2009年12月29日火曜日

今年のまとめと来年の抱負

自分の勉強として読んだ論文をブログという形にするという試みをしてみました。分野が分野だけにかなりマニアックなせいもあり、それほどたくさんの訪問者があるわけではないですが、ツイッター経由で読者になってくださった方もいて,ある程度の成果は得られたんじゃないかとあまーーーい自己評価をしています。
来年度からひとり整形外科医となるのでより一層の勉強をするひとつのきっかけとしてこのブログを使っていければと思います。

新しい試みとして
・整形外科の診察方法は特殊で,いつも動画で解説できればと思っていました。
①自分で穿刺などの手技を動画としてアップしていく
②Youtubeなどで掲載されている診察方法の動画をいくつか発見したのでそれを紹介させて頂く

と言う事を来年から始めて行きたいと思っています。

そのためにはもう少しラベルを整理しなければなりませんが。。。。。

また、こういう事をしたらいいんじゃないかというアイディアをだしてチャレンジしていきたいと思います。

皆様のご意見もお待ちしてオリマス。

2009年12月28日月曜日

2009.12.28 JBJS(Am) Surgical Treatment of Dens Fractures in elderly patients

要旨
背景
歯突起骨折は高齢者でもっともよくみられる頚椎の骨折である。この研究は65歳以上の歯突起骨折を受傷し、手術治療を受けた患者さんのレントゲン上、機能学的な予後を解析することを目的として行われた。
方法
56人の患者、平均年齢71.4歳。1988年から2002年までで39例で前方からのスクリュウ固定、19例で後方からの頚椎固定が行われた。
結果
45人の患者が術前の日常生活レベルに復帰し、満足いく結果が得られた。35人の患者が頚椎の全可動域を獲得した。47人の患者で痛みが取れた。技術的な問題による失敗は8例あった。前方からのスクリュウ固定は良好な成績であった。37例中33例で骨癒合を得た。5例の患者で技術的な問題が発生した。後方固定が行われた19例は全例骨癒合し、3例で技術的な問題が見られた。機能的予後は前方固定に劣った。今回評価から除外された患者も含めると62例中10例で何かしらの問題があり、その死亡率は62人中4例であった。
考察
高齢者に対する歯突起骨折の手術治療結果は満足いくものであった。前方固定のほうが可動域の確保で有用であるということがわかったが、偽関節になったり再手術が必要となることと高い関連性があることがわかった。

表1 受傷機転とレントゲン上での骨折部の転位の程度

表2 アンダーソン分類、ロイカミレ分類による分類
アンダーソンタイプ2が多い。

表3 術後の機能予後、満足度調査 前方固定のほうがよい成績である

図1 前方固定の単純X線写真

図2 後方固定(ワイヤリング)

表4 ADL評価 前方固定のほうが頚椎の可動範囲では優れる。

考察
高齢化するにしたがって頚椎歯突起骨折はより頻度が高くなってくる。最近は麻酔のリスクはあるものの手術療法が有用であるということが提唱されている。手術が増える傾向にあるが、その長期予後について信頼に足る研究は少ない。
筆者らの研究では高齢者に対する歯突起骨折はあまり合併症を起こさず、良好な成績を得た。前方スクリュウ固定では89%という高い骨癒合率を得た。他の報告では75-85%くらいの癒合率とされているので、それよりも良好であった。前方固定後に骨癒合が得られない症例が4例あり、いずれも転位型の歯突起骨折であった。臨床成績についていえば満足のいくものであったとする報告がいくつかあり、特に若い患者では頚椎の可動域が保たれることが重要であるとされている。この研究でも2/3に日常生活の制限を認めず、痛みの無い生活が可能であった。技術的な失敗は5例(14%)で認められた。文献的には前方固定による合併症はまれであり、議論の余地があるとされている。アンダーソンらは高齢者ではたびたび前方固定が上手くいかないことがあったが臨床成績はそれほど悪くなかったとしている。われわれの研究では14%で上手くいかなかったが、再手術にいたったのは3例であった。ということで十分満足いく成績であると考えられる。
c1-2の後方固定では骨癒合率が100%であったが、頚椎の可動域制限が必ず出た。環軸椎固定で癒合が得られるかどうかはほかの文献でも高い癒合率が報告されている。癒合率が高い原因としてアンダーソンタイプ3骨折が半分以上の症例を占めている。一般的にタイプ3骨折の癒合率はタイプ2の骨折よりも高いということが知られている。ただし、今回の研究ではタイプ2とタイプ3でその骨癒合率には違いが無かった。後方固定では頚椎の可動域制限と慢性の痛みを訴えることがあるといくつかの文献で報告されている。特に回旋運動は環椎ー軸椎間でその運動の50%が行われているので、ここの固定を行うことでより深刻に発生する。いくつかの研究では高齢者では回旋制限は許容されるとしているが、われわれの研究では約半分の患者で満足感が得られていなかった。C1-2の経椎間関節スクリュウ法が今後別の方法として検討されてもよいのかもしれない。
われわれの研究では前方固定でも後方固定でもその合併症の発生率は似たようなものであった。ただ、他の研究では後方固定のほうが合併症の発生率が低いとされており、われわれの研究でそのようになったのは後方固定の患者数が少なかったことがある。しかし前方固定群に比べ再手術にまで至った症例は無かった。
有病率と死亡率については16%という高い数字であったが満足いく成績が得られたものと考えられる。ただ、手術をしないとその死亡率は10-25%とされており、また別の報告では手術をした歯突起骨折の患者の死亡率が0-30%となっていることからそれほど悪いものではないと考える。術前の合併症やそういった問題が関与している可能性がある。

《論評》
高齢者であれば後方固定の方が良いのかというように感じました.(今まで後方からのアプローチしか見たこと無いので)

2009年12月24日木曜日

2009.12.24 JBJS(Am) Early Results of a New Method of Treatment for Idiopathic Congenital Vertical Talus

<修正版>

Background:

特発性先天性垂直距骨は伝統的にmanipulationとcastで行われ、広範な軟部組織解離術を追加していた。しかし、こういった治療は重篤な足部のstiffnessや他の合併症をきたすことがしばしばある。本研究の目的は、垂直距骨に対するPonseti法に基づいたmanupilationとcast固定および距舟関節のピンニングと経皮的アキレス腱切除術を組み合わせた方法の特発性先天性垂直距骨に対する効果を評価することである。

Methods:

11名19足の特発性先天性垂直距骨を治療後2年以上経ってretrospectiveにフォローした。行った治療法はmanipulationとcast固定および限定的な外科処置で、アキレス腱切除を19足全て、前脛骨筋腱のわずかな延長を2足、短腓骨筋腱の延長を1足、経皮的距舟関節ピンニング固定を11足に行った。Manipulationとcast包帯の方法はPonseti法に準じて行ったが、力は逆方向に加えた。初期、手術施行直後、フォローアップ最後で臨床所見とレントゲン所見を評価した。レントゲン測定値を比較した。加えて、患者と同年代の正常値とも最終評価時に比較した。

Results:

初期の矯正は臨床的にも画像的にも19足全てで得られた。平均5回のcast矯正が必要であった。広範な外科的解離術は1例も行っていない。最終評価時、足関節は背屈平均25°、底屈平均33°であった。舟状骨の背側亜脱臼が3症例で見られたが、いずれも距舟関節のピンニングを行っていなかった。最終フォローアップ時、治療前と比べて全てのレントゲン測定値は有意に改善し、全ての測定した角度で同年代の正常範囲であった。

Conclusions:

特発性先天性垂直距骨患者に対する連続的なmanipulationとcast固定および距舟関節のピンニングと経皮的アキレス腱切除術では、臨床的に足の外観、足の機能、最短2年でのレントゲン測定値の矯正について優れた結果が得られた。
Fig. 1

A:先天性内反足の6歳男児、底屈時側面像、前足部が背側に持続的に転位している

B:同じ患児の背屈時側面像、距骨と踵骨の持続的な底屈を認める

Fig. 2

距骨の垂直変形を戻すために加えるmanipulationの力の方向を図で示す。足部を底屈方向にstretchしつつ、距骨頭内側面に反対方向の圧を加える。

Fig. 3

距舟関節のピンニングとアキレス腱延長の前に最大限後足部内反、前足部内転した肢位を図に示す。足部は背側の腱、関節包、皮膚が適切にstretchされているように最大限底屈した状態にする。

Fig. 4

小手術の方法である。

a:ピン固定による距舟関節の整復。踵骨は尖足位のままである。

b:経皮的アキレス腱切除術後、踵骨の尖足位は矯正されている。

Fig. 5

C:矯正後3年、右の後足部が中間位となっている。

D:背屈は他動的に25°

E:5歳時のレントゲン側面像、距骨と第一中足骨、距骨と踵骨、脛骨と踵骨の関係は正常

Table Ⅰ

レントゲン計測値を最終フォローアップ時と正常値で比較
Discussion

特発性先天性垂直距骨の治療ゴールは距骨、舟状骨、踵骨の解剖学的位置関係の正常化であり、これが治療されなければ痛みや機能障害は必発と考えられている。連続的なcast治療は軟部組織や足と足関節の背側部の神経血管構造のstretchに寄与するが、最終的な矯正には至らない。従来の広範囲の手術治療では合併症や創部のnecrosis、距骨necrosis、矯正不足、足関節や距骨下関節のstiffness、偽関節などにつながり、最終的に距骨下関節固定や三関節固定が必要となる。Seimonらは限定的な手術、つまり背側距舟関節包の開放と第三腓骨筋、長母趾伸筋、前脛骨筋腱の延長、距舟関節のピンニングを行って良好な結果を得たと報告していた。

 連続的なcast治療は適切な矯正を得るには効果不十分と考えられてきた。しかし、今回の研究ではmanipulationとcast治療および限定的な外科的処置で初期成績は良好であった。

 Manipulationとcast法はPonseti法に準じたが、力をかける方向は逆にした。解剖と変形についての完全な理解が矯正に至るには必要である。距骨頭に前足部を乗せるのに平均5回のcastが必要であった。

 一旦前足部が距骨頭上に整復されたら、最大底屈位で距舟関節のピンニングを行う。前足部が整復位で保たれれば、後足部の尖足位は経皮的アキレス腱延長術を行うことで、前足部の整復位を失うことなく矯正できる。ピンニングを行った症例で再発はなかった。

 今回の方法では良好な成績を得ることができた。診断がつき次第manipulationとcastを行うことが勧められる。矯正位が維持されるか長期フォローが必要である。先天性垂直距骨の50%は特発性なので、この方法で以前のような外科処置をしなくて済み、やわらかい足を増やし維持することができる。

《論評》
コメント参照ください。
勉強不足が露呈いたしました。苦笑

皆様からの厳しい意見をお待ちしております。

今後とも宜しくお願い申し上げます。

2009年12月17日木曜日

2009.12.17 JBJS(Am) Nov.2009. Extracorporeal Shock-Wave Therapy Compared with Surgery for Hypertrophic Long-Bone Nonunions

Background:

いくつかの研究でESWT(Extracorporeal Shock-Wave Therapy)は長管骨の癒合不全に対する外科的治療に代わるものとして勧められてきた。本研究では長管骨の癒合不全に対する2つの異なるdeviceを用いたESWTの結果と外科的治療の結果との比較を行った。

Methods:

126名の長管骨の癒合不全患者をランダムにESWT群(Group1, Group2)と外科治療群(Group3)に割りつけた。ESWT群はエネルギー束密度0.40mJ/mm2または0.70 mJ/mm2で4000 impulseの治療を4回受けた。3群間のbackgroundに差はなく、癒合不全の期間も変わらず、フォローアップ期間も変わらなかった。レントゲン結果(primary outcome)と臨床結果(secondary outcome)を治療前、治療後3か月、6か月、12か月、24か月に決定した。

Results:

3群間でレントゲン所見は違いがなかった。6か月の時点で、Group1は癒合不全の70%、Group2は71%、Group3は73%が治癒した。治療3か月後、6か月後では、臨床結果は2つのESWT群で有意に外科的治療群よりよかった。しかし、治療12カ月後、24カ月後では3群間で違いはなかった。しかし12か月の時点で1と3、2と3の間でDASH scoreは有意差を認めた。

Conclusions:

ESWTは長管骨のhypertrophic nonunionに対して外科的手術と同程度に癒合を促進し、短期的な臨床結果は改善する
Fig. 1

研究の流れ

156名が研究対象となり、30名が除外され(8名が基準を満たさず、18名が除外基準に当てはまり、4名が参加を拒否)、126名がランダムに3群に割付けされた。

Table Ⅰ

患者のBaseline

各群で偏りはなかった。

Fig. 2

実際のESWTのポジショニング

Table Ⅱ

4つのピリオドでの各群の治癒数、()内は%

Fig. 3

25歳女性の左上腕骨の症例

3-Aが治療前、3-BはESWT後3カ月で、骨折部は癒合し、患者は痛みなく機能障害はなし

Fig. 4

38歳女性の右脛骨の症例

4-Aが治療前、4-BはESWT後3か月、4-Cは治療後6か月で、骨折部は癒合し、患者は痛みなく機能障害はなし

Table Ⅲ

治療前後の各群の痛み、DASH score、LEFS scoreと、それぞれの比較

Discussion

多くのtrialによると程度の差はあるが、全て癒合不全に対するESWTの効果はあるとされている。計631名、10のhigh-qualityな臨床試験のsystematic reviewでは治療成功例は41-91%であった。

 Wangらはhypertrophic nonunionでは3か月の治療成功例は40%、6か月では61%、12か月では80%であったが、atrophic nonunionでは27%であったと報告している。他のデータとも合わせるとatrophic nonunionよりhypertrophic nonunionでshock-waveの治療成功例は多かった。ESWTのdeviceや出力が異なるため、直接様々な研究を他の研究と比較はできない。

 本研究では、atrophic nonunionでdrop-out率がhypertrophic nonunionより多かったので、atrophic nonunionが少なすぎて治療法に対する結論を引き出せなかった。Atrophic nonunionのみに焦点を絞った研究がなされることを提案する。

 3か月、6か月での早期の臨床結果の違いはshock waveが直接的、間接的に痛みのメカニズムに作用し、痛みを軽減したことにより四肢の機能が改善した可能性がある。機序はよくわかってないが、shock waveは患者の痛みの閾値を上昇させ、微小な骨折を起こすことにより骨の治癒を促進し、血流を増加させる。

Shock waveはeNOS(内皮一酸化窒素合成酵素)、VEGF(血管内皮細胞増殖因子)、PCNA(増殖性細胞核抗原)などの血管由来のgrowth markerの発現を増加させ、血管新生を刺激する。

最近のin vitroの研究で、ESWTは骨芽細胞の代謝活動を増強することが示された。我々の研究では高いエネルギーレベルを用いたが、副作用なく長管骨の癒合不全に対して高い治癒率を示した。この結果はそれらのin vitroでの研究結果に合致する。

問題点がいくつかこの研究には存在する。治療していない対照群がないことが主たる問題点で、倫理委員会での承認が得られなかったため含めることができなかった。加えて、盲検が完全でなかった。放射線科医は外科治療群の患者を固定したdeviceであったり、術後のgapの変化から認識してしまうことができた。またNSAIDが外科治療群では治癒過程を阻害した可能性がある。

我々の知見の一般化可能性は限定的である。患者選択を都合よく行ったこと、ESWTのパラメータを経験的に選択したこと、癒合不全の有効な評価指標を用いなかったことなどがその原因である。

このランダム化比較試験は、ESWTが単純で、安全な長管骨のhypertrophicな癒合不全に対する外科的治療に代わる方法であることを強く提案する。この結果は確認と異なるプロトコールを調査することが必要である。

《論評》
腎結石などの破砕に使われるESWTを偽関節治療にも使ってみたというpaper.よく読むと局所麻酔をかけたりいろいろ大変な思いをして使っているよう。これだったら別にLIPUSでいいじゃんと思う。

2009年12月14日月曜日

2009.12.14 JBJS(Am) Dec. 2009 Reduction of Acute Anterior Dislocations: A Prospective Randomized Study Comparing a New Technique with the Hippocratic

要旨
背景
肩関節脱臼の整復方法にはいろいろな方法が報告されているが、それぞれの方法についてその難しさ、再現性、安全性を評価した報告はない。結局のところどの方法を選択するかということについて客観的な指標には欠ける。われわれは”FARES”となづけた新しい肩関節の脱臼整復方法についてHippocratic法とKocher法とその効果、安全性、施術中に患者が感じる痛みについて調査を行った。
方法
2006年から2008年までに173例の肩関節前方脱臼をきたした患者に対してこの研究は行われた。(骨折例も含む。)154例がすべての参加基準を満たした。来た患者をHippocratic法、Kocher法、FARES法の3つの方法のうち一つをランダムに割りつけた。1年目、もしくは2年目の整形外科研修医が整復を行い、術中の痛みをVASスケールで聴取した。
結果
年齢、男女比、受傷機転、整復までの時間が同等となった。整復の成功率はFARES法で88.7%、Hippocratic法で72.5%、Kocher法で68%であった。有意にFARES法が成功率が高かった。整復されるまでの時間はFARES法が有意に短かった。(FARES2.36分、Hippocratic法5.55分、Kocher法4.32分)。痛みについてのVASも有意にFARES法で低かった。(1.57:4.88:5.44)。合併症はいずれの群でも認めなかった。
考察
FARES法は従来の方法よりも素早く行うことができ、痛みもなく効果的な方法であると言える。一人でも容易に行うことができる。骨折を伴った例にも用いることができ、有用である。

表1 患者背景。ほとんど3群に差はない。

図1 今回の研究のフローチャート。

図2、図3、図4、図5 FARES法の実際
施術者は患者のわきに立ち、患者の手を両手で握る。肘は伸展位で前腕は中間位を保つ。次にゆっくりと長軸方向に牽引を加えながら愛護的に外転位にもってゆく。この時休みなく2から3秒くらいのサイクルで5センチ以下の動きで前後方向にかるーくゆするようにするとよい。
90度まで外転出来たら前腕を回旋させる。(愛護的に)この時も前後方向の揺れを続けることが重要である。
120度までこの状態で外転できるとたいていそこで整復される。
整復されたところで腕を内旋位にして愛護的に胸の上まで持ってゆく。

表2 各群の成績。FARES法が最も有用である。

考察
肩関節前方脱臼はさまざまな整復の方法が報告されている。今回われわれが報告したFARES法は前後方向への振動を加えながら長軸方向の牽引を加える手技のことである。Milch法とよく似ている点もあるが、対向牽引をかけない点と外旋させながら外転させるのか、われわれが報告したように90度までまわしてから外旋させるのかといった違いがある。前後方向にゆらしを加えるのもリラックスさせるために重要な技法である。
さまざまな方法が整復に有用であると報告されており、Kocher法は90%の成功率があるとする報告もある。しかしながら私たちの研究では68%に過ぎなかった。ほかにも肩甲骨移動法や過外旋法などがあり、いずれも鎮静下では有用であるとされている。しかしいずれの方法も対象数が少なく、またランダム化比較試験ではない。ランダム化された試験としてはKocher法とMilch法を比較し、Kocher法がわずかに優れているとする報告のみである。そのなかでもFARES法は出色の成績である。
この方法はまた鎮静する必要がないので経験のない術者でも可能である。
しっかりランダム化されているが盲検下での試験ではないことがこの研究の限界である。また関節の弛緩性についての評価も行っていない。それでも十分価値のある研究である。
FARES法は肩関節前方脱臼の整復方法として有用な手技のひとつである。

≪論評≫
自分自身は”zeroーposition”法で特に苦も無くはめていますので、まあ、術者の好みでいいのではないかと思いますが。一度試してみてもよいかもしれません。
ヒポクラテス法、kocher法はyoutbeにUPされていますがまだこの方法はUPされていません。
どなたか肩脱臼した患者さんにお願いしてやって動画をUPしてください。

2009年12月9日水曜日

2009.12.10 Up to date. Treatment of calcium pyrophosphate crystal deposition disease

ピロリン酸カルシウム塩の結合織への沈着(CPPD)は何かしらの臨床的な症状をきたしうる。
これらの疾患はピロリン酸カルシウムによる疾患という風に分類される。臨床症状やレントゲン写真から代わりの名前をつけられているが、その適用には限界がある。
そのようなものとして偽痛風、軟骨石灰化症、ピロリン酸関節症といった名称がある。
・偽痛風はCPPDの滑膜炎による急性の発作のみを指す。それは尿酸塩の発作と共通点がある。ただ、CPPDの発作の場合には患者は今までにそのような病歴がないといったことがある。
・軟骨石灰化症とはレントゲン写真上での硝子軟骨、線維軟骨へのカルシウムの沈着を指す。これらはたいていCPPD沈着による病気の患者で認められるが絶対の特異性があるわけでなく全部が患者に対して影響を与えているわけではない。
・ピロリン酸関節症とはCPPDの結晶の沈着によって起こされたとする関節の障害、もしくはレントゲン写真上の異常を指す。しかしながらこの名称は病態という点で正しく表現されていないが、CPPDの沈着での病因における常軌を逸した無機物リン酸カルシウムの代謝が証明させることでこの単語を使うことを正当化できるようになるのかもしれない。

要はCPPDによる疾患の名前はさまざまあるが、CPPD沈着による疾患として今後記載し、この項ではその治療についてのみ述べる。

もし、CPPDによる疾患が惹起されるような基礎疾患が背景にある場合にはその疾患の治療が優先される。

またこれらの治療については経験に基づいて述べており、コントロールされた研究が行われたわけではないことも付け加えておく。

急性の偽痛風の治療。
アルゴリズムにしたがって行う。(図1)。
・慎重な関節穿刺を行い、吸引を行う。
・NSAIDS,コルチヒンの投与を行う
・関節内ステロイド注射
・安静

推奨
可能であればいつでも診断と治療を目的として関節穿刺を行っている。ついでにステロイドの関節内注射も行っている。このとき1から2mlのキシロカインと40mgのケナコルトを混ぜて注射している。注射は肩関節を含めた大関節に行うこととしている。
上肢、下肢の小関節では量を減らして対応する。荷重を禁止し、2,3日安静にするように指示。シーネによる安静も考慮。
2関節以上が罹患している場合には関節注射はあまりよい方法でないので、痛風発作に準じた薬の投与を考慮する。その詳細については以下のとおり。
・NSAIDsまたはコルヒチンが好ましい。
・患者の年齢、状態が内服できないような状態であればステロイド、ACTHの全身投与が適応となる。しかしこの方法はより根拠がない。
・コルチヒンの静脈投与は偽痛風による炎症を減らしてくれる。ただしアメリカではコルチヒンの静脈投与という方法自体がなくなりつつある。

偽痛風の予防
偽痛風の再発予防にはコルチヒンの内服(0.6mgを一日2回)を推奨している報告がある。ということで、筆者らは2回以上の偽痛風発作がある場合にはコルチヒンを予防的に内服することをおススメしている。
0.6mgを一日2回内服すると高齢者では胃部不快感や下痢を起こす。そのような場合には1日1回に減量したりするとよい。ただし1日1回に減量したときのエビデンスはない。

慢性、進行性のCPPDの治療
急性期の偽痛風の治療が成功してもCPPDの慢性化、進行を止められるわけではないし、現在沈着しているカルシウムを除去してくれるわけでもない。現在細胞膜輸送でのアニオンギャップを阻害するプロベネシドを用いて細胞外でのピロリン酸の同化を遅らせようという興味深い研究があるが、現在進行中である。

ヘモクロマトーシス、上皮小体機能亢進症、甲状腺機能低下症などのような代謝性疾患に伴って起こるカルシウムの沈着は原疾患の治療を行うことでは石灰化をとめられない。または新しい石灰化すら生じてくる。しかし、いくつかの例では石灰化が自発的に再溶解したとする事実を報告しているレポートもある。

・低マグネシウム血症に対してマグネシウムの投与を行ったところ半月板の石灰化が消失した。
・マグネシウム製剤を内服させたら全身症状は改善したがレントゲン写真上の変化は認められなかった。

関節の変性があってCPPDである場合には変形性関節症に準じて治療する。

2009年12月7日月曜日

2009.12.7 JBJS(Am) Dec.2009 Assesment of technical skills of orthopaedic surgery residents perfoming open carpal tunnel releas surgery

要旨
背景
手が上手に動くかどうかということは妥当性のある手術技量に対する能力評価の重要な一部分を占める。手術技量を評価し、点数づけることが重要だと認識されていてもその評価方法はいまだ定義づけられておらず、またその妥当性も明らかにはなっていない。今回の研究の目的は整形外科レジデントに向けて行った4つの試験の妥当性と再現性について手根管開放術を行うことで判定をした。
方法
6つのレベルにある28人の整形外科研修医に対して死体標本を用いて手根管開放術を行ってもらった。資格を判定するのに4つの測定方法が用いられた。その1、web上で解剖、手術適応、手術の手順、手術レポートの口述、手術の合併症と入院適応についてテストを行った。その2、OSATSに参加したレジデントに対して権威ある手の外科医が2人で詳細なチェックリストスコア、global
rating scale、可か不可かを判定した。個々の評価はレジデントのレベルと同様にほかのものと関連を認めた。
結果
有意な違いを認めたのは経験年数とテストの点数、経験年数とチェックリストスコア、経験年数とglobal rating
scale、経験年数とと合格率であった。経験年数手術時間との間には有意な差を認めなかった。
考察
この結果から言えることは知識量のテストと死体標本を用いたテストでは優秀で教養のあるレジデントが抽出できるということだ。しかしながたら、知識量のテストの結果が悪かったことは実際の手術でも失敗につながったが、知識があっても上手に手術ができるわけでないということが分かった。知識のテストと実技のテストは別で行われる必要がある。

図1 試験のプロトコール 知識のテストとOSATSを別に行った。OSATSは3段階で行っている。

表1 参加者の成績。経験年数が増えるほど成績が良くなる

表2 このテストを受けるまでの参加者の手根管開放術の経験数

表3 OSATSテストの再現性 チェックリストとglobal rating scaleはテストとして妥当である。

図2 座学のテストが悪かったものは実技でもよい成績を得られなかったが座学のテストがよくても手術実技で合格点に達するわけでない。

考察
この研究は手術手技を評価する方法が妥当性があるかどうかを検討するために行われた。知識量のテスト、global rating
scale、詳細なチェックリストに基づいたテスト、合否判定のいずれの方法も経験年数に基づいた成績が得られた。このことからこれらのテストはいずれも妥当であると考えられる。知識のテストの成績が悪いことはOSATSの成績が不良であることを示唆するものの、知識のテストで合格してもOSATSで必ずしも良好な成績が得られるとは限らない。
今回の研究では一般的な手術全体で以前妥当性があるとされた方法を手根管開放術に用いて行ってみた。global rating
scale、詳細なチェックリスト、合格、不合格判定のいずれもレジデントのレベルと強い関連性を示した。知識量は卒後1年目から2年目に。合格、不合格のレベルに達するのは2年目と3年目の間に。すべての研修医は卒後3年目までに手根管開放術は成し遂げられるようになっていた。卒後2年目までの10人中9人がそのレベルには達していなかった。研究が行われた病院では手の外科を卒後3年目にローテーションするようになっている。なので卒後3年目になると手根管開放術ができるレベルに達する人数が増えるのであろう。

死体標本を用いたテストはそれぞれと関連を認めたものの、4人のレジデントでは知識量を問う試験では合格したものの、実技試験では不合格であった。知識量を問うテストでは実技がどれくらいできるかは分からない。しかしながら知識量を問うテストは手術技量を評価する前提条件として認知するための領域として重要な役割を担っている。知識量を問うテストは手術技量を評価する準備ができているか判定するためのスクリーニングツールとして有用である。しかしこのテストだけでは実技が上手にできるかどうかを判定するには実技テストの代わりになるものではない。

あらゆる方法は技術を評価する上で妥当性と再現性があることが分かった。以前の研究で言われていた一般的な手術の評価で行われるOSATS法のうちの二つが特に有用であるということがこの研究で分かった。OSATSが手根管開放術に修正されて用いられるときにそれらはよく似た結果であった。MatinらはOSATSのテストのうち3つの方法(global
rating scale、詳細なチェックリスト、可、不可判定)を用いたと記述している。global rating
scaleはたくさんの研究者によって用いられている。この方法は手術の技術評価の質的評価としてつかわれる。global rating
scaleはもっとも多くの手術の質を評価する際に使われている。この方法では安全性の測定やいかなる悪い評価をするようなところは起こらなかった。そこで筆者らは起きうる悪化する事態を記載したチェックリストをつくり、それを検者にもたせ合否の判定基準とした。
最後に手術の時間を測定したものの、この手術時間は経験年数とは関連がなかった。これは若い医者では素早く行えることができたが、専門性に欠けていたことと関連しているのかもしれない。

この研究の強みは評価項目の妥当性を評価しただけでなく、価値の高いテストのフォーマットとしてつかわれる厳格さがあると示したことです。すべての研修医は同じ2人の医師によって評価されており、言葉による助言は与えられず、同じ手術環境がつかわれたことである。

この研究の問題は二人の検者ということでバイアスがかかることである。また、検者はレジデントの経験年数を知っていた。将来的にはそのようなことをブライドとして行いたい。ほかの問題としては卒後1年目の研修医が2人しかいなかったことだ。そのうえ、行った手術が手根管開放術という容易な手術であった。もっと難しい手術の方が差が大きく出てよかったのではないだろうか。最後に、OSATSは一般的な手術に用いられる方法であるが、これを手根管開放術に用いたものは今までの研究ではなかったことだ。

OSATSの発展は整形外科教育、手術の教育の進歩の上で重要でまた必要である。腹腔鏡のようなほかの手術ではレジデントの教育で手術手技のテストが必要であるというようになっている。腹腔鏡手術では知識、周術期管理、テストにかかる時間で手先の器用さを判定している。今回の研究では手根管開放術でその評価を行った。今後整形外科手術全般で同様の評価が行われるときのフレームワークとなるでしょう。

≪論評≫
OSCIIの手術バージョンであるOSATSについての話でした。手根管開放術でOSATSで評価してみた。という方法です。教育、感染などさまざまな分野で一般外科の先生方はいろいろ考えて実行されているんだなと実感。
今後手術手技の評価は日本でも必要とされてくると思いますがOSATSという言葉を覚えておいても損はないかと。

2009年12月3日木曜日

2009.12.3 JBJS(Am) Nov.2009 Surgical Site Signing and “Time Out”:Issues of Compliance or Complacence

Background:

 自発的な皮膚へのマーキングprotocolによる効果は限定的で、手術部位の取り違えは未だcommonな問題として残っている。本研究ではJCAHO(病院認定合同委員会)の“time out”protocolの制定前後で、ある医療圏における救急および非救急患者に対する、site-signingと“time out”のコンプライアンスに関して整形外科医を調査した。

Methods:

 1つ目の研究は2006年に行われ、3か月以上の期間において48回の手術で執刀医または執刀するレジデントのイニシャルがドレーピングされた手術部位にあるかどうか記録した。2つ目の研究は翌年に行われ、231のランダムに選択された手術について同様に評価されるとともに、新たに採用された“time out”作業の履行についても行った。

Results:

 1つ目の研究では、術野をドレーピングした後、イニシャルは救急症例では67%で見られ、待機的手術では90%で見られた。2つ目の研究では、イニシャルは救急症例では61%で見られ、待機的手術では83%で見られた。“Time out”は70%の症例で皮膚切開前に行われ、皮膚切開後は19%、全く行われなかったのは11%であった。

Conclusions:

 全ての手術で術前に皮膚にサインすることと“time out”protocolの意義を整形外科医は認識すべきである。我々はこの二つの方法のコンプライアンスが100%になるように執刀医が努力することを勧める。
Discussion

 Bernsteinは手術部位の取り違えは「ほぼ間違いなく執刀医が最も恐れる失敗」とした。このため、このhuman errorを減少させるか完全になくすシステムを用いれば、患者の安全性は著明に改善する。様々な整形外科機関がskin-signing protocolを勧めており、たとえば1994年Canadian Orthopaedic Associationの“あなたのイニシャルを通して手術”の取り組み、1997年American Academy of Orthopaedic Surgeonsの“あなたの部位にサインを”の取り組みが手術部位取り違えの危険を最小限にするtoolとして勧められたが、広く普及はしなかった。Fureyらは2001年カナダの整形外科医をランダムに抽出し、聞き取り調査を行った。回答者の60%は術前の皮膚切開部のマーキングは病院のやり方でないと述べている。52%の執刀医は皮膚切開部のマーキングをいつも行い、25%は全くしたことがない。

我々はマーキングがうまくいかなかった要因、患者プライバシーの欠如など、を同定しようと試みた。我々の研究では、39例でドレーピングした後見えなくなってしまっていた。そのうち26%は股関節であった。しかし、21%は膝で、23%は下肢の他の部位で容易に受け入れることが出来る場所であった。

 2つの研究での重要な特徴は、執刀医は待機手術も緊急手術も同じ手技で行っており、サインも同様に行うことが期待されていた。しかし、四肢へサインした割合は待機手術で84-90%であったのに対して、緊急手術では61-67%であった。この違いは(1)splintがあると手術部位を同定したと仮定してしまう(その場所が正しかろうが間違っていようが)、また正しいサインへの物理的バリアともなっている、(2)救急処置の準備において術前にマークするのは執刀医やレジデントであるとは限らず、“チーム”の誰かが行うかもしれない。

研究1と2で皮膚へのサインをした割合は、待機手術、緊急手術ともほとんど違いはなかった。研究間のインターバルで執刀医のサインする手技に変化がなかった事を示している。

まとめると、1つの医療圏の4つの病院でのデータを用いて“sign your site”、“time out”の方策の受け入れが完全でないことがわかった。全てのケースで皮膚へのサインが行われていたのは70%。“Time out”では、執刀医チームにより手術部位を正しく照合することなしに手術を行ったのが23%であった。ミスを避ける確認するためのメカニズムを採用することで患者の安全性は向上する。四肢へのサインと“time out”は手術部位取り間違えのない理想に近づくことのできる方法であり、両方の方法を用いることをお勧めする。

≪論評≫
日本でもタイムアウトや手術部位サインを行うところは増えてきていると思う。しかし、タイムアウトのタイミングが適当だったり、消毒している間にサインが消えてしまったりといったminor troubleはよく起こっていると思う。そういったトラブルへの対処方法を考えて、新しく提唱できるようになるとより安全な手術が提供できるのかも。

2009年11月30日月曜日

2009.11.30 JBJS(Am) Nov. 2009. Patellar Resurfacing Compared with Nonresurfacing in Total Knee Arthroplasty

要旨
TKAのときに膝蓋骨まで置換するかどうかということは議論の余地がある。本研究では以前の研究の長期フォローを行った。86例、118膝。primaryのTKA。これを膝蓋骨置換群と非置換群とに分けた。調査項目はKnee
society score,膝蓋大腿関節に特化した41個の質問票、患者満足度、全体、前方の膝関節疼痛スコア。レントゲン評価、合併症と再置換の頻度について調べた。
57症例、78膝については10年以上のフォローが可能であった。
結果二つの群でROM,knee society
score,患者満足度、膝の前方の痛み、膝全体の痛みの点で差を認めなかった。再置換に関しては膝蓋骨置換群で9%、非置換群で12%であった。膝蓋大腿関節の問題で再置換を行ったのは膝蓋骨置換群で2例(3%)であったのに対し、非置換群で7例(12%)であった。
結論としては膝蓋骨は置換しても置換しなくても大きな変わりはない。

図1 ランダム化のフローチャート
図2 使用したtibia component
図3 使用したfemoral component
図4 使用したpatella component

表1 すべての臨床的評価において有意差なし

考察
非置換群で膝蓋大腿関節の痛みのために再置換を行った7例はすべて初回術後5年以内に行われ、うち6例は2から4年以内に行われた。対して置換群では5-7年後に2例が再置換された。どうしても私たちはフォローしている最中に膝前面の痛みがあるとそれが膝蓋大腿関節が原因であると考えてしまいがちである。対照的に置換してあり、臨床所見に乏しくレントゲン写真上も正常であれば膝前面の痛みがそこから来ている可能性を患者に対して示唆することはほとんどない。そうすると必然的にそのような患者は長期間にわたって経過観察することとなる。そしてこれらの患者さんでは膝蓋骨の無腐性壊死やゆるみ、骨折、断片の先鋭化などが認められ、これらの合併症は非置換群では認められなかった。加えて少なくとも5度の大腿コンポーネントと脛骨コンポーネントの回旋異常があると膝前面の痛みと関連し、また膝蓋骨の傾きや亜脱臼のようなレントゲンに写らない異常をきたす。
有意な差を出すには母集団が小さいこと、フォローが完全でなかったことなどがこの研究の問題点である。
結局結果は似たり寄ったりなので、膝蓋骨は置換しても置換しなくてもどちらでもよいと思う。ただ自分達は変えていこうと思う。

≪論評≫
膝蓋骨の置換は施設によってやったりやらなかったりを経験してきたので、”差がない”という結論は一応納得がいくような気がする。100例以上でNが少ないといわれてしまったことにはびっくりであった。術者の好みで決めてよいということであろうが別の報告もみてみたいところである。
また、この論文は文中に”ハリケーンカトリーヌのせいでデータがなくなった”なんていう言い訳もしていて少し面白味がある。(笑)

2009年11月26日木曜日

2009.11.26.JBJS(Am) May 2009.Eye Protection in Orthopaedic Surgery. An in Vitro Study of Various Form of Eye protection and Their Effectiveness

整形外科手術中にdebrisが飛んで結膜にcontaminationすることは、執刀医をHIVやB型・C型肝炎などの感染症のリスクにさらす事になる。この研究の目的は様々な保護用のeyewearの結膜へのcontamination予防効果について比較するものである。

Methods:

 手術中の外科医の典型的な頭部の位置になるようにマネキンを用いてsimulation modelを作った。頭部は術野から適切な位置にし、死体の大腿部で大腿骨骨切りを行った。6つのグループで様々な目の保護用のwearを用いてその効果を検証した: (1)最近の既製品の眼鏡、(2)標準的な外科用ルーペ、(3)硬質プラスチックの弯曲をつけてある眼鏡、(4)disposableなプラスチックの眼鏡、(5)facemaskとeye shieldの組み合わせ、(6)保護なし(対照)。30例の大腿骨骨切りを行い、保護用deviceとsimulation用の結膜表面へのcontaminationを記録した。

Results:

テストしたすべてのdeviceにおいて完全な効果は得られなかった。(1)と(6)では結膜へのcontamination率は83%。他の保護deviceでは有意にcontaminationは減少し、(2)で50%、(5)で30%、(3)で17%、(4)で3%であった。

Conclusions:

 今回のモデルにおいて既製品の眼鏡は対照群と比べて有益性は認められなかった。そのため外科手術時に目の保護のために使用することは推奨できない。容易に入手できるdisposableのプラスチック眼鏡は最も結膜へのcontaminationが少なく(3%)、整形外科手術において結膜へのcontaminationからほごするには効果的な手段である。
Fig. 1

 手術中の写真を分析しモデルを作成した。(a)は30°、(b)は骨切り部中央から頭までの距離で垂直方向に40cm、(c)は斜めの面で53cm、(d)は水平面で28cm。3つのマネキンの頭部を一斉にテストし、骨切り部に対して1つは中央に、2つは30°斜めにしてある。

Fig. 2

6つのバリエーション(文中(1)-(6):A-F)

Fig. 3

テスト後のマネキン

Table Ⅰ

 それぞれのdeviceによる結果

Table Ⅱ

 対照と比べた効果の比較
Discussion

 術中の執刀医の眼へのdebrisの飛散率はよく報告されている。術式による違いはあるが、有病率は100%(23例中23例)と報告されている。イギリスの外科医の調査で、deviceを用いてない265名のうち59%(157名)でcontaminationがあったのと比較し、目の保護deviceを用いている535名ではcontaminationは27%(144名)であった。多くの研究でマスクと眼鏡で高いcontamination発生の危険があることが示されているが、我々の知る限りはどれくらいの割合でdebrisが保護deviceを通り抜け、結膜に接触するかは報告されていなかった。

 我々の研究では、モデルを用いることにより直接結膜表面にcontaminationがあるか測定し、様々なdeviceの効果について比較した。既製品の眼鏡では結膜へのcontaminationの割合は対照群と変わりなく、他のdeviceと比べて有意に高かった。BellとClemnetの結果とは対照的に、既製品の眼鏡は「保護eyewear」と考えるべきではなく、debrisが予想される場合唯一の目の保護deviceとして用いるべきでない。骨切り、高流量のパルス洗浄、drilling、reamingなどのリスクの高い手技で特に注意が必要である。

 特に注目されるのはeye shieldとfacemaskの組み合わせで結膜contaminationが30%であった点である。Eye shieldの上方縁は額近くには行っておらず、そのためにeye shieldを通り越して眼に達する。

 ルーペは結膜contaminationが50%に見られた。ルーペは既製品の眼鏡より表面が広いためよりよい保護が可能である。しかし、上方と下側方に脆弱性を認める。

 硬質プラスチックの弯曲のついた眼鏡とdisposableなプラスチックの眼鏡ではcontaminationは17%と3%であった。有意差をみるにはサンプルサイズが小さすぎた。これらのdeviceでは顔との間は数ミリ程度しか残っていない。このことがcontaminationを小さくする。しかし、リスクは完全には排除できない。Disposableの眼鏡の利点の一つは既製品の眼鏡の上に掛けられることと、湾曲をつけたものにすることができることである。

 問題点はいくつかあり、1つ目は、モデルは一定の位置だけであるが実際では、術者は顔の位置を動かしているということ。しかし、術者の顔の位置によらないdeviceの比較のためモデルは有用であったと考える。2つ目は、既製品の眼鏡と対照群は有意差がないことを見出したが、今回の研究では35%だけの違いで全て同定されているため、type-Ⅱ error(帰無仮説が偽であるときにそれを棄却しそこなう(採択してしまう)誤り)の可能性がある。3つ目は、deviceへのcontaminationが98%で見られたが、これは報告されている中でも多く、結膜へのcontaminationを過大評価している可能性がある。しかし、過大評価していてもdeviceの相対評価には影響しない。最後に、モデルの結膜表面は35×45mmと人の平均(10×35mm)より広い。

≪論評≫
普通のメガネだけではだめ!!ということで今まで結構油断していたなあと思います。大腿骨の手術のときには宇宙服の装着が必要かしら?
普段の骨折の手術のときはメガネ on メガネで行くかゴーグル型のメガネを新しくあつらえるかどちらかにすべきでしょう。

2009年11月19日木曜日

2009.11.19. Elbow fracture distal humerus.J Hand Surg. 2009

上腕骨遠位端骨折は治療に難渋する障害である。上腕骨遠位部の解剖は非常に複雑で、橈骨と尺骨と関節をつくり、多平面での運動を可能にしている。さらに、粉砕や骨減少症が骨幹端-骨幹部の結合を弱くし、適切な安定化を困難にする。様々な外科的固定法がデザインされており、bicolumnar platingが最もpopularである。固定法の議論や、あらかじめ骨形態にあわせたplateやlocking plateを含めた新しいimplantが紹介され、様々な固定概念の生体力学的なテストに新たな焦点が当てられている。適切な再建や固定の不成功は、骨移植や創外固定、症例によっては人工肘関節置換術などの付加的手段で対処できる。関節面は垂直せん断力によっても障害され、冠状面で上腕骨小頭や滑車の骨折を引き起こす。ここでは上腕骨遠位端骨折の診断、分類、治療、転帰についての最新の論文をレビューする。
上腕骨遠位部骨折は頻度が増している、治療にしばしば難渋する骨折である。成人におけるこの骨折の発生率は100,000例に5.7例だけと報告されているが、長期にわたるかなりの機能障害を引き起こす。上腕骨遠位部骨折の受傷患者は2峰性の分布を取り、若年者の高エネルギー外傷と、高齢の骨粗鬆症患者の、典型的には低エネルギーの転倒である。どちらも骨折型は単純な関節外骨折から、骨幹端-骨幹部の粉砕と骨欠損を伴う広範な関節面の破壊をきたす複雑な骨折型まで様々である。複雑な骨折の解剖も困難さを深める。遠位である事と関節面を含むことが、非観血的治療がうまくいかず、しばしば骨折の固定が困難になる原因となる。

 ここでは上腕骨遠位部骨折の診断、分類、治療、治療転帰について最新の論文をレビューする。
Diagnosis

上腕骨遠位部骨折の診断の主力はレントゲンであり、手関節・肩関節に合併損傷がないか除外するための撮影もそれに含まれる。標準的な撮影法であるAP像、側面像、斜位像により、上腕骨遠位部骨折の診断確定と分類の一助となる。しかし、高度の粉砕と短縮を伴う骨折では、骨片が重なり合い、問題となる部位がはっきりしなくなる。関節部の粉砕のない場合、術中に牽引して撮影すると、大きな骨片のラインを描くのに有用である。

 上腕骨遠位部関節面のせん断力による骨折では、橈骨頭-上腕骨小頭のviewが有用である。側面像を修正したこのviewは前方45°から放射線を照射し、腕橈関節・腕尺関節の重なりを防ぐ(Fig.1)。これにより関節軟骨の多くを構成する上腕骨小頭の小骨片をよく描出する。Double-arc signは上腕骨小頭と滑車の頂部の骨折を示唆する。「double arc」は小頭と滑車頂部の軟骨下骨のレントゲン濃度の増加を表す。

 CTは上腕骨遠位部骨折の特徴をとらえるのに強力なツールである。2-D CTは多面的な骨折の正確な評価を可能にし、しばしば手術のplanningに用いられる。しかし、上腕骨遠位部の解剖学的な複雑性のため、粉砕や転位により歪みの評価を混乱させ、正確な評価を困難にする。3-D再構築は解剖学的構築をみることができ、橈骨や尺骨をimageから差し引くことができる(Fig.2)。この方法は骨折型の正確な評価の向上に寄与すると考えられている。Dornbergらの研究によると、上腕骨遠位部骨折において単純レントゲンや2-D CTに3-D再構築を加えると、評価者自身の信頼性は向上するが、評価者間の一致性は向上しない。この所見はVannierらの所見、つまり3-D CTは複雑な関節面の骨折において従来の方法と差異がないということを支持するものである。
CLASSIFICATION

 上腕骨遠位部骨折は大きく顆上、通顆、顆間骨折に分けられ、それぞれ肘頭窩上、肘頭窩を通るもの、上腕骨顆部を通るものである。より包括的で一般的な分類はAO分類である(Fig.3)。Type Aは関節外骨折、type Bは関節面に及ぶもの、type Cは骨幹部から関節面が完全に分かれたものである。付随する1から3までの数字は粉砕の程度でさらに分類するもので、3が最も高度に粉砕している。顆間骨折はRiseboroughとRadinの分類で、顆上部を含んださらに詳細な分類となっている。Type Ⅰは小頭と滑車の間に転位のない骨折、type Ⅱは顆部の転位はあるが回旋のない骨折、type Ⅲは転位・回旋のある骨折、type Ⅳは片側または両側の関節面の高度な粉砕である。
NONSURGICAL TREATMENT

 上腕骨遠位部の転位のない骨折では、保存的治療が文献上支持されている。これは外固定を一定期間行ったのち、装具で治療するものである。しかし、関節に近づくと、functional braceで遠位部骨折をコントロールするのは困難または不可能である。さらに、long-arm castによる外固定では、拘縮予防の肘の早期可動域訓練はできない。我々の経験では、しっかりした外科的固定が好ましい。転位のない骨折ではより高度な骨折と比べ手術に関連した合併症は少なく、安定した骨折部は早期の運動と治癒の信頼性が高い(Fig.5)。

 転位のある上腕骨遠位部骨折に対する保存的治療は限定的である。

SURGICAL APPROACH

 転位型の上腕骨遠位部骨折では外科的手術が標準的と考えられている。アプローチにはいくつかの方法がある。単純な関節外骨折よりも、複雑な関節内粉砕骨折では展開も大きくなる。死体を用いてWilkinson、Stanleyはtriceps-splitting(三頭筋縦割)、triceps-reflecting(三頭筋反転)、olecranon osteotomy(肘頭骨切り)のどれが複雑な骨折型にもっとも有用か調査した。メチレンブルーで露出した関節面をpaintingすることにより、他の2法と比べ肘頭骨切りがもっとも展開がよかった。しかし三頭筋反転では統計学的有意差には至らなかった。我々の経験では三頭筋縦割と三頭筋反転は滑車の後方部分が見えるようになり、骨切りだけが滑車と小頭の前面に到達できる。

 縦割法は近位の筋の神経支配を利用することにより、腱と遠位の筋での神経障害なしでの縦割を可能にしている(Fig. 6A-C)。多くの外科医は肘頭の頂点までで切開を止めておく。この方法は関節面の展開には制限があり、関節内の粉砕を伴わない例で用いられる。Ziranらは縦割法を行った34骨折に対して、レビューを行った。より大きな展開も行い、三頭筋を肘頭から剥がしたり、両側側副靭帯を上腕骨遠位部から剥がしたりした。これにより上腕骨前面の骨折の確認と固定が可能になった。1例異所性骨化(HO)、1例尺骨神経麻痺、5例癒合不全、4例内反または外反不安定性があった。

 我々は通常三頭筋の剥離はせず、側副靭帯のreleaseもためらわれる。内側、外側に三頭筋腱を動かすことにより、2つの”window”が追加して見え、整復がかなり容易になり、implantの設置が正確になる(Fig. 6D, E)。さらに、約1cmの肘頭頂点の切離により滑車が見やすくなる。この展開法は近位に及ぶ骨折、関節外骨折、単純なT-typeの骨折で関節面滑車後面のみ見て整復されているようなものに用いてきた。

 BryanとMorreyは後方の”triceps-sparing”アプローチを考案した。これは肘の再建、特に肘関節全置換術のために最初はデザインされた(Fig. 6F, G)。これは近位尺側の骨膜との三頭筋腱の連続性を維持しつつ、内側、外側で肘頭から三頭筋腱を持ち上げるものである。操作が終わったら、ドリルホールに縫合糸を通して近位尺骨に腱を再建する。このアプローチを用いたAO type Cに対する1人の外科医の機能的転帰についてのレビューで、7名の患者で臨床的に良好、median arc of motionは90°、異所性骨化はなしであった。しかし、その筆者の考察では、外側の顆部骨折にこのアプローチで固定しようとすると難しいとしていた。他の研究では、triceps-sparing、tricepds-splitting、V-Y approach後の三頭筋腱の強度を評価している。全てのアプローチで強度は著しく落ちていたが、triceps-reflectingが腱を分ける方法よりも統計的に強度がよかった。このアプローチの適応としては、近位に及ばない関節外骨折と非観血的に整復される単純な関節内骨折と考える。筋をretractする際は、外側に注意を払う。Homan retractorを外側皮質骨にかけた2例で一過性の橈骨神経麻痺を認めた。

 肘頭骨切りは全ての上腕骨遠位部骨折に用いられるが、特に関節面の粉砕がある骨折に用いられる。以前の研究では高い癒合不全について記載されていた。癒合不全は肘頭のchevron-shaped osteotomy(山形の骨切り)と適切な骨切り部の固定により減らすことができる。骨切り後、三頭筋が全て上腕骨遠位部後面から持ち上げられ、上腕骨遠部が露出される。交差する橈骨神経を障害しないよう近位から上腕骨の遠位4分の1は切らないように気をつける。骨切り部はscrew、plate、wireを用いて再建する。

 Colesらは、橈骨遠位部粉砕骨折に対して肘頭骨切りを行った患者についてretrospectiveにレビューを行った。67名の患者で骨切り部の治癒までフォローできた。骨切り部は全て治癒したが、2例で整復位保持できず再度骨接合術を早期に要した。ほとんどの症例で、骨切り部は1本の髄内スクリューとワッシャー、尺骨背側の8の字で安定化できる。プレートは初期の固定が不適切であった場合に用いる。Implant irritation(インプラントの刺激)が再建の大きな要因のようである。8%の患者でhardwareの刺激のみでimplantの抜去を行った。

 近年ではこうした方法のさらなるvariationが報告されている。関節内骨折で骨幹部に及んだものに対する方法として、肘頭骨切りにtriceps-splittingを組み合わせて行う。肘頭骨切りでの肘の麻痺を注意することは、ひいてはtriceps-reflectingから経肘頭の方法に至るまで全ての方法でflapの適応ということになる。
ULNAR NERVE

 アプローチ法に関わらず、上腕骨遠位部の展開では尺骨神経の同定と保護が必要である。整復時とimplant設置時に危険にさらされる。術式の最初に尺骨神経を授動させ、vessel loopでタグしておき、多くの場合前方化しておく。Doornbergらは尺骨神経を移動させずに治療した上腕骨遠位部関節内骨折について12-30年経過観察した結果を報告した。尺骨神経の合併症を生じたのはたった1例であったと報告しており、その症例は有痛性のneuropathyを示し、尺骨神経の前方化を要した。尺骨神経の移動は安全な展開と十分な転帰を得るのには必要でないかもしれないが、再建術をするには安全で容易になる。
STABILIZATION OF BONE

上腕骨遠位部は内側と外側のcolumnからなっている(Fig. 7)。関節面は内外側の骨幹端部を通って骨幹部につながる。顆上部の中心部は鉤突起と肘頭窩の間にある薄い骨なので弱くなっている。骨量減少患者では特にこの部位は薄くなる。骨幹部と骨幹端部のcontactは安定性に重要で、治癒の可能性が高まる。

 沢山の固定法が上腕骨遠位部骨折に対して考案されている。Y-shaped plateやminifragment fixationなどである。しかし、多くのpopularな方法は内側columnに1つ目のplateをあてて、2つ目を外側columnにあてる方法である(Fig. 8)。筆者は内外側面に平行にplatingする方法と同様に、内側と後外側のcolumnへ直角にplatingする方法(90-90 technique、perpendicular(垂直) plating)をお勧めする。Parallel platingの提案者は、外側に設置したplateは外側から内側皮質へ長いスクリューでよいが、後外側に設置するplateのスクリューは短くしなければいけないと述べている。Arnanderらは、エポキシ樹脂の上腕骨で3.5mmのreconstruction plateを用いてperpendicular(垂直)とparallelの剛性を調べた。Parallelの方が統計的有意差を持って強固であった。

 外側面にplateを設置するのは技術的に難しく、外側上顆縁から軟部組織を除去する必要がある。近年の解剖の研究で、上腕骨遠位部の骨幹部への血液供給は1本の栄養血管で行われている。遠位部はこの点で沢山の貫通血管を通して灌流されている。外側columnは外側区域の顆部貫通血管により灌流されおり、骨膜が持ち上げられるとそれはなくない、癒合遅延や癒合不全のリスクを増加させる。さらに、両方の方法での固定の程度は早期運動と骨折治癒のために閾値を超えている必要がある。我々の経験では、単純なT型骨折はbicolumnar fixationのほぼどの方法でも(Y plate、dual reconstruction plate、3-5mm dynamic compression plate、precontoured plate(事前に曲げてあるプレート)などをparallelでも垂直方向でも)適切に治療可能である。T型顆部骨折に対して1/3 tubular plateを用いて癒合しなかった症例を沢山見た。もっとも手腕を問われる骨折はlow distalの粉砕を伴った上腕骨関節内骨折である。われわれはその骨折に対し、parallelで、precontouresd plateを用いた場合最も良い結果が得られた。

 高齢者の上腕骨遠位部の治療での最大関心事項は、骨粗鬆症の骨における適切な固定である。Schusterらは従来のreconstruction plate、外科医によりbendingした3.5mm locking compression plate、precontoured locking plateを様々な骨密度の死体標本を用いて剛性について比較した。剛性は3群間で統計的有意差はなかったが、繰り返し荷重下での骨折率は従来のreconstruction plateより上腕骨遠位部プレートの群でより低かった。Locking compression plateと従来のreconstruction plateで統計的有意差はなかった。しかし、この研究の筆者は骨密度が低い場合、上腕骨遠位部プレートとlocking compression plateは従来のものより優れていると結論付けた。骨粗鬆症の骨で生体力学的優位さを認めるにもかかわらず、臨床ではlocking plateはscrewの角度が決まっているので挑戦的になる。このことがscrewの挿入位置を次善の部位にしてしまうことにつながる。このように、必要ないチャレンジを行わないようにする一方で、外科医は角度が決まっていることのbenefitを最大限生かせるようにlocking plateを正しく使用するよう評価しなくていけない。

 固定技術に関わらず、粉砕、骨欠損、骨質の悪さは内固定の不適切さや癒合不全のリスクを引き起こす。いくつかの報告で、遠位部骨片の固定の欠損がまず起こるとしている。Hinge付き創外固定は肘の動きを可能にしつつ、固定の安定性を高めると報告されている。Deuelらは死体を用いた生体力学的研究で、創外固定はどんなレベルの内固定でもその安定性を高めるか調べた。それによると創外固定を固定力の弱まったreconstruction plateに追加すると、最善の内固定だけと同程度かまたはそれより有意に優れた安定性を持つ。

 上腕骨遠位部の関節面の再構築は、関節症を避けるのに重要である。通常関節部分は骨幹部への再接着に先立って再構築する。関節面の粉砕がある場合、関節面の圧迫を避け、幅と輪郭を変えないように注意しなくてはいけない。このために、関節部はフルスレッドのcortical screwで固定する。上腕骨遠位の高度に破壊された表面は、関節部は通常の内固定では整復できないかもしれない。腸骨のtricortical bone graftを粉砕部分に用いる。橈骨頭の部分を外側の滑車の欠損部に用いるという人もいる。まれな例では、

骨軟骨の同種移植も適応となるかもしれない。

ELBOW ARTHROPLASTY

 適切な患者に対する上腕骨遠位部骨折の管理の方法として、primaryでの人工肘関節置換術が行われてきた。一般的な適応は関節内粉砕骨折で適切な固定が不可能な場合で、特に65歳以下の低活動性の患者である。高齢者では症候性の関節症でも治療手段となる。禁忌は感染の存在、高活動性、訴えがない患者、二頭筋が機能してない患者、また開放骨折でも禁忌とする人もいる。我々はまず固定を試み、手術室にtotal elbowのimplantを準備している(Fig. 9)。

 Mullerらはprimaryに人工肘関節置換術を行った43骨折を平均7年フォローして報告した。平均可動域は24°-131°であった。49名中32名で追加手術なく、愁訴は見られなかった。5名で再建を要した。

 癒合不全をきたしサルベージとして人工肘関節置換術行った92肘のレビューで、Cilらはほとんどの患者で改善したと報告した。74%で痛みはないか軽度、85%で主観的に満足であった。屈曲-伸展は平均113°であった。しかしCilらは合併症発生率にも注目し、32例で再手術をした。合併症は12例で無菌的にimplantのlooseningが生じ、65歳以下の若年層および尺骨componentをprecoatingするセメントテクニックでそのリスクは高くなった。5例でimplantの折損が起こった。Implantの不具合のレビューで、十分な支持のない部位での固定における接合部での骨折が起こっていることから、折損は骨折による骨欠損に関連しているとわかった。さらに、implantの折損はすべてextrasmallまたはsmall titanium implantで起こっているため、できる限り大きなimplantを使用し、動かないように正確に接着させることが勧められた。他の合併症としては4例でimplant周囲の骨折、12例で軟部組織や創部の合併症、2例で一過性の神経麻痺、1例でC-ring fracture、1例でbushing fracture、1例で橈骨頭切除を要する近位橈尺関節の痛みがあった。implantの耐用期間は、2年で96%、5年で82%、10年・15年で65%であった。

 PrasadとDentはretrospectiveに上腕骨遠位部骨折に対してprimaryにtotal elbow arthroplastyを行った場合と遅発的に行った場合を平均観察期間56カ月で比較した。Mayo Elbow Performance Score(MEPS)で両者に統計学的有意差はなかった。Implantの耐用期間も同様であり、前者では88カ月で93%、後者では76%であった。注目すべきは、32名の患者で、10名に合併症が報告され、そのうち5例が無菌的なloosening、2例が感染、1例がHO(heterotopic ossification)、2例が尺骨神経麻痺であった。Implant不良のリスクで報告されているものは、65歳以下、2回以上の手術の既往、感染の既往である。いくつかの報告ではこの難しい問題について希望的観測を持っているが、骨折に対する関節置換においては注意が必要である。患者は合併症発生の可能性や制限を守ることの重要さについて適切に話をされなくてはいけない。

 上腕骨遠位部骨折の骨折型によってはいくつかの新しい治療法が提唱されている。Kalogrianitisらは上腕骨遠位端骨折に対しprimaryにunlinkedのtotal elbowを行っている。9名9肘を平均4年観察した。最終評価において9肘全てで安定性・除痛とも満足いく結果であった。AdolffsonとHammerは上腕骨のhemiarthroplastyを4例で行い、短期フォローではgoodまたはexcellentとなっている。これらの手技の有用性をきちんと判断するにはさらなる研究や長期的な観察が必要である。
OUTCOMES

 報告されているoutcomeは、広範な損傷形態や治療がありそれを解釈するのは難しいものがある。さらに、発表されている論文は比較的規模の小さいものが多い。しかし、最近の報告では、適切で強固な固定による骨癒合率は優れており、91-100%と報告されている。いくつかの研究では客観的に測定したoutcomeと同様に患者報告型のoutcome scaleに基づいてoutcomeを評価している。複雑な上腕骨遠位部骨折に対してparallel platingを行い平均2年観察した報告では、34名中27名(79%)でMEPSに基づく評価においてgoodまたはexcellentの結果であった。これは84-100%がgoodまたはexcellentであったとする他の研究と同様である。客観的評価としては内固定後の平均flexion arcは90-106°、平均回内-回外arcは150-165°であった。関節内骨折に対する手術後12-30年のoutcomeの報告では、Doornbergらは腕、肩、手のdisability score、American Shoulder and Elbow Surgeons score、VASで30名中26名(87%)が短期的にgoodまたはexcellentであったとしている。しかし、適切な手術治療にも関わらず80%の患者で外傷後の関節症をレントゲン上示した。
COMPLICATIONS

 上腕骨遠位部骨折の治療中は様々な合併症に遭遇し、その割合は高く48%と報告されている。明らかになっているリスクには、高エネルギー外傷、開放骨折、保存的治療がある。大多数の患者は治癒するが、12週の時点で9%に癒合遅延があり、そのうち半分は24週までに追加手術なしで治癒すると報告されている。もう一つ常に報告される合併症としてHOがある。Goftonらは13%でHOが見られ、術後24時間でindomethacin 100mg×2/日、6週まで25mg×3/日の予防的投与を行うことで発生率が低下する傾向があることを示した。他の報告ではHOは可動域制限をきたすもっとも重要な合併症としている。他に頻度の低い合併症としては感染、尺骨神経麻痺がある。

≪論評≫
上腕骨遠位端骨折のレビュー。よくまとまっていると思いますのでご一読を。

2009年11月16日月曜日

2009.11.16. JBJS(Am) Nov. 2009. Assessment of Hip Abductor Muscle Strength. AValidity and Reliability Study

要旨
股関節の外転筋は股関節の中で最も重要な筋肉のうちのひとつである。それゆえに根拠のあるしっかりとした評価が必要とされる。股関節外転筋の筋力を測定するために最も適切な体位というものは知られていないため3つの異なった体位で外転筋の筋力を測定した。われわれは対側の股関節が固定されるので側臥位での測定が最も有用であるとする仮定を立てて研究に臨んだ。
16人の被験者に対しそれぞれ2回の独立したテストを行った。立位、腹臥位、側臥位の3つの姿勢で工業用の動力計を用いて片側の外転筋力を測定した。筋電図を測定側とその反対側の中殿筋に筋電図を測定することでその実験の妥当性を構築した。その体位はもっとも力が出るような体勢とした。最も力が出ないところは対側の筋力の筋電図が最小となるとこを最も妥当なところとした。それぞれの相互関係についてはthe
Bland and Altman limits of agreementによる統計処理を行った。級内相関係数はtest-retestで計算した。
側臥位での外転筋力が臥位、立位よりも有意に大きく評価された。側臥位での対側の筋電図での割合は最小で、これは立位、臥位とくらべ有意に差があった。テストの再現率は側臥位で最も高かった。
側臥位が股関節の外転筋力を測定するのに最も適切である。


図1 それぞれの測定方法の写真。
図2 A:自発最大筋力
B:筋電図での測定側反対側の比。

考察
今回の結果では側臥位での測定がもっとも外転筋力が高く表され、また反対側との比がもっとも小さくなった。ということで検査の妥当性は側臥位での試験が最もあるということが分かる。またテストの再現性も側臥位で最も得られた。
理論的には最大筋力を発揮するとき対側の同側の筋肉よりも作動筋がより大きな活動性を示す。これは良側の筋力の低下は実際には片側の最大外転筋力が発揮される力の減少として表現されるからである。とくにこの研究では中殿筋の筋電図での活動性は対側の共同筋の電位を比較することとなった。立位と臥位はその比が100%を超えるため片脚での能力よりも両側での能力を表すこととなってしまう。これでは必然的に外転筋力が表す範囲が減少してしまう。側臥位ではその比が90%以下であることから片側の筋力をはっきりと表しているということになる。
臥位での外転筋力の測定は重力の影響が排除されるということで外転筋力を測定するときに主に採用されている。しかしこの姿勢では測定の再現性が得られることはなかった。臥位では発揮される外転筋力が最も低く、またその妥当性が最も低いことが分かった。中殿筋の筋電図ではもっとも低い値を示した。これはこの姿勢で外転するときには中殿筋はメインの筋肉としては働いていないということを示している。ベルトでの保持自体が体そのものの保持や壁で保持することよりも劣っているのかもしれない。なので今後の研究では別の方法で体を支える方法を考えなければならない。
立位はもっとも機能的なことを評価するのに適した体位とされている。特に体重がかかった状態を評価するのにもっとも確からしいとされている。しかしながら妥当性は得られず、信頼性も今一つであった。立っているために検査側に十分に倒れこむことができないことが問題である。
重力はこの外転筋力評価で大きな役割をになっている。側臥位だとその重力も加わるのでより妥当性と信頼性が増す。
なのでお勧めとしては側臥位として外転筋力の評価は行うべきである。股関節の痛みのため横になれない人では立位の方がより妥当な評価ができる。
研究の限界としては骨盤の動きを除外していないこと。電気的評価しかしていないことなどがある。

≪論評≫
すいません。何が言いたいのかよくわからないまま訳してしまいました。つまり側臥位で股関節の外転筋力を測定することが最も妥当性が高いということなのでしょう。
臨床的にこれをどう生かしてゆけばよいのか。。。。
また、上の先生に聞いておきます。

2009年11月11日水曜日

2009.11.11 Up to date. Approarch to diagnosis and therapy of deep vein thrombosis

今回は以下について述べる
・DVTの鑑別診断と、DVTのリスクとなるものは何か。
・DVTを診断、除外する最もよい方法は何か
・DVTの初期治療はどうするべきか。いつ入院が必要でなくなるか。
・DVTの長期間の治療に関するおススメ
・凝固亢進性が家族内にあるか

患者情報は別項にて述べる。小児のDVTも別項にて述べる。上肢のDVTも別項とする。
今回は成人の下肢DVTについてのみ述べる

Longitudinal Investigation of Thromboembolism Etiology
(LITE)にて21,680人の参加者でVTEについて平均7.6年前向きに調査した。
・年齢調整を行うと発生率は1.92人年。男性のほうに起こりやすい。男女とも年齢の上昇と共に発症率が増加。
366例のうち191例の二次性に発症したVTEの大半に何かしらの基礎疾患が存在していた。癌が48%、入院が52%、手術が42%、多発外傷が6%である。48%の患者では先立つ外傷、癌、安静状態がなかった。
1102人でロジスティック回帰分析をした結果
・急性の感染症がある
・75歳以上
・癌
・DVTの既往
がDVTのリスクを有意に高くする。

初期対応
DVT診断のためのアルゴリズムを示し、同時に治療についても示す。正しい治療が行われないと致死性の肺塞栓に至るし、また不必要な治療を行うと致死的な出血性の病態を示すことがある。
危険因子
・入院、安静状態
・最近手術をしたことがある。
・肥満
・DVTの既往がある
・下肢の外傷
・担癌状態
・経口避妊薬、ホルモン置換
・妊娠、閉経後
・脳卒中

病歴
古典的には患肢の腫脹、疼痛、変色がDVTの症状として言われている。症状の出ている場所と血栓のある場所との間には関連はない。ふくらはぎの腫脹だけでより近位に血栓があることがある。下肢全体の腫脹なのにふくらはぎのところにしか血栓がない場合がある。
発症年齢、以前発生した血栓の場所、血液検査の結果、家族歴などを聴取する。家族歴の聴取が結構重要で1桁発生率が変わる。
後は最近発生しやすい病態になかったかどうかを確認する。手術、外傷、妊娠、心不全、安静状態。女性は肥満の状態だけでなくピルを内服していないか、ホルモン置換療法を受けていないかについて聴取する。習慣流産は何かしらの凝固以上が背景に隠れている事がある。
血管線維性の異常がないか、骨髄異形成症、動脈硬化性病変など。ヒドララジン、プロカインアミドの内服がないか調べてみる。
癌についてもスクリーニングを一通りかけておくことも必要となる。

特殊な病態
・若年者の繰り返すDVTには下大静脈の奇形がある
・左腸骨静脈の動脈との交差部でMay-Therner症候群として血栓形成がある。

身体所見
診断は静脈が弾力性を持っていること、下肢の疼痛、腫脹、下肢の周囲径の違い、熱感、圧痛、表層静脈の腫脹などから行う。
静脈系に重点を置いて系統的に全身の診察を行う。下肢の腫脹はないか、静脈の走行に沿って大腿部に疼痛を生じることがある。下腿では静脈をふれる事はあってもホーマンズ徴候は明らかでないことも多い。
しかし、これらの検査はいずれも特異度がひくく、DVTの診断のために行ったメタアナリシスで下腿の周囲径のみがDVTの除外診断に有効。下腿の腫脹がないこと、周囲径に差がないことがDVTを除外診断するのに唯一有効。後に示すWellスコアなどは有効でなかった。
したがって更なる検索が必要となる。

有痛性青股腫は珍しい病態で下肢静脈全体にわたって血栓が形成され、治療されないと下肢切断にいたったり致命的になることがある。

DVTでは癌の検索をする必要があるが女性では骨盤内臓器の検索。あとは直腸診。便潜血も考えられる。費用対効果は明らかになっていないのでルーチンで行うかどうかはよく考えて。

血液検査としては血算、血小板数、凝固能。腎機能。尿検査を行う。50歳以上の男性だったらついでにPSAを測定してもよいかもしれない。

DVTの鑑別疾患
肉離れ 40%
下肢の麻痺 9%
リンパ還流不全 7%
静脈不全 7%
ベーカー嚢腫 5%
蜂窩織炎 3%
膝の変形 2%
よくわからない 26%

蜂窩織炎 静脈還流不全の合併症として起こることがある。
表層の静脈血栓症ではよく静脈を触れる
リンパ還流不全は特発性浮腫の原因として重要である。
ベーカー嚢腫は変形性膝関節症にともなって出来る膝裏の関節液のたまりである。
膝の所見をとることも重要
薬剤誘発性の下腿腫脹;カルシウム拮抗薬などで両側に腫脹が来ることがある。

DVTの診断
DVTを疑ったらまず行うべき検査は超音波である。アルゴリズム1を参照
d-dimerの測定だけでは不十分。d-dimerが低かったらその存在を否定しやすくなる。
圧迫法による超音波検査ではその陽性的中率は94%。臨床的に疑わしいのに検出できないときには5-7日後に再度エコーを当てる。施術者の技量に大きく左右されるので注意が必要。
静脈造影は行ってはいけない。
d-dimerと超音波の組み合わせはよい。

DVTの診断のためにWellsのスコアがある。(図2)
陰性かどうかするには非常に有用であるが、あるかどうかとなると少し心もとないところがある。

凝固亢進状態の診断
コーカサス系の人たちは60%でリスクが高い。何かひとつDVTが起こりやすい状態があればそのリスクは5割り増し。
・プロテインS欠損症、第5因子欠損症
・整形外科手術
・癌のような全身性の病態。

どういうときにプロテインSを測るか
コンセンサスはない。しかし図4の状態にあるような人のときには測ったほうがよい。
・リスクのない50歳以下での特発性DVT
・DVTの家族歴
・繰り返すDVT
・門脈、肝静脈、腸間膜、脳など変わったところに起こるDVT
・ワーファリンで皮膚壊死がおこったというエピソード。

スクリーニングの価値
・前もって何かリスクとなるような疾患がないかと調べてもDVTの再発の最大のリスクファクターはDVTを起こしたことがあるかどうかである。
・一度DVTを起こせばワーファリンによる治療を凝固亢進するような病気があってもなくても続けるので調べても。。。
・家族に対してその情報を用いたとしても症状を有さない人に対する予防の有効性は確立していない。

DVTの治療
治療の基本
・血栓の伸展予防
・肺塞栓を起こさない
・再発リスクの減少
・有痛性青股腫のときにはその治療
・塞栓後症候群、静脈還流不全の予防。慢性肺動脈高血圧症の予防

抗凝固療法は症状のある近位型DVTに対して行う。これは治療しないと50%が肺塞栓になる。

治療は2008年のACCPガイドラインに沿って行ってください。
・急性期の治療は低分子ヘパリン、アリクストラ、クレキサンなどで行う
・必要量は製剤によって異なる。
・非分画ヘパリンはAPTTが1.5-2.5倍になるように設定。
・ヘパリン、アリクストラ、クレキサンは最低5日間は投与。経口の抗凝固薬も4から5日間は併用する。
ヘパリンにはワーファリンがよく併用される。まずはじめは5mg/日から。高齢者などでは少量投与法というのもある。2日間連続でINRがいいところまできたらヘパリンは5,6日目に中止。
未分画ヘパリン使用の際には血小板減少症に注意を要する。
血小板数が10万を切ったらヘパリンを中止する。
外科的手術は血行動態が不安定な肺塞栓の患者、腸骨静脈から大腿静脈にかけて大きな血栓がある場合に選択される。下大静脈フィルターは手術適応がないような場合、肺塞栓のリスクが極めて高い場合に行われる。適切に抗凝固療法が行われているにもかかわらずDVTが出来たり、肺高血圧状態の患者には必要である。
ワーファリンはINR2.5 を目標に(2-3の間)

治療期間
・初めての発症で手術、外傷など期間が限られている場合には最低3ヶ月。
・初めて発症した場合には最低3ヶ月。あとはリスクとベネフィットを評価して。
・近位型では長く続けたほうがよく、遠位型なら3ヶ月でよい。
・がん患者では癌切除後まで

一般的治療
抗凝固剤の開始と共に歩行を薦める。弾性ストッキングは2年間ははいていてもらう。(静脈不全予防のため


≪論評≫
整形外科手術をする人間ではDVTは避けて通れないところ。やはりD-dimerでDVTかどうかを判断するのはそれほど意味がないということが今回の結果からも分かった。
術前のリスク評価をしっかりと行うこと。

2009年11月9日月曜日

JBJS(Br) November 2009.Two extension block K-wire technique for mallet finger

Abstract
32指の転位した槌指に対しextension
blockを2本挿入する方法で49ヶ月間のフォローを行った。関節面を38.4%含んでおり、また18人の患者(54%)で亜脱臼位にあった。
6.2週で骨癒合が得られ、全例で解剖学的整復位を得ることが出来た。DIPの平均屈曲は83.1度であった。伸展損失は0.7度であった。
背側骨性の突き出しや再発性の槌指様変形は認めなかった。
臨床的にも画像的にも2本extension blockを挿入する方法は有用であると考える

実際の方法
指神経ブロックにて行う。DIP関節とPIP関節を最大屈曲位にして0.9mmのK-wireを用いて骨片のすぐ背側から中節骨と30度の角度をなすようにして近位方向へ挿入する。2本目を2,3mm間を開けて、これと平行にして挿入する。
その上で非観血的に整復を行う。3本目のk-wireは伸展位で整復位を確保したまま挿入する。0.9mmk-wireを用い、掌側からDIP関節を貫くようにして挿入する。
ワイヤーがあたらないようにアルミのスプリントを当ててもよいし、なくてもよい。6週間たったところでレントゲン上骨癒合が得られているかもしくは圧痛がなくなっているのを確認してピンを抜去する。(図1,2)

考察
石黒法は直視下に整復する方法よりも簡便で、また粉砕した骨片に対しても間接的に押さえ込むことが出来るので有用な方法であることは間違いない。
しかし骨片が大きすぎたり、回旋転位を伴っている場合には一本のK-wireだけでは整復が困難であるという問題があった。
2,3mmの間を空けて2本のk-wireを挿入する筆者らの方法では石黒法の原法よりも細いK-wireを用い、また中節骨への挿入角度をより低い角度(30度)で挿入していることが特徴である。2本のピンが壁のような働きをするのでより整復が容易になる。背側からの圧迫力も増すので整復位の獲得と維持が容易である。細いピンを用いることで侵襲が小さくなる。全例で解剖学的整復位を獲得し、また関節可動域を維持できたことがこのことを証明している。合併症の多くが整復位の確保が出来ないこととそれを維持することが出来ないことに起因している。DIPの亜脱臼位にあった患者では整復操作で爪に異常をきたすことがある。術後にピン刺入部が醜くなることがある。なので慎重なピンの挿入が重要である。

≪論評≫
非常に実践的な内容。scienceとして大したことを言っているわけではないが普段自分が困っていることから解決策を見出し、それを形にできることは素晴らしい。でもこんなにうまくいくのかしら?一回試してみましょう。。

2009年10月29日木曜日

救急医学会に参加して

DVTの話。
D-dimerは陰性的中率しか当てにならない。というのは自分にとっては新しい知見であった。
カットオフ値をいくつにしようとも、その値のトレンドをおってみてもd-dimerがVTEの診断には寄与しない。
診断には超音波がゴールドスタンダード。
CT(造影)の場合にはDVT用のプロトコールで慎重に追う必要がある。
外傷で止血が必要な時に抗血栓をどこまで行うかは議論の残るところ。
治療は全体にヘパリンなどで行われている模様。アリクストラとかはやはり整形外科の方が積極的に用いているのであろう。

救急システムの話
それぞれの病院ごと、地域ごとによって医者の数、システムなどが違うのでなかなかかみ合った議論にならない。
病院が担当する救急医療は3次で、それ以外は1次、2次医療機関でというのはどの救急の先生でも強く主張したいところであろう。
全くの私見であるが患者は自分が重症かどうかは分からず受診する。(コンビニ受診は論外であるが。)
そこで医療側の1次、2次、3次という分け方はあまりにも勝手な分け方のような気がする。
まあ、そんな理想をかなえようとすれば救命センターを集中して、救急の医者をたくさん作って、患者は受診するたびに今の3から5倍くらいの金額を払うというようにしなければ成り立たないけども。
医師会との連携で乗り切ろうという病院が多かった。
2次医療機関はもっとしっかりしろと。大きなお世話だ。

小児外傷
常に虐待を念頭に置く。
児童相談所への通達は義務。通報だけであれば別に患者、患者の親には知られないのでむしろ積極的に通告すべきと。
小児頭部外傷、嘔吐、健忘、意識障害があれば頭蓋内病変を疑う。これがなければ心配はいらない。
骨折の発表をしたが会場からの反応はなし。
重症な外傷でないといけなかったのだろう。テーマ設定のミス。

股関節学会に参加するので一日だけの出席。
ぜひぜひ外傷のセッションを聞きたかったのだが。。。。

2009年10月26日月曜日

Fracture of the base of the first metacarpal in children. Ann Hand surg 1999

要旨
小児の母指CM関節の骨折の不安定性を定義するために10カ月以上のフォローが可能であった30例についてreviewを行った。30度以上の転位、1mm以上の転位がある症例、開放骨折も含んだ。3つのグループに分けて検討を行った。グループAは純粋なCM関節での骨折(14例、10例手術、4例ギプス固定)。ブループB
Salterの2型。内側の骨片が外れている者。(10例、1例がピンニング、9例がギプス固定)。グループC、Salter2型。外側の骨片が外れているタイプ。(6例、2例ピンニング、4例ギプス固定).
二次的な早期転位の有無について調査した。グループBでは1例も転位が認められなかった。対照的にグループAとCでは半分に転位が認められた。そこでグループBはギプス固定でよいがグループAとCは早期のピンニングの方が好ましいと思われた。

図1 骨折の転位の分類
図2 グループAの骨折。基部での純粋な骨折
図3 内側に骨片が残っているタイプの骨折。
図4 外側に骨片が残っているタイプの骨折。

表1 治療方法の選択。17例について最初は救急外来で非観血的に整復し、thumb-spicaで固定した。ピンニングはIselin法を用い母指と示指をつなぐようにピンニングし、固定する。この方法が13例に行われた。ギプス固定は4-5週必要であった。

表2 転位の程度 ピンニングが13例でピンニング後の転位は0例であった。保存治療を行った群17例ではグループA,Cの半数が転位した。
長期フォローの結果では転位があっても完全な可動域に回復している。

考察
小児のCM関節近傍の骨折に対する報告はほとんどない。あっても手の外科全体での一部としての報告か、目録の中だけである。Leopardによれば手の外科全体の20%位にその外傷が存在するとなっている。20%しか手術が必要とならなかったということも同時に述べている。われわれの報告でもこのことについてはほぼ同様の結論であった。
整復を行うかどうかの基準は30度以下の転位、1mm程度の短縮は許容されるとされているのでそれを基準としている。どうしても解剖学的整復は困難である。関節自体が3次元の動きができるためそれほど大きな機能障害を残さない。加えてリモデリングが起こるし、そのリモデリングは成長軟骨の近いところで起こりやすいのでより許容される。それでもその整復には時間的な制約がある。大体2年くらいで自然な矯正がおこる。加えてこの部分の骨端線の閉鎖は女子で14.5歳、男子で16歳で起こる。
今回の分類はオブライエンの分類に従った。今回いわゆる小児のベネット骨折というものは除いた。これはSalter分類の3型を含むこととなり、いくつかの報告で観血的治療が必要であると述べられているからだ。
また成人で行われるピンニングが有用でないとする報告もある。
この研究は早期の二次的な転位についてその危険性について調べた。グループAだと骨折部が不安定であることもおおいことと内側の骨片がないことから不安定である。グループBは内側に骨片があることで安定し、ギプス固定だけでよかったのであろう。グループCは外側の骨片が残っており、内側の靱帯が破たんしているためギプスで指の間を固定するだけでは安定性は得られない。
骨折の固定に使うピンニングはiselinの方法を用いる。クロスピンニングでは成長軟骨を通過するため二次的に関節固定や矯正骨切りが必要となる可能性が出てくる。図6に手術の経過を示す。
すべてでopenにした症例はなかった。

結論
小児のCM関節近傍骨折での分類方法について示し、その分類ごとの治療方法を示した。内側の骨片が残っていると安定するのでギプス固定で、それ以外はピンニングがよい。


≪論評≫
小児のCM関節近傍の骨折についての小さなレビューである。内側の骨片がそれほど大きな役目を果たしているとは思わなかった。30度までのの変形が許容されるという部分についても驚きである。

2009年10月19日月曜日

JBJS 2009 October Patients with wrist fractures are less likely to be evaluated and managed for osteoporosis

要旨
背景 トウ骨遠位端骨折は高齢者の脆弱性骨折として評価、治療がなされているが脊椎の骨折を伴わない患者において骨粗鬆の治療を始める重要な機会であることが逸しているということがいくつかの報告で言われている。今回の目的はトウ骨遠位端骨折の治療を行った術者が骨粗しょう症の治療を行ったかということについて調査を行った
方法 2007年の韓国の国の調査に基づいて行った。この調査は国民の97%を網羅している。股関節、脊椎、手関節の骨折を起こした50歳以上の女性に行われたBMDのチェックと骨粗しょう症の治療について評価を行った。
結果 31540人の股関節骨折と58291人の脊椎骨折と61234人の手関節骨折が2007年に認められた。股関節骨折患者の22.5%、脊椎骨折患者の28.8%、手関節骨折患者の8.7%がBMDをチェックされていた。股関節患者の22.4%、脊椎骨折の30.1%、手関節骨折患者の7.5%が骨粗しょう症の治療を受けていた。
考察 骨粗しょう症患者における脆弱性骨折の割合が増えているということが知られているということにもかかわらず、手関節骨折の患者では股関節骨折、脊椎骨折の患者にくらべ骨粗しょう症の診断、治療が行われている割合が低かった。このギャップを埋めるために更なる調査が必要である。また術者は責任をもって骨粗しょう症の治療を行わなければならない。

表1 ICD-10を用いた患者抽出
表2 2007年に脆弱性骨折を受傷した人数とBMDを測った数と骨粗しょう症の治療を行った数。手関節骨折は8.7%、7.5%と有意に少ない。

考察
今回の研究では50歳以上の韓国人女性は脊椎骨折、股関節骨折を受傷した患者に比べて明らかに骨粗しょう症の診断、治療を受けている割合が少ないということが判った。韓国では家庭医ではなく手術をした整形外科医が術後のフォローを行う。すなわちトウ骨遠位端骨折の治療を行った整形外科医が骨折後に骨粗しょう症の検査、治療を行っていないことがわかる。しかしながらトウ骨遠位端骨折をした人が今後骨折を起こす可能性は全く骨折をしていない人に比べ2-4倍といわれている。その上トウ骨遠位端骨折を受傷した患者は脊椎骨折、股関節骨折を起こす患者よりも年齢が低く、2度目の骨折を起こす前にその予防を行う機会を逸している。多くの整形外科医に骨粗しょう症の治療を行うよう提言しなければならないというのがわれわれの意見である。確かに薬剤投与が必要でない患者も含まれている可能性があるがハイリスク患者を見逃していいというわけではない。
確かに、脊椎骨折を起こしていない患者の骨粗しょう症治療は適切に行われていないということがよく言われている。2.8%の検査、22.9%の治療しか受けていないということを報告している人もいる。レビューによると15%以下しか骨粗しょう症の検査、治療を受けていない。
このギャップがある理由は不明である。骨粗しょう症に対する理解のなさ、術者と家庭医との連携不足などが今までの報告では言われてきたが韓国では術者とフォローする人間が一緒であるので連携不足ということはない。むしろ韓国では家庭医が不足しているため骨粗しょう症の診断と治療を行わない理由が一つ減る。保険の提供者からの情報提供が不十分なことも原因であろう。トウ骨遠位端骨折を起こした人は今までそのような骨折歴がなくまた検査も受けていないと推測される。トウ骨遠位端骨折を起こした患者の半数が自分の骨は正常であると考えており、骨粗しょう症であると考えている人は20%に過ぎなかった。これらの情報を治療する側、治療される側に提供する必要がある。トウ骨遠位端骨折を治療する人間には骨粗しょう症が国民的問題であり、その治療方法について研修を受けてもらったほうがいいのかもしれない。
脆弱性骨折を治療した術者は骨粗しょう症の治療を行う責任がある。

論評
日本は韓国と同様術者がフォローすることが多いお国柄なので、日本でも同様の問題が起こっている可能性はあると思われる。日本でも導入されたDPCの適切な調査によるこのような疫学的調査はおこなわれるべきであろう。(臨床医に無駄なDPC入力の時間を使わせているのであればそれくらいは調べていただきたい)。
骨粗鬆症の治療はなおざりになっているところがあるので実際に骨折の治療に当たる若手の医師への啓蒙は必要であろう。

2009年10月15日木曜日

2009.10.14 Up to date Dietary therapy for obesity

背景
肥満、体重増加に対する管理としては食事療法、運動、行動変容などがある。加えて薬物療法、外科手術まである。太っていることが問題であるということを教えることがあらゆる治療の始まりとなる。(10/17ページ)

体重減少の目標
現在の体重の5-7%を減少するのが現実的な目標である。
・最初の目標は体重を増やさないようにすること。(せいぜい5%以内の増加にとどめる)
・臨床家の目標は患者の現実的な目標を設定してあげること。多くの患者は30%以上の減少をゴールに設定するがそれは現実的には行き過ぎである。
・5%以上の体重減少に導けたらそのプログラムは成功したということになる。5%体重を減らせば脂質異常症、高血圧、DM、心疾患イベントを減少させるとが出来るからだ。体重が減った患者では58%も耐糖能異常が改善したという報告がある。
・5-7%の体重減少は医学的には有効であるが患者の納得は得られない。
・BMIは25までこれば最低リスク群になる。

食事のエネルギー
体重減少の割合
体重が減るかどうかはとったエネルギーと必要としているエネルギーとの間に乖離があるということである。ちょっとしか食べなければ体重が減少する。しかしながら体重の減少の予想は難しい。これは個々のいうことの聞き具合とエネルギーの消費量の違いからくる。食事の記録をさせてもたいてい不正確である。体重が普通の人に書かせると10%減らして書いてくるし、太った人に書かせると30%くらいは食べたものを書いてこない。しかもエネルギーの必要量は飽きっぽさや性別、年齢、などに左右される
・男性のほうが基礎代謝量が多いため同じ体重の女性よりはやせやすい。
・年をとるとやせにくくなる。10歳ごとに2%ずつ消費率は下がっていく。
・遺伝的な素因も重要。双子ちゃんで見てみると3倍は違う

おおよそ22kcal/日が正常な大人で必要な量である。ということは100kgの女性であれば2200kcalが必要である。そこで平均500kcal/日とすれば週に500グラムずつ減る。

図2(12/17ページ)に正式な必要エネルギーの表がある。デスクワークのひとは消費エネルギーが少ない。

体重減少の管理
体重が減少すると必要なエネルギー量も減っていくので減った体重を保つことはなかなか難しい。しかも食事療法をして体重を減らすと胃から出るグレリン量が上昇するため食欲が増してそのままの体重を保つのがまた難しくなる。

食事の種類
デスクワークをしている人が太るのは余分なカロリーを取っているから。最低800kcal以上で以下のような食事療法を行いましょう
・量をコントロールするかカロリーの低い食事
・低脂肪食
・低炭水化物
・テレビでやっているような気まぐれダイエット(これは別の項で述べる)

バランスの取れた低カロリー食
この方法は必要なエネルギーを食事からとる。加えてたんぱく質、炭水化物、脂肪酸の適切な量の摂取が望ましい。アルコール、清涼飲料水、甘いお菓子は必要以上のエネルギーとなるためよしておいたほうがいい。
たんぱく質が減ると体重が減少する。食べ過ぎると75%が脂肪になる。25%は筋肉のほうに行く。体重が減ったときその5%は筋肉量の減少である。

量を調節した食事
一つ一つパッケージに入ってきてそれを水に溶かしたりだのして食べるダイエット。
この筆者達は朝ごはんとしてこういうものを食べることを進めている。昼ごはんはこのパッケージを食べるかして夕ご飯にはこれに野菜つけたものを食べる。こうすると一日1000-1500kcalくらいになるのでいいですよ。一番早く目標の体重に達するとの報告がある。

低脂肪ダイエット
飽和脂肪酸、不飽和脂肪酸がたくさん入っている食事を取ることはデブになるだけでなく心血管リスクの増大、癌になりやすくなったりだとかいろいろ悪いことばかりである。ということで低脂肪ダイエットは理にかなっている。普段の食事でとる油の量を全体の30%以下にするようにする。こうすることで大体3kgは余分に体重が落ちる。
低炭水化物療法を提唱するものもいるがまあ、それほどでもない。
大研究が行われこの方法は有用であることがわかっている

低脂肪ダイエットには”Fat food”を減らすことからはじめる。口の中で解けるものはすべて脂肪の塊であると認識すること。もうひとつは脂肪量を計算することである。1gの脂肪は9.4kcalである。カロリー計算よりも脂肪量を計算するようにする。カロリー全体の脂肪を30%以下にするようにする。一日にとっていい脂肪の量は50gまで!!

低炭水化物療法
短期的に体重を落とす方法として有用である。一日にとる炭水化物の量を0-60g(普通は130gくらい)にする。低炭水化物療法はDMとか心血管病変を持っている人には有効な方法である。GI(Glycemic
index)を減らすようになる
ただしこの方法をとるときには脂肪と蛋白を上手に取らないといけない。

高たんぱく療法
高たんぱく療法は体重の管理を改善する。しかしこの方法をとるとカルシウムがおしっこで蛋白と一緒に出て行ってしまう。腎結石にもなる。

超低カロリー療法
一日に200-800kcalしか食べない方法。一日200kcal以下では断食となってしまう。最も早く体重が減っていく。しかしながらこの方法は長期間追跡するとほかの方法よりも優れているということがない。低血圧、低血糖になって蛋白も減っていくので手術をするとか何か特別な目的がない限りはこの方法を用いてはいけない

比較
低脂肪法と低炭水化物法のどちらが優れているかは今後も議論が必要である。
・体重減少について
低炭水化物療法群のほうが短期的には減少したが長期的に観ると有意差なし。(15/17ページ)
その他さまざまな文献あり
ということで患者さんの状態に合わせてあげて長期的に体重減少させてあげることが必要かもしれない。
・脂質
低炭水化物療法でHDLが増えた。しかしLDLも増えたのでどちらが有用化は不明である。
・副作用
対炭水化物療法でケトーシスまで起こした患者がいるので注意が必要。

カウンセリングの効能
カウンセリングを受けると短期間の体重減少には有効である。少し説明するだけでも有効であるとする報告があるが脱落者が多いのも特徴である。

長寿とカロリー制限
カロリー制限が寿命にどういう影響を与えるのかは不明である。むやみな摂取カロリー制限はDNAに損傷を与えるとの報告もある。


まずは食事療法から。まず食べているものの把握。そのうえで患者さんと離していかねばと思った。

2009年10月5日月曜日

JBJS(Am).2009 October. Patients with wrist fractures are less likely to be evaluated and managed for osteoporosis

背景 トウ骨遠位端骨折は高齢者の脆弱性骨折として評価、治療がなされているが脊椎の骨折を伴わない患者において骨粗鬆の治療を始める重要な機会であることが逸しているということがいくつかの報告で言われている。今回の目的はトウ骨遠位端骨折の治療を行った術者が骨粗しょう症の治療を行ったかということについて調査を行った
方法 2007年の韓国の国の調査に基づいて行った。この調査は国民の97%を網羅している。股関節、脊椎、手関節の骨折を起こした50歳以上の女性に行われたBMDのチェックと骨粗しょう症の治療について評価を行った。
結果 31540人の股関節骨折と58291人の脊椎骨折と61234人の手関節骨折が2007年に認められた。股関節骨折患者の22.5%、脊椎骨折患者の28.8%、手関節骨折患者の8.7%がBMDをチェックされていた。股関節患者の22.4%、脊椎骨折の30.1%、手関節骨折患者の7.5%が骨粗しょう症の治療を受けていた。
考察 骨粗しょう症患者における脆弱性骨折の割合が増えているということが知られているということにもかかわらず、手関節骨折の患者では股関節骨折、脊椎骨折の患者にくらべ骨粗しょう症の診断、治療が行われている割合が低かった。このギャップを埋めるために更なる調査が必要である。また術者は責任をもって骨粗しょう症の治療を行わなければならない。

表1 ICD-10を用いた患者抽出
表2 2007年に脆弱性骨折を受傷した人数とBMDを測った数と骨粗しょう症の治療を行った数。手関節骨折は8.7%、7.5%と有意に少ない。

考察
今回の研究では50歳以上の韓国人女性は脊椎骨折、股関節骨折を受傷した患者に比べて明らかに骨粗しょう症の診断、治療を受けている割合が少ないということが判った。韓国では家庭医ではなく手術をした整形外科医が術後のフォローを行う。すなわちトウ骨遠位端骨折の治療を行った整形外科医が骨折後に骨粗しょう症の検査、治療を行っていないことがわかる。しかしながらトウ骨遠位端骨折をした人が今後骨折を起こす可能性は全く骨折をしていない人に比べ2-4倍といわれている。その上トウ骨遠位端骨折を受傷した患者は脊椎骨折、股関節骨折を起こす患者よりも年齢が低く、2度目の骨折を起こす前にその予防を行う機会を逸している。多くの整形外科医に骨粗しょう症の治療を行うよう提言しなければならないというのがわれわれの意見である。確かに薬剤投与が必要でない患者も含まれている可能性があるがハイリスク患者を見逃していいというわけではない。
確かに、脊椎骨折を起こしていない患者の骨粗しょう症治療は適切に行われていないということがよく言われている。2.8%の検査、22.9%の治療しか受けていないということを報告している人もいる。レビューによると15%以下しか骨粗しょう症の検査、治療を受けていない。
このギャップがある理由は不明である。骨粗しょう症に対する理解のなさ、術者と家庭医との連携不足などが今までの報告では言われてきたが韓国では術者とフォローする人間が一緒であるので連携不足ということはない。むしろ勧告では家庭医が不足しているため骨粗しょう症の診断と治療を行わない理由が一つ減る。保険の提供者からの情報提供が不十分なことも原因であろう。トウ骨遠位端骨折を起こした人は今までそのような骨折歴がなくまた検査も受けていないと推測される。トウ骨遠位端骨折を起こした患者の半数が自分の骨は正常であると考えており、骨粗しょう症であると考えている人は20%に過ぎなかった。これらの上方を治療する側、治療される側に提供する必要がある。トウ骨遠位端骨折を治療する人間には骨粗しょう症が国民的問題であり、その治療方法について研修を受けてもらったほうがいいのかもしれない。
脆弱性骨折を治療した術者は骨粗しょう症の治療を行う責任がある。

論評
日本でも術者が術後のフォローは受け持つ。また、以前、家庭医にまかせるよりも整形外科の専門医がフォローしたほうが骨粗鬆症の治療がうまくいくとの報告がJBJSにあった。(たぶん2008年)どうしても忙しい外来の中骨粗鬆症の説明を加え、治療を開始するというのは相当の強い気持ちがないといけない。ぜい弱性骨折の棋王があるとFRAXで試しに計算してみると約2倍に危険率が上がる。骨粗鬆症の認識を上げるとこから始めていかなければならない。

2009年10月3日土曜日

国保学会に出席して

10/2-10/3 国保学会に出席してきました。

医師だけでなく、看護士、理学療法士など多職種の出席があり、また同じような悩みを抱えている病院が多く、楽しく参加することができました。

プログラムの組み方にはもう少し配慮の余地があるのではないかと思いました。

1日目 ランチョンセミナー
地域とともに行う高知県の地域医療教育。高知大学の地域医療学講座で診療所などに実習に出かけるという内容でした。地方は最近の傾向として地域医療枠を重視して、その学生たちに対する教育として行っているようです。
内容がテレビで放映されたとのことでDVDもらいました。また、そのDVDを鑑賞し、検討したいと思います。話されている内容は総論的でいろいろな所に出かけることで学生のモチベーションが上がりますよというお話でした。

藤沢病院のDr.のお話
住民との対話を通じて作る地域医療。とのお題。当院で行っている地域懇談会とそれほど大きく内容が異なるわけではないが、できる限り疾患についてだとかそういう各論的な話ではなく、ポジティブな話題を中心として話し合うというところが少し違うようです。
病院の形態はどうあるべきかとか、そういう話も積極的にしているようです。

国保直診とその役割といった話のパネルディスカッション
やはり藤沢病院の佐藤先生のお話が心に残りました。”免許の人と選挙のひとの間にある壁を越えよう”という表題から秀逸です。
お互いにプライドが高く、藤沢でもなかなか交流が進まないが、住民を間に置くことによってその二つの間を取り持つことができるというお話でした。
住民と医療機関(免許の人)との間の話はナイトスクール、住民懇談会などで行っていくとのことでした。
住民の率直な意見を議員、首長と病院関係者とが同時に聞くことが重要であるとのこと。
住民懇談会で研修医の研修報告会を行うことで住民から研修医も認めてもらうようにするというのには驚きでした。

2日目は研修医教育のWG,ポスターセッションに出席しました。
何を教えるかということが重要で、これはまだ試行錯誤の状態が続いています。
地域そのもの、介護保険、慢性期のいりょうなどさまざまな内容を多岐にわたって短い期間で教えなければなりません。
また、座学だけではなく実践することでその研修が実り多いものになったという感想が多く研修医から聞かれたそうです。
そこで今後東栄病院で行えそうなことについて以下に列挙してみます。思い付きですのでいろんな意見を入れて熟成できたらと思います。
キーワードは病院でできないことの提供。
・研修医からのフィードバックをより的確に反映。研修医のやりたいこと、やれることを把握し、週単位、日単位で研修内容の見直しを図る。外来見学に興味があればそちらを重点的にやっていけばよいし、介護に興味があればそちらのほうにも首を突っ込んでいただくと。
・ナース、包括、介護職から研修医へ講義を行う。講義内容は未定ですが普段何を考えて看護、介護にあたっているのか、医師はどういうポイントを見てほしいのかということを講義してもらえたらと思います。
・介護体験実習 私は無理です。しかしよその病院では結構評判の良い実習のうちのひとつであったそうです。研修医と相談しやってみたいというのであればやらせてあげてもと思います。
・介護のシステムについてのブリーフィング。これは私が今月中に資料をまとめておきたいと思います。
・社会資源を多く使っている患者さんに寄り添って一日を過ごす。
・往診はやはり楽しいらしい。
・リハビリの現場を見せる。

いまの急性期病院から来る研修医は退院させるまでは見れると思います。なので退院した後、病院以外にいる住民とのかかわりということをテーマとして研修に臨んでもらえればと思います。

私の発表はつつがなく終わりました。
よその先生に質問したら険悪なムードになったので今後注意します。

貴重な機会をいただきありがとうございました。
できれば前泊を認めてください。

2009年9月28日月曜日

JBJS September 2009 Resident Duty-Hour Reform Associated with

背景
2003年1月からアメリカでは卒後の研修のあり方が変わった。(就業時間の制限)。今回の研究は就業時間の制限が大腿骨頚部骨折の患者の死亡率、合併症率にあたえる影響について関連を調べたものである。
方法
就業時間制限前(2001-2002年)と後(2004-2005年)で48,430人の患者について研修医教育病院とそうでない病院とでロジスティック解析を行った。
結果
両方の群で2004-2005年のほうで合併症の発症率が高かった。これは患者全体が重症化していることを示唆している。術後の肺炎、血腫、輸血、腎不全、予期しない退院、費用、入院期間が就業時間制限後の教育病院で有意に高かった。死亡率には関連が認められなかった。
考察
研修医の就業時間制限は患者の合併症の発生率の増加と関連があった。更なる研究を要する。

2003年からの制限事項
・週80時間以上の勤務禁止
・7日間のうち1日は完全に業務から離れる日を作る
・日常業務と自宅待機の間は10時間以上の間を置く。自宅待機は3日間のうち1日以上になってはならない。6時間以上の残業の後は24時間は自宅待機をしてはいけない。

表1 Deyoのindex 患者にある既往歴を重み付けとして点数化。
表2 肺炎、血腫、輸血、腎不全、予期しない退院、費用、入院期間が就業時間制限後の教育病院で有意に高かった
図1 肺炎の発生率。就業制限後の教育病院で有意に発生率が増加している。

考察
2003年の研修医の就業制限については結果的に懐疑的な結論が出た。今回の改訂の目的は睡眠不足や疲労が患者のケアや学習に悪影響を与えるのではということで制定された。今回の改訂が患者のケアの質を上げたというエビデンスはない。これは整形外科の手術については言える。研修医教育病院で患者の合併症が多くなるということが今回のキモである。
今回の就業時間制限が患者の死亡率と関連がないというとは他の報告でも言われている。平行して行った研究ではメディケア、退役軍人の群では死亡率が上昇するというエビデンスはなかった。術後の患者の死亡率は変わらないがサブグループ解析を行うと相対的に改善することがわかっている。
別の研究では就業時間制限によって死亡率が減少したとしているがわれわれの研究ではむしろ上昇した。これは有意さがないものの3.7%の上昇を認め今後も研究する必要がある。
研修医が呼ばれてもすぐ来ないと患者の入院期間が増える。
働く時間が減れば整形外科の手術のことを勉強できる時間が短くなる。手術の数も減る。疲労を取るということが仕事が増えることで相殺される。
上級医が呼ばれる割合が増えているはずだがそれについて記載された報告はない。
患者が数日間ほったらかしの状態になることもある。
結局境域病院で研修医の就業時間制限後から合併症が増えた。この研究は関連性があるということを述べただけで原因だとはいっていない。就業時間の制限と臨床成績との間の研究を進めるべきである。

2009年9月17日木曜日

Current othop.Achilles tendon injury.527-529

アキレス腱損傷

アキレス腱の異常はきわめて多く、特に30-50代の活動性の高い男性に多い。最も多いのはアキレス腱炎とアキレス腱断裂である。腱炎は踵部痛の項で述べる。
Ahilles Tendon Rupture
Pathogenesis
 メカニズムは通常三頭筋へエキセントリックで過剰な負荷がかかることによる。これは急に起こり、三頭筋が引っ張られるように足部が強く背屈される。付着部の3-6cm近位の血流の乏しい部位で起こる。時々間欠的に腱の痛みがあるのは、以前の腱炎の既往を示唆する。典型的には30-50歳台のレクリーエーションレベルのアスリートで起こる。これは十分でない状態の筋腱が損傷の原因であることが示唆される。バスケットボール、ラケットスポーツ、サッカー、フットボールで多い。
Cliinical findings
Symptoms And Signs
 患者は蹴り出し動作を試みようとした後の突然のふくらはぎ痛を訴え、通常ポップ音を聴取する。急に患肢の力が弱くなる。身体所見では、腱のdefectがしばしばある。足の底屈が健側と比べ明らかに弱くなる。Thompson testを完全断裂の診断のため、腹臥位にして患側膝90度屈曲で行う。ふくらはぎのsqueezeで底屈が起きれば、正常か部分断裂であり、完全断裂では底屈しない。
Imaging Studies
 単純レントゲンは、通常あまり起こらない踵骨の剥離骨折の検出には有用であるものの、アキレス腱断裂の診断には有用ではない。MRIは感度が極めて高く、いくらか腱成分の連続性があるか確認するのによい。しかし、断裂の診断は身体所見で通常つけられるので、必要となることは少ない。
Treatment
 治療は観血的に開けるか、経皮的に行うか、またはギプスである。外科的治療は活動性の高い患者、再断裂、2週以上経過した症例で勧められる。
 ギプスによる治療はデスクワークの多い患者、創部の問題が起こるリスクが高い場合、外科的ハイリスク患者で勧められる。ギプス治療のリスクには再断裂率の高さがある。ほとんどの患者ではどちらの治療でも良好な成績を得ることができる。
Nonsurgical Treatment
 診断がついたら、重力による尖足位でギプス固定する。信用できる患者には膝下のギプスがよい。腱の断端がきちんと並んでいるか不安な場合は、ルーチンにではないが、MRIを行う。4週後に半分の角度にしたギプスに交換する。さらに4週後に中間位にする。中間位までいったら、取り外し可能な歩行用ギプスを4週行う。監視下の筋力訓練も開始する。
Surgical Treatment
 アプローチは腱の内側から。ボロボロになった腱断端はデブリする。足は尖足位とする。Bunnell法かKessler法で2本の太い非吸収糸を用いて、断端から3-4cmのところから縫う。より細い吸収糸で断裂部を補強する。足底筋腱がintactなら採取し、補強に用いる。
 術後は3週間ギプス。その後は取り外し可能な、足関節の動きが調節できるものを用いる。さらに2-3週後、徐々に尖足位から戻す。そして荷重を許可し、ROM訓練を始める。6-8週でギプス終了とし、筋力訓練を監視下に行う。
 手術のリスクは、創部治癒の問題であり、5%に起こる。経皮的な縫合の方法は文献に載せてある。
Treatment of Chronic Ruptures or Reruptures
 6週間以上前の慢性断裂と以前治療を受けた再断裂は、腱断端が引っ張りこまれて、変性しているので、再建する必要がある。沢山の手法が、人工物の挿入も含めて紹介されている。
 小さな欠損では三頭筋筋膜のstripを折り返して遠位断端に縫いつける。大きな欠損ではV-Yで延長した腱膜を用いて治療する。V-Yでは足りないときは、FHLを移植する。FHLは足の遠位で横切し、遠位部はflexor digitorum longsに腱固定し、第1趾の屈曲を維持する。近位は踵骨にドリルホールを通して吸収性のアンカーかスクリューを用いて固定する。アキレス腱のcentral slipはギャップをつなぐため前進させ、FHLに固定する(?)。
 術後は6週免荷、3か月ギプスである。

論評
後療法が少し長いように感じました。
補助縫合として足底腱膜を使うというのは昔だけ?それとも今でもやっているところはあるのでしょうか。
ちなみにトンプソンテストの感度96%。まず見逃しようがない疾患であるということがいえるでしょう。

2009年9月14日月曜日

JBJS Sptember 2009,Is After-hours orthopaedic surgery associated with adverse outcomes?

要旨【背景】骨折の治療はいつも日中の医療資源の整った時に行えるわけではない。大腿骨骨折、脛骨骨折についてその治療成績について評価した。【方法】203人の大腿骨骨折と脛骨骨折の患者。この患者を日中群と残業群の2群に分けた。6時から16時までが日中群。16時から翌朝6時までが残業群である。残業群での大腿骨骨折が45例。脛骨骨折が48例。日中群の大腿骨骨折が44例。脛骨骨折が56例であった。患者背景はよく似通っている。治療方法も同じ様にした。骨折の治癒、合併症、手術時間、放射線透視時間を後ろ向きに集めた。【結果】治癒率は日中群、残業群とも同じであった。単変量解析を行ったところ残業群のほうが大腿骨骨折、脛骨骨折の手術時間が短かった。回帰分析では手術時間が有意であると断定はできなかった。残業群で再手術率が高かった。痛みのために抜釘を行う率も残業群のほうに多かった。(27%:3%)。残業時に手術を行うことは痛みのために抜釘をする率が高くなることと有意に関連していた。【結論】癒合不全率、感染率、放射線透視時間は差がなかった。残業時間に大腿骨骨折の手術をすると痛みのためにインプラントを抜去することが多くなることがわかった。これはひょっとしたら理想的な環境でないことや手術時間が短いこととも関連しているのかもしれない。日中に外傷手術を行えることは髄内釘での小さな合併症を減少させる可能性がある。
表1 患者背景。すべての群はよく似た群となっている表2 骨折の分類表3 骨折の受傷機転 いずれもよく似た傾向にある。表4 開放骨折の率。日中も夜間もよく似たような状況にあった。表5 合併症 スクリューの抜去率が残業群で高かった。
考察骨折の治療はしばしば残業帯に行われる。手術が遅くから行われるのにはいくつかの隠れた理由がある。手術がどうしても夜に必要となってしまったという場合。またほかの原因としては手術室の医療資源が足りずに手術が遅く始まるといったことがある。残業帯に行われる手術はどうしても理想的な状況とはいえないようなところがある。夜間の手術はどうしても日中の仕事をすべて行ったあとから始める。一般的な睡眠時間に手術をしていることもある。術者の疲労が大きくなっている。術者の疲労は手術の悪い結果を導くことがある。ほかにも夜間の手術は有害な点がある。手術のチーム全体がなれないチームで行われるためその手術自体に慣れていないことがある。このような理想的な状況ではないところで手術をするとどうなるかということを今回は調査した。今までに術後の合併症について手術のタイミングの影響ということは調査されてきていた。しかしこれらの調査は早く手術をするべきかそれとも待機的に手術をするかという違いについて述べられていた。そこで私たちが調査したのは手術をどの時間から行ったかということであった。今回午後4時から残業帯としたのはナースの勤務帯に合わせた。今回の研究で特記すべきことは日中と夜間帯の骨折型、患者背景が似通っていたことであった。もっと夜間帯に開放骨折の患者が多いと思っていた。脛骨骨折で夜間帯に38%、日中に25%であったがこれは有意差がなかった。大腿骨骨折はより似通っていた。骨折の治癒過程に合併するような有害事象は夜間帯であるということと関係がなかった。骨折の重傷度、軟部損傷の程度が骨折の治癒に影響を及ぼすが、夜間帯に手術をするということはわれわれの研究では関係なかった。反対に手術の技量と直接関係するところは手術環境が悪化することで影響を受けるものと考えられる。スクリューを入れたり、ネイルを入れたりといったことは手術の技量と直接かかわっており、骨折型や軟部組織の程度とは関係がない。今回再手術でスクリューの抜去が多かったということは手術のタイミングとかかわっているものと思われる。このことは手術時間が夜間帯で短くなっていることからもわかる。この手術時間の短縮は術者の要因がある。Bhattacharyyaらが言うには夜間帯の手術は合併症が多い。この研究は限界がある。午後4時という早い時間から夜間帯としてよいのかという問題がある。また、夜間のメンバーは日中よりも強力になっていたかもしれない。結論として、大腿骨骨折の治療についていえばインプラントのマイナートラブルが起こるので日中の手術のほうが望ましい。

論評
アメリカならではの早期固定術に対する一つのアンチテーゼでしょう。これを書いた先生は少し疲れているのかもしれません。(笑)日本だとけん引、創外固定でお茶を濁すことも多々あると思うので同じ結果にはならないと思います。
大腿骨頚部骨折で手術室、麻酔科の都合で夜スタートになったものの成績を調べるとおんなじような研究ができるのかもしれません。

2009年9月10日木曜日

2009.9.10 Current Orthop. Spinal injury (sports)

アスリートにおける頚椎の損傷は比較的まれであるが、重大な神経系の損傷が隠されている可能性がある。疑われたら、診断がきちんと下るまで厳重な注意が必要。これが修復可能な病態から悲惨な転機にならないように予防する最良の方法である。多いのは衝突によるもので、時に頭部外傷も合併する。すぐに頭部と頚部は固定し、呼吸の状態と意識レベルを直ちに確かめる。
Brachial Plexus Neurapraxia
(neurapraxia:Waller変性を生じない、損傷部中枢では電気刺激に対し反応せず、末梢では伝導性が保たれている、機能回復の速度は早い状態)
 もっとも一般的な頚椎損傷はrootや腕神経叢のpinchまたはstretchによるneuropraxiaである。損傷は短時間で、患者は痛みなしで可動域制限を認めない。「stinger」や「burner」と呼ばれる。肩の沈み込みと同時に起こる頭部または頚部の側方への衝撃により起こる。腕神経叢のpinchやstretchが起こり、焼けるような痛み、無感覚、ヒリヒリ感などがかたから腕や手まで広がる。よく症状が出るのはC5・C6である。自然に受傷後数分で改善する。
 肩・上腕のintrinsic muscle(内在筋)の筋力に問題なく、ROMが問題なければ、復帰が可能。筋力低下や無感覚が残存すれば、競技復帰は許可されない。頚部痛は症状として含まれないことがあるので、注意が必要。
 Paresthesiaや筋力低下が持続すれば競技に戻る前に精査が必要。神経学的検査、筋電図、放射線により行われる。通常4-6週間、筋力の完全回復と筋電図での改善があるまではコンタクトスポーツへの復帰は許可されない。
 Stinger injuryを予防するには、頭や頚部のテクニックを身につけ、頚部の筋力強化を図る。加えて頚の回転を使うことが衝撃を避けさせる。
Cervical strain
 頚部の筋のstrain(筋挫傷)はもっともアスリートで頻度が高い。Strainは筋肉の損傷を指し、Sprainは靭帯の損傷を指す。筋腱への過剰な負荷や伸ばされることにより起こる。全ての筋腱の損傷で臨床像は共通である。頚部を動かすと痛みがあり、数時間後から翌日にピークがある。NSAIDs、温めること、マッサージなどは効果がある。
Cervical sprain
 Sprainはfacetや椎体間の靭帯や関節包の損傷である。Strainとの鑑別は難しい。可動域制限と痛みが受傷部位に沿ってある。靭帯組織の損傷は神経系に関する不安定性を引き起こす。レントゲンは必要。可動域制限と痛みのある場合は前後屈でとり、不安定性を評価する。
 治療は固定、安静、支持療法、抗炎症療法である。筋力と可動域が正常化したら復帰を許可。
Cervical spine cord Neurapraxia with transient tetraplagia
 一過性四肢麻痺を伴う頚髄のneuropraxiaが一つの病型としてある。感覚系では焼けるような痛み、無感覚、ヒリヒリ感などの症状がある。運動系は筋力低下または完全な麻痺が一過性にあり、通常10-15分、長くて36-48時間で改善する。運動機能の完全な回復と痛みのない可動域が回復する。レントゲンでは骨折や脱臼は認めない。時に脊柱管の狭窄などを認める。
 一過性の四肢麻痺を起こしたアスリートは持続的な四肢麻痺が起こるリスクについて知らない。一度これを起こしたアスリートはコンタクトスポーツへの参加はさせるべきではない。狭窄だけなら個別に治療を行う。
 より重大な骨折や脱臼を伴う場合もある。その場合には競技場で固定などの治療を開始する。フェイスマスクを着けていれば、カッターで切る。全脊柱固定後、ボードに移す。砂袋は頭頚部の固定に用いる。その後地域の救急病院でさらなる評価や治療を受けることになる。骨折や脱臼があれば他の脊椎疾患と同様に治療する。

2009年9月9日水曜日

今日の手術

THAのrevision.cement cup,cemtented stem。central migration
臼蓋はIBG.(KTプレートも準備。)臼底が薄いときには打ち抜かないように細心の注意を。
リムをメッシュ。細かく骨を詰める。メッシュは端っこは必ず止める。スクリューは1センチ間隔。ただし端っこは密に。どこにカップを置くかをよく考える。
ステム。セメントインセメントは圧が高くなるのでやや早めに圧入。
古いセメントと新しいセメントの間のせん断力は90%以上。

2009年9月3日木曜日

BetterProphylaxisagainstSurgicalSitelnfbctionwithLocalasWellasSystemicAntibiotics、AninVivoStudyJBoneJointSurgAm、2009;91:1907-1912.August20,2009Background抗生剤の予防的全身投与は有意に術後感染のリスクを減ずる。創内に直接抗生剤を注射する方法がより効果的であることが分かってきた。本研究では、創閉鎖後に創内への直接的な抗生剤注射の効果について、単独使用と全身投与との組み合わせ両方につき調査した。私達の考えでは術前の抗生剤全身投与と術後の創内への局注が最も効果的な方法だと仮定した。MethodsRatを6つの治療グループに分けた。無治療、ゲンタマイシン局所治療、セファゾリン全身投与、セファゾリン局所治療、セファゾリン全身投与十ゲンタマイシン局所治療、セファゾリン全身投与十セファゾリン局所治療の6グループである。創腔は大腿骨に沿って開き、インプラントを留置、2.5×108CFU(コロニー形成単位)のStaphylococcusaureusを植えた。抗生剤全身投与は最初の皮切の30分前に皮下注して行った。抗生剤局所投与は創閉鎖後、創腔に経皮的に注射した。Ratは術後48時間で殺され、定量培養を行った。Results抗生剤治療を受けた全グループで無治療群と比べて有意に細菌数は少なかった。ゲンタマイシン局所治療群はセファゾリン全身投与群と比べて100倍、対照群と比べて10万倍CFUの数を減じた。セファゾリン全身投与とゲンタマイシン局所治療の組み合わせでは、対照群の1000万倍細菌数を減じ、ゲンタマイシン局所治療より細菌数を減らす。Conclusions仮定した通り、セファゾリン全身投与とゲンタマイシン局所治療の組み合わせが最も効果的なregimenであることがわかった。ゲンタマイシンの局所注射はセファゾリン全身投与より効果的であるが、抗生剤の組み合わせよりは劣る。初期の高い抗生剤局所濃度と2つの異なった種類の抗生剤を使うことが、この効果に寄与した可能性がある。ClinicalRelevance臨床試験でもこの結果が示唆されれば、SSIに対する抗生剤予防投与のregimenとしてケンタマイシン局所治療とセファゾリン全身投与の組み合わせを評価することができる。ResultsFigl術後48時間でのCFU数それぞれの治療群におけるCFU平均数が対数値で標準誤差とともに表示されている。全ての抗生剤治療群で対照と比べて有意に減少している、セファゾリン全身投与群よりゲンタマイシン局所治療群で有意に低く、ゲンタマイシン局所治療単独よりセファゾリン全身投与との組み合わせの方が有意に少なかった。Discussionセファゾリン全身投与とゲンタマイシン局所治療の組み合わせは対照群の1000万倍細菌数を減じた。仮定した通り、この組み合わせが最も効果的で、その次に効果のあったケンタマイシン局所治療の100倍近く創内の細菌数を減らした。ゲンタマイシン局所治療はセファゾリン全身投与の100倍、対照群の10万倍CFU数を減らした。セファゾリン全身投与とセファゾリン局所治療に有意差は見られなかったが、全身投与群は100mg/kg用いたのに比べ、局所治療群は14mg/kgであった。以前の我々の研究室での研究で、同様の方法を黄色ブドウ球菌8.0×105CFUを創腔内に植え、ゲンタマイシン局所治療の効果を調べるために行った。今回の研究では、さらに多くの2.5×108CFUの細菌を創腔内に植え、対照群ではさらに多くの細菌数を認めた。以前の研究では創閉鎖後のゲンタマイシン局所注射は対照群と比べ10万倍創内の細菌数を減らした。この結果は今回と同様であった。今回用いたのはよく使われるMSSAであったが、MRSAを用いると結果は異なっていたと思われる。我々が用いたMSSAは感染力が強く、治療されないと48時間以内に死亡する。今回のratは死ななかったが、瀕死であった、現代の整形外科手術患者に対する抗生剤予防投与のスタンダードは術前のセファロスポリン、典型的にはセファゾリンだが、19投与である。このような抗生剤全身投与は毛細血管床を浸透し、創腔に広がるが、そこでは低濃度になっている。創内にできる血腫内に抗生剤が含まれることになる。この研究ではratの研究に基づいた100mg/kg程度の用量でセファゾリン全身投与が行われ、人の血液中のpharmacokineticsのシミュレーションにより、術前予防投与として典型的には19静脈内ボーラス投与としている、抗生剤入りの洗浄を行う術者もいるが、吸引により除去されてしまい、これらの抗生剤と細菌との接触時間が短い、今回の研究で、創閉鎖後に創腔に直接抗生剤を局注することで、感染の可能性がある場所に抗生剤が拡散以外で除去されることなく高濃度で届く。さらに、高濃度のため、通常抵抗性があると考えられていた細菌にも効果が出る可能‘性がある。局所治療は創腔内を高濃度に保ち、全身的には安全域に保つ。研究によるとバンコマイシンの局所投与により局所は中毒域の20倍に達するが、全身的には安全域を保つ。しかしこれに関しては局所の正常細胞に毒性をもたらしうる。抗生剤の骨芽細胞やその一連の細胞に対する抑制効果については様々なstudyで調査されている。IsefUkuらによると、ゲンタマイシンは10伽g/mLを超えると骨芽細胞の代謝を減少させ、70伽g/mLを超えると抑制細胞を増殖させる。我々の研究での創腔容積は3.38cm3、ゲンタマイシンは2.0mgを注射したc、よって創腔内は約600鰹g/mLとなり、IkefUkuらの抑制細胞の増殖闘値よりも低い。Edinらはセファゾリン濃度が100伽g/mLを超えると骨芽細胞の増殖は止まり、10000似g/mLを超えると骨芽細胞の細胞死が起こる。我々は創内の濃度が210伽g/mLになるような局所投与量を選択した。Invitroの研究を上に述べたが、組織培養の骨芽細胞での抗生剤濃度は数日間維持される。我々は単回の局所注射は初期の高い局所濃度を得るが、速やかに全身循環に吸収されてしまうのではないかと予想した。これはHumphreyらによって示され、彼らはウサギの2×2cmの創にゲンタマイシン3mg/kgを含んだ牛のコラーゲンスポンジを植えた。4時間後局所のゲンタマイシンの濃度は600jug/mL、24時間後はく7似g/mLであった。このように、どのような抗生剤による局所の毒性も一過‘性である。TKAやTHAで抗生剤入りのセメントが用いられる。このような「貯蔵庫」のような投与方法は抗生剤濃度が高濃度で持続するので、この方法をとるときは局所的に毒性を示すより低くなるようによく用量を考えた方がよい。以前の我々の局所抗生剤予防投与の研究で、我々は創部へ焼き石膏のパウダー状にしたものを用いることについて評価した。これは数日かけて抗生剤を溶出し、アクリルと違って、関節置換術以外の患者で除去する必要がない。焼き石膏からの溶出は効果的であるが、水溶性のゲンタマイシンの注射のみ程は効果がないため、この方法については探究をしなかった。局所投与は全身投与と同じような分布の予測ができず、創の閉鎖に水漏れがあると、leakが起こることを注意しなくてはいけない。しかし、いくらか失っても極めて効果的である。この研究の問題点は、創部の洗浄が非常に少なかったことである。我々は洗浄に生食0.5mlしか用いなかった。これは以前の研究で感染を成立するのに有用であった量であったからである。しかし、我々が用いたより多い適正量での洗浄は依然として大切な感染のコントロール方法であり、創部感染予防における非常に重要な役割を果たしている。さらに、我々は1種類の細菌と2種類の抗生剤しか調べていない。今回のモデルではこれらの抗生剤は極めて有効であったが、他の細菌叢や人体では有効でないかもしれない。また、治療の容易さのためセフアゾリンを皮下注したが、ratにおける様々な投与方法を行った後のセフアゾリンの分布をしめすpharmacokineticなデータはほとんどない。加えて、ゲンタマイシン全身投与群を研究に含めなかったので、局所投与群と比較できなかった。ゲンタマイシン全身投与群を研究に加えたら、細菌を減らした機序についての'情報が得られたかもしれないが、その毒性のためルーチンに整形外科の予防投与で用いられてないため、研究に含めなかった。以前の研究で、ゲンタマイシン全身投与の100倍局所投与で細菌数を減らしたことを示している。人での研究でこの結果を確認する必要がある。

(論評)
抗生剤の局所投与の有用性については議論のあるところであるが感染人工関節などに対しては経験的に使われていることがある。今回Ratの研究であるが局所投与の有用性を示したものとしては面白いのかもしれない。ゲンタマイシンの人での適切な濃度がどれくらいかなど考えなければいけない。
ただ、創部感染というのは多因子がかかわって成立するものであるのでこれだけやればよいというものでもないだろう。

2009年8月24日月曜日

Compressive neuropathies carpal tunnel syndrome. Current orthop. 560-562

正中神経障害手根管症候群A解剖手根管部での正中神経の圧迫は上肢の圧迫性神経障害の中でもっともよく見られる病態である。舟状骨結節と大菱形骨で橈側を形成し、有鈎骨と豆状骨で尺側を形成し有頭骨で背側を、横手根靭帯が掌側を形成する。B臨床所見手根管症候群はたいてい特発性である。妊娠、アミロイドーシス、屈筋腱の腱鞘炎、使いすぎ、急性もしくは慢性の炎症状態、手関節の外傷による障害、糖尿病、甲状腺機能低下症などの内分泌疾患、腫瘍性病変が考えられる。鑑別診断としては頚椎からの神経根もしくは正中神経の別の場所での圧迫が考えられる。糖尿病性神経障害は手根管症候群に似た症状を起こす。ときには糖尿病の患者ではCTSを同時発症している場合が多い。1、症状と所見手全体の感覚の低下を訴え、多くの患者が母指、示指、中指の痺れを訴える。痛みが眠りに落ちることを妨げることはほとんどないが、眠りについてから数時間後の起きるほどの痛みは特徴的である。しばらく指を動かしていると再び眠りにつくことが出来る。多くの患者は朝起きたときのこわばりを訴える。不快感またはしびれ感、またはその両方が手関節を掌屈していることによって引き起こされる。(ハンドルを握る。受話器を持つ。本、新聞を読むなど)。不快感と痛みが肩、首に手を持ち上げることによって生じる。瓶のふたを開けるときにぎこちなさを感じたり、コップをしっかりと持つことが難しくなる。正中神経支配領域での筋萎縮は長期間にわたる重症例である。しかし早期例では一般的でない。2、誘発テストPhalenテストとTinelサインが有用a,Tinel signTinelサインは手根管の近位をコウ打することによって誘発される。陽性であれば母指、示指、中指にぞわぞわとした感じや電撃痛を訴える。b、PhalenテストPhalenテストのほうがTinelサインよりも特異度が高いと考えられている。このテストでは肘は伸展位にして手関節を掌屈して行う。症状が発現するまでの時間を計り、この時間が60秒以内であればCTSを疑う。発現までの時間と症状が発現した部位の両方を記録しておく必要がある。c、手関節圧迫テスト正中神経を30秒間手関節上で圧迫。症状が発現するかを見る。ほかのテストとの組み合わせで使う。3、2点識別試験2点識別能はCTSの患者ではしばしば低下している。手掌の橈側は正常であるがこれは正中神経の皮枝が手根管を通過していないためである。4、画像所見手根管撮影が必要である。5、電気生理学的試験NCVと筋電図は手関節のどこで圧迫されているかを知ったりするときに有用である。NCVとEMGは手術をするかどうかを決定するときに有用である。運動そくのlatencyが3.5-4.0msより延長していればCTSと診断するC治療1、保存療法手関節を屈曲または伸展の状態においておくと手根管内圧が上昇するのでまずは夜間の中間位装具の装着を薦める。これによって臨床症状の改善が得られるようであればそれはCTSであるという診断をより強固に進めることができる。キーボードの高さの調整や反復動作を制限することも有効。ステロイドの手根管への注射は屈筋腱周囲の炎症を減らすことや症状を軽減させることに役立つ。PLのすぐ尺側から手掌皮線で25Gの針を用いて注射する。PLがはっきりしない場合には環指のトウ側の延長線上に注射する。注射をする前に患者に”びりっとするよ”と伝えておく。びりっとすると答えた場合には針が正中神経に刺さっているので注射液を入れてはいけない。その場合には針を引き抜いて数ミリ尺側に移動させる。針を刺したときにまず皮膚を貫いて次に横手根靭帯を貫く感じがある。麻酔薬とステロイドを混ぜたものを注射する。注射の後に症状が改善するひとは手術をしてもよくなる可能性が高い。2、手術療法保存療法に反応しない場合には外科的に横手根靭帯の切除をする。直視法と内視鏡によるものとがある。手掌で横手根靭帯を直視下に切除する。皮切はPLのすぐ尺側に置くかまたは環指のトウ側の延長線上に置く。正中神経の皮枝の障害に気をつける。手掌腱膜をよけると横手根靭帯が現れる。内視鏡的切除であれば手掌を切ることによって生じる痛みを回避できることがある。内視鏡的切除では早期社会復帰が可能となるが医原性の神経障害や腱損傷。遅発性の再発率の高さが指摘されている。直視法、内視鏡法とも有用な方法である。どちらにするかは術者の技量で決めればよい。再発例には内視鏡法は用いてはいけない。術翌日からの指の自動運動を指導し、術後1週間からの手関節運動を開始。4-8週間は手を使うような職業への復帰をしないようにすることで創部痛を回避する。術後3-4週たっても機能回復がいまひとつであれば過敏性を減じたりするリハビリをしたり、ROMやストレッチングをするように命じる。

やはり診断の基本は問診。検査はあくまでも補助的手段であるということがわかる。とくに夜間の疼痛をこれだけ詳細に聞くことには意味があるだろう。

2009年8月20日木曜日

Current orthop. 215-217: Elbow injury

EPICONDYLITIS(TENNIS ELBOW)
 テニス肘は肘周辺の痛みをおこす多くの場合につけられる名前である。通常解剖学的位置が突き止められ、特定の診断名が与えられる。

Lateral Epicondylitis
 外側のテニス肘では手関節・手の伸筋腱が侵される。テニスでのバックハンドストロークなどの抵抗下での繰り返しの伸展運動がリスクとなる。通常慢性的な痛みとなり、何もできないというより煩わしい痛みとなる。圧痛部位は上腕骨外側上果上にあり、抵抗下に手関節背屈することにより疼痛が出現する。ECRB(短橈側手根伸筋腱)がもっともこの部位で同定される。他の肘の外側部に痛みを生じる原因を考える必要があり、腕橈関節関節症や後骨間神経の圧迫などがある。レントゲンではまれに上腕骨上果外側に軟部組織の石灰化を示すのみであり、MRIは診断に役立つかは疑問が残る。
 治療は特定の活動を制限することや、テニス用のエルボーバンドを使用し筋肉にかかる緊張を広範囲に分布させ、単位面積にかかる力を減少させる。より軽いラケット、グリップの小さいラケットの使用や、バックハンドのテクニックを直すことは有用である。治療計画には手関節背屈筋力の強化訓練も含まれるべきである。このアプローチがうまくかなければ、局所麻酔剤とコルチゾンをもっとも圧痛の強い部位に注射するのはしばしば奏功する。難治例では外科的治療が必要。さまざまな手法があるが、共通するのは伸筋の共同起始部のリリースである。障害された腱の組織学的研究では血管線維芽細胞の増殖を伴う変性を認めた。腱板損傷と機序が似ていると考えられており、血流の低下、(腱の)栄養状態の変化、そして脆弱な腱の損傷を起こす。

Medial Epicondylitis
 内上果は屈筋と回内筋の共同起始部である。外側のテニス肘のマネージメントと治療は同様である。肘での尺骨神経の圧迫は内側のテニス肘に合併することがある。約60%で外科的治療が行われ、尺骨神経の圧迫が存在する。屈筋腱の共同起始部は肘の内側部の安定化に重要で、外科的治療がおこなわれる場合、デブリドマンを行った腱は内上果からリリースしておくより再接合しておくべきである。

ELBOW INSTABILITY
 肘の側副靭帯の損傷は肘の脱臼により最もよく起こる。過度の外反力により起こり、まず尺側の側副靭帯が損傷される。過度の後外側への回旋力によっても外側の尺側側副靭帯が損傷される。いずれにしろ、肘は脱臼することとなり、典型的には後方へ脱臼する。整復と短期的な固定ののち、active ROM訓練により治療を行う。不安定性の再発はまれで、伸展障害は軽度で、通常10度以下である。

Valgus instability
 外反不安定性はoverheadでのthrowingを行う野球、football、やり投げなどでのoveruseの結果起こる。急性の内側側副靭帯の損傷では、投球動作中にpop音を感じることがある。圧通点は肘の内側にあり、ちょうど内上果の遠位にあたる。不安定性は肘に外反力を加えた際に観察される。これは必ず屈曲20度で行わなければならず、完全な伸展位では肘頭がfossaにlockされ、安定したように感じられてしまうためである。健側と比べるのもよい。尺側側副靭帯が損傷されても切れずに残っている場合は、外反ストレステストで痛みは生じるが、不安定性は生じない。いわゆるmilking maneuver(figure 4-37)でも肘の内側に沿った痛みが誘発される。Milking maneuverを行いつつ、外反ストレスを加えて、肘を屈曲伸展させて痛みを誘発する方法は、内側側副靭帯損傷の診断に最も有効なテストである。
 ストレス撮影も診断に有効。外反ストレスを加えつつAP像を撮影。重力を使って外反力を加える方法もある。これは、肩を90度外旋し、肘を約20度屈曲させた状態でAP像を撮影する。不安定性があると、対側と比べ、内側で大きく開くことになる。MRIも有用で、特に関節造影を一緒に行うと、造影剤が尺側側副靭帯を通ってleakすることにより断裂の診断がつけられる。
 外科的再建は急性の尺側側副靭帯断裂を起こしたoverhead throwingを行うアスリートで競技復帰を希望する場合適応となる。サッカー、バスケットボールなどoverheadでないthrowingを行うアスリートでは完全復帰を目指した早期active ROM訓練プログラムにより治療を行う。Overuseによる慢性的な尺側側副靭帯損傷はリハビリ、NSAIDs、3か月のthrowing禁止による治療が最も良い。このプログラムを行った後に痛みや不安定性が残存した場合のみ、尺側側副靭帯の前方部のみ再建を行う。この方法はDr.Frank Jobeにより紹介され、PLを結って内上果と肘頭にあけたdrill holeを通す方法である。術後は70%近くが高いレベルでの競技スポーツに復帰できる。

Posterior Rotatory Instability
 後外側の回旋不安定性は、伸ばした上肢に対する落下方向に力が加わった場合、肘の外側の手術、長期松葉杖使用者における慢性的な内反ストレスなどで起こる。不安定性は軽度亜脱臼から繰り返す脱臼まで様々な程度で起こる。軽度の場合、前腕回外時に肘の外側に痛みや弾撥減少、catchingといった症状が間欠的に起こる。より重度の場合、lockingや肘の不安定といった症状が出現する。後外側回旋不安定性テストを行うには、仰臥位で上肢を頭上に持ってきた状態で、回外させた肘に外反ストレスを加えて行う(figure 4-38)。伸展位で橈骨頭の亜脱臼が起こり、屈曲位で整復される。この手技では患者の症状も再現される。側方ストレス撮影は肘伸展位で後外側回旋不安定性テストと同様に行うことにより、不安定性が示される(figure 4-38)。急性の場合、治療は6週間装具により回内位を保持しつつ伸展を制限することにより行う。慢性の場合は外側尺側側副靭帯の再建が最良の方法である。術後は急性の場合と同様の装具を6-12週行う。

OTHER ELBOW OVERUSE INJURIES
Posterior elbow impingement
 インピンジメントは肘の後方で骨と軟部組織の機械的な構造により起こり、尺側側副靭帯の損傷は伴う場合と伴わない場合がある。体操選手やfootballのラインマン、ウェイトリフティング選手などで過伸展による損傷がおこり、このとき尺側側副靭帯はintactである。部位としては通常肘の後側の真ん中であり、肘の伸展強制で痛みが再現される。尺側側副靭帯の機能が不十分の場合、overheadのスポーツ選手で肘後方のインピンジメントはしばしばあり、病変は後内側となる。このような場合、インピンジメントは内側の肘頭面と肘頭fossa内壁の外側部との間で起こる(figure 4-39)。外反不安定性の項で述べた方法で外反ストレスを加えると痛みが再現されるが、痛みの部位は後内側と内側である。レントゲンでは肘頭とfossaの骨棘を呈する。
 繰り返しの外傷により多くの損傷が起こるため、治療はまず予防からである。投球イニング数は重要なfactorである。症状が続けば、骨棘の切除は有効で、尺側側副靭帯の損傷を生じなくなる。外反不安定性の治療も必要である。

Osteochondritis Dissecans of the capitellum
 上腕骨小頭のOCDは通常10歳以上のピッチャーで起こる(figure 4-40)。レントゲンの読影は、今後の持続的な機能障害の可能性を考えると、非常に気をもむ。骨軟骨片が生じた場合は、遊離体切除が必要。


上腕骨外側上顆炎の治療は保存的に行われるとばかり思っていた。
手術としてリリースと書いてあるがリリースすることによる不安定性の出現は考えにくいのであろうか。
bundleを選択的に切除すればよいのであろうか?

2009年8月17日月曜日

JBJS(Br) August The use of alendronate in the treatment of avascular necrosis of femoral head

要旨大腿骨頭壊死に対するビスフォスホネートを用いた治療は小さな規模の研究がおこなわれていたが今回395例の大腿骨頭壊死の患者に用い、その8年間のフォローアップ成績を示す。今回の研究では臨床成績のみならず大腿骨頭壊死にてcollapsし、THAに至る例も減少していた。壊死でpre-collaps群にたいしてとくに有用であった。Stage3と進行した群でも骨頭の圧潰によるTHAになるまでの期間の延長が得られた。
大腿骨頭壊死の患者の75%が3年以内に骨頭が壊死し、80%が4年以内に骨頭壊死による股関節痛を訴え、診断されてから3年以内に50%の患者がTHAに至るというのはよく知られている。またビスフォスホネートが大腿骨頭壊死に対する治療として用いることができるのかもしれないということも同時に言われている。そこで今回フォローしてみた。
表1 治療開始前の患者の状態。さまざまな状態の壊死の状態の患者がいることがわかる表2 フォローした患者の実際 8年フォローした患者は32名。表3 何かしらの理由でフォローから脱落した群。
平均フォロー期間は4年。92.3%をフォローアップ。
図1 骨頭の各stageごとの骨頭生存率。Stage3に比べStage1,2では有意に生存率が高い。
図2、表4 アレンドロネートを内服した時の臨床症状の変化について表とグラフにしてある。Stage3よりもほかの群では長期に臨床成績が保たれる
表5、図3 骨頭壊死のX線評価を表したものStage1,2全体の28.8%が圧潰した。
考察ビスフォスホネートによる大腿骨頭壊死の治療は骨粱を回復させる効果により発揮されるとしていた。しかしどれも短期フォローのみであった。自然経過として大腿骨頭壊死は77%から98%の患者で症状の増悪をきたす。レントゲン写真上でも68%から77%の患者で進行を認める。治療をうけずに満足のいく結果が得られていたのはわずか22%であった。外科治療の適応なしとしてアレンドロネートだけを投与した筆者らの研究によれば45%でレントゲン上の進行があった。歴史的に75-80%と言われている骨頭の圧潰率も4年間で29%であった。50-64%がTHAになるということが言われていたが今回の研究ではStage1,2,3のそれぞれで2%、8%、33%であった。MRIで診断された場合には4年で20-60%が圧潰するとなっているが今回は90%以上で正常を保った。1998年ごろにはMRIがないためその評価ができていないことが問題。

日本であれば回転骨切り、腸骨の血管柄つき骨移植なんかを行っているのかもしれないので一概にこの結果の通りとはいえないだろう。

ビスフォスホネートがどこに働いているのか?

大腿骨頚部骨折後にも同様に使えるのかというのは調査してみてもよいのかも知れない。

2009年8月10日月曜日

JBJS 2009 August Clamp assisted reduction of subtrochanteric fractures of femur

大腿骨転子下骨折の治療には難渋する。近位骨折の転位が大きく難渋する。Clamp-assisted法にて手術を行った症例について報告する。2003年から2007年までの間の55例の転子下骨折症例。44症例について報告。27例の男性。17例の女性。平均年齢55歳。リーミングを用いた順行性の髄内釘を挿入した。外側に小切開をおき、Clamp-assisted法にて治療を行った。9例にはワイヤリングを追加。レントゲン評価をおこなった。44例中43例が骨癒合を得た。すべての例で5度以内に解剖的整復位まで得られた。38例は解剖学的に整復された。6例は内反。合併症なし。Clamp-assisted法は有効な方法である。
Synthes large Bone Clampを用いて外反、外転、屈曲した近位骨片をつかみ内転、牽引、内旋する。(図1、2)クランプを用いて正しい位置まで近位骨片を移動する。イメージ下にて確認し、正しい整復位が得られていればガイドピンを挿入。髄内釘を挿入。(図3,4,5)整復位が得られない場合には血腫が整復の阻害因子となっている可能性があるので血腫を吸引する。小転子が折れている場合には骨頭をつかんで整復する。
考察大腿骨転子下骨折は癒合率は高い。髄内釘を挿入するポイントが外側に行き過ぎることがある。整復することで正しいエントリーポイントを得られる。ワイヤリング自体は骨癒合に不都合であるとすることがあるが今回はそんなことはなかった。大腿骨転子下骨折に対するこの方法は有用である

別にびっくりするような新しい方法でもないが症例数がある程度あること、やはり形として残すことが重要なのかもしれない

2009年7月6日月曜日

骨折治療学会に参加して

7/3-7/4にパシフィコ横浜で行われた骨折治療学会に参加してまいりました。
Dr.Jupiterによる橈骨遠位端骨折の治療。ロッキングプレート、掌側展開という流れの反省期。CTMPRにて骨折型を評価。橈骨のもっとも尺側の骨片をしっかり整復固定することが重要。(月状骨窩の骨片がポイントのこと)。3-コラムセオリー。ウオーターシェッドにはプレートをかけないように注意。背側も積極的に開けて行きましょうという話。今後の課題として靱帯損傷、TFCC損傷などの合併の評価。結局橈骨遠位端骨折はレントゲン写真と臨床評価との間に差が出がち。軟部損傷の評価はひとつ必要かもしれない。膝のセッション。脛骨プラトー骨折。ロッキングプレートが全盛。多種多様のプレートが出ている。しかしどの発表もよかったよかったと自己満足な発表ばかり。やはり発表は失敗例をふくめそこからどう学び、術者が下手だったという結論にならないようにいかに工夫するかが重要である。ポスターセッション 橈骨遠位端骨折。平田先生から掌側プレートはやはり疼痛が残存しやすいと。今後さらなる研究が待たれる。骨折型とプレートの当て方などは大きく変わってくるかもしれないプレートばかりでなくピンニング、創外固定などにも目を向けていかないといけない。Strykerのsmartの破損例が3例報告。他のロッキングに比べ薄いことが問題。使用しないほうがよい。ドイツの外傷治療のはなし。外傷センターはドイツ全土で5つしかない。年間1万件の手術!!。145人の医師で成り立っているセンター。年間1200回ヘリコプターが飛ぶ。FAST、XPは時代遅れとのたまう。来たらprimaryで初療室となりのCTで全身MPRの造影CT。これで骨折も血管損傷も見つけると。LANCET2009、PGVとして発表。即時髄内釘は行わず。5-11日目が一番落ち着いていると。アメリカVSヨーロッパといったところ。私の発表。着眼点がよいとおほめの言葉をいただいた。骨折全体についての評価をするとよいであろう。今度は外傷全体について評価をおこない日整会などにチャレンジしたい。骨粗鬆性椎体骨折。魔法の治療と紹介された椎体骨折に対するセメント充填法。適応はTh4-L5、転移性骨腫瘍も適応。海外で13万例、日本では2000例。90%以上で施行後すぐ痛みが取れる。しかしながら6ヶ月後の症状では保存療法群と有意差なし。41%でセメントが椎体外に漏出。200例中1例で緊急手術。一つの方法であろうが緊急手術に対応できない病院ではやるべきではない。21%に隣接椎体の骨折を合併する。痛みが取れる病態は不明。セメント周囲は骨癒合が起こらない。しかしなぜか椎体の後壁が癒合してくると。1回3泊4日で20万円。まあ、少なくともすごくいいわけではない。ただ手軽さ、症状の取れる速さから今後日本で先進医療から保健医療に変わる可能性はあるだろう。モーニングレクチャー。股関節の解剖。単純レントゲン写真だけでも随分のことがわかるということはひとつの発見。一度ここの部分はまとめてもよいであろう。後壁骨折は腹臥位での手術のほうがやりやすい。簡単な症例から一度チャレンジを。整復は損傷していない部分を基準に考える。整復の順序も考えたうえで手術に臨む必要がある。DVTは20-60%。骨盤内血栓の存在に注意。踵骨骨折。DepressionタイプはWesthesでは難しい。Tongueタイプは比較的容易。場合によっては小切開にて整復。リスフラン関節。第2中足骨を基準にアライメントを決定。リスフラン関節の脱臼骨折ではⅠ-3趾まではスクリュー固定。4-5はK-wireでOK。
大腿骨近位部骨折の話転子部骨折。内側陥入型、外側陥入型と分ける。内側陥入型のほうが整復位がとりにくいので工夫が必要。骨粗しょう症と転倒予防の話ビスフォスホネートは有用。6年くらいおっていくと骨密度の増加効果あり。巷で言われているような顎骨壊死は極めてまれ。SSRIはBMDを下げるように働くので注意が必要。SSRI服用群は転倒も多くなるとの事。イギリスのRCT。BMDは測定するだけ保険医療の無駄遣いであると。図るのなら尿中NTxを測定してその変化を追うべき。転倒予防に対する運動療法の試み。太極拳、しこふみ、DF、などなどすべての研究でBMDの増加はない。(減少しないよりはまし、といった程度。)ビスフォスの有用性に劣る。転倒回数は時によって増加することも。別のアプローチが必要か。ヒッププロテクター。RCTでは有効性?ただしやせていて今まで転倒歴のある施設入所者と対象を限定すると骨折率が1/3まで減少。骨折予防を大腿骨頚部骨折にエンドポイントをおくとほとんど結果が出ない。転倒回数、脊椎骨折に限っておっていくと結果が出やすいか。全体にやや低調。新しいインプラント、手術方法が出てくるともう少し盛り上がるかも。

2009年7月2日木曜日

JBJS 2009 complication rates following open reduction and internal fixation of ankle fractures

足関節骨折に対する手術療法の合併症の割合Abstract背景 足関節の骨折はよく起こる骨折のうちの1つである。この研究の目的は手術を行った患者の合併症の割合を調査することである。方法 カリフォルニアの退院データベースを利用した。1995-2005年までに57183人の足関節骨折に対し治療を行った患者を対象にした。退院後90日以内の合併症を短期合併症とした。足関節固定術と足関節形成術をおこなった患者を中期合併症とした。ロジスティック解析を用い様々な要因を調査した結果 短期合併症が起こる確率は低かった。肺塞栓が0.34%、死亡率が1.07%、創部感染が1.44%、切断にいたったものが0.16%であった。再手術は0.84%の症例に行われていた。中期合併症が起こる確率もまた低かった。5年間で0.96%の患者に対して足関節固定術または足関節形成術が行われていた。開放骨折であること、年齢、合併症の存在は短期合併症との強い関連が認められた。DM、血管病変の合併は特に強い因子であった。中期合併症のうち、三顆骨折と開放骨折は足関節固定にいたることが多かった。経験症例数が少ない病院であっても合併症の発生率とは関係がなかった。結語 開放骨折であることとDM、血管病変の存在は合併症の発生と強い関連があった。また骨折型は中期の合併症との関連が認められた。病院の大きさは合併症の発生と関係がなかった。図1 各骨折型の症例数図2 患者背景図3 骨折型、合併症、病院の種類による短期合併症の発生率図4 ハザードratioによる短期合併症の発生との関連開放骨折かどうかということと強く関連している。骨折型との関連はほとんどない。切断となったり感染したりといった患者はDMの患者に多い(3.86%、7.71%)。血管病変を有するものでも同様。(3.44%、6.87%)。高齢者のほうが感染、死亡率が高い(2.37%、4.91%)。病院の規模は関係がなかった。図5 中期合併症三顆骨折であると再手術率が上がる。開放骨折も同様。DMの有無は合併症が起こるかどうかの重要な要素である。手術はどんな規模の病院で行っても中期成績も変わらない考察合併症はおこりにくい。しかしDM、血管病変をもっていると感染、切断を含めた重篤な合併症を発症しやすい。病院の規模は関係がなかった。足関節骨折において術後合併症が少ないことはよく知られている。高齢者でも少ないということをKOVALらが明らかにしているがこの研究によってどんな年代でも合併症が起こりにくいということが示された。塞栓は起こりにくい。塞栓にたいする予防策がとられたかどうかは不明。0.34%であることがこの研究でわかった。致死例の報告は時になされているが言うほどではない。VTEの調査を行った研究があるが遠位の塞栓症が起こるのは20%であったが、近位塞栓はヘパリン群で3%、プラセボ群で4%であった。DVTは高率に起こるがほとんどが無症候性で予防薬は効果がなかった。カリフォルニアでどれくらいの患者が塞栓の予防療法を受けているかはわからないが、80%以上の術者が行っていないという報告がある。起こるリスクの高い患者だけが予防薬投与を受けている可能性がある。リスクが高い群には注意を払っておいたほうがよい。この研究ではDMがあったり血管病変を有する群では明らかに短期合併症を起こしやすい。感染は7.71%対1.44%。切断に至る可能性は3.86%、(健常群は0.16%)。健常群で切断にいたる例は本当にまれである。B/K切断が行われている。DMはとにかくいかん。そのような合併症がある患者では適切な対応が必要となる。中期合併症についてははっきりとしない。0.96%が再手術を受けた。開放骨折か骨折型が粉砕しているものが予後不良であった。前もって患者に話しておくことが重要である。病院の規模では変わらなかった。THA,TKAでは普段行っていない病院で行うと合併症が多くなることが知られている。どこでも同じようなことが行われているからだろう。この研究は退院データベースに基づいており、予後についてはまったく不明である。また長期予後についても述べること賀でいない。どのように外来で扱われていたかもわからない。タバコ、アルコールについても調査していない。

2009年1月21日水曜日

股関節機能判定基準 JOAスコア

股関節機能判定基準  http://word.hipjoint.me/score.pdfを参照のこと
1、疼痛 
40点 愁訴が全く無い
30点 不定愁訴があるが痛みが無い
20点 歩行時痛みがない。歩行開始時、長距離歩行にて疼痛を伴うことがある
20点 自発痛は無い。歩行時疼痛はあるが短時間の休息で消退
10点 自発痛が時々ある
0点 持続する自発痛、夜間痛

2、可動域 屈曲120°以上はすべて12点、外転30°以上はすべて8点
10°きざみとし屈曲には1点、外転には2点与える

3、歩行能力
20点 歩容は正常、長距離歩行、速足が可能
18点 軽度の跛行を伴うことがある
15点 杖なしで30分または2kmの歩行が可能。日常生活にはほとんど支障が無い
10点 杖なしで10-15分、または500mの歩行が可能。それ以上の場合1本杖が必要、跛行がある
5点 屋内活動はできるが屋外活動は困難。2本杖を必要とする
0点 ほとんど歩行不能

4、日常生活動作
・腰掛け
・立ち仕事、家事
・しゃがみ込み立ち上がり
・階段の昇降
・車、バスなどの乗降

各項目につき容易であれば4点、困難であれば2点、不能であれば0点

整形外科人材育成

整形外科 Vol59、No.7(2008-7) 今後の整形外科人材育成はどうあるべきか

・スーパーローテーション下での整形外科ローテーションの必修化
・屋根瓦方式といわれる教育システムはルーチンワークを覚えるのにはよいが自分で物を考えるシステムとしてはダメ。マンツーマンでの指導は効果的であった

整形外科 Vol56 No.3(2005-3) 外科医のトレーニングと数字について
・日本脊椎脊髄病学会では執刀医ないし第一助手としての経験が300例以上という要件を入れている。

→実際に外傷の手術では自分達はどれくらいの手術数を行っているのであろうか。パイロットスタディとして調べてみる価値はあるであろう。

2009年1月18日日曜日

骨折治療学会

第35回骨折治療学会が7月にパシフィコ横浜で行われます.
その中で後期研修医に対してのMINIMUM REQUAREMENTについての講演があるそうです.
ぜひ参加して聴講してみようと思います.

2009年1月17日土曜日

ブログはじめてみました

”理系のための人生設計ガイド”を読んで早速はじめてみました。

専門医試験も無事終わり、今後後期研修医の教育について考えていきたいと思います。

専門医試験は勉強したことを系統立てる良い機会であったと思います。

これを上手に利用して考えてゆければと思います。