレジデントから回答があった。以前の公表されたデータが80時間制限の実施後と比較に使われた。一人のレジデントあたりに対する新規の職員の雇用数を算出した。そしてそこからこれ以上レジデントの勤務時間を減らした場合のコストの変化について調査を行った。
結果
80時間制限が行われた結果、レジデント一人当たりの勤務時間は週あたり5時間減少した。143人のco-workerがその穴埋めに働く事となり、一つのユニットあたり96,000ドルがかかった。56時間まで研修医の勤務時間を減らすとすると、一人の研修医あたり64,000ドルかかることが推定された。アメリカ全土で3200人の整形外科レジデントがいるので、1億4700万ドルから2億800万ドルの経費の増加が見込まれる。1時間動労時間を減らすことで800万ドルから1200万ドルの増加が考えられた。
結論
研修医の労働時間制限は、患者への有害事象をへらすことなく、高コストに終わる。政府はこのデータを参考として今後の研修医の就業時間についてのあり方を検討すべきだ。さもないとコスト的に教育が成り立たなくなる。

<論評>
アメリカでは医学教育はACGMEが一括して管理しています。2003年から研修医の労働時間は80時間以内にすべし!とお達しが出ておりました。(疲労によるミスを減らすことを目的としていたはずです)
今回のこの報告は金銭的な面から真っ向から喰いつくものです。
労働時間の制限で、事故が減る?有意差ないじゃん!と考察でも噛み付いています。しかも人が増えて手術経験できないし、みんなやる気がなくなってるんじゃないと考察しています。

研修医の労働時間短縮に、学会としても反対していますよ、という一つの意見広告かと感じました。

日本が古来より研修医を安くこき使っていたのは、この研究の結果を前もって知っていたからではないかなんて思ったりしました。笑

2011年4月6日水曜日

20110406 JBJS(Br) MRSA colonisation and subsequent risk of infection despite effective eradication in orthopaedic elective surgery

抄録
この研究の目的は整形外科待機手術の患者に対してMRSAのスクリーニングと治療を行ってそれを行うことがSSI(手術部位感染)の防止につながるかを検討することである。
5933例について調査。108例(1.8%)でMRSAの保菌を認めた。90例で手術が行われた。完全なる除菌療法が行われたにもかかわらず、6例(6.7%)で感染が成立した。4例で深部感染で、2例で表層感染であった。6例中4例でMRSA感染であった。下肢の関節置換術で感染のリスクが高くなった。
MRSA定着している患者ではその他の患者に比べて感染成立のリスクが高くなることがわかった。そのリスクは下肢の関節置換術で有意に高くなった。感染が成立したときにはMRSAであることが多かった。

方法
鼻腔、咽頭、鼠径部で培養をとった。抗生剤の外用を鼻腔に対しておこなった。それ以外には5日間毎日お風呂に入り、5日間のうち1回から2回はシャンプーするように指導した。手術2日前までは治療を終了した。陰性であることを確認した上で三ヶ月で手術を行った。

結果
5933例中108例でMRSAの定着を認めた。
THAではMRSA保菌 27例中4例で。MRSA陰性例では982例中11例で感染を認めた。
TKAではMRSA保菌 29例中2例で。MRSA陰性例1011例中4例で感染の成立を認めた。

考察
MRSA保菌患者では感染成立率が高かった。またサブグループ解析で下肢の関節置換術患者で感染が多かった。
関節手術の時には抗生剤の予防投与が推奨される。(MRSA保菌なしならセフェム系、保菌していればテイコプラニン)
テイコプラニンとバンコマイシンのどちらを使えばよいかは不明であった。


<論評>
なぜこの論文がJBJSに掲載されているかがまったく分かりません。5000例以上にわたって調査した苦労はお察しいたしますが。。。

統計学的に有意差あり。としていますがこの統計で有意であることはMRSA保菌と感染との因果関係を証明することはできません。MRSA保菌しているような人はそもそも全身状態がより悪い可能性があり、MRSAが交絡因子となっている可能性を否定出来ないからです。

rerative riskで有意差ありとしているようですが、今回はその疾患の発生率が低いために余計に意味をなしません。

たしかに感染は関節置換術で最も忌むべきものでありますが、今回の結果を以てしてMRSAのスクリーニングを行おうという結果にはならないかと。

MRSAのスクリーニングする前に、お風呂入って頭洗ったほうがいいのではというのが今回の結論です。

2011年3月30日水曜日

20110330 Journal of shoulder and elbow surgery:Internal fixation versus nonoperative treatment of displaced 3-part proximal humeral fractures in elder

Internal fixation versus nonoperative treatment of displaced 3-part proximal humeral fractures in elderly patients: a randomized controlled trial

高齢者の上腕骨近位端骨折(2,3-part)に対して、ロッキングプレートを用いた手術群と、保存療法群のいずれが優れているかをRCTを用いて調査してみた。

60人の患者。平均年齢74歳。56‐92歳。うち80%が女性。DASHスコア、EQ5Dを用いたHRQoLで評価した。

2年後のフォローの結果、ロッキングプレートを用いた手術群の方が関節可動域、術後のQOLスコアで優れていた。平均屈曲は手術群が120度、保存療法群が111度。外転は手術群が114度、保存療法群が106度であった。Constantスコアは手術群が61点、保存療法群が58点。DASHスコアが手術療法群が26点、保存療法群が35点。EQ5Dでは手術療法群が0.70、保存療法群が0.59であった。手術療法群では86%が良好な整復位を獲得していたが、13%が大きな理由で再手術をうけ、17%がマイナートラブルによる再手術を受けていた。

HRQoLの観点から見れば、高齢者の上腕骨近位端骨折は手術治療を行ったほうがより良い成績を得ることができることがわかった。ただし、その治療コストは30%増しとなることがわかった。

<論評>
高齢者の上腕骨近位端骨折に対する手術療法についてinjuryに述べられていました。
今回はRCTによる上腕骨近位端骨折の治療成績です。

この雑誌とは契約していないので、内容を読むことが出来ないのでなんとも言えないので申し訳アリマセン。

ロッキングプレートは優れた方法ですが、合併症がかなり高率におこる事は事実として捉えるべきで、今後僕達が調べてゆくことは、どうしてその合併症が起こるのか、その合併症を防ぐ具体的な手段は何か、と言う事について研究して言うことだと思いました。

2011年3月29日火曜日

20110328 JBJS(Br) The treatment of open femoral fractures with bone loss

大きな骨欠損を伴った、29例31肢の大腿骨開放骨折について一つの外傷センターでのレビューを行った。
骨までの徹底的なデブリードマンを行い、髄内釘、またはDynamic Condyler plateによる早期固定を行った。48時間以内に軟部組織による被覆が行われ、必要に応じて骨移植、ネイルの入れ替えを行った。
骨癒合までの平均期間は51週(20週から156週)であった。骨癒合までの時間、患肢の機能予後と骨欠損部位とその割合には関連が認められた。楔状の欠損のほうが分節上の骨欠損よりも治癒しやすかった。骨幹端部の骨折のほうが同じ大きさの骨幹部骨折よりも治癒しやすかった。
骨欠損が大きいほど合併症が発生しやすく、その合併症は膝の硬縮、脚長差であった。
この筆者らのアルゴリズムにそって治療を行うと、多くの開放性の大腿骨骨折にたいして満足する治療結果が得られることが分かった。





<論評>
日本でも外傷センターの設立は急務だと思います。この筆者たちが行う治療ができる施設は日本では数えるほどしかないと思います。(特に48時間以内の皮弁)

結構骨癒合まで粘り強く待っているのだなあという印象を受けました。

施設ごとにアルゴリズムを作って、ある程度形にしておく必要もあるのかと思いました。

2011年3月23日水曜日

20110323 Injury: A systematic review of locking plate fixation of proximal humerus fractures

抄録

上腕骨近位端骨折に対するlosking plateを用いた骨接合術は急速に広がりつつある。この報告の目的はlocking plateをもちいて固定された上腕骨近位端骨折の患者の機能予後と合併症についてのsystematic reviewで行うことである。

方法
英語の文献で、18歳以上。15例以上。18ヶ月のフォローを最低行っており、一つ以上の機能評価が行われているものを選んだ。レビューワーのバイアスがかからないように筆者は誰だかわからないようにした。

結果
12本の研究、514症例が該当した。最終機能は、Constantスコアで74点、DASHスコアで27点であった。
内反変形例では49%に、内反変形例でないものでは33%に合併症がおこっており、全体の14%で再手術が行われていた。合併症で頻度が高いものとしては内反変形が16%、無腐性の骨頭壊死が10%。関節内へのスクリューの穿破が8%、肩峰下でのインピンジメントが6%、感染が4%で認められた。

考察
上腕骨近位端骨折に対するlocking plateをもちいた骨接合術では高率に合併症をきたし、また再手術が高いことがわかった。現在その合併症が高いことについての原因の精査をおこなう必要がある。

<論評>
結構衝撃的なシステマティックレビューでした。たしかに様々なタイプのプレートが発売されており、その良好な成績が報告されているのと同時に、再手術になることも多いなあと言う実感を持っていたので余計に実感をもって読みました。

具体的な対策として
1.アプローチの変更:deltopectoralアプローチはどうしても深くなり、肥満傾向のある患者さんでは上腕骨の後方と小結節の確認が難しい。腋窩神経損傷に注意して側方アプローチもひとつかも知れない。
2。内反変形、スクリューの穿破というところはスクリューの設置で改善できそうな問題かもしれません。

地方会、骨折治療学会でも”こんなにこの治療良かったですよ、( ゚Д゚)ウヒョー”という発表ばかりです。
それでは進歩はアリマセン。失敗例からしかヒトは学べない、と考えています。

このように、当たり前だと思っていた治療でも十分な成績が得られていませんので、そこに観察分析研究(後ろ向きコホート研究)をする余地があると思います。

2011年3月22日火曜日

20110322 JBJS(Am) Functional Elbow Range of Motion for Contemporary Tasks

日常生活で必要となる、とされている肘の可動域についての研究は1981年にMorreyが行った研究がもっとも有名である。しかしながら最近はキーボードの使用、携帯電話の使用などが要求され、これらの動作で必要となる肘の可動域がどれくらいかという研究はまだない。これらの動作で必要となる屈曲、伸展。回内、回外。内反、外反。について3Dトラッキングシステムを用いて計測を行ってみた。
方法
25人の患者でそれぞれ以前Morreyが行った項目に加え、最近必要となった動作について必要とされる肘の動作について計測を行った。
結果
必要となる角度は最小で27度±7度。最大149度±5度であった。回内は20度±18度。回外は104度±10度であった。内反は2度±5度。外反は9度±5度であった。
最大屈曲が要求される動作は携帯電話をかける動作で、142度±3度であった。最大回内外が要求されるのはフォークを使う動作で103度±34度であった。最大の回内が要求されるのはキーボードを打つ動作で回内65度±8度であった。最大回外動作はドアを開ける動作で77度±13度であった。最小外反はナイフを使う動作で、最大外反はドアを開ける動作でみられた。
結論
以前に報告されていた動作よりも現代社会では必要とされる肘の可動域は大きくなっていた。キーボードや、マウスを使うと行った動作はより回内が必要とされ、携帯電話を使うときにはより大きな屈曲が必要となることがわかった。

<論評>
おもしろい論文だと思いました。この結果自体は新しい人工肘関節がいかにあるべきかということを主眼におこなわれた研究だそうですが、いくつかの新しい視点があり、それを別の研究に生かせないかと思いました。

・人工肘関節がより屈曲と回内を必要とするということが分かりました。これを逆の視点で考えた場合、体が不自由になられた方が苦労するのは屈曲と回内となるので、屈曲、回内を必要としないインターフェイスの作成をすると、その機械はより使いやすくなるということではないでしょうか。携帯電話を耳に当てなくても聞こえるようにするとか、キーボードのないPCというのはユーザーにとって優しい。と言うことが分かりました。

・キャプチャーモーションによって測定したところが新しいと思います。これぞコンピュータの進化であると思いました。
腰椎、股関節、膝関節でも同様の機会を使って、日常生活でこれらの関節がどのように使われているかをチェックしてみると少し面白いかもと思いました。(ただし下肢の場合には歩行がメインとなってしまうというのは注意が必要です。)

・屈曲だけ、回内外だけという評価でしか出来なかったのがこの研究の弱点かなと個人的には思いました。食事でフォークを使う際には回内と屈曲動作が同時に行われていますがその評価が出来ていません。積分することでこの部分の評価ができないのでしょうか。詳しい先生がいらっしゃればご教示いただきたいと思います。

コクラン共同研究エビデンスエイド

http://www.server-system.jp/resource/cochrane02.html

京都大学の先生方がなさった仕事をご紹介させていただきます。

Cochrane liberaryといえば泣く子も黙るEBMの総本山ですが、今回の大震災を機に、しばらくの間無償で提供されているようです。
その間に日本語にそれを翻訳されて提供されているのが上記URLです。

今回の大震災では地震そのものに加え津波が襲ったため、整形疾患、外傷へのニーズがそれほど高くないようです。

避難所生活が長期化することにともなう感染症の蔓延、慢性器疾患の急性増悪、精神面へのサポート。原子力発電所の事故にともなう放射線への備え、が今回求められているミッションのようです。

その中で整形疾患にかかわるか?というものがあったので掲載させていただきました。

また今週からJBJSなどを読み、勉強を進めていきたいと思います。
勉強し、少しでも良い診療を提供することで、社会に貢献できたらと考えています。

2011年3月14日月曜日

東北・東日本大震災に対してのaction

ブログの管理人です。
いつもは論文を読んで貼り付けるばかりですが今回ばかりは趣向の違う内容を御容赦下さい。

医療者のはしくれとして、東北・東日本大震災に対して何かできることはないかと考えました。

人手、物資ももちろん不足しています。

しかし、現実にできるか、といわれるといった先での受入れの問題やタイミングの問題があり、ボランティアでは有効に働くことができにくいといわれています。

そこで、下のような募金をおすすめしたいと考えています。
物資はタイミングを逃すとゴミにしかなりませんが、お金なら上手に使ってもらえるはずです。

”給料3日分”くらいがちょうど心が休まるらしいです。

募金してみませんか?笑

2011年3月6日日曜日

20100307 JBJS(Am) Comparison of Bipolar Hemiarthro​plasty with Total Hip Arthroplas​ty for Displaced Femoral Neck Fractures

抄録

120人の転位型大腿骨頚部骨折の患者に対して人工骨頭挿入術(BHP)と全人工股関節置換術(THA)でのRCTを行い、4年間の経過観察を行った。
Harrisの股関節評価基準では、術後1年の時点でTHA群が勝っていたが、術後4年の時点でよりその差は顕著となっていた。(術後1年でTHA群:対BHP群=87点:78点。術後4年の時点でTHA群:BHP群=89点:75点)
EQ-5Dを用いたQOL評価ではどの時点でもTHA群が勝っていたが、その差が有意に検知されるのは48週後であった。
以上の結果からはしっかりとした高齢者であればTHA群のほうが股関節機能、QOLともに優れていることが分かった。

<論評>
2007年に行われたRCTの追加報告(A randomised controlled trial comparing bipolar hemiarthroplasty with total hip replacement for displaced intracapsular fractures of the femoral neck in elderly patients.J Bone Joint Surg Br. 2007;89:160-5.)である。
股関節機能では疼痛、機能の項目でそれぞれ有意差が出ており、筆者らは臼蓋側のerosionが14%に見られたことから、これが原因でないかと考察で述べている。手術による合併症はTHA群のほうが多かった。両群とも脱臼はなし。

大腿骨頚部骨折の患者でQOLを測定している。というのが自分がやりたかった内容なので読んでみました。

統計的にはサンプルサイズも十分である。フォロー率も75%程度。で妥当であろう。
本邦での大腿骨頚部骨折ガイドラインでは、活動性の高い患者ではTHAのほうがよいかも、となっていたので、その結果を覆すほどのものではないと思います。