2018年5月23日水曜日

20180523 JBJS Impact of Clinical Practice Guidelines on Use of Intra-Articular Hyaluronic Acid and Corticosteroid Injections for Knee Osteoarthritis

背景
変形性膝関節症に対するステロイドやヒアルロン酸の関節内注射の効果には疑問が持たれている。AAOSではこれらの注射の効果については疑問があるとガイドライン上で発表した。その後の効果について専門性によって違いがあるかについての検討を行った
方法
2007年から2015年に変形性膝関節症と診断されたHumanaというデータベース上の患者。
変形性膝関節症に対して関節内注射を行った割合について年度別の検討を行った。segmented regression analysisという方法をもちいてAAOSのガイドラインのインパクトについて検討を行った。また専門性による注射の実施についても検討した。
結果
1065175例の変形性膝関節症の患者に対して、405101例(38%)の患者がヒアルロン酸の注射を、137005例の患者がヒアルロン酸の注射を受けていた。変形性膝関節症に対するヒアルロン酸の使用の割合はガイドライン発表後、100患者中0.15から0.07に減少していた。(P=0.02)。二回目のガイドライン発表後に0.12の減少を認めた。一方ステロイド注射は1回目のガイドライン発表後に0.12まで減少した一方二回目のガイドライン発表語では変化がなかった。整形外科専門医やペインクリニックの医師の間でヒアルロン酸の使用が減る一方、プライマリーケアの医師や筋骨格の専門ではない医師では使用が減らなかった。
考察
2回のガイドライン発表とともにヒアルロン酸の使用、ステロイドの使用は有意に変化した。ガイドラインは注射の使用に対して影響を与えていた。変形性膝関節症の患者により価値のある治療を提供するためにはガイドライン以外の方法も検討されねばならない。


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アメリカでは関節注射にはエビデンスがないよーというお話何だと思いますが、患者背景がどのように検討されたたが気になるところであります。
プライマリーケアなどにかかるということはその人のOAは整形外科専門医にかかるOAよりも軽症である可能性が高いわけで。
川口浩先生も、軽症OAにはヒアルロン酸が有効であるというお話をされていましたし、そのお話を裏付ける結果なのかもしれないなと思いました。
まあ、進行したOAに漫然と注射しているのはどうかと思いますが。


2018年5月19日土曜日

20180519 東京大学康永先生の講義を聴講してきました。

たまたま大学で康永先生の講義を聴講する機会があったのでいってきました。



康永先生の著書をしったのは、この「かならずアクセプトされる英語論文」をたまたま手にとってからです。
この「赤い本」がよいのは、英語論文を書き始めから、2本目を書こうか、という人が対象だと思います。 とくに秀逸なのがIntroductionやDiscussionの部分の書き方です。
 痒いところに手がとどく感じで、以下にいらない文章を削りながら必要な情報を入れるか。その上で整った論文にするためのノウハウが余分なことが書かれずに記載されています。
最初の文体はつっけんどんな感じもありますが、実際に参考書代わりに使い始めると自分の英語論文が整って行くのが実感されます。 

ということで、今回は「臨床研究デザイン」を聴講してきました。 

・臨床研究の90%は観察研究 ・
RCTが内的妥当性では最強であるが、外科系では難しい(手術をするかどうかをRCTで決めるのは倫理に悖る)
・そのためには観察研究。ただししっかりデザインをすること
 ・デザインといっても、研究の形から入るのではなく、何を明らかにするかをはっきりとすること。
・交絡が観察研究の最大の敵。そのためには先行論文を網羅して交絡の可能性を除去するよう調べる前にしっかりと調査項目を決定しておくこと 


などのお話をいただきました。 内容は「青い本」にほとんど書いてあります。



臨床研究をはじめなさいと言われた若い先生、そういう若い先生を指導しているが今ひとつ結果が出ていない中堅の先生方にはヒントになるのではないでしょうか。 

最後に。見た目よりも優しい先生でした。笑

2018年5月16日水曜日

20180516 Int orthop Nationwide multicenter follow-up cohort study of hip arthroplasties performed for osteonecrosis of the femoral head.

背景
大腿骨頭壊死症の大規模コホートにおける術後の脱臼と再手術の関連因子について検討すること
方法
4995例の人工関節置換が行われた。THAが79%。17%が人工骨頭挿入術、3%が表面置換、1%が大腿骨頭表面置換であった。
結果
ステロイド使用が56%と多かったものの、感染率は比較的低かった(0.56%)。術後の脱臼率は4.3%であった。再置換を要したのは3.9%であった。脱臼に関して、THAは5.2%、人工骨頭が0.9%、表面置換は0%であった。6ヶ月以上のフォローが可能であった症例(THA3670例、人工骨頭159例)について検討したところ、術後脱臼の危険因子は40歳以下もしくは62歳以上。BMIが高いこと。後方アプローチ。小さな骨頭が関連した。再手術に関してはBMIと手術のタイプがリスクファクターとして抽出された。
結論
脱臼率は5.2%と高かった。THAを選ぶと脱臼率が高かった。人工物の生存率について表面置換が人工骨頭またはTHAに劣った。BMIは人工物の生存率に影響した。


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本邦の大腿骨頭壊死研究班の20年以上にわたる緻密な仕事の一つの結果です。
このような緻密なコホートが今後も継続することを望みます。

2018年5月13日日曜日

20180513 BJJ Displaced femoral neck fractures in patients 60 years of age or younger: results of internal fixation with the dynamic locking blade plate.

本研究の目的は若年の大腿骨頚部骨折の患者に対してDynamic locking blade plate(DLBP)をもちいて骨接合を行った成績を明らかにすることである。
60歳以下の大腿骨頸部骨折患者。1年未満のフォローを除外。2010年から2014年。
骨癒合の有無、骨頭壊死の有無。再手術の有無について調査
106例の患者を抽出(平均年齢52歳、46%が女性)。破綻したのは106例中14例(13.2%)。大腿骨頭壊死を11例、10.4%。偽関節を6例5.4%。2例が固定が破綻した。
結論 DLBPの結果について報告した。今後RCTが必要となる

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論評

なぜこの程度の論文がBJJにのるのか全くわかりかねます。比較試験でもないですし。
強いて言えば若い頚部骨折患者に使ったということが物珍しい程度でしょうか。
新規インプラントですけど、この程度のインプラントならいくらでもありそうですし。
書いたもんがちということなんでしょうか。

2018年5月10日木曜日

20180510 J arthroplasty Does Patients' Perception of Leg Length After Total Hip Arthroplasty Correlate With Anatomical Leg Length?

背景
本研究の目的はTHAを受ける患者が自覚する脚長差と、解剖学的な脚長差、骨盤、膝、足部のアライメントとの関連を調査検討することである
方法
101例のTHAを受けた患者。EOSによる立位での評価をおこなった。3D評価と患者の自覚的脚長差との検討を行った。
結果
本研究の結果、解剖学的脚長差と患者の自覚的脚長差の間には関連を認めなかった。脛骨中心から地面までの距離では関連を認めた。また矢状面での膝のアライメント、骨盤の傾きが自覚的脚長差と関連があった。
考察
脚長差は他因子に渡る合併症である。解剖学的な大腿骨の長さはTHAで調整可能であるが、その長さは自覚的脚長差において重要な因子ではなかった。脊椎の変形、骨盤の傾き、外転筋力、膝のアライメント、足部の変形などの評価も必要である。


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THAにおいて脚長差は無視できない合併症の一つとなっています。
本研究はEOSをもちいて全身のアライメントを測定しそのアライメントと自覚的脚長差について評価を行った興味深い研究だと思います。
ただ、この結論をもちいてどないすればいいねん。というところが問題なわけで。
膝の高さはTHAでは変えられないし。骨盤の傾きは手術で変えられない因子なわけですし。まだまだ研究が必要です。

2018年5月7日月曜日

20180507 JBJS Am Quality of Care in Hip Fracture Patients The Relationship Between Adherence to National Standards and Improved Outcomes

背景
大腿骨近位部骨折の患者において、適切な周術期の治療、看護が行なわれることが重要である。スコットランドでは国単位でケアの方法(SSCHFP)を設定した。その方策の結果について報告することが本研究の目的である。
方法
後ろ向き研究。スコットランドの大腿骨近位部骨折のレジストリー。スコットランドの21の病院。2014年9ヶ月の評価。30日と120日での死亡率、入院期間、退院場所を検討した。
結果
1162例の患者。SSCHFPに従って治療を行わない群では30日、120日での死亡率が高かった。(オッズ比3.58)。SSCHFPに従わない群の方が入院期間は短かったが、より高次の医療機関への転院を必要とした。早期からのリハビリ介入、作業療法の介入は高次医療機関への転院を減らした。
結論
SSCHFPに従うことで患者のアウトカムの改善が認められた。大腿骨近位部骨折の患者においてSSCHFPの導入は一つの基準となりうる。


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国家単位で周術期ケアを定めた場合にどうなるかとする論文。
しっかりとエビデンスに基づいて治療を行ったほうが予後がよかったよ。という結論です。中身を読んでいませんので、なんともいえませんが、バイアスとしては、もともとこのようなケアの対象外になるような重症なひとがバリアンスとして除外されていた可能性は否定できませんね。

2018年5月3日木曜日

21080503 JBJSAm Alpha Defensin Lateral Flow Test for Diagnosis of Periprosthetic Joint Infection: Not a Screening but a Confirmatory Test.

背景
関節液中のアルファディフェンシンの検出が人工関節感染の診断に有用かどうかを検討する。本研究の目的はアルファディフェンシンテスト(ADLF)が関節液中の白血球数と比較してどの程度の能力かを検討することである。
方法
股関節又は膝関節の再置換症例で関節液を吸引した。一般的な検査に加えてADLFを追加した。MSIS、IDSA、EBJISの基準に従って感染を定義した。ADLFと白血球数をMcNemarのカイ二乗テストで比較を行った。
結果
212例の患者。151例が膝の感染。61例が股関節の再置換であった。MSISの基準で45患者(21%)が、IDSAの基準で55例(26%)、EBJISの基準で79例(37%)の患者で人工関節であるとそれぞれ定義された。ADLFはMSIS基準で84%、IDSA基準で64%、EBJIS基準で54%の患者で陽性であった。一方ADLFは3つの基準全てで96−99%と高い特異度を示した。とくに術後早期ではより特異度がました。EBJIS基準では白血球数のカウントがADLFよりも感度が高かった。(86%対54%)。とくに慢性感染では白血球数のほうが感度が高かった。
結論
ADLFは感染の診断で高い特異度、低い感度であった。スクリーニングには不適で、むしろ感染の確定診断に向いている。


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論評

メーカーさんのパンフレットをみると、感度特異度とも90%以上やで!!と記載されております。
また、小さな研究会などにでると”アルファディフェンシン最高””これからはアルファディフェンシンを信じて感染かどうか考えます”みたいな発表が散見されまして、おいおい、大丈夫かよ。と思っていました。
今回の報告は僕のその感覚に近いものです。疑っている症例に対して使って陽性だったら、感染だったね、やっぱり。という使い方をしようということだと思います。