2010年10月30日土曜日

20101031 JBJS(Am) Driving wtih an arm immobilized in a splint: randomized higher order crossover trial

背景
ギプスをつけるとどれくらい運転しにくくなるかを調べてみた
方法
36人の健康な被験者に、左右それぞれのlong arm 、short armギプスをつけてもらい、cross-order crossover design の研究を行った。プラスチックコーンで設定されたコースを運転してもらい、その時間を計測した。コーンに接触したら5秒のペナルティとして換算した。
結果
全員コースを完走することができた。特に運転の能力が低下したのは左手のthumb spicaのlong arm castであった。ギプス装着時は常に運転能力が低下した。左手のlong arm castが運転のしづらさを感じ、同時に安心感を得ることができない事が分かった。
結論
左手のlong arm castが最も運転しづらくなる事がわかった。今後さらなる研究が必要である。

-考察の抜粋-
ギプスをつけていても多くの患者さんが車の運転をしているというデータがある。オーストラリアでは上肢の骨折に限って言えば50%の人が週に1回程度、22%の人が毎日運転をしていた。アイルランドの研究では61%の患者がギプスを巻いた状態で運転し、足関節骨折の15%が運転したという事が明らかになっている。しかし現在まで上肢のギプスを巻いた患者に運転を許可してよいかという研究はない。
今回の研究では左手の肘上ギプスで最も運転技術の低下がみられた。これは左ハンドルということが大きく影響しているのであろう。狭くて動かすスペースがないので、ハンドル操作に影響がでると考えた。
対象が若く元気な人を対象としているので実際の運転者に適応してよいかは不明である。4ドアのATのセダンを使ったので他の車種では分からない。
この研究ではギプスによって運転が制限される事だけがわかったので、今後はギプスを付けた場合のガイドラインを作成する必要がある。

<論評>
アメリカでの話なので、日本だと右手のlong arm castが最も運転しづらくなる、ということになりますか
ね。対象を高齢者にしたり、車種をミニバンに変えれば新しい研究としてJBJSに採用されるかも 笑

2010年10月21日木曜日

20101020 JBJS(Am) What's new orthoapedic trauma

Polytrauma

damage control orthopaedics(DCO) とは、ということが長らく議論されている.
大腿骨骨折をともなった多発外傷患者での研究で、”乳酸値の正常化”が適切な救命の時期として考えられていて、また一時的に髄内釘を挿入して良いと考えるひとつの基準となるのではないかというモノがある.結局のところ、88%の患者が入院後14時間以内で大腿骨骨折にたいしてreamedの髄内釘を挿入されていた.残りの12%は創外固定とされていた.このような患者群でARDSは1.5%に発症した.この割合は今まで同様の患者群で測定した時よりも明らかに低いものであった。肺挫傷や、他の重症外傷を合併している群でも低かった.
以上のことから乳酸値を測定し、これが正常であれば大腿骨骨折に対して髄内釘を挿入できる。と言うことがひとつの基準として言うことができるのかもしれない。
別の研究としてDCOとして創外固定のみで対応したと言う研究がある.この研究では牽引と創外固定とを比較し、ARDS,肺炎、多臓器不全の発生率について比較した.この二群でその発生率に有意な差はみられなかった。この筆者は全身麻酔下にあるような患者では牽引で治療しても創外固定で治療してもその優位性は明らかにならないと結論づけた.

<論評>
整形外科医が救命にかかわれるかもしれない、という唯一のところが大腿骨骨幹部骨折を早く治療できるかということではないでしょうか。しかも可能な限り髄内釘を使用しないといけない、と言うところが厳しいですねえ.受傷後14時間以内、と言うことであればきたその時に手術しないとダメよということですからね.

20101020 JBJS()

2010年10月14日木曜日

土田先生のブログからの抜粋.
土田先生みたいな方法論が良いかどうかは分かりませんが、外傷センターがあったほうが良いというのは間違いない事実だと思います.

http://www.geocities.jp/ytutida2002/bunsho/senden/sassyo1.pdf

20101014 JBJS(Am) What's new orthopaedics trauma その1

Outcomes
この数年アウトカムについての論文が何本か発表されている.その中でとくに患者と医師との間でのアウトカムについての認識の違いについて述べたものが2本ある。
ひとつは大きな骨折をした患者において、患者の満足度より術者の満足度の方が高いとする論文がある.術者の満足度はその骨折の治癒過程とだけと相関していることがわかった.受傷や治療の客観的な指標は患者満足度とは全く相関しなかった.受傷の責任を他者に押し付けていることは患者満足度と相関していた.弁護士が介入していること、女性であることがその治療の満足度と相関していた.
LEAP(下肢機能評価プロジェクト)では求肢が危ぶまれるような症例では、術者と患者との機能面、美容面で受け止め方の間に大きな違いがあることがわかった.術者、患者ともそれぞれ満足しうる点が違っていた.治療全般を通じての不満足さが術者と患者との間での不一致が生じる原因の一つであろう.
時間外治療についての論文.時間外に治療を行うと小さなトラブルが頻発することがわかった.可能な限り時間内に手術を終わらせるようにすることが重要であろう.

<論評>
患者さんと医者の基準が違っていると言うことは最近整形の分野でよく言われること。腰痛治療評価、頚椎治療評価も患者さんの自覚症状にそったものに変わっていこうとしている.
外傷治療もこの流れに沿ったものになっていくのかな.と。
けど、こんなに満足してないと言われると心が折れそう.笑