2017年6月26日月曜日

20170626 CORR Does N-terminal Pro-brain Type Natriuretic peptide Predict Cardiac complication after fracture surgery

最近のJBJSなどは、どうも症例数に偏りがあったり、また実際の診療に結びつかないようなCutting edgeな報告が多かったのでゲンナリしていました。

そんな中で、これなら自分でもやれるんやないか!と思えるような論文を見つけましたのでご紹介。

本日ご紹介する論文はCORRから。
浜松医大のグループからの報告です。以前、この論文の基軸となる内容は、数年前の中部整災で発表されておられたと思います。中部整災で報告された内容を、Brush UP され、英文化されたことが素晴らしいと思います。
論文のMaterial and Methodのところも充分に詰めておられ、今後こういった論文を書こうとする方の見本になるのではないかと思います。

もし、僕がこの論文の著者であるならば、このまま前向きにBNP高値群と低値群での生命予後を調べてもう一本書きますね。もし筆者の先生がこのブログを読んでおられましたらご検討ください。

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BNPは大腿骨頸部骨折術後の心血管イベントの予測因子となりうるか。という報告です。

大腿骨頸部骨折を起こした高齢者では心疾患合併症が起こることがある。BNPがこのような心疾患の予測因子となりうるかを検討した。
450例の大腿骨頚部骨折患者。最終的には328例の患者を対象とした。術前にBNPを測定。術後14日以内に心血管イベントを起こしたかどうかを検討した。ロジスティック回帰分析を行い、またROC曲線をかいてカットオフ値を明らかとした。
心血管イベントを起こした患者のBNP値は起こさなかった群よりも有意に高かった。ROC曲線を書いてカットオフ値を求めたところ600pg/mlとなった。AUCは0.87であった。
ロジスティック回帰分析でBNPは心血管イベントの独立した危険因子であった。

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非常によくまとまっているので抄録だけといたしました。
是非一読されることをおすすめ致します。


2017年5月6日土曜日

20170506 JBJS(Am) Formal physical therapy after total hip arthroplasty is not required A randmised controlled trial

JBJS(Am)からの論文。
ぶっちゃけ、「THAにリハビリ意味なくね?」が主旨です。
リハビリ関係者は刮目すべしと思います。
漫然とリハビリしとっちゃいかんのだて!!もっと考えて、もっとより良いものを患者さんに!!という熱い気持ちで呼んでほしいと思います。


抄録
THA術後の一般的な理学療法の効果については未だ不明である。手術方法、麻酔方法の変遷などの変化とともに、個々に応じた理学療法がTHA術後の患者の機能回復に効果的ではないかと言うことを検証する
単施設、無作為割付試験。120例の自宅退院を前提とした。片脚初回THAの患者が対象。介入群は10週間に渡って自宅での個々に応じた理学療法を実施。コントロール群は今までと同様に8週間に渡って週2回自宅に理学療法士が訪問するプロトコールを実施した。機能評価としてはHarris Hip Score、SF-36、WOMACを術後1ヶ月、6ヶ月、12ヶ月で取得し、評価を行った。
結果
120例中108例が最終評価時まで残った。介入群の10患者(19%)、コントロール群の20患者(37%)が割付された群と反対の群に移動した。術後1ヶ月、6ヶ月、12ヶ月のいずれの時期に於いても機能評価には差が認められなかった。
考察
このRCTの結果は、積極的に口出しをしないリハビリでも安全で効果的な成果が得られることがわかった。今までの訪問型のリハビリは必要ないといえる。

Introduction
THAは最も成功している外科的手術の縁の1つである。伝統的に術後の厳しいリハビリが良好な結果をもたらすと言われてきた。しかしながら、これらのリハビリについての報告はいずれもTHAの黎明期の報告であり、手術方法、麻酔方法が発達した近年ではこれらの伝統的なリハビリ方法について疑問がある。実際に、今までやってきたのとはことなる早期復帰プログラムでも、THAは充分に良好な成績が得られている。今までに自宅での定められていないリハビリ方法と、今まで行なわれてきた方法との間でのRCTは存在しない。本研究の背景として、アメリカではTHA術後の訪問リハビリのために1億8千4億ドルが投じられてる。高価な古い治療法に固執するよりも新しい効果的な方法を構築する必要がある。本研究の目的はRCTで古来からのリハビリ方法と口出しをしないリハビリ方法との間で効果を比較することである。
Material and Method
18歳から80歳までのOAに対して片脚THAを受ける患者を対象とした。また急性期リハビリに退院できる患者を対象として、長期間のリハビリが必要となりそうな患者ははじめに除外した。
120例の患者。66例の男性、54例の女性を対象。患者背景はTable1に示す。
割り付け方法
エクセルで乱数を作成。患者たちにはBlindをセずに割り付けを行った。
手術情報
5人の術者。側方又は前方アプローチ。術前にアセトアミノフェン1000mg、リリカ75mg、セレコックス400mg、Ketrolac30mgを内服。腰椎麻酔によるセメントレスTHA。ドレーンは留置しない。術後は6時間毎に650mgのアセトアミノフェンを投与。リリカを12時間毎に内服。Ketrolacを12時間毎に投与を行った。痛みがある場合には弱オピオイドの内服を追加。抗凝固としてはアスピリンを投与。術翌日からの立位、歩行を開始し、術後の脱臼肢位についての注意は施設基準に基いておこなった。
介入方法
退院時までPT、OTによるリハビリを受けた。伝統的リハビリ群は8週間に渡って週2回の通いのリハビリを行った。口出しをうけないリハビリ群は退院時にリハビリについて一日3回毎日やるようにと記載された注意事項についてのパンフレットを渡され、10週間自己管理でリハビリを行った。
口出しされない群は2週間毎に評価を行い、回復が悪かったり、また本人が希望した場合には伝統的リハビリ群に移動できることとした。両群とも毎日のリハビリ内容についてリハビリ日記をつけるように指導した。術後2週間は歩行器歩行、その後2週間は杖歩行とした。
機能評価
機能評価にはHHS、WOMAC、SF36を取得。1ヶ月、6ヶ月、12ヶ月で取得した。HHSでは一般的に非劣性試験ではSD13、最小臨床学的差が7点であることから55例でよいと考えられた。
統計学的検討
MnWhitneyのU検定を行った。
結果
640例のTHAの内、520例の患者が除外された。 2例の患者について検討が行われた。全ての項目について2群に差が認められなかった。(図4に2群の差の折れ線グラフ)

本研究では28%の患者で群間の移動があった。

考察
THAで良好な臨床成績が得られることはよくしられた事実である。また鎮痛管理、麻酔方法の発達などで回復までの時間が短くなってきている。本研究では、あまり口出ししないリハビリ方法でもほぼ同等の臨床成績が得られることがわかった。またこのことによって費用節減も期待できる。また今までの伝統的なリハビリの方法についても再考の余地がある。
本研究で特に定められていないリハビリ方法でも充分な回復が得られた。
本研究の結果によって多くの患者は伝統的リハビリが不要となるであろう。ただ、これらの千はビリが必要な患者を排除するものではない。10名、20%の患者が自己リハビリでは充分な改善が得られなかった。これらの結果は高齢で、術前機能が悪い患者ではリハビリを必要とするものである可能性が示唆された。
20名、40%の患者が伝統的リハビリから自己リハビリに変更した。一般的な患者では8週間で1440ドルの支払いが必要となり、これらが重荷になった可能性がある。
本研究にはいくつかのLimitationがある。まずNon-complaiantの存在であるが、これらはITTをおこなうことで排除されている。また、非劣性試験ではType2のエラーが生じている可能性(有意差があるのにないとするエラー)がある。
またアプローチの違いも影響しているかもしれないが、これらは術前で差が認められなかった。
また選択バイアスの可能性がある。今研究に参加した患者はもともと社会、経済的に恵まれているため前向きにリハビリに取り組んだ可能性がある。
またいずれの評価方法にも天井効果、床効果があるため差が出なかった可能性がある。
幾つかのLimitationはあるものの、リハビリの方法を再考するというのは必要なことではないだろうか。

2017年4月8日土曜日

20170408 Osteoporosis int Transient osteoporosis of hip: review of the literature

Transient osteoporosis of hipのreviewです。
よくまとまっていると思いますが、TOHとONFHが関連ある。というところは受け入れがたいかんじもあります。ひょっとしたらひょっとするかもしれませんが。

またほそぼそと続けてゆきます。

以下要約

  • Introduction
  • Transient osteoprosis of hip (以下TOH)は、良性で自然軽快し得る原因不明の疾患である。骨髄浮腫の所見をきたすが、骨髄浮腫の要因は不明である。TOHは一般的に中年男性に見られる。ときに妊娠後期に見られる。TOHは脆弱性骨折の原因となる。二次性のTOH(外傷、炎症、虚血など)もときに見られる。レントゲン写真上で一次性のTOHかそうでないかを鑑別することは極めて困難である。
  • 1959年にCurtissが妊娠後のTOHの3例を初めて報告した。出産後しばらくして自然軽快した。1988年にWilsonが骨髄浮腫症候群としてMRIの所見を報告した。1993年にSolomonは骨壊死の有無で予後が違うことを報告し、これらのうち、Osteonecrosisを伴ったものでは圧潰が進むが、Necrosisがないものでは自然軽快することを報告した。
  • TOHの報告のいずれもサンプルサイズの小さなCaseSeriesばかりである。表1に1959年から2014年までに報告されたTOHの論文を示す。最終的に97編の論文で437例の報告をこのReviewではまとめることとする。
  • 疫学と病態
  • TOHは3つの段階に分けられる。第一段階では股関節痛が発症。第2段階では骨吸収。最終段階で改善が認められる
  • TOHは、6ヶ月程度の免荷、日常生活動作制限などで自然軽快する股関節痛であるということで鑑別可能である。疼痛は骨髄内圧の上昇、静脈圧の上昇、部分的な骨回転の異常な増加、微小骨折、骨膜への刺激が原因ではないかと考えられている。あまり一般的ではないが、これらの影響で虚血が起こるとONFHになるとする報告もある。
  • ONFHとTOHの初期を臨床像、レントゲン写真などで診断することは困難である。ONFHとTOHの治療方針は異なる。TOHだけであれば外科的治療の必要はない。TOHの痛みは突然発症することが多い。いたみの程度も漠然とした痛みから入院が必要となるようなキツイいたみまで様々である。
  • 妊娠はTOHの危険因子である。それでも女性よりも男性のほうが多い。発症の危険因子としては外傷、アルコール摂取、喫煙、ステロイド内服、血管損傷、炎症、薬物使用、骨形成不全症が関連すると言われている。平均年齢は40歳。DEXAではいくつかの症例では骨粗鬆症の所見が診られる。ただ、骨粗鬆症が微小骨折のリスクとは言えない。一方、微小骨折は骨髄浮腫の原因となり、DXAで骨粗鬆症と診断される原因となりうる。骨生検をおこなうと局所での幾つかの骨吸収マーカーの上昇が見られる。血液検査上では明らかな上昇は認めない
  • TOHの病因は未だ不明である。TOHの初期がONFHと鑑別できるかもわかっていない。外傷、感染、炎症、虚血性疾患、ガン、神経疾患などがある場合にはTOHを考える。妊娠はTOHの危険因子である。似た病気にはMigratory Osteoporosisがあり、局所的に破骨細胞の活動が活性化する。他のリスクにはステロイド、喫煙、甲状腺異常、低リン血症、骨形成不全症、低テストステロン症、低ビタミンD血症が挙げられている
  • 診断
  • MRIは骨髄浮腫を診断するためにもっとも有用な方法である。TOHでは早ければ48時間でMRIの所見が出現する。TOHはT1でLow.T2でHighになる。STIRや脂肪抑制像がもっともはっきりとした所見がでる。局所の欠損がなく、びまん性に骨髄浮腫が認められる。不整なT1バンド像はストレス骨折を示唆している。TOHの浮腫像は大腿骨頭から大腿骨頸部にかけて認められる。
  • TOHの進行と予後については議論がある。Malizosらは浮腫の大きさと症状の持続期間には関連がないことを示した。しかし、軟骨下の病変は比較的速やかに改善が認められる。一方、Ergunらは浮腫が大きさ、軟骨下骨折の存在が回復までに関連すると報告している。
  • 発症後6週間程度でX線でも大腿骨頭萎縮の所見がはっきりとしてくる。軟骨下骨折がないことがTOHであることを示している。
  • 骨シンチでは3つの段階のいずれでも高い集積をしめし、症状軽快したあとも数週間持続する。局所移動性の骨粗鬆症(RMO)がTOHとよく似た所見を示すが、RMOでは骨密度の低下の進行が認められる。
  • 経過と治療
  • TOHの治療は骨吸収の抑制や骨形成の促進を考える。ただし、骨折やONFHと診断を間違えないようにしなければならない。TOHは自然軽快する疾患である。ときにONFHに施行するような場合もあると報告している論文もある。
  • たしかに、骨髄浮腫による連続性の骨へのダメージがさまざまな症候を引き起こすのかもしれない。
  • ONFHとTOHのリスクファクターはアルコール、ステロイド使用など重複するものもある。TOHはONFHの前段階だと報告しているものもある。しかし、TOHは自然回復する疾患なのにたいしてONFHは進行性の疾患であるというちがいがある。
  • TOHで骨髄浮腫が起こる機序は不明である。骨髄圧の上昇がみられたとする報告もあり、幾つかの報告では破骨細胞の活性化が認められている。
  • TOHの回復までの期間を短くするための方法としてはビスフォスホネート製剤の投与、カルシトニンの投与、テリパラチドの投与などが行なわれているが、コントロールがいずれもない。表3,4,5に各治療についてまとめてみた。ビスフォスホネートではアレディアの静脈内投与は治療期間を短くしたものの、アレンドロネートの内服では今までと変わらなかった。カルシトニン、テリパラチドなどは回復までの時間を1ヶ月程度短くした。妊娠中のビスフォスホネートの内服は胎児に影響するので、カルシトニンの投与のほうが好ましい。
  • 手術治療としてのCore decompressionはONFHの治療として存在する。しかしながらTOHに有効かは不明である。
  • 合併症と予後
  • 軟骨下骨折、大腿骨頸部骨折などはTOHのまれな合併症として知られている。男性、女性とも軟骨下骨折のリスクは同じ程度と知られている。男性の2例は骨形成不全症に発症した。大腿骨頸部骨折は24例で報告され、22例が女性でああった。骨折は妊娠中または出産後におこった。これらの骨折は免荷などの保存療法が行なわれる前に起こった。保存療法の指導は重要であろう。
  • TOHがONFHに進行するというのは極稀な合併症であろう。ONFHとTOHの鑑別は極めて重要である。

2017年1月26日木曜日

20170126 JBJSBr Metal hypersensitivity testing in patients undergoing joint replacement

  • 人工関節置換術と金属アレルギーについてのSystematic review.
  • 人工関節置換術と金属アレルギーについては論点が幾つかあります。
  • 1)Metal on Metal(MoM) 人工股関節の金属摩耗粉によるALVALの問題
  • 2)術前から金属アレルギーを訴えている人に対して金属インプラントを挿入することの是非
  • 3)術後経過観察中に金属アレルギーにて人工関節のトラブル(人工関節の緩み)が出て来る可能性は?
  • 4)金属アレルギーを同定するための有効な検査方法はあるのか?
  • 1)については小生の勉強不足のため、コメントすることができません。また折を見つけて勉強し、お伝えすることができればと思っています。
  • 2)から4)の問題について、和文での金属アレルギーと人工関節の報告はCace report, Case series以外はありません。人工関節の手術を考えているけども、金属アレルギーがあってどうしたらよいのか?ということに悩んでいる医師のために、明日からの臨床に役立つようにと思いSystematic reviewの内容をかいつまんで解説できればと思っています。
  • 以下本文
  • 1970年から2011年までに金属アレルギーと人工関節について記載された英語論文は358編。症例報告、英語論群以外、組織学的検討のみ、論文中に十分な情報が記載されていないものを除いたところ22編の論文が抽出された。
  • RCTはなく、すべて観察研究または症例対照研究である。前者では人工関節の生存率について検討し、後者では術前後の金属アレルギーの有無を調査していることが多い。表1に論文のサマリを掲載する。
  • 合計の患者数は3634例。3949例に対してパッチテストが行なわれ、168例に対してリンパ球刺激試験または幼若化試験が行われた。人工関節が挿入されていない接触正皮膚炎の患者も含まれており、その数は1202例であった。パッチテストでクロム、ニッケルに対する反応を着たしたのは8%であった。ただしこの1202例は以後の解析には含んでいない。
  • 2432例についての検討が行われた。1910例が後ろ向きの解析。522例が前向きの解析であった。522例の内451例が術後の解析であった。インプラントが挿入される前の患者では金属への過敏反応が18%、インプラントが挿入された後の患者では31%と有意に金属への過敏性を示す患者数の割合が増加した。インプラントの不具合をきたしている症例、MoMの症例では金属への過敏反応をきたしている割合が高かった。Vitroでの検査はより高い陽性率を示したが、パッチテストでは有意な増加を示さなかった。これはサンプルサイズが小さいために信頼区間が広いことが影響していると考えられた。検査する抗原数が3つ以上になると陽性になる率が有意に上がった。1970年代からの調査で金属への過敏反応をきたす例の報告は増加してきている。
  • 14編の論文を選定。1208例の患者を対象とした。人工関節置換を受けた患者の金属アレルギーはOR1.5とそれほど大きなものではなかった。MoMまたはVitroでの試験かどうかはサンプルサイズが小さいため検定不能であった。測定する抗原数について3つ以上の抗原で測定すると有意になることが多いことがわかった。近年金属アレルギーの報告が増えていいるが異質性が高く有意ではなかった。
  • 金属過敏性とインプラントの状態
  • インプラントが不安定な状態になっていると人工関節が安定している状態とくらべてOR2.7で金属過敏性が陽性になることが多かった。感度は0.44、特異度は0.76。陽性尤度比が1.8、陰性尤度比が0.74であった。

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まとめると
・金属アレルギーが原因としておこるインプラントの緩みは稀。(ないわけではない)。また術後金属アレルギーを訴える患者の数は増える。

・術前に金属アレルギーを申告する患者では、パッチテストを考慮する。
・アレルギーの検査として行なわれるパッチテストは強陽性が出た場合にはそのインプラントを避ける。弱陽性の場合にはVitroでのリンパ球幼若試験などを考慮する。

ちなみに、現在の人工股関節は全て合金ですので、全ての金属をさけることはできなそうです。問診をわすれずに、といったところが現実的な対応でしょうか



2017年1月8日日曜日

20170108 JBJS(Am) Preoperative prevalence of and risk factors for venous thromboembolism in patients with a hip fracture

あけましておめでとうございます。
本年ものんびりと各種整形外科の話題に触れて行きたいと思います。

さて、新年一発目はJBJS(Am)より。

大腿骨頸部骨折を受傷した患者さんでどれくらいの割合で術前に肺塞栓を有しているかという研究
韓国からの報告。術前からVTEを有していいる割合が11.1%。女性、肺疾患の既往、肺塞栓の既往、転子下骨折が術前に肺塞栓を有する危険因子であるということでした。
術前に撮ったというところが目のつけどころということでしょうか。
DVTはあってもそれ致命的なVTEにつながるのか?というのが深部静脈血栓症と肺塞栓の論文でよく言われていたのですが、これは最初からVTEをアウトカムにすることでその疑問に真っ向から答えているのだと思います。
Indirect multiditector CT venographyは有用である。というように結論でも述べられています。この機械は本邦の医療機関でも容易に使えるものなのでしょうか?自施設の放射線科に聞いてみてもいいかもしれませんね。

抄録
背景
受傷後24時間以上経過した患者での肺塞栓の有病率、その危険性について調べること
方法
2010年から2014年。韓国の大学病院。208人の大腿骨近位部骨折。入院後にIndirect Multidetedtor CTを施行。
結果
VTEの有病率は11.1%であった。(23/208例)。12例は深部静脈血栓症のみ。7例は肺塞栓のみ。4例が両方を有していた。CT撮像までの平均日数は4.9日だった。VTEを認めた患者の受傷日から平均CTまでの撮像日数は7.9日とVTEを有さない群の4.2日よりも長かった。単変量解析では女性、転子か骨折、肺疾患、ガン、VTEの既往、静脈瘤が有意な差を認めた。多変量解析をおこなうと女性、転子下骨折、肺疾患、VTEの既往が危険因子として抽出された。
結論
大腿骨近位部骨折の患者においてVTEの有病率は高い。それゆえに受傷後24時間以上経過した患者ではVTEの検索をルーチンに多なったほうが良い。またindirect MDCTは血栓症の検索に有用であった。

背景
VTEは肺塞栓と下肢の静脈血栓症の両方を有する概念である。大腿骨近位部骨折の患者で、しばしば肺塞栓は発症する。急性外傷の患者で手術の遅れは肺塞栓の発症と関連する。しかし今までに術前のVTEの有病率についての検討はなされて来ていなかった。受傷後48時間以上経過した骨折患者でのDVTの有病率は54%から62%とも言われている。大腿骨頸部骨折での手術の遅れは死亡率と機能障害に関連することが知られているものの、実際には内科疾患の検索や転院の手続きなどで数日かかることもある。高齢者は早期に手術するりも時間が立つと元気がなくなっていくことが知られている。またこの数日間の待機の間にVTEが形成される。DVTの診断は今まではエコーやCTで行なわれてきた。近年indirect MDCTが開発された。この方法はDVTと肺塞栓の両者を同時に検索することができる方法である。現在までに大腿骨近位部骨折の患者においてこれらの方法をもちいた報告はない。本研究の目的は手術が24時間以上待機させられた患者においての術前のVTEの有病率とその危険因子について検討することである。
方法
2010年から2014年。韓国の大学病院。239例の大腿骨近位部骨折の患者。31例を除外。20例が24時間以内の緊急手術が行われた。11例が腎障害、造影剤に対する過敏症のためにエコーによる検索が行われた。大腿骨近位部骨折で24時間以上待機した患者においてMDCTによる検索が行われた。
手術は原則的に入院後48時間以内に行われた。内科疾患の治療が必要な場合には手術が延期された。このような患者に対してはエノキサパリンの投与とフットポンプの装着が行われた。
受傷後24時間以上経過した患者で、入院後すぐにMDCTによるVTEの検索が行われた。MDCTは肺塞栓のプロトコールに従って行われた。造影剤を使用。下肢は腎臓の造影が終了した後に撮影された。
放射線科医によってそのCTは読影された。
CTで肺塞栓が見つかった場合には症状の有無にかかわらずエノキサパリンが投与された。DVTが見つかった場合には必要に応じて下大静脈フィルターが設置された。
結果
患者の平均年齢は75.9歳±9.7歳。68.8%が75歳以上であった。62例が男性、146例が女性。94例が頚部骨折、101例が転子部骨折、13例が転子下骨折であった。転院の都合で手術が遅れたものが25例、12%。入院の遅れが18例、9%。造影剤での副作用は認めなかった。
VTEの有病率は11.1%。CTまでの撮像のタイミングは4.9日。手術までのタイミングは5.7日であった。VTEが存在した群ではCT撮像までの期間が7.6日とVTEが存在しない群の4.2日よりも長かった。VTEの累積危険率は手術までの時間が遅れることに比例して増加した。12例がDVTのみ。7例がPEのみ。4例でPEとDVTを合併していた。全ての患者で症状は無く、VTEに関連した生命に危険を及ぼすような事象は存在しなかった。DVTは骨折した患肢に生じていた。9例で大腿部近位。7例で遠位に存在していた。大腿骨転子下骨折の患者ではDVTの有病率が高かった。VTE群では心疾患、肺疾患、ガン、VTEの治療の既往が有意に高かった。
VTEの危険因子について。CT撮像までの時間は、調整を行わないモデルでは有意であったが、調整をおこなうと有意な因子ではなかった。調整をおこなうと、女性であること、転子下骨折、肺疾患、ガン、VTEの治療の既往が有意な因子として上げられた。心疾患は関連しなかった。
考察
大腿骨近位部骨折は他の疾患と同じように高齢者の入院治療において肺塞栓を起こしやすいことがわかった。殆どの研究が術後のVTEについて研究をしており、術前のVTEの検討は今までなかった。また殆どの研究がエコーでの診断のみで、MDCTをもちいた研究は今までになかった。MDCTはDVTとPEの評価を同時におこなうことができる。
VTEの発生率は11.1%であった。これは以前の報告ともほぼ同一の結果であった。手術まで待機すればVTEのリスクは上がるので、手術はできるだけ速やかに入院後48時間以内に行なわれるのが望ましいと考える。累積危険率は受傷の日数とともに上昇するので、時間が経てばVTEの危険は高くなる。また本研究ではMDCTで症状のないVTEを検出した。このため他の症状が生じた研究よりもVTEの検出率が高かったと考える。また、大腿骨近位部骨折がVTEの危険群であることも関連している。手術まで時間がかかる患者ではVTEの検索をしておくほうが望ましいと考えた。
本研究では前述の4つの危険因子を同定した。これらの結果は以前の報告とは異なるものであった。これは患者背景の違いで、疑わしい患者を検索したのか、それとも全ての患者で検索したのかの違いによるものと考えた。
超音波での検査は体位を変換する必要があるためエコーでは検出仕入れないことがある。また肺塞栓とDVTは別々に検査をする必要がある。MDCTでの検査は両方を同時に調べることができる。背側全に対する簡素は100%で特異度は98%とする報告もある。造影剤アレルギーの問題、また放射線被曝の問題もあるが、それらを鑑みても充分な成果があるものと考えられた。本研究ではこれらの副作用、副反応は認めていない。