2018年9月30日日曜日

20180930 What’s New in Hip Replacement 3

VTE
多施設での無作為割付研究。3,424例のTHAまたはTKA患者。イグザレルトを内服。アスピリン内服群との間で有意差を認めず。
メイヨーからの報告。VTEの既往がある患者でもトランサミンについてはVTEのリスクを高くすることはない。
THAの患者で心房中隔欠損がある場合には脳梗塞のリスクが29倍となる。

急性腎障害
近年腎障害についての報告が散見される。メイヨーからの報告。10323例のTHA患者で1.1%の患者が術後急性腎障害をきたしていた。高齢、男性、慢性腎不全、心不全、糖尿病、高血圧が危険因子として抽出された。
一期的再置換の際に抗生剤の使用、セメントスペーサーの使用も急性腎障害のリスクとなることがわかった。
このような腎障害にたいしての臨床上のプラクティスが今後必要になるかもしれない。

尿道カテーテル
脊椎麻酔はTHAの早期退院に伴ってその割合が増えている。尿老カテーテル留置は術後の過剰輸液の原因となっているとする報告がある。

退院時の状況と合併症
アメリカでは30日、90日以内の再入院の率が4%、8%となっている。人工関節置換術後の患者の殆どが独居で生活している。ただしこれらの患者は在宅での支援をほとんどが受けていた。

今後のトレンド
コンピュータナビゲーションとロボット
THA支援コンピュータまたはロボットは5,2%まで増加している。ロボットもナビゲーションも同様に安定した成績と報告されている。

外来THAと同日THA
外来THA患者のほうが入院患者THAよりも予後が良かったとする報告があるが、これは患者のセレクションバイアスによるものであろう。ただし、健康な患者であれば手術当日の退院でも再入院や再手術のリスクを高くしないとする報告もある。

疼痛管理
現在のところ周術期の疼痛管理についての一定の見解はない。局所ブロックのほうが全身疼痛管理よりも有用であるというレビューがある。
局所麻酔薬の内容をどうするかということについても現在検討中である。





2018年9月29日土曜日

20180929 JBJS What’s New in Hip Replacement 2

BMI
684例の後ろ向き研究。10年のフォローで再置換の独立した危険因子であった。またBMI35以上は術後感染や合併症のリスクが高かった。

喫煙
スコアマッチングをすると、喫煙者は術後30日間での感染、再入院の危険が高かった。

手術アプローチ
DAA
ある施設で手術を受けた76%の患者がDAAについて知らなかった。手術についての情報は主に口コミなどで伝わっていた。今まで報告された論文よりも手術アプローチの影響は少ない。

アメリカでは20%の術者がDAAを行っている。早期回復、疼痛の減少が言われている。その他のアプローチに比較して、術中骨折、ラーニングカーブがあることが知られている。まただいたい神経麻痺のリスクがある。完全に神経障害が回復するのは75%の患者である。また強直性脊椎炎の患者でDAAをおこなったところ重大な合併症を生じている。(脊椎脱臼骨折)このような患者は側臥位で手術したほうがよい。

4651例の後方アプローチ。後方アプローチは他の方法と比較して感染が多いと言うわけではなかった。DAAは創治癒不全の率が高いとする報告がある。ALSはDAAに比べて神経障害の発生が少ないと言われている。

DAAでの放射線被曝は178ミリレムで、レントゲンを1枚取るのよりも少ないということがわかっている。ただし術者への被曝量は不明である。

MIS
今までの16センチのアプローチと比較して10センチ程度の皮切で行われるMISTHAについて、現在のところ明らかなメリットは認められていない

合併症
脱臼と機械的な緩みが再置換の主な原因である。真剣損傷、脱臼、脚長差が患者側からの不満、訴訟要因として挙がっている。

坐骨神経障害
手術部で坐骨神経の剥離を行うと坐骨神経麻痺の回復が33%から65%から92%に回復したとする報告がある。

脱臼
手術中のインピンジメントを避けて、外転30-50度、前開き15-30度で脱臼は減らすことができることができるとする報告がある。

脊椎とTHA
脊椎固定とTHAは現在もっともよく議論されている内容である。

脊椎疾患を有する患者では脱臼する率が高い。脊椎の前湾の消失、THA5年以内の脊椎固定、多椎間固定などがリスクとして挙がっている。脱臼患者では脊椎の屈曲、骨盤の傾斜の変化が減少していると言われている。
脊椎と骨盤の関係と寛骨臼コンポーネントの設置についての検討が必要である。

感染
感染率はほど一定で変化がない。人工関節感染後の死亡率は普通のTHAよりも8%死亡率が高くなる。エンテロコッカスに罹患すると死亡率が他の細菌群よりも高い。
危険因子としてはメタルオンメタルが感染率が高いと言われている。ヘモグロビンA1Cが7.5%から7.7%より高いと感染が高くなると言われている。7%以下を目標としたい。または随時血糖292以下。
MRSAが鼻腔などから検出された患者では検出されない患者よりもMRSA感染のリスクが高い。
PJIの診断には関節液中の白血球3966以上、好中球80%以上。ジンマーからでたシノバシュアは診断の一助となりうる。D-dimerも感染の有無を判断する手助けとなる。尿検査用の白血球検査紙での検査も使用は可能であろう。
治療は抗生剤含有セメントを8週間留置することによる。抗生剤投与による合併症が生じていないかの確認が必要である。セメントスペーサによるトラブルにも注意が必要である。骨折などの可能性がある。二期的再置換術後に3ヶ月間の内服を加えることで感染の沈静化がはかれたとする報告もある。










2018年9月24日月曜日

20180924 JBJS What’s New in Hip Replacement

年に1回ほどJBJSにSpeciality updateが掲載されますが、そのTHA版がこの9月に上梓されていましたので簡単にまとめ。その1

インプラントデザインと成績
・セメントステム
オーストラリアのナショナルレジストリーで2種類のセメントステムについての検討。14年間のフォローでマット加工のステムよりもポリッシュステムのほうが再置換率が低かった。マットステムの再置換の原因の75%は緩みであった。ポリッシュステムの再置換の原因は骨折によるものであった。ポリッシュステムのほうがコンポジットビームのステムよりも骨折率が高いとする論文があるが骨粗鬆症が交絡因子としてありそうだ

・ベアリング
セラミックーポリエチレンの組み合わせの組み合わせが2015年には52%を占めるまでのなった。一方メタルーメタルの組み合わせは劇的に減少している。近年の研究はメタルーメタルの組み合わせによるものが多い。

・メタルオンメタル
メタルイオンレベルとメタルオンメタルTHAの臨床成績には関連がありそうだ。
28ミリ骨頭のメタルオンメタルの10年フォローでは、症状がなくても41%の患者が血中コバルトクロム濃度が上昇しており、ARMDが認められた。

・心血管毒性
Mayoの研究ではメタルオンメタルのTHA後でコバルト濃度が高い患者の屍体では心筋内のコバルト濃度が高かった。これはメタルオンメタル後の心血管イベントが高い可能性を示している。しかし、症例対照研究では心血管イベントは変わらないとする報告もいくつか出ている。

・セラミックオンポリエチレン
症状のないセラミックオンポリエチレンの患者にMRIを思考したところ50例中9例で液体の貯留を認めた。充実性の病変はなかった。今後のフォローによる報告が必要。

・セラミックオンセラミック
セラミックヘッドとライナーの破損はいまだセラミックオンセラミックTHAの主要な問題の一つである。イングランドのナショナルレジストリーによれば、最近のセラミックヘッドは以前のセラミックヘッドよりも有意に破損のリスクが減少した。一方ライナー側の破損率は変わらなかった。ヘッドが小さい方がセラミックベアリングの破損と関連していた。

・Highly cross-linked polyethylene
ニュージーランドの国家レジストリーによれば、コンベンショナルのポリエチレンライナーよりもハイリークロスリンクのポリエチレンのほうが摩耗量が有意に少なく、また再置換率も有意に減少した。若年者を対象としたRCTの10年成績でもハイリークロスリンクは有意に摩耗量が少なかった。ビタミンE含有ポリエチレンはその他のポリエチレンよりも有意に摩耗量が少なかったとする質の高いエビデンスが一ずつある。

・モジュラーネックとモジュラー型ライナー
フランスの国家レジストリーから。モジュラーネックによる再置換率はモノブロックのすてむよりも有意に高いことが報告されている。ステムデザインによる比較ではSROMよりもスミスアンドネフューのエンペリオンがステム破綻が多いことが報告されている。オーストラリアのレジストリーからコンストレインライナーでの再置換のほうが非コンストレイン型のライナーよりも再脱臼率が高いと言う報告がある。すなわち頻回脱臼に対するアプローチではコンストレインライナーにすればよいと言うわけでなく慎重な検討が必要と言うことを示唆している。デュアルモビリティは今後の検討が待たれる。

・患者側要因と臨床成績
・合併症
メタボリックシンドロームは人工関節術後の合併症発生の独立した危険因子である。メタボリックシンドロームを有するもしくはBMI40以上ではそうでない群よりも合併症発生率が高い。
COPD、多発性硬化症、パーキンソン病も最近THA後の危険因子として報告されている。C型肝炎の患者は術後合併症が多いとする報告とそうではないとする報告がそれぞれ出されている。
臓器移植後、血液疾患を有する患者での合併症率は高い。
・股関節治療歴
股関節鏡がTHAの術後成績に影響するのではないかということが示唆されている。股関節鏡術後の患者のほうがそうでない群よりもTHAの成績が低いことが報告されている。30歳以下で骨きり、骨移植などの股関節温存手術術後の患者は初回THAよりも成績不良であることが報告されている。大腿骨頸部骨折で骨接合術後のコンバージョンTHAは一期的にTHAをした患者よりも成績が不良であることが報告されている。
喫煙、ASA>3は独立した再置換の危険因子として報告されている。またBMI>35は深部感染のリスクを上げる。





2018年9月22日土曜日

20180922 Should Depression Be Treated Before Lower Extremity Arthroplasty?

背景
人工関節においてどのような患者を選択するのか、というのは人工関節の術後成績を確実なものとするために必要となっている。うつ状態は術前に治療することのできる病態であると考えられている。術前に精神科介入をおこなうかどうかは議論がある。術前のうつスコアが術後の成績に影響するのではないかと考えた。本研究の目的は、人工関節術前の患者での術前のうつの有病率はどの程度か。またうつ状態は術後の成績に影響するのか。うつ状態は術後改善するのかの3点について検討することである。
方法
PHQ9を用いて術前、術後のうつ状態の評価を行った。
結果
282例中65例の患者が中程度のうつ状態であった。57例、88%が術後改善した。10例の患者が術前重度のうつ状態であったが、9例の患者が術後改善した。うつを有さない患者とうつじょうたいである患者の間での患者立脚型評価での改善の度合いに有意差はなかった。
結論
人工関節手術において術前語でうつ状態は改善しうる。術後成績もほぼ同様であった。うつ状態があるからといって手術を避ける理由とはならない。

<論評>
論文の構成は雑で読みにくいですが、内容はおもしろいと思います。
人工関節は除痛に効果があるため、除痛によりいたみによって生じていたうつ状態が解除されることを示していると思います。
この論文で示されていないのは、では、成績が改善しない人たちはどういう人達なのかについてです。
つぎはそういった患者の背景を明らかにすることが必要なのだと思います。

2018年9月17日月曜日

20180917 BJJ Fractures of the transverse processes of the fourth and fifth lumbar vertebrae in patients with pelvic ring injuries

背景
不安定型骨盤骨折とL4,L5の脊椎横突起骨折の関連について詳細に述べられた報告はない。本研究の目的は両者の関連について検討を行うことである。
対象と方法
後ろ向き研究。2005年から2014年まで。AOとYoung and Burgess分類に基づいて骨盤骨折の分類を行いマッチしたペア解析を行った。
結果
728例の骨盤骨折の患者。183例(25.1%)が不安定型骨盤骨折であった。そのうち、84例(45.9%)が横突起骨折を有していた。安定型骨折では、73例(13.4%)に生じていた。L4、5の横突起骨折は不安定骨折で5.5倍のオッズ比を有していた。横突起骨折があっても血行動態が不安定になるかどうかは統計学的に有意とはならなかった。
結論
横突起骨折と骨盤骨折の関係について述べた最初の論文である。横突起骨折の存在は不安定骨折で有ることを示唆しているので早急な対応を要すると考えられる。

<論評>
横突起骨折があると不安定型の骨盤骨折である。というのは、10年ほど前になにかの勉強会で聞いたような気がします。
それが今まで論文化されていなかったといいうことが驚きです。
横突起骨折は不安定型の骨盤骨折と関連があることがわかりましたがどういった治療につなげるか、というのは今後の課題だと思います

2018年9月13日木曜日

20180912 J arthroplasty A Comparative Study Between Uncemented and Hybrid Total Hip Arthroplasty in Octogenarians.

背景
本研究の目的は80歳以上。ハイブリッドTHAをコントロールとしてセメントレスTHAの成績について最低5年間のフォローを行った患者に対して前向きに研究を行うことである。
方法
臨床成績評価。術中術後の合併症。輸血、再置換術、死亡率について検討を行った。
術後の骨質の評価、インプラントの固定状態、緩みについての調査を行った。
結果
134例の患者で検討。66例のセメントレスTHAと67例のハイブリッドTHAを行った。セメントレスTHAのほうが術中の合併症が少なく、また輸血率が低かった。平均入院期間は変わらなかった。両群とも2例ずつの再置換があった。
結論
80歳以上のTHAについて、セメントレスTHAのほうが安全であるという結論を得た。本研究の結論としては、年齢を理由としたステムの選択の必要はないということである。しかしながら術中の骨質に応じてどちらのステムにするかは術者が判断しなければいけない

<論評>
昨今AAOSを含めてセメントステムのほうがいいのではないですか。とする論調でありましたので、それに対するカウンターパートの論文だと思います。
骨形態(髄腔の形態)とステムの得手不得手を理解していれば99%の症例でセメントレスステムは問題を生じず、またセメントステムと変わらない成績を出せるのではないでしょうか。
ただどのように群わけをしたのか、どのような術者が手術したかはこの抄録からはわかりませんので詳しい論評は避けておきます。


2018年9月10日月曜日

20180910 BJJ Dementia predicted one-year mortality for patients with first hip fracture

目的
アジア人種における大腿骨頸部骨折を受傷した患者において、認知症やパーキンソン病の合併が1ヶ月後、3ヶ月後、12ヶ月後の死亡率に与える影響について調べること
対象と方法
台湾の国家保険データベースを使用。1997年から2012年までにICD9で大腿骨頸部骨折で登録された患者を対象。6626例の患者が対象となった。コックス比例解析にて認知症、パーキンソン病、その両者と死亡率についての関連を調査した。
結果6626例の患者のうち、10.2%が認知症を。5.6%の患者がパーキンソン病を、2.67%の患者が両方の疾患に罹患していた。1年後の死亡率は、両者がない場合には9.22%であるのに対して、それぞれ15.53%、11.59%、15.82%であった。調整後のハザード比は認知症で1.45、両方併存している場合には1.57であった。パーキンソン病単独では関連を見いだせなかった。高齢、男性、合併症が多いと死亡率が高くなった。
結論
パーキンソン病の有無にかかわらず認知症は大腿骨頚部骨折後の独立した危険因子であった。高齢、男性、合併症が多いと死亡率が高くなり、パーキンソン病単独では有意な因子となりえなかった。

<論評>
日常診療の感覚と一致する結果が示されていると思います。認知症の原因はパーキンソン病だけでなく脳血管障害などもあると思いますが、なぜパーキンソン病との合併を調べたのかはわかりませんが。
日本でもDPCとかみんなが頑張って入れているのだから、データとして皆がサワれるようにしていただくとこういった研究が捗ると思うのです。

2018年9月3日月曜日

20180903 Int orthop Total hip arthroplasty: minimally invasive surgery or not? Meta-analysis of clinical trials.

背景 
最小侵襲手術(MIS)と従来法との比較の報告がなされている。しかしながらTHAにおいて最も有用なアプローチはなにかということについては議論がある。
目的
本研究の目的はTHAにおけるMISと従来法の比較検討を行うことである。
方法
MISと従来法の比較を行った研究のメタアナライシスである。臨床成績、レントゲン評価、合併症率に着目して検討を行った。
結果
4761例の患者、4842例のTHAが該当した。平均フォロー期間は22.26ヶ月。MISの利点としては、出血量が少ないこと、手術時間が短いこと、入院期間が短いことがあった。従来法の優れた点としては、HHSが高いことであった。レントゲン評価では2群間で差を認めなかった。脱臼、感染、骨折では有意差を認めなかった。MISでは医原性の神経障害が多かった。
結論
現状では従来法に比べ、MISの利点はそれほど多くはない。

<論評>
結論でバッサリ切りにいっているところがなかなか小気味よい論文です。
神経障害については、MISをやる先生たちのほうが気にしているから多いのかもしれないなと思うこともあります。
また、MISと十把一絡げにして検討するのもどうなのよ。と思いますが。
新しいアプローチがすべてよい。とは思いませんが、やり始めて初めて分かることもたくさんあるので、全否定はできないと思います。