2009年7月6日月曜日

骨折治療学会に参加して

7/3-7/4にパシフィコ横浜で行われた骨折治療学会に参加してまいりました。
Dr.Jupiterによる橈骨遠位端骨折の治療。ロッキングプレート、掌側展開という流れの反省期。CTMPRにて骨折型を評価。橈骨のもっとも尺側の骨片をしっかり整復固定することが重要。(月状骨窩の骨片がポイントのこと)。3-コラムセオリー。ウオーターシェッドにはプレートをかけないように注意。背側も積極的に開けて行きましょうという話。今後の課題として靱帯損傷、TFCC損傷などの合併の評価。結局橈骨遠位端骨折はレントゲン写真と臨床評価との間に差が出がち。軟部損傷の評価はひとつ必要かもしれない。膝のセッション。脛骨プラトー骨折。ロッキングプレートが全盛。多種多様のプレートが出ている。しかしどの発表もよかったよかったと自己満足な発表ばかり。やはり発表は失敗例をふくめそこからどう学び、術者が下手だったという結論にならないようにいかに工夫するかが重要である。ポスターセッション 橈骨遠位端骨折。平田先生から掌側プレートはやはり疼痛が残存しやすいと。今後さらなる研究が待たれる。骨折型とプレートの当て方などは大きく変わってくるかもしれないプレートばかりでなくピンニング、創外固定などにも目を向けていかないといけない。Strykerのsmartの破損例が3例報告。他のロッキングに比べ薄いことが問題。使用しないほうがよい。ドイツの外傷治療のはなし。外傷センターはドイツ全土で5つしかない。年間1万件の手術!!。145人の医師で成り立っているセンター。年間1200回ヘリコプターが飛ぶ。FAST、XPは時代遅れとのたまう。来たらprimaryで初療室となりのCTで全身MPRの造影CT。これで骨折も血管損傷も見つけると。LANCET2009、PGVとして発表。即時髄内釘は行わず。5-11日目が一番落ち着いていると。アメリカVSヨーロッパといったところ。私の発表。着眼点がよいとおほめの言葉をいただいた。骨折全体についての評価をするとよいであろう。今度は外傷全体について評価をおこない日整会などにチャレンジしたい。骨粗鬆性椎体骨折。魔法の治療と紹介された椎体骨折に対するセメント充填法。適応はTh4-L5、転移性骨腫瘍も適応。海外で13万例、日本では2000例。90%以上で施行後すぐ痛みが取れる。しかしながら6ヶ月後の症状では保存療法群と有意差なし。41%でセメントが椎体外に漏出。200例中1例で緊急手術。一つの方法であろうが緊急手術に対応できない病院ではやるべきではない。21%に隣接椎体の骨折を合併する。痛みが取れる病態は不明。セメント周囲は骨癒合が起こらない。しかしなぜか椎体の後壁が癒合してくると。1回3泊4日で20万円。まあ、少なくともすごくいいわけではない。ただ手軽さ、症状の取れる速さから今後日本で先進医療から保健医療に変わる可能性はあるだろう。モーニングレクチャー。股関節の解剖。単純レントゲン写真だけでも随分のことがわかるということはひとつの発見。一度ここの部分はまとめてもよいであろう。後壁骨折は腹臥位での手術のほうがやりやすい。簡単な症例から一度チャレンジを。整復は損傷していない部分を基準に考える。整復の順序も考えたうえで手術に臨む必要がある。DVTは20-60%。骨盤内血栓の存在に注意。踵骨骨折。DepressionタイプはWesthesでは難しい。Tongueタイプは比較的容易。場合によっては小切開にて整復。リスフラン関節。第2中足骨を基準にアライメントを決定。リスフラン関節の脱臼骨折ではⅠ-3趾まではスクリュー固定。4-5はK-wireでOK。
大腿骨近位部骨折の話転子部骨折。内側陥入型、外側陥入型と分ける。内側陥入型のほうが整復位がとりにくいので工夫が必要。骨粗しょう症と転倒予防の話ビスフォスホネートは有用。6年くらいおっていくと骨密度の増加効果あり。巷で言われているような顎骨壊死は極めてまれ。SSRIはBMDを下げるように働くので注意が必要。SSRI服用群は転倒も多くなるとの事。イギリスのRCT。BMDは測定するだけ保険医療の無駄遣いであると。図るのなら尿中NTxを測定してその変化を追うべき。転倒予防に対する運動療法の試み。太極拳、しこふみ、DF、などなどすべての研究でBMDの増加はない。(減少しないよりはまし、といった程度。)ビスフォスの有用性に劣る。転倒回数は時によって増加することも。別のアプローチが必要か。ヒッププロテクター。RCTでは有効性?ただしやせていて今まで転倒歴のある施設入所者と対象を限定すると骨折率が1/3まで減少。骨折予防を大腿骨頚部骨折にエンドポイントをおくとほとんど結果が出ない。転倒回数、脊椎骨折に限っておっていくと結果が出やすいか。全体にやや低調。新しいインプラント、手術方法が出てくるともう少し盛り上がるかも。

2009年7月2日木曜日

JBJS 2009 complication rates following open reduction and internal fixation of ankle fractures

足関節骨折に対する手術療法の合併症の割合Abstract背景 足関節の骨折はよく起こる骨折のうちの1つである。この研究の目的は手術を行った患者の合併症の割合を調査することである。方法 カリフォルニアの退院データベースを利用した。1995-2005年までに57183人の足関節骨折に対し治療を行った患者を対象にした。退院後90日以内の合併症を短期合併症とした。足関節固定術と足関節形成術をおこなった患者を中期合併症とした。ロジスティック解析を用い様々な要因を調査した結果 短期合併症が起こる確率は低かった。肺塞栓が0.34%、死亡率が1.07%、創部感染が1.44%、切断にいたったものが0.16%であった。再手術は0.84%の症例に行われていた。中期合併症が起こる確率もまた低かった。5年間で0.96%の患者に対して足関節固定術または足関節形成術が行われていた。開放骨折であること、年齢、合併症の存在は短期合併症との強い関連が認められた。DM、血管病変の合併は特に強い因子であった。中期合併症のうち、三顆骨折と開放骨折は足関節固定にいたることが多かった。経験症例数が少ない病院であっても合併症の発生率とは関係がなかった。結語 開放骨折であることとDM、血管病変の存在は合併症の発生と強い関連があった。また骨折型は中期の合併症との関連が認められた。病院の大きさは合併症の発生と関係がなかった。図1 各骨折型の症例数図2 患者背景図3 骨折型、合併症、病院の種類による短期合併症の発生率図4 ハザードratioによる短期合併症の発生との関連開放骨折かどうかということと強く関連している。骨折型との関連はほとんどない。切断となったり感染したりといった患者はDMの患者に多い(3.86%、7.71%)。血管病変を有するものでも同様。(3.44%、6.87%)。高齢者のほうが感染、死亡率が高い(2.37%、4.91%)。病院の規模は関係がなかった。図5 中期合併症三顆骨折であると再手術率が上がる。開放骨折も同様。DMの有無は合併症が起こるかどうかの重要な要素である。手術はどんな規模の病院で行っても中期成績も変わらない考察合併症はおこりにくい。しかしDM、血管病変をもっていると感染、切断を含めた重篤な合併症を発症しやすい。病院の規模は関係がなかった。足関節骨折において術後合併症が少ないことはよく知られている。高齢者でも少ないということをKOVALらが明らかにしているがこの研究によってどんな年代でも合併症が起こりにくいということが示された。塞栓は起こりにくい。塞栓にたいする予防策がとられたかどうかは不明。0.34%であることがこの研究でわかった。致死例の報告は時になされているが言うほどではない。VTEの調査を行った研究があるが遠位の塞栓症が起こるのは20%であったが、近位塞栓はヘパリン群で3%、プラセボ群で4%であった。DVTは高率に起こるがほとんどが無症候性で予防薬は効果がなかった。カリフォルニアでどれくらいの患者が塞栓の予防療法を受けているかはわからないが、80%以上の術者が行っていないという報告がある。起こるリスクの高い患者だけが予防薬投与を受けている可能性がある。リスクが高い群には注意を払っておいたほうがよい。この研究ではDMがあったり血管病変を有する群では明らかに短期合併症を起こしやすい。感染は7.71%対1.44%。切断に至る可能性は3.86%、(健常群は0.16%)。健常群で切断にいたる例は本当にまれである。B/K切断が行われている。DMはとにかくいかん。そのような合併症がある患者では適切な対応が必要となる。中期合併症についてははっきりとしない。0.96%が再手術を受けた。開放骨折か骨折型が粉砕しているものが予後不良であった。前もって患者に話しておくことが重要である。病院の規模では変わらなかった。THA,TKAでは普段行っていない病院で行うと合併症が多くなることが知られている。どこでも同じようなことが行われているからだろう。この研究は退院データベースに基づいており、予後についてはまったく不明である。また長期予後についても述べること賀でいない。どのように外来で扱われていたかもわからない。タバコ、アルコールについても調査していない。