2013年1月27日日曜日

20130127 JBJS Acetabular components in THA : Is there evidence that cementless cementless fixation is better?

この10年間セメントレスカップはTHAにおいて主要な位置を占めるに至りました。北アメリカでは多くのTHAがセメントレスでおおなわれています。このレビュー、メタアナライシスはセメントとセメントレスカップの再置換術について比較することを目的としました。

【方法】
PnbMedで3488の文献を検索。81文献が条件に合致した。英語論文のみを対象とし、最低10年間の経過観察が行われているもの。そのインプラントの生存率について調査した。
45文献がセメントレスカップの生存についての報告で、29文献がセメントカップの生存についての報告であった。7文献でセメントカップとセメントレスカップの比較を行なっていた。これらの文献を用いてメタアナライシスを行った。

【結果】
メタアナライシスの結果、どちらのカップが有効であるかという結論は明らかにならなかった。年齢、性別を調整した累積生存率の結果ではセメントカップがオッズ比1.6で有意に長持ちした。

【結論】
現在までの報告ではセメントレスカップを選択するだけのエビデンスは得られなかった。セメントカップのゆるみがセメントレスカップばかりを使っている北アメリカの術者の報告でばかり発症していることを考えればセメントレスカップよりもセメントカップのほうがより再現性を持って安定した固定が得られるのかもしれない。

<論評>
ハイクロスリンクポリエチレンの出現、大径骨頭の出現などこの10年間でTHAを取り巻く環境は大きく変わりました。
セメントカップ、セメントレスカップのいずれがよいか。というのはこの数年の僕自身の疑問でありました。
その疑問に応える一つの回答がこのメタアナライシスだと思います。

ただし、セメントレスがよいのかセメントがよいのか。という報告を読むときに小生がきにしているポイントがあります。

それは『報告している人間の国籍』です。ハイ。
国籍によって結論は以下のように変わります。
『アメリカの術者はセメントレスカップ押し、セメントを押している論文を書くのはイギリス人かヨーロッパの人々』

ちなみに今回のこの報告はイギリスからの報告でした。どおりで口が悪い。笑

日本人に多い臼蓋形成不全をともなった二次性の変形性股関節症に対して骨性の支持性を回復しながら原臼設置を行うのにはセメントカップが適していると思います。
ただ、最近のハイクロスリンク+αのインサートがセメントカップの有用性を超えることができるのか?ということは注視しております。

まあ、自分で入れる機種を選択できるほどまず自分がエラくならないといけません。笑



2013年1月3日木曜日

20130103 JBJS Risk factor for nonunion in Pt w/ intracapsular femoral neck fracture treated w/ three cannulated screws placed in either a triangle or an inverted triangle configuration


Triangle...

小生、大腿骨頚部骨折の関節内骨折観血的手術はCannulated cancellous screw (CCS)で行なっております。
 研修先の病院では『逆三角形になるように配置しろ』と教わりそのとおりに打って参りましたが、転勤した現在の病院では『三角形のほうが安定するんじゃね?』と言われ、そんなものかと思い三角形になるように打っております。
いっとき見学におじゃましていた病院では『2本で十分』と聞いて( ´_ゝ`)フーンと感心しておりました。
まあ、どっちでもええやんと思っておりましたらこんな論文を見つけましたのでご紹介。
台湾からの報告です。
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背景
大腿骨頚部骨折ではしばしば偽関節になる症例を経験する。本研究の目的は 三角形にスクリューを配置することと、逆三角形にスクリューを配置することで骨折部の安定性に差が出るかということを調べることである。
方法
2000年から2009年までの間で、大腿骨頚部骨折を3本のCCSで三角形型(近位に1本、遠位に2本のCCS)で固定したものと、逆三角形形(近位に2本、遠位に1本のCCS)で固定した。
結果
202例の手術が行われていた。76例が男性、126例が女性。平均年齢は64.53歳。(19歳から93歳まで)。153例で骨癒合が得られたものの、44例で偽関節となった。骨癒合群と偽関節群との間に年齢、性別、骨折した側、骨折の角度、骨密度に有意な差はなかった。骨折型、三角形か逆三角形か、整復の状態、スクリューが軟骨下骨にかかっているかが偽関節群と骨癒合群で違っていた。そのオッズ比は転位のある骨折で2.93、整復位が得られているかどうかで18.92、三角形型固定は逆三角形固定にくらべ2.92偽関節になり安かった。
結論
三角形に固定すること、転位のある骨折、十分な整復位が確保できないことが大腿骨頚部骨折の内固定を行った時の偽関節因子となりうる。

考察
本研究で三角形型に固定することで偽関節となる可能性が高くなることがわかった。この他には転位型の骨折、整復不十分が偽関節の危険因子として挙げられた。
転位型の骨折、整復不十分なことは今までも偽関節の危険因子として挙げられてきた。
他の研究では高齢、女性であること、骨折の角度が50°以上であることなどが危険因子として挙げられてきた。
本研究の特記すべきポイントは三角形型に固定するか、逆三角形型に固定するかで偽関節になった症例数に違いが出た、という点である。バイオメカニクスの観点からは多くの識者は逆三角形型に固定するように勧めている。ただし、今までこの固定の形についての臨床研究は無い。
三角形に固定すると偽関節が増えることについての説明として筆者らは以下の2点を考えた。まず一つ目として遠位の2本のスクリューがWardの三角を通過してしまっていることによるメカニカルな脆弱性を生じること。2つ目として他のバイオメカニカルな研究によっても報告されているように大腿骨頭の中央から上方にかけての部位が引張力に対して最も強く働く。このような理由から逆三角形のほうが三角形に固定したものよりも引張力に強いのでは無いだろうか。
スクリュー先端と軟骨下骨との距離については、転子部骨折ではTADが用いられているが、頚部骨折では一定した方法がない。
本研究の限界としては、なぜ担当した術者が三角形で固定したのか、逆三角形で固定したのかわからないこと。スクリュー間の距離を3Dでないので把握できないこと骨密度の評価が不十分であることなどが挙げられる。

<論評>
スタディデザインが微妙だなあと思いましたが、結果は面白いですね。
この次はRCTで三角形で固定するか逆三角形で固定する、という方法で追試すると本当に固定方法が偽関節に関わってくるのかどうかがわかると思います。
何故ならば術者がなぜその固定型を選んだかがこの研究ではわかりません。するとひょっとしたら転位が大きかったら三角形、小さかったら逆三角形と使い分けている術者がいたかもしれませんが、このデザインではその可能性を排除し切ることはできませんから。
ただ、逆三角形に入れたほうが幾何学的には理にかなっているんじゃないかなあというのがいろいろな固定方法を試した人間の感想です。
ハンソンピンはわかんないす。



2013年1月2日水曜日

20130101 JBJS(Am) Lower tourniquiet cuff pressure reduce postoperative wound complication after total knee arthroplasty RCT of 164 Pt

あけましておめでとうございます。
このブログも4年目に凸乳しました。笑

ブログを書き始めた当初は田舎で、誰も教えてくれない中で勉強を続けていくひとつの手段として捉えていました。

そして、ブログを書いてゆくにつれて、医者の経験則によっていることの多い整形外科分野の診療を少しでもエビデンスに基づいたものにできないか、なんてことも考えるようになりました。
少しでも適切な、より妥当な治療を提供したいと考えながらやっておりますが、現実の社会にすべて適用することの難しさも痛感しております。

このブログは建築で言えば基礎になる部分です。残念ながら僕自身の積み重ねてきた基礎は、今現在まだ大きなビルを建てるだけの基礎には至っていないというのがブログ主の実感です。

ただ、2009年に書いた内容をみると少しづつ強化されてきたな、というのも実感としてあります。

少しずつ勉強を積み重ね基礎を強化し、情報を発信していくことで大きなビルを建てるきっかけを見つけることができたら幸せだろうなと考えながら今年一年も少しずつすすめていきたいと思います。

さて、今年一つ目の論文です。

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背景
下肢の動脈圧を測定し、より低い圧でターニケットをかけれれば術後の疼痛や合併症を減らせるのではないかと考えこの研究は行われた。主たる目的は”下肢阻血圧法”をもちいればそれを用いたい患者に比べて術後の疼痛を減らせるかどうかを調べることであり、第二の目的としては無血野の状態、関節可動域、術後合併症の存在が減らせるかをしらべるものである。

方法
TKA予定の164人の患者を無作為に割りつけた。コントロール群としては古典的に行われているように術者が収縮期血圧をもとに適当に駆血圧を決定する方法をとった。LOP(the limb-occlusion-pressure)群は実際に下肢の血流が途絶する圧を測定し、その圧で駆血を行った。
主たるアウトカムとしては術後の疼痛、第二のアウトカムとしては無血野の状態、膝の運動、術後の創治癒に関する合併症について退院時、術後2ヶ月の時点で測定した。

結果
コントロール群よりもLOP群の方が有意に駆血圧が低かった。術後の疼痛、合併症について二群間で有意な差を示すことはできなかった。
しかしながら、退院時に創傷治癒の合併症をきたした47例中40例、術後2ヶ月の段階で創のトラブルが合った16例中14例で駆血圧が225mmHg以上であった。

結論
LOPは無血野を損なうことな駆血を得る手段として有用である。2群間に術後疼痛、創治癒に有意差をみとめなかった。ただ、駆血圧が225mmHgの患者群では術後の感染、創治癒合併症が少なかった。

<論評>
ターニケットの圧も研究のネタになるのですね。。。普段何も考えずに250くらいに設定して手術しておりました。。。
こうしたちょっとした事に普段の研究ネタは転がっているのかもしれません。