2014年2月24日月曜日

人工関節学会行ってきました。

20140221-20140222 日本人工関節学会雑感

沖縄コンベンションセンターにて行われた人工関節学会に参加してまいりました。
真冬の名古屋から最高気温20度の亜熱帯の島へ。
ただ、沖縄の観光地からコンベンションセンターは少し離れており、大学のメンバーでの移動ということで自由に島内をめぐることはありませんでした。

人工関節ステムと骨リモデリング。
機種ごとによって違いあり。ただ臨床成績には関わりないと今のところ判断しています。
自分のチームが使っているステムの特製を理解していればよいと思いました。

術後脱臼対策
脱臼が多因子にわたるためにその対策は必要であろうと思います。
アプローチ、インプラント。インプラントの設置。骨盤後傾。大径骨頭。
性別、年齢、原疾患。術前可動域が良いこと。
多変量解析を行うと男性、術前可動域くらいが独立した説明因子としてでてくる印象。
解析の方法として多変量解析が花盛り。解析ソフトにいれれば良いわけではないよと突っ込みたくなる報告もありましたが身も蓋もないのでスルー。
後方アプローチでは後方の再建は必須だと思います。
今後自分が調査できるネタとしては術前後の脊椎可動域の変化と脱臼、術中脱臼テストの有用性の検証(ROC曲線を用いる)。膝関節、足関節などの多関節の罹患状況の確認など。また思いついたらめもります。

人工膝関節満足度の向上のセッション
TKAはTHAよりも満足度が低いことが知られている。そのため患者立脚型評価、満足度評価が股関節よりも発達、詳細になっていました。
2013年にCORRから報告された患者立脚型評価、他覚的臨床評価を組み合わせた新しい治療評価システムは有効そう。日常生活動作からスポーツなどのアドバンスなアクティビティまで範囲を広げてあるところが良い。股関節にも応用出来ないだろうか。
インプラントの設置が患者満足度と影響しているという報告は股関節だけを主にやっている人間からすると驚きでありました。(股関節はインプラントが下手っぴに入っていても術後の成績がよいことがおおい。)。高位設置と患者満足度、JHEQとの比較を行ってみても良いかもしれない。

セメントレスTHA。Line-toLineテクニックなるカップ設置について初めて拝聴。
セメントレスカップでは臼底骨折が問題となることが少なからずあるので一度だけ叩いてその後スクリュー設置。スクリューは内側にも一本。(カップのデザインも問題となるか)
それだけであれだけの成績がだせるのであればいうことなし。ただ、叩いた時点でプレスフィットだよね。。。

2日目
石黒先生のお話
OAは全身性疾患だ!!という論文のレビューを用いたお話。
脂肪から産生されるレプチンは炎症性サイトカイン、ケモカインと関連あり。
運動、減量は保存療法に必須であるが、まずは減量をオススメすることが肝要。
骨髄浮腫がOAの痛みの原因?
ゾメタを投与したところOAの痛みが軽減したという報告あり。
骨粗鬆症、OA、メタボは密接に関連。
プレゼンのお手本をみるような引き込まれるような講演でした。一度は聞く価値あり。

THAの機種選択。
Mclaughlin先生とフランスからお見えになったRegee先生
TaperWedgeの30年成績。再置換例も殆ど無く非常に優秀とのこと。
出てきた写真はStress Shielding著明。まあ、関係ないと言い切ってしまえばいいのかもしれませんけども、日本人の感覚からするとちょっと。
Subcidenceについても質問されていました。(TaperWedgeタイプのステムは遠位固定になると良くないので)答えは、髄腔ピッタリだから関係ないと。。。。ほんまかいな。
まあ、良いステムの1つで有ることは間違いありませんが、その特徴をよく知って使うことは必須。
またTHAの長期成績はアメリカを始めレジストリーのしっかりした国で行われているので同じような手法の研究を行うことは無駄ですね。
フランスの先生の講演。
フランスは骨盤骨折で有名なJudet先生、ろー(なんとか先生。いま綴りがわかりません)が人工股関節を考案。どれもいまいち。。。ほぼ100%再置換。
その後セメントレスステムを考案するもこれもダメ。
Charnleyのところで教えてもらってきて安定してきたと。その後セラミックオンセラミックが田舎のほうの病院で考案。壊れなければよい材質。。。
現在はモバイルベアリングのTHAを考案してオススメしてくださいましたが、今までの経緯をみるとすこし様子を見たほうが良いかなと思うのはが人の心というものでは無いでしょうか

疼痛管理の講演
単細胞生物でも痛み刺激で逃避反応あり。痛みの性状について詳細に聴取。
傷は深くなるほど痛みを感じる。筋肉は切ると皮膚、皮下より痛い。TKAの痛みの原因か?
骨の中(骨髄)には痛みを感じる神経終末あり。
THAで痛くないのは骨髄を掘削しているからじゃないの?というコメントは秀逸でありました。


人工関節学会は、オレはこういう治療をしてるんだ!という報告会なんだなあと再認識。あんまり議論にならないのですのよね。まあ、過去を省みることで少しでも良い物が提供できればということかと。
患者さんのためになることはなにか。それは新しい機械を使うことではないと思います。
OAの保存治療は未だ薬がなく、人工関節の満足度は70-80%であることを考えればまだ介入の余地はのこされているとおもいます。
日々研鑽していきたいと考えております。




2014年2月19日水曜日

20140219 日本語論文 to Mendeley

日本語論文 to Mendeley

Mendeleyについて以前投稿しておりましたが、最近いいHPを見つけましたのでご報告

日本語論文を導入しようとすると著者の名前が姓名が逆転するだとか、論題と雑誌名が上手に認識されないといった問題が常に残っておりました。

このHPはCiniiから論文情報を抽出。MendeleyにCitationしやすいように登録してくれます。

日本語論文をPDFとして取り込んで置く必要はありますが、その一手間をこなせば日本語論文もスイスイです!!

あとは書くだけだな。

2014年2月17日月曜日

CORR 2014 Magnetic Resonance Imaging of the Hip: Poor Cost Utility for Treatment of Adult Patients With Hip Pain

<論評>
MRIをとりまくってるけど、そもそも最初にレントゲンくらいとれや!という論文です。確かに股関節MRIが役に立つ頻度は膝と比べると少ないですよね。しかも治療法がアメリカならTHA一択なので治療方針の決定には役立たなかった言いきっちゃうあたりがさっぱりしていて良い感じです。苦笑。

抄録
背景
MRIは股関節痛の診断をする際によく用いられる検査方法であるがその費用対効果については知られていない。
方法
本研究は後ろ向き研究。40-80歳までの患者。整形外科医と非整形外科医の間でMRIのindicationが異なるかどうか。治療方針の決定にもっとも影響を与えた検査はなにか。単純レントゲン写真を別とした場合にどの程度MRIが治療方針の決定に影響を与えているのか。股関節のMRIのコストが治療方針にどの程度影響を与えているのかを調査することである。
213人、218股。単施設で5年間の調査を行った。カルテ、単純レントゲン写真、MRIを後方視的に調査。MRIがどの程度治療方針の決定に関わったかを計算した。インパクトスタディの計算にはMRI単価(436ドル)と整形外科または非整形外科医のどちらであるかということも勘案に入れた。
結果
非整形外科医臨床的診断を行わずにMRIをオーダしていることがわかった。(72%対30%)しかも単純レントゲンを取る前に撮像していることも多かった。(29%対3%)。そしてMRIが治療方針の決定に与えた影響は小さかった。(6%対15%)。股関節MRIは腫瘍を疑われるときに最も治療に影響を与えていた。(58%)。また感染の際にも治療方針の決定に影響を与えていた。(40%)。疼痛の評価には股関節のMRIはほとんど影響を与えなかった。股関節MRIはは単純レントゲン写真と分けるとわずか7%しか治療方針の決定に影響を与えなかった。股関節MRIは悪性腫瘍を診断するときにはその単価は750ドルであったが、原因不明の股関節痛に対してMRIを撮像すると59,000ドルであった。整形外科医がとるとMRIのコストは2800ドルであったが非整形外科医が撮像すると7800ドルにコストが増大した。
結論
MRIはある状況であれば非常に有用な診断機器であるが股関節痛のスクリーングには向かないことがわかった。40-80代の患者では病歴、臨床所見、単純レントゲンの所見を補助するものでない。

はじめに
MRIは股関節疾患の診断に有用な診断機器である。大腿骨頚部の不顕性骨折、大腿骨頭壊死のステージング。最近では子お関節の変形、軟骨疾患、股関節唇損傷、炎症性疾患、メタルオンメタル人工関節の反応性の評価などにも用いられている。しかしながらMRIは特異的な疾患の診断には有用であるが、40-80代ではOAの罹患率が高く、そのような場合にはわざわざMRIを撮像する必要はなく、MRIの費用対効果がどの程度かということは不明である。本研究の目的は40-80代の患者を対象として1,MRIのインディケーションが整形外科医と非整形外科医の間で異なるのか。2,MRIが治療方針に影響をあたえるような臨床的な状況はどのような場合か。3、すでに単純レントゲン写真が撮像されている場合にMRIが治療方針にどの程度影響を与えているか。4オーダした人間によってMRIが治療方針決定にあたえた影響とMRIのコストがどの程度かを概算した。

対象と方法
213例、218股の単一施設、5年間でMRIまで撮像された患者を対象とした。1.5TのMRIで撮像された。MRIは骨盤でオーダーされたものではなく、股関節にフォーカスされたMRIとした。MRIの読影は施設内の放射線医によって行われた。MRIのレポートで患者の年齢、MRIをオーダした医者の属性、MRIをとった理由、MRIの診断を調査した。放射線科の記録から単純レントゲン写真がMRIのオーダの前に撮影されているかを確認した。電子カルテでMRI撮影後に治療方針がどのように変化したかを確認した。単純レントゲン写真からだけでは診断できなかった治療の経過についてMRIがどのように影響したかを評価した。
患者の平均年齢は60歳。プライマリーケア、嗅球、非整形外科医が179のMRIをオーダしていた。整形外科医は39例のMRIをオーダしていた。MRIの157例のうち72%はOA、または構造的な問題が無いのに行われていた。54MRIがレントゲン写真を撮影する前にMRIが撮像されていた。3症例が明らかな異常を認めていた。213例、77%の患者で単純レントゲンが撮像されていた。31%の患者で異常が無く、46%の患者では診断がついていた。213例中55例で進行期OAであった。14例で進行した大腿骨頭壊死症であった。28例13%の患者で腫瘍、感染、骨折など病歴で診断がつくものがあった。34例、全体の16%の患者で手術治療が行われた。25例の患者が手術の前に単純レントゲンで診断がついていた。24例でTHAが行われていた。内一例はMRIで大腿骨頭壊死が判明した患者であった。
MRIのコストは、一例あたり436ドルとして以下の計算式に基いて行われた。この計算式は検査の総数を、役にたった検査数で割ったものに436をかける。これを整形外科医、非整形外科医で比較を行った。

結果
痛みの評価の耐えに非整形外科医は整形外科医よりもMRIをより多く撮影することがわかった。(72%対30%)。非整形外科医はレントゲンを取る前にMRIをとることが多いことも分かった(29%と3%)。また進行期のOAに対してもMRIを撮像していることがわかった。整形外科医にとってMRIはより診断に寄与するツールであった。(15%対6%)。非整形外科医は28例で脊椎、膝なども同時に撮影しており、これらのすべてで画像上全く正常であった。
MRIを撮影する理由は136例(69%)で疼痛の精査であった。大腿骨頭壊死(30例)、腫瘍(12例)、関節唇損傷(11例)、感染(10例)、骨折(9例)が判明した。(表2)
これらの82MRIのうち15例が診断の確認のために行われたものであった。最初に診断がついておらず結果が出たのは136例中1例に過ぎなかった。腫瘍の診断、感染の診断、大腿骨頭壊死の診断に有用であった。
股関節MRIはほとんど治療方針の決定に寄与していなかった。34例の患者でのみMRIの結果で治療方針に影響があったが、16例の患者では治療方針を変えることはなかった。
表3に検査をオーダした業種ごとでの費用対効果を示す。股関節痛だけでMRIを撮像した場合にはその総コストは59296ドルにもなった。しかしながらある程度診断をつけてから行われたMRI検査の総コストは2383ドルであった。MRIは腫瘍が疑われる患者でもっとも費用対効果が良かった。非整形外科医がMRIをオーダすると整形外科医の3倍のコストが掛かることがわかった(7804ドル対2834ドル)

考察
MRIはなにか疾患を想起して特異的におこなう場合には有用であることがわかった。病歴、臨床所見、単純レントゲンで臨床的が付いている時にMRIは確定診断、術前計画策定に有用である。本研究で言えることは臨床的な診断がついていないのにとるMRIは非常に無益な検査であることがわかる。
本研究にはいくつかのlimitationがある。1つは後方の観察研究であることである。60歳代の男性が多かったことで年齢、性別のバランスが撮れなかった可能性がある。その2として初診医はコンサルとする前に撮像しており、整形外科医は紹介されてから撮像しているために特異度が上がっている可能性はある。その3として陽性所見のみを取り上げたが、なにもないことを確認するという意味はあったのかもしれない。その4として今回の診断以外にかかっている間接的な費用(例えば復職の許可など)について評価することは困難である。その5としてかかった費用はMRIの撮像比だけど下が本来はその他の診療費などもかかっているということである。
非整形外科医は整形外科医よりも疼痛の評価のためだけにMRIを撮像することが多かった。単純レントゲン写真を取る前にMRIをとることも少なくなかった。単純レントゲン写真で進行期から末期のOAである場合でも見受けられた。整形外科医は診断においてMRIを用いることが非整形外科医の3倍多かったものの、手術をするかどうかについては単純レントゲン写真で決定していた。MRIで手術するかどうかを決めたのは13%に過ぎなかった。膝の場合にはMRIをとるかどうかの基準は整形外科医と非整形外科医の間には違いがない。膝のMRIは関節鏡手術に至る患者の減少という形で全体のコストの減少に関わっている。これに対して股関節MRIは整形外科医に相談する前に撮像されており、加えてMRIから得られる情報量にも違いがあった。
本研究ではMRIの後に手術に至るかどうか、また特異的疾患の診断にMRIが役立っていることがわかった。股関節の診断の際に前もって診断を予測していないと股関節MRIは無駄な検査に終わることがわかった。またMRIをとっても手術治療に至るかどうかは決まらなかった。いくつかの報告で大腿骨頚部の不顕性骨折を見つけるのにMRIが有用であると報告されている。しかしながらそれだけずれていない骨折であれば手術治療の必要もないし、現実MRIで骨折が見つかったけども手術に至ったのは11%に過ぎなかった。大腿骨頭壊死についても40歳以上はすべて人工関節にしてしまうのでMRIの結果が治療方針決定に影響しないのである。関節唇損傷についても軟骨損傷を伴わない場合には関節鏡手術の適応としないので治療方針に影響を与えなかった。まず最初にレントゲン写真をとることが重要であると考えられた。この結果は病院内に通知してある。
股関節MRI は診断が有る程度わかっており、侵襲的な治療をおこなうかどうかの決定には役立つ。当病院で無駄なMRIと考えられた検査を除外すると59,000ドルに登る。高齢者のMRIについてMRIの撮像基準を決定すると大きな医療費の削減が可能となるかもしれない。股関節MRIは病歴、臨床所見からまず診断をある程度決定し、その上で撮像すると費用対効果が高くなる。



2014年2月8日土曜日

20140207 J Arthroplasty Total Joint Arthroplasty and Preoperative Low Back Pain



腰痛を伴った下肢関節の変形性関節症では実際の股関節、膝関節の状態、その後の人工関節置換術の評価を困難とする。今回の前向きコホート研究の目的は変形性関節症に対して人工関節置換術を受けた患者において有病率を調査し、術後の腰痛の緩和の程度を評価するものである。腰痛の評価にはOswestry Disability Index(ODI)を用いた。ODIは膝よりも股関節で高い傾向にあった。膝関節、股関節とも術後1年でODIは有意に改善した。術後腰痛をもつ人工関節置換術を受ける患者においては併存する脊椎疾患によって術後機能予後が十分に改善しない可能性について通達し、人工関節置換術がうまく言っても腰痛が持続する可能性について前もって話して置く必要がある。
アメリカでは4000万人がOAに罹患していると言われており、そのうちの80%以上が55歳以上である。カナダでも同様の状況にある。末期の変形性関節症に対する人工関節置換術は有効な術式である。しかしながら不幸なことに変形性関節症に腰痛を合併している患者では用つつ疾患のために股関節、または膝関節の評価が困難である。
変形性関節症と腰痛の関連ではいくつかの報告があるが、有病率には大きな開きがある。Parviziらは344人のTHAの前の患者では49.4%に腰痛を合併しており、Heishらは変形性股関節症の末期では21.2%の症例で腰痛をみとめたと報告している。Galimらの症例数の少ない前向き研究では少なくとも中程度の腰痛、脊椎疾患が存在したと述べている。THAと腰痛の関連はしばしば述べられているが、TKAと腰痛の関連についてその要因にはっきりと記載されたものはない。Osteoarthritis Initiativeでは変形性膝関節症の患者57.4%で腰痛を感じたことがあり、WOMACスコアと有意に関連していたと報告している。Wolfeらはリウマチクリニックを訪れた患者54.6%に腰痛の訴えがあったと報告している。Burnettらは74%の患者において腰痛を自覚しており、それはTKAを受ける10年ほど前から発症しており、15%の患者で徐々に悪くなってきたということを報告している。
本研究の目的は初回THAまたはTKAを受ける末期関節症の患者での腰痛の有訴率を調査すること、術後の腰痛の変化を見ること、併存する腰椎疾患が人工関節術後に与える影響について調査することである。
方法
前向き研究。末期変形性股関節症の患者に対して人工関節置換術を行った患者が対象。2009年から2010年までに6人の外科医が手術を行った。診断はいずれも変形性股関節症であった。再置換術、両側同時手術は除外している。腰痛の評価には図を渡して疼痛部位を患者に図示してもらった。腰痛の重症度評価にはODIを用いた。ODIは患者立脚型の腰痛評価法としてよく知られた方法である。術前2週の段階で評価を行った。第二の評価項目としてOHS、OKSを術後6ヶ月、1年で測定した。また客観的評価としてHHS、KSSを用いた。
結果
776人に人工関節置換術を行った。491人がTKA、、285人がTHAであった。表1にその背景を示す。人工関節置換術を受ける患者の52%が腰痛を持っていた。変形性股関節症の患者では60%、変形性膝関節症の患者では42%であった。術前のODIスコアは21.6点であった。重症度は50.4%の患者で軽い腰痛、28.9%の患者で軽度の腰痛、20.7%の患者でひどい腰痛であった。変形性股関節症の患者のほうが変形性膝関節症の患者よりも有意にひどい腰痛の有訴率が高かった。(29%対16%)。反対に変形性膝関節症の患者では83.9%の患者で腰痛がないのに対して変形性股関節症の患者では71.2%にとどまった。(表2)
THAの患者でのODIは26.8、TKAの患者では18.6であった。(図2)。股関節の患者でひどい腰痛の患者が多く、膝関節の患者のほうが軽症の腰痛が多かった。
ODIとHHS、KSS、OHS、OKS、はいずれも有意であったがほとんど相関を認めなかった。
術前のODIが高い患者では有意に術前のOHSが低かった。このような患者では術後6ヶ月、1年でのHHSも有意に低かった。
術後のODIはTHAの患者でTKAの患者に比べて有意に改善した。一段階以上の改善を認めたのがTHAで54%、TKAでは17.7%であった。(図4)。ひどい腰痛を感じていた24例が4例に減少した。原因疾患はLSCS、椎間板ヘルニアなどであった。
考察
変形性股関節症の患者では変形性膝関節症の患者に比べて腰痛の有訴率が高かった。腰痛のために膝よりも股関節の症状が悪化していることがわかった。加えてTHA前の患者のほうがTKA術前の患者よりも腰痛の程度がひどいことがわかった。腰痛は股関節の症状と密接に関連していることがわかった。
反対にTKAの患者では腰痛の程度は軽かった。股関節周辺の拘縮、筋力低下が腰痛と関連している可能性が示唆sれた。
術後THAの患者ではTKAの患者と同様に腰痛が緩和された。THAの患者では腰痛が有意に改善された。Hieshらは97.3%の患者が腰痛が緩和したと報告している。Benらは腰痛が改善したことでTHA後の股関節機能も改善したと報告している。

この研究の限界は術前に腰痛がないとした患者のODIのデータが無いことである。しかしこれはもともとの数が少ないことで相殺されるであろう。もう一つの限界は患者立脚型評価を同時にとっていることである。しかしこれらを分割することは困難である。腰痛がどの腰椎疾患で怒ったかを同定することも行っていないが、これもこの研究の限界である。


<論評>
こんにちわ、管理人です。すっかりご無沙汰しておりましたが久々にまとまって読んだ論文です。
THAと腰痛との関連はよく言われているところであってそれをはっきりさせた論文です。本論文で明日からの日常診療に使えそうなのは術後腰痛が改善する可能性が高いこと、また腰痛の程度が強いと回復が遅くなるということでしょうか。

またぼちぼち読んでいきますね。