2018年4月30日月曜日

20180430 Arthritis Rheumamtol. Leg Length Inequality and Hip Osteoarthritis in the Multicenter Osteoarthritis Study and the Osteoarthritis Initiative.

背景
2センチの脚長差があると膝関節OAになるリスクがあると言われている。本研究では股関節OAと脚長差の関連について調査を行った。
方法
MOSTとOsteoarthritis initiativeと呼ばれるコホート研究に参加した被験者から、両下肢全長と股関節のX線写真を取得。3から5年毎にフォローアップを行った。横断的、縦断的な評価を行った。脚長差がない群と短い脚の群と長い足の群で比較を行い、ロジスティック回帰分析を行い検討を行った。
結果
1966例と2617例の検討を行った。12%の患者が1センチ以上の脚長差を有し、1%で2センチの脚長差を有していた。脚が短いことは、1センチ以上の脚長差がある群、2センチ以上の脚長差がある群のいずれでもOAの独立した因子であった。1センチの脚長差ではオッズ比1.39であるものが、2センチの脚長差では4.20と短い方の脚ではOAのオッズ比が上昇した。長い方の脚ではOAの危険因子の増加を認めなかった。
考察
2センチの脚長差があることはOAのリスクである。


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股関節の場合には股関節OAそのもので脚長差が生じえます。
また脊椎側湾の影響も無視できません。
どの様んい測定したかはまた一度本文まで当たる必要がありそうです。

2018年4月28日土曜日

20180428 CORR Is Cemented or Cementless Femoral Stem Fixation More Durable in Patients Older Than 75 Years of Age? A Comparison of the Best-performing Stems.

背景
THAの大腿骨側インプラントがセメント固定か、セメントレス固定かということは未だ議論の的である。セメント、セメントレスともいずれも高いステム生存率を示している。しかしながらレジストリーデータではセメントレスステムのほうが再置換率が高いと言うことを示している。再置換率の差が、固定様式の差なのかインプラントのRangeを反映しているのかは不明である。
臨床上の疑問
(1)75歳以上のTHAを受けた患者を対象として、一つの最も優れたセメントステムと、3つのセメントレスステムとの間で再置換率に違いはあるか。もし差があるとすればそれは術後早期なのか術後1ヶ月以上経過した場合なのか
(2)3つの優れたセメントレスステムの内、3つのセメントステムよりも優れた成績がでるような疾患の違いはあるか
(3)患者の性別によって違いはあるか
方法
オーストラリアの国家レジストリーデータから3つの優れたセメントステムと3つの優れたセメントレスステムを選択。基準としては10年間の再置換率が低く、また1000例以上で使われたものとした。カプランマイヤー曲線で生存率を検討した。OAと骨折で分けて検討を行った。
結果
再置換をエンドポイントとした時、セメントレスステムよりもセメントステムの方が有意に再置換率が低かった。(ハザード比3.47、P=0.001)。早期の再置換については、セメントステムよりもセメントレスステムでは9.14倍であった。疾患別に検討をおこなうと、セメントレスステムがいずれもセメントステムよりも1ヶ月の時点での再置換率が高く、OAでハザード比8.82、大腿骨頚部骨折でハザード比27.78であった。性別での検討を行ったが、男性、女性にかかわらずセメントステムの方がセメントレスステムよりも術後1ヶ月の時点での再置換率が低かった。男性でハザード比0.42、女性でハザード比0.06であった。
結論
75歳以上の患者において、セメントレスステムは術後1ヶ月の段階での再置換率がセメントステムよりも高かかった。これはともに最も生存率が高いステムをもちいた結果である。このレジストリーデータからは次世代の股関節外科医にはセメントステムのトレーニングをおこなう必要があろう。しかしながら、THA術後3ヶ月の段階では二群間に差を認めなかった。これは外科医の技術、大腿骨の形状に応じて適切なセメントレスステムを選ぶことができる。

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論評

オーストラリアの国家レジストリーから。術後早期の大腿骨再置換はセメントステムよりもセメントレスステムが高いという結果となった。
しかしながら、この様な結果にもかかわらずセメントステムの使用は減り、セメントレスステムの使用は増加の一方である。
ひょっとしたらセメントは限られた術者が使うのでより成績が上がっているというバイアスはあるのかもしれない。
ただ、ボク個人としてはこの結論に賛成でセメントステムはもっと見直されて、若手の先生方はセメントの手技を身につけるべきだと思います。


2018年4月25日水曜日

20180425 CORR Crosslinking reduces THA wear, osteolysis, and revision rate at 15-years followup compared with noncrosslinked polyethylene

貴重なRCTの長期フォローアップ。せめてレントゲンがあれば。

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背景:クロスリンクポリエチレン(XLPE)ライナーは10年のフォローで、従来のノンクロスポリエチレン(CRE)ライナーよりも低い摩耗率を示している。しかしより長期のフォローアップでこれらのインプラントがどうなのか、またXLPEライナー骨融解発生の時期が遅れるのか、、骨融解の発生率が低いのかということについてはいまだ質の高いエビデンスはない。また長期間に渉フォローによる摩耗の減少とそれに伴う長期の置換率の減少についてもどの程度化は不明である。
臨床上の疑問:(1)XLPEは摩耗と関連する再置換率を低下させるか。(2)摩耗率を低減させるか(3)CPEと比較して骨融解の頻度を低下させるか
方法:1999-2000年。XLPEとCPEの無作為割付に参加した226人の患者236例の初回人工関節。28ミリ骨頭、4ミリの外方化ライナーを使用。6例が術中の何かしらの理由によって除外された。最終的に220人、230関節を対象とした無作為割付試験となった。手術時平均年齢は62歳。年齢、性別、BMIに有意差を認めなかった。14年後にレントゲン写真の撮影が可能だったのが85関節。XLPEが46例、CPEが39例であった。ポリエチレンの摩耗量、再置換直前もしくはもっとも直近のX線写真による評価を行った。再手術または骨融解の発生をエンドポイントとした累積危険率の検討を行った。
結果:摩耗を理由とした累積危険率はXLPEが0%、CPEが12%で有意にXLPEが低かった。(P<0 .001="" mm="" p="" year="">結論:本研究は以前の研究の連続となる長期フォローである。XLPEは再置換の減少、摩耗量の減少、骨融解の減少と関連していた。長期間のフォローアップでXLPEライナーの摩耗率が低く、機械的破綻がないことは、酸化防止剤を配合していないライナーでも高い耐久性があることを裏付けている。 骨溶解はまったくないわけではないが、まれにしか発生せず、これまでに臨床的な問題を引き起こしていない。

2018年4月22日日曜日

20180422 J Orthop Trauma Factors Associated With Revision Surgery After Internal Fixation of Hip Fractures

背景 大腿骨頚部骨折において内固定をおこなった群ではある一定の割合で人工関節への置換が必要となる。FAITH Trial(アメリカ、カナダ、オーストラリア、ノルウエイ、ドイツ、イギリス、インドの多国籍前向き大腿骨頚部骨折共同研究)をもちいた研究。大腿骨頚部骨折のインプラント、その他の因子について、再手術の必要性、骨折治癒、2年後の機能回復の程度について検討を行った。加えてインプラント抜去したかどうか。インプラントをTHAやBHPに置換したかどうかを検討した。
方法 1079例の患者を対象。再置換の危険因子と考えられる15項目の因子について検討を行った。7項目は内固定材の抜去について、14項目はインプラントの置換についての項目である。Cox比例ハザードモデルをもちいて検討を行った。
結果 再置換に至る危険因子は女性であること、(HR1.7)。BMIが高いこと(HR1.19)。転位型の骨折であること(HR2.2)。インプラントの設置不良(HR2.7)であった。また喫煙患者がCCHSまたはCHSで治療された場合も成績が不良であった。(HR2.9)。さらに10歳ごとに年齢が減少することで39%ずつインプラントを抜去するリスクが高くなった。
結論 本研究で明らかとなった危険群には最初からTHAなどの選択をおこなうとより適切な治療が行えるであろう。

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FAITHTrialは小生が知る限りで、多国籍前向きの唯一の大腿骨頚部骨折の研究であると認識しています。
そこからの研究。
前向きで1079例という多数の患者を対象としていることから、得られた結果にはなるほど。と頷く結果が提示されていると思います。
昨今積極的内固定を否定するような論文が散見されます。THAの性能が向上したことに大きく影響されているのでしょうか。

2018年4月18日水曜日

20180418 J arthroplasty Conversion vs Primary Total Hip Arthroplasty: Increased Cost of Care and Perioperative Complications.

背景
大腿骨近位部骨折は増加しており、骨接合術後のTHAも増加傾向にある。以前の研究では骨接合術後のTHAでは合併症が高いことが報告されている。ただ、以前の研究ではこの2つの方法間でのコストの検討が不足していた。MedicaidとMedicareの保険で疾患の重症度をマッチさせて、病院への支払いについて検討した。
方法
2012年から2015年までに163例の骨接合術後のTHAが存在した。術中合併症、出血、手術時間、術後合併症、周術期のコストについてPrimaryTHAを行った群で、マッチさせて検討を行った。
結果
骨接合術後のTHAでは初回THAよりも直接のコスト、中間の介護コスト、リハビリ、レントゲンなどで有意に初回THAよりも高かった。加えて骨接合術後THAでは出血、手術時間、入院期間、術後合併症も多かった。
結論
骨接合術後THAは初回THAに比べて手術時間が長く合併症が多かった。患者の選択バイアスから生じる追加の出費を防ぐために、骨接合術後のTHAでは評価項目の再評価が必要である。


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最近の流行りのコスト談義だと思います。
骨接合術後の骨頭壊死もしくはインプラント穿破からでTHAが必要になる症例と、転位が大きいからTHAにしましょうという症例が同じなわけがなく、手術時間だって抜釘していれば自然に延長するものと思います。
そもそもこの2群を比較してあなたは何をいいたいのかとつっこんでみたいものです。

2018年4月12日木曜日

20180412 CORR Risk of complication after THA increases among patients who are connected with HIV and Hepatitis C

背景 HIVとHCVの両方に感染している患者は増加傾向にある。HIV、HCVそれぞれ単独感染についてのエビデンスは構築されつつあるが、両方共感染している場合の報告はない
臨床上の問い 感染のない患者と比較して、患者背景は合併症の有無に違いがあるのではないか。再入院などのリスク、合併症の発生が多いのではないか。とくに(1) HCVとHIVの両方に感染していると年齢、性別、医療保険に違いがあるのではないか。(2) 合併症の有無に違いがあるのではないか(3) 術後の早期がペイ性が多いのではないか。 (4) 再入院の率が高いのではないか について検討を行った
方法 2010年から2014年 ニューヨーク州のデータベースを使用。感染なし群、HIVのみ感染群、HCVのみ感染群、HIV、HCV共感染群の4群に分けた。2010年から2014年までに80722例の患者がTHAを受けた。98.55%の患者が感染が無かった。HCVまたはHIVに感染している患者は0.66%。HIVとHCVの共感染は0.14%であった。多変量解析を行い各群間の比較を行った。
結果 共感染群は他の群より若く、男性が多かった。またMedicaid(公費)の使用割合が高かった。基礎疾患がONFHであることが多く、またホームレスであることも多かった。また共感染群はアルコール、喫煙歴が高く、精神疾患を合併している率も高かった。入院期間も長くなる傾向にあった。入院中に合併症を発生することも多く、再入院率も高かった。
結論
HCVとHIVの共感染の割合は増加しており、今後整形外科医が対応を迫られる場合も増加する。患者背景、社会的問題についても術者は考慮すべきで必要があれば精神科コンサルトや退院支援、感染症専門医の介入を要請する必要がある。そうすることでHIV、HCV共感染の患者にかかるコストを減じることができるであろう

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最近アメリカで流行っている「コスト」話ですね。
アメリカでは関節症疾患に対する治療費の増大が国家的な問題になっていて、それにどのように対応するかというのがAAOSなどでも議論になっています。
その流れに乗った論文ですが、いわゆる記述統計であり、因果関係もへったくれもありませんな。じゃあどうするの?という結論がないところがミソです。苦笑。

2018年4月7日土曜日

20180407 CORR Cardiovascular and Cerebrovascular Events Are Associated With Nontraumatic Osteonecrosis of the Femoral Head

背景
血管内皮の障害がONFHの病因の1つと考えられている。また脳血管障害、心血管障害も血管内皮障害にておこる。しかしながら今までにONFHとこれらの血管障害との発生頻度の報告を行ったものはない。
問いと目的
ONFHとマッチさせたコホート軍を設定。年齢、性別、経済的要因を一致させてハザードRatioを検討。交絡因子を調整したあとにONFHと血管障害との関連を調査。両群での血管障害の発生率について調査を行った。
方法
1997年から2010年までの台湾の国家レジストリーをもちいた後ろ向き研究。2300万人の台湾人と在留外国人を含む。99.5%がアジア系。100万人から心血管イベントを起こしていない1562人のONFHを同定。15620人のONFHでないコントロール群を選定。
結果
ONFH群は非ONFH群よりも血管イベントの発生率が高かった。(19%と14%)調整後のハザードRatioは1.34から1.27であった。交絡因子を調整した上での検討をおこなってもONFHは独立した危険因子であった。累積危険率はONFH群で非ONFH群の方が有意に高かった。
結論
ONFhは血管障害と関連していることが明らかとなった。これは血管内皮障害の可能性が存在することが示唆された。ONFH群は相対的に若年であるが、これらの心血管イベントの発生について慎重に経過観察することが必要である。

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台湾からの報告

住民レベルのでコホートで検討したところONFH群は血管障害を引き起こすような疾患の可能性が高いことがわかったとのこと。
ONFHは原因不明の疾患であるが、このような疫学的な検討から病因に少しでも迫れるとよいですね

2018年4月5日木曜日

20180405 Factors associated with health-related quality of life, hip function, and health utility after operative management of femoral neck fractures

背景
本研究の第一の目的は大腿骨頚部骨折患者の健康関連QOLと関連する因子についての検討であり、第二の目的は精神的QOL、股関節機能と関連する因子の同定をおこなうことである。
対象と方法 FAITHという前向き研究に参加した患者。SF12、WOMAC、EQ5Dを取得。混合モデルにて解析を行った。
結果 高齢、女性、BMI高値、ASA3以上、骨折の転位が大きいものが術後のQOLとの関連として挙げられた。
結論 大腿骨頚部骨折患者において上記のような因子が術後のQOLとかかわっていた。


まあ、そうだよね。。。。。苦笑。

2018年4月3日火曜日

20180403JBJSAm Does Vancomycin Powder Decrease Surgical Site Infections in Growing Spine Surgery?: A Preliminary Study

脊椎手術でバンコマイシンパウダーを創部に散布すると術後の感染が減りましたとする報告。
この絶妙なP値がなんともいえません。笑
RCTはあるのかな?ぜひとも前向きでの検討をお願いしたいものです。

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背景 バンコマイシンパウダーは小児においてもその安全性が確認されている。しかしながら今まで早期発生の側湾手術の手術関連感染SSIを減らすかどうかは検討されていなかった。
方法 2010年から2016年。側弯症の患者を対象。後半でバンコマイシンパウダーを使うようになった。コントロール群と投与群に分けて検討。最初の設置時、延長手技時、最終的骨癒合時を含む。SSIの発生についての検討を行った。
結果 191例中36例の患者で基準を満たした。研究期間中36例中14例39%で感染を認めた。2例が多発感染であった。コントロール群が87例中12例の感染なのに対して、バンコマイシン投与群は104例中5例であった。有意にSSIが下がっていた(P=0.038)。10.9倍バンコマイシンは感染を減らすと言える
結論
早期発生の側弯症で延長ロッドを用いるような手術でもバンコマイシンパウダーは感染抑制に有用であった。