2015年12月20日日曜日

2014 JAMA Effect of physical therapy on pain and function in patients with hip osteoarthritis a randomized clinical trial

  • 変形性股関節症に対しての保存療法が有用か?という疑問に徹底的なプロトコールを作成して臨んだ論文。
  • 個人的な感覚としても、リハビリを進めると痛みを訴える人が多くなる。
  • 運動機能は改善するだろうとおもっていただけにややびっくり。
  • THAの良好な予後を考えるといたずらに粘らずに手術を考慮したほうが良いのでしょうか。

  • オーストラリアメルボルンからの報告。
  • 今までに変形性股関節症に対する理学療法について充分なエビデンスはなかった。本研究の目的は変形性股関節症に対する理学療法についての効果を検証することである。
  • RCT.プラセボ二重盲検試験。102人の変形性股関節症の患者を対象。49例の運動療法群と53例のシャム療法群の2群に分けた。12週間の介入を行い、24週間経過を観察した。
  • 12週間で10回の診察、治療を行った。運動療法群は一般的指導、歩行の指導、マッサージ、可動域訓練、自宅での運動療法を指導。シャム群はジェルを塗られておしまい。24週後も運動療法群では指導された通りの運動を行うよう指導。シャム群は週に3回ジェルを自分で塗りこむよう指導された。
  • 13週で痛み、身体機能を聴取。36週で身体障害、パフォーマンス、変化、精神機能、QOLを取得した。
  • 結果13週間で96人、94%の患者が、36週で83人81%の患者がトライアルを完遂した。痛みの改善の具合は2群間で差がなかった。痛みについてVASで評価を行い、運動療法群では開始前が58.8ミリであったものが13週後には40.1ミリに、シャム群では58ミリであったものが13週後には35.2ミリと改善していた。平均の変化値はシャム群で有意に改善を認めた。運動機能は両群で差を認めなかった。運動機能は運動療法群で32.3から27.5へ、シャム療法群は32.4が26.4に改善した。この平均変化値もシャム群のほうが1.4良かった。36週の段階の評価では運動療法群では46症例中19例に何かしらの有害事象が報告されたものの、シャム群では49例中7例にとどまった。(P=0.003)
  • 痛みがあるような変形性股関節症の患者に対する運動療法の価値には疑問がある。
  • Introduction
  • 変形性股関節症のガイドラインでは疼痛、機能障害の程度に応じて非薬物療法を推奨している。しかしながら理学療法にもコストが掛かり、その効果については結論が出ていない。
  • 理学療法は関節可動域訓練、患者教育、杖の処方などが含まれる、しかしながらこれら全てを包括的に行った場合のエビデンスはない。また変形性関節症の患者におけるプラセボ効果は無視できない。そこで本研究ではシャム治療群を設定してリハビリについての検討を行った。12週間の包括的リハビリテーションを行い、その痛み、身体機能についての評価を行うことが本研究の目的である。
  • 方法
  • RCT。二重盲検。
  • 2010年から2012年。50歳以上。レントゲン写真上のOAが存在し、VASスケールで40ミリ以上の痛みがある患者。少なくとも中程度以上の活動量があること。THA、TKAの棋王があったり、腰椎の問題を抱えていたりする患者は除外。患者にはシャム療法よりも運動療法が有効であるかどうかを検討するとつたえ、どちらがどちらかを伝えることはしなかった。
  • 介入方法
  • 8人の理学療法患者。9つの整形外科クリニック。12週間で10のコースを受けた。最初の週は2回受診。その後6週間は週1回。その後2週に1回ずつの受診とした。1つのセッションは45−60分間のリハビリが行なわれた。リガウ療法の内容は股関節の可動域訓練、股関節、腰椎のマニュピレーション、深部筋マッサージ。自宅での運動療法を指導。関節可動域訓練、バランストレーニング、患者教育、杖の使用法の指導を行った。6ヶ月のフォローの間週3回の自宅での訓練を行うように指導された。
  • シャム療法群は股関節の前と後ろにジェルを塗りつけ、動いていない超音波装置を当てられた。特に運動療法などの指導は行なわず。6ヶ月の間週3回5分間その効果のないジェルを塗りつけるように指導された。
  • 13週で診察して評価、36週で評価表を郵送した。VASとWOMACを評価に用いた。その他HOOS,QOL評価表、Grobal rating Scale.万歩計、を用いた。
  • 13週の段階では関節可動域、筋力評価、階段昇降テスト、連続起立テスト、20m歩行試験バランステストが行われた。
  • 有害事象、鎮痛薬の内服状況などについては日記に記載するようにしてもらった。13週、36週の時点で自分がプラセボ群かどっちかということを記載してもらった。
  • 結果
  • 群分けについてフローチャートに示す。1441人の患者に参加希望を尋ねたところ1339人が参加を希望しなかった。102例の患者について群訳を行い、13週で94%、36週で81%の患者がトライアルの参加を完遂した。患者背景を表1に示す。脱落者は有意に若い患者で多かった。運動療法群、シャム療法群の間に差は認めなかった。
  • 2群間で痛みについての差は認めなかった。また運動機能についての差も認めなかった。これらの結果を表2に示す。2群とも疼痛について有意に改善していた。運動療法すんの改善は17.7ミリなのに対してシャム療法群は22.9ミリであった。機能について運動療法群が平均5.2ユニットであるが、5.5ユニット出会った。セカンダリーアウトカムについて13週、36週での違いを認めなかった。表3,4
  • 多重代入法を用いて検討を行った結果、疼痛、機能について2群間に有意な差を認めなかった。また完全に欠損の内データだけでの検討でも同様の結果が得られた。
  • ただし、運動療法軍の46例中19例で何かしらの有害事象が報告されたのに比較して、シャム療法群ではわずか14%、7例の報告に伴った。症状は痛みの増悪、腰痛の悪化であった。内服の使用などは2群間で差を認めなかった。
  • 盲検についての検討も行い、運動療法群では自分が介入群であることが36週ではよくわかってきているものの、受けている治療の正しさを信じることができる割合は低下していた。
  • 考察
  • 症状のある変形性股関節症の患者に対しての包括的リハビリテーションの効果はシャム治療法を超えない。理学療法士との接触時間、その内容、自宅での指導を含めても差がなかった。運動療法群、シャム両方群の2群とも疼痛、運動機能について有意な改善を認めた。比較的軽度な有害事象を運動療法軍に多く認めた。
  • 本研究の結果は統計で言うType2エラーの可能性が指摘される。しかしながらサンプルサイズの設計は統計学的に正しく行なわれており、また95%信頼区間をみても運動療法群にプラセボ以上の効果は認められない。
  • 運動療法群で自宅でまじめにホームエクササイズを行ったのが85%にのぼった結果を持ってしても、2群間に全く差がないので運動療法には本当に差がないといえる。
  • 包括的リハビリテーションはリハビリの基本である。本研究は過去にそれぞれ単独では有効であるとされた治療法を取り入れて包括的にリハビリを行った。しかしながら最近の研究では2つ以上のリハビリを組み合わせてもそれほど効果がないとする結果が出ている。またかえって有害事象が報告されることもあるとする報告も散見される。ひょっとしたら痛みがあり、関節可動域制限が出ているような患者では運動療法は意味を成さないのかもしれない。
  • 膝では運動の強度でそのリハビリ効果に差はなかったとする報告や、理学療法士との接触時間が多いと改善するとする報告がある。股関節で同様のことが言えるかどうかはわからない。
  • シャム療法群でも改善が得られた。これは変形性股関節症に有効な治療法がないことと、また同時にシャム療法が有効であることを氏名している。メタアナライシスでは変形性股関節症ではプラセボ効果が大きく見られることが知られている。このような効果を最大とするような運動療法、薬剤療法を検討する必要がある。今回のシャム療法では皮膚への刺激と手の接触があった。これらの行為が有効であることが示された。患者への配慮がこのプラセボ効果を大きくすることが知られている。保存療法ではプラセボ効果が大きな影響を持つ。
  • いままで変形性股関節症に対するプラセボと比較した二重盲検試験はなかった。いままでの研究は全く治療を市内軍を対象としていた。しかしながら非治療群を対象とすると治療効果が大きく出る可能性があること、また盲検化が困難となる。
  • 本研究の強みは統計家を交えたしっかりとした研究プロトコールの作成にある。本研究の限界は理学療法士が盲検化されていないことである。しかし、理学療法士が熱心にやったほうがよければ運動療法群のほうが良い結果となるため盲検化に失敗したと言うことは言えない。
  • 結論
  • 変形性股関節症に対する包括的リハビリテーションはむしろ有害事象を増やす。これらの患者に対してリハビリが必要かどうかは疑問である。