2011年2月28日月曜日

20110228 JBJS(Am) Osteoporos​is as a Risk Factorfor Distal Radial Fractures

橈骨遠位端骨折は大腿骨頚部骨折、脊椎骨折よりも人生の中で早いタイミングで起こり、橈骨遠位端骨折が骨粗しょう症の一つのサイン、として認識されている。この症例対照研究の目的は橈骨遠位端骨折を発症した男女において、骨密度が健常人と差があるのかということを説明しうる一つの要因となるかを検討することである。
方法
橈骨遠位端骨折の患者、664人の女性、85人の男性。554人の女性、54人の男性を対照群として設定した。これらの患者に骨密度(大腿骨頚部、脊椎)の検査を行い、日常生活についての質問紙法に答えてもらった。
結果
橈骨遠位端骨折を起こした患者で女性では34%、対照の10%で骨粗しょう症が認められた。男性では17%、コントロール群で13%であった。年齢による層別解析をすると、50-59歳では18%と5%、60-69歳では25%と7%であった。ロジスティック回帰分析をすると女性では橈骨遠位端骨折は骨粗しょう症と関連が認められた。これは男性でも同様の結論となった。
結論
橈骨遠位端骨折をきたした女性では骨粗しょう症であることが多かった。また男性でも女性でも骨粗しょう症は橈骨遠位端骨折を起こす危険因子であった。男女を問わず55歳以上で橈骨遠位端骨折を発症した場合には骨密度の計測を行うことが有用であるかもしれない。

<論評>
この研究のMethodを読むと、最初に救急外来にきたひとをregistrationしているというのがこの研究の素晴らしいところであると思いました。実際の臨床により近い状態であったと推測されます
しかし、半分くらいの患者さんがこの研究への参加を断っていることからよりリスクが高い人が残ったためにこういう結果になったのかもしれません。
FRAXでも骨折の既往というのは一つの独立した因子となっておりますのでそれを裏付ける結果となったのかなと感じました。
橈骨遠位端骨折の患者さんをみたら、FRAXに乗せてみるか、または骨密度検診をすすめるかいづれかを行う、というように今後対応していくこととしましょう。

2011年2月25日金曜日

ブログのBrush up のために

僕の尊敬する友人が”いかに論文を読むべきか”ということについて述べていたので一部改変して掲載します。
(resourseはclosedです)

「この論文をなぜ選んだのか」
「どういう対象患者に、どういう介入を行って、どういう結果を得たか(いわゆるPECOとかPICOとか)」
「結果の解釈は統計学的に妥当か」
「その結果は本邦の医療事情ではどのように適用するべきか」
「明日からの自分のプラクティスはその論文によって変わるか」

これからもいろいろな論文を読んでは掲載していきたいと考えていますが、上記のような点に論評で言及しながら読んでいけるよう精進いたします。

2011年2月23日水曜日

20110222 Up to date Overview of diabetic infections of the lower extremitie​s

糖尿病性壊疽で感染を起こしている菌はその時の状態によってさまざまである。
-表層の感染であれば好気性のグラム陽性球菌の可能性が高い。MRSAが存在する可能性も予想しておかなければならない。また創の状態においてはempiricな抗生剤の使用が必要となる
-潰瘍が深部に至っている場合には、上記に加えて緑膿菌などのグラム陰性菌も考慮する。
-創が局所の発赤が強かったり、また全身症状が出現している場合にはさらに嫌気性菌の関与も考える必要がある。

糖尿病性壊疽の診断は感染の成立もしくは発赤、熱感、腫脹、圧痛のうち少なくとも二つの臨床症状があることで可能である。ガス壊疽、虚血、組織の壊死は四肢切断が必要な状態であることを示唆する。

血液検査も診断に有用であり、治療効果を判定するのにESR、CRPはともに有効である。

次のような患者ではすでに骨髄炎を発症してしまっている可能性が高い
・骨が露出している、創から骨に触る
・創の大きさが2センチ×2センチ以上である
・潰瘍の深さが3㎜以上
・創ができてから2週間以上経過
・ESR(60)が70mm以上

これに加えてレントゲン写真の撮影、MRIの撮像を行う。それによって骨生検を行う部位を決定する。

治療は創処置、抗生剤投与、血糖と電解質のコントロールを行う。

膿瘍の形成、ガス壊疽、握雪感の存在、隣接関節を超えるような炎症の波及、壊死性筋膜炎があるような場合には緊急にデブリードマンを行う必要がある。

抗生剤の使用は広域スペクトラムのものをしっかりと使用する(MEPM+VCM など)

20110222 Up to date Diagnosis and evaluation of osteoporos​is in men

Summary and recommendation

骨粗しょう症は骨折が起こるまでは判明しない。疼痛、変形、機能障害、身長の低下といった臨床症状で現れてくる。

診断
WHOによれば大腿骨頚部のBMDを測定することで骨粗しょう症の診断を行う。Tスコアが-2.5以下であれば骨粗しょう症、-2.5から-1.0の間にあれば骨量減少状態にあると診断する。
男性においては定期的な骨密度検診の必要性はない(エビデンスレベル2C)
男性で骨密度を測定することが推奨されるのは、レントゲン写真上の骨量の低下、骨脆弱性骨折の既往。3センチ以上の身長低下。長期間にわたるステロイドの内服、男性ホルモンの低下状態、副甲状腺機能亢進症、ほかに図に示すような内科疾患を合併しているような場合である。






評価
男性で骨量低下状態を見つけたり、骨脆弱性骨折をみつけたときにはまず二次性の骨粗しょう症の除外診断を行うことが必要である。多くの二次性の骨粗しょう症の有無は身体所見と病歴から診断可能である。
加えて男性で骨粗しょう症を見つけた場合には血液検査を追加して行ったほうがよい。測定項目は血算、一般生化学、25-OH ビタミンD、テストステロン、尿中カルシウムの排泄量である。

2011年2月14日月曜日

20110214 Bone Meta-analysis risk of fractures with acid-suppressing medication

PPIやH2ブロッカーで骨折のリスクが高くなる、と言うことが言われてきている。PPIやH2ブロッカーの内服で骨折が多くなるか、と言う事をmeta-analysisで検討してみた。
方法
MedlineでPPI、H2ブロッカーと骨折で検索してみて、そのORを調べた。
結果
12の報告、1,521,062人についてレビューした。PPIでは有意に脊椎骨折のリスクが上昇した。(OR=1.50)。H2ブロッカーでは優位な差は認められなかった。大腿骨頚部骨折に関しても、PPIでは有意に内服群が高かったが(OR=1.23)、H2ブロッカー群では優位な差は認められなかった。骨折全体で見てみたところPPIではOR=1.2。H2ブロッカーではOR=1.08であった。脊椎骨折は別として、様々な要因によって制限が加わっていることは知っておかねばならない。PPIとH2ブロッカーについて調べた論文では股関節骨折においてOR=1.34とPPIのほうが高かった。
結論
PPIで骨折のリスクが高くなるという中程度のエビデンスがあることがわかった。H2ブロッカーでは骨折との関連は認められなかった。脊椎骨折ではその関係性ははっきりしていたものの、その他の骨折では様々な要因が関連しているためにいえなかった。臨床家はもし、骨折のリスクが高い患者ではPPIの代わりにH2ブロッカーを使ってもよいかもしれない。

<論評>
PPIの内服が骨粗鬆症と関連しているのでは、ということはなんとなく話題になったこともありますが、それを裏付けるmeta-analysisです。
プライマリー(診療所、家庭医)で患者さんを見ている先生方に考えていただければと思いました。

2011年2月9日水曜日

20110209 Up to date Toe fracture in adults

Summary and recommendation

足指の骨折は非常に一般的で、その治療も決まっていて、予後もすこぶる良好である

・軸圧、外転、圧挫が主要な受傷メカニズムである
・爪下血腫がよく合併する。爪の部分をよく観察し、健常側と爪を比較することで回旋変形の有無を確認できる。すべての骨折で神経血管障害がないかということと、開放骨折になっていないか、ということを確認する必要がある。
・足指の骨折ではレントゲン撮影が必要である。多くの骨折で一つ以上の足指骨の骨折を認める。系統だててレントゲン撮影をする必要があって、同時に一つ骨折を見つけたからと言ってそこで読影をやめてしまわないようにしないといけない。
・骨折が多数ある場合、開放骨折である場合。とくに足の親指とその他の指の両方とも損傷しているような場合には緊急のコンサルトが必要となる。コンサルトの前にはATLSに沿った評価を行ってからコンサルトするべきである。
・初期治療は骨折の部位、形態からさまざまである。多くは基本的な固定のみでこと足りる。治療の最終目標は転位のある骨折の場合には長さ、アライメント、回旋が正しく矯正されていることである。なので、整復を行う際には健常側とのレントゲン写真との比較が必要である。
・治癒までの期間は様々であるが、一般には4から6週程度である。フォローアップも骨折の形によってさまざまである。開放骨折だった場合には慎重な経過観察を必要とする。
・親指の不安定型の骨折、関節ないに至るような骨折ではつま先に力を入れないように指導する。スポーツへの復帰は相当時間がたってから行うようにする。


<論評>
Up to dateに書いてある内容はプライマリーでやって行くには必要十分ではないかと思います。

2011年2月7日月曜日

20110206 運動器疾患の臨床研究​​寺子屋セミナー そ​の2

P値と信頼区間

論理学の問題。命題とその対偶。対偶が真であれば命題も真。
仮説:対象者全体について薬の服用と腰痛の関係は無関係
この仮説の否定は:腰痛を患っている一部の集団において薬の服用によって腰痛の治癒の増加がある。

となることに注意。


仮説が棄却されれば検定は有意。P値が最初に定めた値が大きければ仮説を棄却しない。
この時言えることは”リスクの差が0であることを否定できなかった”。関係の有無すらいえない。

医学的に意味がある有意差と統計的な有意差の区別を常に意識する。

精度の指標 標準偏差と標準誤差
標準偏差はデータのばらつき、標準誤差は推定値のばらつき

95%信頼区間とは
同じ規模の研究を繰り返し実施指定、そのうち平均して95%は真の値を含むような区間。

信頼区間は0を含まなければ帰無仮説に対する検定結果は統計的に有意。

サンプルサイズの測定
αエラーとβエラー。αエラーは差がないのに差があるとするリスク、βエラーは差があるのにないと考えるリスク。
サンプルサイズはサンプルサイズ表を参照

効果の大きさは過去の論文を引くことで出てくる。


比較の質を高める
デザインと解析で交絡に対処。
              2値          連続変数          生存時間
分布の記述  分割表           平均、相関       Kaplan-Meier法

単純な群比較  χ2乗検定       T検定            LogRank検定

層別解析     Mantel-Haenszel法   分散分析        層別Logrank検定

回帰モデル    ロジスティック回帰   分散分析、重回帰分析   Cox回帰分析 


  
<お願い>
自分自身の覚書で書いてあります。
コメント,質問(参考資料) はTwitter : @ gamitake
までお願いします。

2011年2月6日日曜日

20110205 運動器疾患の臨床研究寺子屋セミナー

NPO法人iHOPEが主催する 運動器疾患領域臨床研究セミナーに参加してきました。

主にお話ししてくださった京都大学医療疫学教授の福原先生の講演が大変分かりやすく、感銘をうけました。

以下セミナーの覚書

普段診療でいだいている疑問(clinical research)を構造化することによって研究可能な疑問(research question:RQ)へと変化させる。
我が国の学会発表は症例報告と基礎研究が大変多い。そこで、今後必要となるであろう研究スタイルが分析観察研究である。

研究デザインはまず介入の有無で分かれる。その次に比較対象があるかどうかで症例報告と分析観察研究と分かれる。症例報告から一歩前に出てみることが重要。

”Garbage in, Garbage out” ゴミをいれてもゴミしか出てこない。 データをいじるだけではよい研究になりえない。

RQにするための七つのステップを順に追う。
RQの種類は4種類。1,病気や診療の実態を調べる。2,診断方法を評価する。3,要因とアウトカムの関係を調べる。4,治療/予防の効果をしらべる。
今後はプラクティスパターンからのアウトカムの測定を。

良いリサーチクエスチョンとは"FIRM2NESS"
RQを構造化することでスキのない抄録を作る。
PE(I)COを明らかにすること。
Pではat risk集団に注意。
Eは”三た論法”(使った、治った、効いた!)に決してならないように注意。

研究によって診療行動が変わるような研究が理想。


4種類のRQと研究デザイン
・治療の効果を診るには介入研究とコホート研究、病気の原因を知るにはコホート研究と症例対照研究を、診断の評価には分析的横断研究を、疾患の実態を知るには記述研究を用いる。

RCTを行うことで比較の質を確保。RCTだけでなく観察研究も有用である。
症例集積研究では要因とアウトカムの関連を結論できない。症例対照研究では要因とアウトカムの関連を結論可能。ただしリスクは求められない。コホート研究は要因とアウトカムの関連を結論可能であり、リスクを求めることができる。


比較の質を落とす要因  バイアスと交絡
・交絡とは第三の因子が着目する効果に混ざり合い、真の効果を歪めて見せる減少。この時要因への影響が均等に掛かっていることが前提。
研究前後で交絡は調整可能。できるだけ考えられるだけの交絡は前もって上げる。層別で調整することで交絡は調整可能。最強の方法はランダム化。この他にはマッチングなど。
事前、事後共に調整可能。

バイアスは解析で調整できないので、事前のデザインが重要。

内的妥当性は交絡、バイアスがすくない。
臨床研究とは比較すること⇔関連性の有無を検討すること。


抄録のブラッシュアップセミナー
質疑応答で、この角度は脊椎外科医にとって重要というコメントがフロアから。しかし、患者さんにとって大事なのはQOL。QOLを改善するために有効な指標が何か、と言う事を整形外科医はもっと謙虚になって聞くべき、と感じた。


20110204JBJS(Am) Associations of Anatomical Measures from MRI with Radiographically Defined Knee Osteoarthritis Score, Pain, and Physical Functioning

抄録
背景
変形性膝関節症の診断には今までレントゲン写真が使われてきたが、MRIの普及によって骨、軟骨、軟部組織の状態についてもより鮮明に評価ができるようになった。今回の研究の目的はMRIで変形性膝関節症と診断した患者(中年女性)においてMRIの画像と様々な膝の機能評価表との関連、レントゲン写真との関連について調べることである。
方法
MRIで軟骨の欠損、骨浮腫、骨棘、軟骨下骨での骨嚢腫の形成、半月板、靭帯の損傷、水腫、滑膜炎について363人の中年女性、724膝について調べた。対象についてKellgren-Lawence のレントゲン評価、自己評価型の疼痛スコア、機能評価表を用いて関連を調べた。レントゲン写真などは1996年のものを再度使用し、2007年に再度評価を行った。
結果
中から高度の変形性膝関節症の患者の割合は11年前に3.7%であったものが26.7%に増加していた。軟骨全層にわたる欠損は内側が14.5%、外側が4.6%、膝蓋大腿関節が26.2%であった。滑膜炎は24.7%の症例で認められた。関節水腫は70%の症例で存在した。21.7%で半月板や靭帯の損傷が認められた。大きな骨棘が存在すること、シッカリとした滑膜炎の存在、半月板の変性断裂、脛骨側での全層にわたる軟骨の欠損があることが膝の痛みや歩行障害とより大きな関連があることがわかった。
結論
中年女性において軟骨欠損、半月板損傷、滑膜炎、骨棘の形成が膝の痛みや日常生活に大きな関連があることがわかった。

2011年2月3日木曜日

20110202 JBJS(Br) What are the radiological predictors of functional outcome following fractures of the distal radius?

抄録
撓骨遠位端骨折は整形外科医がもっともよく遭遇する骨折のうちの一つであるが、その術前術後のX線上での”許容される”指標については今までしっかりとしたコンセンサスが得られていなかった。これはX線上での整復位が多くの場合臨床成績に影響しているとされているので、X線上でのどの測定値が臨床成績の予測因子となりうるかを調べた。結果、高い機能予後をえることが必要とされる患者においては関節面のズレは2mm以内、撓骨の長さが正常と比べて2mm以内の短縮に収まっていること、手根骨のアライメントが正常であること、が必要であることがわかった。治療の究極の目標は全く疼痛がなく可動域制限のない手関節を再建することである。

考察
”許容される”という言葉は衝突を生む言葉である。当然受傷機転は様々であるし、また治療方法も違っている。治療の究極の目標は疼痛のない機能障害のない手関節を再建することであるが、日常生活で常に手関節を使うような患者であればその要求されるところは高くなるであろうし、また逆に虚弱高齢者であれば多少の変形治癒も許容される。 Grewalらは216人の関節外骨折の患者をフォローしてdorsal tilt が10度以上、radial inclinationが15度以下、ulnar variantが3mm以上の場合にはその変形は許容されない。と定義している。患者は年齢で層別化された。X線上での変形の残存によって手関節昨日の低下がみとめられたが、そのインパクトは年令と共に減少した。
関節面の不適合性は将来的なOAの発生リスクに関連している。しかし不適合性では機能に影響を及ぼさないということも言われている。それゆえに高い機能予後を必要とする患者においては2mmの関節面のズレまでが許容されるものと考えられる。
撓骨の短縮、またはulnar varianceの存在はもっとも機能予後に影響を及ぼすと言う事でコンセンサスが得られている。このような変形が残存すると手関節の疼痛や、握力の低下が生じる。撓骨の長さを保つことがまずもっとも重要である。正常から2mm以内の変形に収めるべきである。
dorsal tiltが及ぼす影響については撓骨の短縮よりも小さいのでは、と考えられている。手根骨のアライメントが正しい位置にあることが重要であるので、そのことが同時にdorsal tiltが重要であるということを示唆する。しかし、まず重要なのは手根骨のアライメントであり、その次にdorsal tiltとなると考えられる。手根骨の配列以上があって、dorsal tiltが正中を超えているようであれば処置したほうが良い。手根骨の位置が正しく配列していればdorsal tiltは許容されることがある。
最近の研究では尺骨茎状突起骨折の処置を加えることは不要であると言う事になってきている。(撓骨の安定は最低条件。)



<論評>
最近高齢者のとう骨遠位端骨折をみることがおおく、また皆さん手術を嫌がるので、変形が残存することが多かったのが苦になっていました。ただ、変形していても皆さんあまり症状が無いのも特徴かなと感じました。
高齢であればある程度まで許容されるのかなと思って読んだのがこの論文です。
これからの高齢化社会、”ずれた骨折→すぐ手術”ではなく、その患者さんの状況をよく勘案してその適応を考えるべきかなと思います。

20110202 JBJS(Am) Earky effect of resident work-hour restrictions on patient safety: A systematic review and plea for improved studies

abstract
背景
研修医の労働が週80時間に制限されてから、労働時間を削減することについてのさまざまな議論が行われてきた。労働時間を制限することの目的は長時間の労働をしない事で、医療ミスを予防し、また患者に対しておこる有害事象を防いだり、死亡率を下げたりすることができるのではないか、ということで始まった。しかしながら現在のところ労働時間の制限をおこなうことが医学上、または特に整形外科にかぎっても助けになったかどうかということは明らかにされていない。今回のsystematic reviewは労働時間を制限することが患者の死亡率、医療事故の防止、合併症の減少につながっているかということを検証することである。
方法
患者中心のアウトカムの改善や、医療者のミス、死亡率や合併症の発生について検討した報告をもとにsystematic reviewを行った。
結果
労働時間の制限前と後で患者の死亡率を比べると、そのオッズ比は1.12倍で制限前の方が高かった。この差には様々な要素が関わっている。このデータ上では術前後の合併症についてのデータが規制前と後で混在してしまっている。また、直接の医療事故の報告はほとんどなかった。臨床研修施設と比べてみると臨床研修施設の方が規制前後での死亡率の変化は小さかった。
考察
労働時間の制限を行うことで患者の死亡率については減少することが分かった。臨床研修施設での死亡率の変化は有意ではなかった。この理由は不明である。患者死亡率についての報告もなかった。結局労働時間の制限をすることがその目的を達成しているかは不明である。量依存で死亡率が変化するかを見なければならないし、さらに労働時間を制限することが有効であるかを検討しなければならない。

<論評>
アメリカでは研修医の就業時間制限(週80時間)が制度化され、かの国でもその是非が問われているようです。
整形外科領域では以前時間外手術で細かな合併症が増える、という報告がありました。
死亡率をアウトカムとすると整形外科疾患そのものが生き死にに直結しにくいと言うところもあり差が出なかったのかなあと感じています。
大きな病院で深夜遅く働いていらっしゃる先生もこういったデータを出して、国内で報告し続けることが重要でないかと思います。