2019年11月17日日曜日

20191117 NEJM Total Hip Arthroplasty or Hemiarthroplasty for Hip Fracture

背景
世界的には,股関節骨折は成人の障害原因の上位10位に入っている。大腿骨頚部骨折に対しての人工股関節全置換術(THA)は、人工骨頭挿入術(BHP)と比較しての成績はまだ十分にわかっていない。

方法
50歳以上で術前独立歩行可能であった大腿骨頸部置換骨折を有する患者1495人を,THAまたはBHPのいずれかを受けるようにランダムに割り付けられた。試験は10カ国の80施設で実施された。プライマリーエンドポイントは24か月以内の再置換術。二次エンドポイントは死亡,重篤な有害事象,股関節関連合併症,健康関連QOLとした。

結果
プライマリーエンドポイントはTHA群718例中57例(7.9%),BHP群723例中60例(8.3%)で差を認めなかった。(ハザード比,0.95,95%信頼区間[CI]、0.64~1.4;P=0.79)。股関節の不安定性または脱臼は,THAのうち34人の患者(4.7%)およびBHPに割り当てられた17人の患者(2.4%)で発生した(ハザード比,2.0#ハザード比#;99% CI、0.97~4.09)。機能は,Western Ontario and McMaster Universities Osteoarthritis Index全スコア,疼痛スコア,スティフネススコアおよび機能スコアで測定したところ,THAの方がBHPよりもやや良好であった。死亡率は両治療群で同様であった(THA群14.3%およびBHP群13.1%、P=0.48)。重篤な有害事象はTHA群300例(41.8%)およびBHP群265例(36.7%)に認められた。

結論
単独で歩行可能な大腿骨頸部置換骨折患者のうち、二次的処置の発生率は、人工股関節全置換術を受けるようにランダムに割り付けられた患者と人工股関節全置換術を受けるように割り付けられた患者との間で有意差は認められず、人工股関節全置換術は、24ヵ月間にわたる機能および生活の質において人工股関節全置換術よりも臨床的に重要ではない改善をもたらした。

<論評>
大腿骨頸部骨折に対するTHAとBHPの国際多施設前向き無作為割付試験です。エビデンスの強さで、例えていうなら北斗の拳にでてくるラオウのようなものでしょうか。天上天下唯我独尊みたいな。
結論は地味ですけどね。臨床の実感にも合致するというか。長期での成績比較できると良いですかね。<

2019年11月3日日曜日

20191103 CORR What Is the Effect of Vitamin C on Finger Stiffness After Distal Radius Fracture? A Double-blind, Placebo-controlled Randomized Trial

背景:ビタミンC投与は橈骨遠位端骨折後の不均衡な疼痛と硬直を減少できることが示唆されている。
;しかし、この仮説を検証したランダム化試験の一貫した結果は得られていない。
本研究の目的は、(1) 橈骨遠位端骨折後のビタミンC投与は,良好なROM,患者報告上肢機能,および疼痛スコアと関連しているか?
(2) 骨折後の指の拘縮および上肢機能の悪化と関連する因子は何か?を明らかにすることである
方法:二重盲検,ランダム化,プラセボ対照,非交差試験である。
2014年8月から2017年7月の間に,連続204例の患者にアプローチし,そのうち195例が適切,134例研究に参加した。
参加者は橈骨遠位端骨折後2週間以内にビタミンC500mgの1日1回投与(67名の参加者)またはプラセボ(67名の参加者)を無作為に投与された。
全ての患者は外科医の判断で通常のケアを受けた。参加者の平均年齢は49±17歳,99人の患者(74%)は女性,83人(62%)は非手術治療を受けた。
主要転帰は骨折6週間後の指尖手掌間距離。二次転帰は,自動でのROM,上肢特異的制限および疼痛強度であった。

いずれの解析もintention-to-treatを行った。
介入群の参加者10人およびプラセボ群のうち5人が追跡不能となった。
これらの欠損データは多重代入法を行った。その後,線形回帰分析を行った。

結果:ビタミンCの投与は,6週間、6ヶ月でROM、機能、痛みのスコアとの関連を認めなかった。
年齢が6週での指の拘縮と関連し、手術治療が最も拘縮と関連した。
pain interferenceが機能障害と関連した。
結論:ビタミンCは橈骨遠位端骨折後の回復を促進しない。
侵害受容(疼痛干渉)には,より大きな注意を払う必要がある


(論評)
10数年まえから橈骨遠位端骨折にはビタミンCが効くみたいな話はありまして。

https://orthotraumaresidency.blogspot.com/2011/04/20110428-jbjs-can-vitamin-c-prevent.html

2011年にこのブログでも取り上げていました。

本研究ではデザイン、主要評価項目をしっかりと定めておりより信頼できる結果なのかもしれません。

pain interferenceという疼痛の新しい概念がまた出てきましたね。これもまた勉強しないと。

2019年10月28日月曜日

20191028 BJJ Periprosthetic atypical femoral fractures exist and are associated with duration of bisphosphonate therapy

目的
現在,人工関節周囲骨折は,非定型大腿骨骨折(AFF)のAmerican Society for Bone and Mineral Research(ASBMR)の定義から除外されている。
本研究の目的は,他の点ではAFFsの基準を満たす一連の人工関節周囲大腿骨骨折(PFF)について報告することである。
二次目的は,人工関節周囲の非定型大腿骨骨折(PAFF)の予測因子を同定し,治療の合併症を定量化することである。

患者と方法
本研究は,2007年から2017年の間に大腿骨近位部骨折を経験した連続患者を対象とした後向き症例対照研究。
二人の観察者による観察。ビスフォスフォネート療法を受けている患者のPAFF症例16例(平均年齢73.9歳(44から88)、
女性患者14例)と典型的な人工関節周囲骨折17例を対照として同定した(60~86人の女性患者13人)。
PAFFの予測因子を同定するために単変量および多変量解析を行い,治療および合併症を記録した。

結果
PAFF分類に対する観察者間の一致は優れていた(kappa=0.944;p<0 .001="" p="">対照と比較した単変量解析では,PAFF患者は,より高いBMI(28.6 kg/m2(sd 8.9)vs 21.5 kg/m2(sd 3.3);p=0.009),
ビスホスホネート療法のより長い期間(中央値5.5年(IQR 3.2から10.6)vs 2.4年(IQR 1.0から6.4);p=0.04)を有し,
アレンドロネート(50%対94%;p=0.02)を使用している可能性が低く,二次性骨粗鬆症であった(19%対0%;p=0.049)。
ビスフォスフォネート療法の期間は多変量解析でPAFFの独立予測因子であった(R2=0.733;p=0.05)。
骨折治療にかんして,合併症率はPAFF(9/16、56%)が対照(5/17、29%;p=0.178)より高く,
PAFF後の合併症の相対リスクは1.71(95%信頼区間(CI)0.77~3.8),再手術の相対リスクは2.56(95% CI 1.3から5.2)であった。

まとめ
AFFは人工関節と関連して起こる。ビスフォスフォネート療法の長期投与はPAFFの独立予測因子である

<論評>
確かに人工関節周囲骨折で、非定型骨折のような症例は散見されます。今回の股関節学会でもいくつか症例報告があったような。
目の付け所のよい研究だと思いますが、果たしてその妥当性はどうなのよ。と思います。ちょっと中は読めていませんがステムとの関連(セメント、セメントレス。遠位固定型)など。
人工関節周囲骨折だから普通の非定型骨折よりは治療は難しいですわね。
あと、この非定型骨折が人工関節と関連して起こる。という結論がわかりません。
筆者がエジンバラのフェローということで忖度案件かもしれませんね。
もう少し精読します。

2019年10月27日日曜日

20191027 股関節学会に参加してきました

10月25日、26日と股関節学会に参加してきました。
人生初宮崎。個人的には宮崎の夜を全く体験できずに終わったことが悔いが残ります。年取ったかな。。。

学会参加していくつか気になったトピックスを。

・大腿骨頭壊死症。骨切り術の次のステップの治療。ランソプラゾール、骨髄移植とも決め手にはかけますが、侵襲が小さな治療は模索されなければなりません。まだまだこれから。
・臨床解剖と超音波診断の進歩を感じました。関節包と関節包筋、関節包靱帯の関係はまだ研究の余地があります。これと腸腰筋インピンジメントやFAIなどのいままで知られている病態との関連について調べてみるのは面白そうだなと感じました。
・股関節OAについて。ROADスタディからの報告が非常にインプレッシブでした。Iidaka先生の本物をみれたのが最大の収穫。キュートな先生でした。
・股関節OAの保存療法についての教育研修講演。山形大学高木先生、三重大学須藤先生。
須藤先生の『HipOAにエビデンスのある薬剤は存在しない』とぶったぎっているのが爽快でした。ただ、大学人としてはこの分野のエビデンスが提供できるように今後研究をすすめていかなければならないなと思いました。

個人的には全国の先生とお話できたことが最大の収穫です。自分が悩んでいた症例についてたくさんの有益なアドバイスが頂けました。ご相談にのってくださった先生方ありがとうございました。

さいごに
学会のときには必ず一冊は本を買って帰ることとしています。管理人が今回オススメするのはこの一冊


https://www.amazon.co.jp/%E6%95%B4%E5%BD%A2%E5%A4%96%E7%A7%91%E6%84%9F%E6%9F%93%E5%AF%BE%E7%AD%96%E3%81%AB%E3%81%8A%E3%81%91%E3%82%8B%E5%9B%BD%E9%9A%9B%E3%82%B3%E3%83%B3%E3%82%BB%E3%83%B3%E3%82%B5%E3%82%B9%E2%88%92%E4%BA%BA%E5%B7%A5%E9%96%A2%E7%AF%80%E5%91%A8%E5%9B%B2%E6%84%9F%E6%9F%93%E3%82%92%E5%90%AB%E3%82%80%E7%AD%8B%E9%AA%A8%E6%A0%BC%E7%B3%BB%E6%84%9F%E6%9F%93%E5%85%A8%E8%88%AC-%E7%94%B0%E4%B8%AD-%E5%BA%B7%E4%BB%81/dp/4758318727/ref=as_li_ss_tl?__mk_ja_JP=%E3%82%AB%E3%82%BF%E3%82%AB%E3%83%8A&keywords=%E4%BA%BA%E5%B7%A5%E9%96%A2%E7%AF%80+%E6%84%9F%E6%9F%93&qid=1572934459&sr=8-2&linkCode=ll1&tag=gamitake1919-22&linkId=dd3f8af89db4afd1c899800235ac2723&language=ja_JP


です。

整形外科感染症について全領域の予防診断治療のエビデンスが網羅されています。
それなのになんとお値段3000円(税別)!!!
この本を買わない理由はないでしょう。
辞書代わりにおいておくことをおすすめします。

ではでは。


2019年10月20日日曜日

20191020 Ai 翻訳でいいんじゃね?

気になる英語論文を紹介する本ブログです。

ちなみに本日投稿した記事はグーグル翻訳と、NTTが提供する『みらい翻訳』を用いて提供しました。

みらい翻訳 お試し翻訳
https://miraitranslate.com/trial/

どうですか?それほど違和感なく読めているのではないでしょうか。

抄読会まであと数時間しかないけどまだ読めていないそこのあなた。
グーグルにすべてを託して見ませんか?笑

(その結果上司に怒られるなどの不都合が生じても本ブログの管理人は一切の責任をおいません。)

20191020 BJJ Is serial radiological evaluation of one-part proximal humeral fractures necessary?

背景

目的
上腕骨近位部骨折で何度も放射線学的評価が必要かどうかを決定するために,これらの骨折を受傷した患者における骨折部の転位の予測因子を記述した。

患者と方法
2014年1月から2016年4月の間に,単独骨折で非手術的に治療した上腕骨近位部骨折の全患者を前向きに追跡した。臨床的および放射線学的評価は,2,6,12および52週未満で行った。骨折形態,骨質,および粉砕を最初のX線写真で測定した。骨折治癒,転位および治療変化を追跡期間中に記録した。

結果
100名の患者(女性59人、男性41人;平均年齢57歳)において,91名の骨折(91%)は安定していた。二次的転位を有する患者9人中5人(55%)では,手術が推奨された。粉砕は23人の患者(23%)に存在し、粉砕していることは,転位(p<0 .001="" 0.8="" 101="" p="" span="" uroqol="">

まとめ
X線再評価は粉砕を呈する患者でのみ必要であり,上腕骨近位部骨折患者の77%では不要である。上腕骨近位部骨折の非手術的治療は,手術が必要となることが少なく,高い癒合率および良好な臨床結果を伴う治療の中心である。



<論評>
最近外来でしか上腕骨近位端骨折をみたことがありません。すいません。
手術治療の成績は良いものもあれば悪いものもあるというように聞きかじっております。すいません。

実感として単純骨折ならほっておいてもよい。というものがあり、この研究の結果はその結果を支持するものと言えるのではないでしょうか
昔あったNeer分類とかは、再定義されているのでしょうか。



2019年8月26日月曜日

20190825 CORR Do Trabecular Metal Acetabular Components Reduce the Risk of Rerevision After Revision THA Performed for Periprosthetic Joint Infection? A Study Using the NJR Data Set

抄録
感染性人工股関節に対する再置換術144例において、Trabecular metal (TM)寛骨臼コンポーネントの使用が術後の再感染による再々置換を減少させたとする単施設からの報告がある。この研究からTM寛骨臼コンポーネントの使用が再々置換において有用な可能性が示唆された。イングランドの報告では初回THAにおけるTM寛骨臼コンポーネントの使用が感染による再置換を低下させたとする一方、スウェーデンとオーストラリアのレジストリーではすべての再々置換では差を認めなかったとする報告をしている。以上からTM寛骨臼コンポーネントは感染性人工関節の再置換では有用かもしれないと考えられた。
そこで、今回の研究の目的はTM寛骨臼コンポーネントはTMでない寛骨臼コンポーネントと比較して感染性人工股関節のあらゆる原因での再置換率を低下させるか、また再置換術後の感染率を低下させるかどうかの検討を行った。
方法:後ろ向き観察研究。イングランドの国家レジストリーを用いて行われた研究。11,988例の再置換術のうち、感染性人工股関節に行われた再置換術のうち、同一メーカーのTM寛骨臼コンポーネントと非TM寛骨臼コンポーネントで手術が行われた794例についての検討を行った。TM寛骨臼コンポーネントが541例。非TM寛骨臼コンポーネントが253例であった。患者背景を比較。再々置換をエンドポイントとした。プロペンシティマッチングを行い生存率を比較。
結果:TM寛骨臼コンポーネントと非寛骨臼コンポーネントの間での5年間でのインプラント生存率は96.3%と94.4%と差を認めなかった。また感染率においても差を認めなかっった。
結論:本研究からはTM寛骨臼コンポーネントが感染性人工関節での再々置換率、感染率の低下に有用であるとの結論は得られなかった。TM寛骨臼コンポーネントが感染防止に有用であるとは言えない。

背景
人工関節感染は再置換の主な原因の一つである。人工関節感染の管理はまだ挑戦的な領域であり、その発生率は上昇傾向にある。TM寛骨臼コンポーネントは昨今再置換術において広く使われるようになってきている。ある単施設からの報告では感染性人工関節144例の治療においてTM寛骨臼コンポーネントを用いた群ではそうでない群と比較して感染率が低かったとする報告がある。これはTM寛骨臼コンポーネントが感染に対して抵抗的に働く可能性を示唆している。3つの国家レジストリーでそれぞれTM寛骨臼コンポーネントの感染防御について検討した結果、TMコンポーネントは18200例の初回人工股関節において感染による再置換率が低かった。ただしこの結果には疑問が残るところもあった。再々置換について調査したところ、TM寛骨臼コンポーネントと非TM寛骨臼コンポーネントの間には差を認めなかった。スウェーデンとオーストラリアでも同様の結果であった。TM寛骨臼コンポーネントは、全再々置換では差をみとめないが、感染による再々置換では感染を減らすこうかがあるのかもしれない。しかしこれを検討するにはサンプルサイズが小さく、感染による再々置換が247例しかなかった。今回より大きなコホートを用い、傾向スコアマッチングを行い検討を行った。
本研究の仮説は、TM寛骨臼コンポーネントは再置換術時にもちいられると非TM寛骨臼コンポーネントよりもすべての理由での再々置換率を減少させる。というものと再置換術後の感染率の低下を認める。というものである。
対象と方法
イングランドの国家レジストリーを用いた後ろ向き研究。200万を超えるデータベースである。11988例の再置換術のうち、感染を理由に再置換を受けたものは7%、794股関節出会った。541例がTM寛骨臼コンポーネントが用いられ、253例が非TM寛骨臼コンポーネントであった。平均フォロー期間は5.3年である。
仮説のようなエンドポイントを設定。患者背景には違いを認めたため、カプランマイヤーによる比較の際には傾向スコアマッチングを行った。
結果
TM寛骨臼コンポーネントと非寛骨臼コンポーネントの間で再々置換率は差がなかった。また感染率も差を認めなかった。
考察
TM寛骨臼コンポーネントが再々置換率を下げたり、感染率を下げたりすることはなかった。本研究の限界はTM寛骨臼コンポーネント、非寛骨臼コンポーネントの使用についてさが大きいことである。傾向スコアマッチングを行ったものの、レジストリーで登録されていない事項については検討が不可能である。また再置換術時の組織学的、細菌学的検査がなされていない。本当のPJIでないものも組み要られている可能性がある。また感染率が低いことも要因かもしれない。またこの研究の結果が他のポーラス型の寛骨臼コンポーネントでいえるかどうかは不明である。
今回の研究でTM寛骨臼コンポーネントは非TM寛骨臼コンポーネントと比較して優れた成績を残すことはできなかった。本研究は人工関節感染にかぎって行われた緩急であるが他の研究と同様にTM寛骨臼コンポーネントが勝っているとするエビデンスを出すことができなかった。骨形成がよいとか白血球を誘導しやすいなどのさまざまな理由が考えられてきたが、レジストリーの結果からはTM寛骨臼コンポーネントが勝っているとする証拠はなかった。





2019年8月25日日曜日

20190825 CORR What Factors Are Associated With Neck Fracture in One Commonly Used Bimodular THA Design? A Multicenter, Nationwide Study in Slovenia

抄録
いわゆるモジュラーネック型のステムは患者の大腿骨の前捻に一致させることができる。しかしながら様々なレジストリーにおいてこのようなモジュラーネック型のステムはモノブロックのステムに比較してヘッドネックジャンクションのトラニオンの摩耗腐食によって高い再置換率が報告されている。しかしこれらのステムは未だに市場で発売されている。
本研究の目的はモジュラーネック型THAの無菌性ゆるみの危険率について調査し、ステムネックジャンクションの破綻率の調査、またその破綻に関わる因子の検討である。
方法:スロベニアの国家レベルのレジストリーの後ろ向き研究。2767例のPrfemurZステムの平均8年の経過観察。2002年から2015年までで26132例のTHAが登録されていたので、11%の症例で使用されていた。79%の患者がOAであった。チタン年句が90%の患者で、10%がコバルトクロムの症例であった。
結果:55例、2%の患者において無菌性の緩みが認められた。12年でのステム生存率は97%と算出された。ネック部での破綻を認めた患者は23例(0.83%)であった。23例中20例が男性で19例が長いネックを用いていた。男性、長いネック、若年、コバルトクロムネック、長いネック、手術からの期間が危険因子として抽出された。
結論:ProfemurZのゆるみ、破綻率は他の報告よりも低いものであった。しかしながら若年、コバルトクロムのネックではそのリスクが高くなった。多くの患者ではリスクが有益性を上回っており、もし別のステムが用いられていればこのようなリスクが生じなかったことを肝に命じておくべきである。

Introduction
モジュラーネックは大腿骨の前捻を調整することで脱臼防止に効果があるのではないかということで開発された。一つはヘッドとネックの部分の腐食によりMoMのARMD。もう一つがステムのネック部分での破綻である。2010年にProfemurZのチタン製のネックが骨折することが報告された。この報告では1.4%の症例においてネックの破綻が起こると報告している。ProfemurZは、2002年に開発され、692例の報告では12年間での再置換率が0.3%と報告された。2010年にチタンネックでの破綻が報告されたあとには2015年にはコバルトクロムネックはより高い破綻率によりリコールされている。
Patient and Methods
スロベニアの国家レジストリー。2457例、2767股に対して初回THAのステムとしてProfemurZが用いられていた。全体の登録数が26132例であったので、使用割合は11%である。78%の患者が一次性のOAであった。再置換をエンドポイントとした。平均フォロー期間は8年。48%が男性に用いられていた。
男性の平均年齢は60歳。女性の平均年齢は63歳であった。平均BMIは29であった。ProfemurZは22種類のネックを選ぶことができる。3例ではMoMTHAが行われておりこれは除外した。
Result
12年でのステム生存率は97%である。再置換までの平均期間は4年。再置換の主な原因はネックの破綻であった。ネックの破綻は23例(0.83%)で認められた。コバルトとチタンのネックで破綻までの期間に差はなく4年であった。男性、長いネック、若年、コバルトクロムネック、長いネック、手術からの期間が危険因子として抽出された。
考察
モジュラーネックTHAはいくつか使用されていたが徐々にその合併症が多数報告されるとともに使用頻度が下がってきた。新しいデザインのモジュラーネックはその成績は明らかとはなっていない。本研究はその新しいデザインのモジュラーネック型ステムの成績を国家レベルのレジストリーで明らかとした。本研究の限界は、患者の活動性について明らかとしていないこと。また大規模病院を中心としたレジストリーであるので中小病院での成績が不明なこと。ネックの詳細までは不明であったためどのようにネックが挿入されていたかが不明なことである。ステムの生存率は97%。またネックの合併症率は0.83%と以前なされた報告よりも良好なものであった。
ルーチンでのモジュラーネックステムの使用は行うべきではないと考える。今後テクノロジーが進歩したとしても特に前捻が強い患者のみを対象とするなど適切に患者選択が行われたほうが良い。


論評
スロベニアからの報告。
日本でも発売されているPrfemurZのネックでの破綻について。中期成績は他のステムと同様のものであったとのこと。
ただし、論文執筆者が述べているように、前捻を大きく変更しないと脱臼してしまうとかそういったこともないのにむやみにモジュラーネックを使うのは患者に不必要なリスクを負わせていることになるので現に慎むべきと考えます。
日本でも人工関節レジストリーが深化していきますがこのような危険なステムの抽出が行われ患者さんが無用な不利益を被ることがなくなると良いと思います。





2019年5月1日水曜日

20190501 CORR Individual Patient-reported Activity Levels Before and After Joint Arthroplasty Are Neither Accurate nor Reproducible

抄録
背景
患者は人工関節の術前術後に自分自身の歩行距離について回答することがあるが、今までに患者の活動性がどの程度正確かということを示した研究は殆どない。本研究の目的は万歩計を用いて、患者の報告する歩行距離がどの程度正確かということを明らかにすることである。
方法
16ヶ月間に渡ってTHAまたはTKAを受ける患者121例のうち66患者(55%)を抽出した。年齢、膝または股関節、性別において抽出された患者と抽出されなかった患者の間には差を認めなかった。FitBitと呼ばれる歩数が見えない万歩計を1週間装着した。患者は毎日自分の歩いた距離を記録した。トレッドミルで距離と万歩計はバリデーションされた。データは術前、術後6週と8週で収集された。報告された距離と測定された距離との間で誤差が50%以内かどうかの検討を行った。
結果
患者の報告する距離は正確ではなかった。術前、術後とも誤差は50%を越えた。平均の違いは術前が69%、術後が93%であった。
結論
患者が歩いたと感じている距離は歩数計で測定した距離と違いを認めた。医療者は患者の運動療法を指導する際には注意が必要である。


はじめに
人工股関節置換術(THA)、人工膝関節置換術(TKA)を行うと、患者の歩行を含めた日常生活機能が改善する。Harris Hip ScoreやKSSといった機能評価にも、どの程度の歩行制限があるかを患者に尋ねる質問がある。しかしながらこれらの歩行能力の制限などについて正確な根拠に基づいて行われた研究はない。本研究ではトレッドミルで患者の自覚する歩行距離と万歩計で測定される歩行距離とを合致させた上で、日常生活において患者の自覚する歩行距離と実際の歩行距離との差を比較した。
方法
18歳から85歳までのTKAまたはTHAを受けた患者を対象とした。認知機能に問題がある症例については除外した。16ヶ月間の間に862例のTHAまたはTKAが行われた。この内の121例を対象とした。この内の66例が対象となった。55例が除外されたが、その理由としては24例が研究への参加を拒否し、13例が十分なデータが得られなかった。13例がコーディネータによる面談が行われず、4例がインフォームド・コンセントが不十分であった。1例が85歳以上で除外となった。これら除外された群と研究に参加した群との間に年齢、性別、THA、TKAの実施数の間に差を認めなかった。これらのうち、術前45例、術後35例が解析の対象となり、29例が術前後のデータが両方共揃っていた。合計51例の患者が対象となった。33例がTHAの患者、28例がTKAの患者であった。測定にはFitBitを用いた。この装着時間が75%以下であった15例の患者は除外した。結局45例の患者が術前、術後のデータから除外された。
術前1ヶ月の段階、術後6週または8週の段階でFitBitを渡され、ベルトに装着した。
50%以下の誤差であれば良いとして統計解析を行った。
結果
術前術後とも実際の測定値と患者の申告した距離との間には差を認めた。術前には自分の歩行能力を少なめに見積もる患者が多かったが、術後はやや過剰に自分の歩行能力を自覚することがわかった。実際の歩行距離は術前1.8マイルが2.0マイルに有意に伸びた。
考察
患者に歩行距離を訪ねても、術前術後ともその距離が正確であるとは言えないことがわかった。
本研究にはいくつかのLimitationがある。参加した患者のコンプライアンスが低いことである。装着時間が75%以下の患者を除外し、適切なデータを得るようにした。また、患者の疲労感が考慮されていないことも問題である。モニタリングしていることによる患者の日常生活の変化も問題である。

<論評>
結論には同意できます。術前術後で歩行能力は向上します。また単なる聴取による歩行能力は医師側のバイアスもかかりますが、今回の報告で患者側のバイアスもあることがわかりました。
研究の手法、解析方法については疑問が残ります。そもそも800例以上の報告で100例少ししか対象にしないとか、そのうちの50%程度しか解析対象にしないとか。
CORRにこれでも載るんだな。というのが正直な感想です。


2019年3月26日火曜日

20190326 Spinopelvic Hypermobility Is Associated With an Inferior Outcome After THA Examining the Effect of Spinal Arthrodesis

<論評>
最近話題の脊椎固定術後THAについて。脊椎の動態について臥位、座位、立位で測定しそれが大きな患者では合併症が多くまた患者立脚型評価が低かったことを示しています。
しかしながら、固定術後で骨盤動態が大きくなることは理解できますがそれに対する解決策を示しているわけではなく、固定術そのものが設置の難易度を上げる以上のことは示していないように感じました。


背景
多くの患者が脊椎固定術とTHAの両方を受けている。これらの手術を受けた患者では一方だけの治療を受けた人とその成績が同様かということについてはわかっていない。脊椎固定術がTHAがどのように影響するかはいまだ不明である。
本研究の目的は脊椎固定術の有無で患者立脚型評価が異なるかの比較を行った。また脊椎固定術の有無で脊椎の動態撮影を行いこれらの矢状面での変化についての検討を行った。また動態撮影での動きの良と患者立脚型評価、合併症、THA術後の脱臼についての検討を行った。
方法
症例対照研究である。THAと脊椎固定を行った42例の患者。最低12ヶ月のフォロー。平均フォロー期間は6±5年。年齢、性別、BMIを一致させた42例60関節を脊椎固定を行っていないTHA患者から抽出。すべての患者に対して患者立脚型評価、臥位・立位・座位での脊椎レントゲン写真。カップの設置の脊椎のアライメントパラメーターを測定。立位と座位の骨盤傾斜を脊椎骨盤動態として10度以下をStiff、10−30度をNormal、30度以上をHypermobileとして検討を行った。
結果
脊椎固定とTHAの両方を行った群では、患者立脚型評価が低く、また合併症の発生率が高かった。合併症としては特に脱臼が多かった。臥位と座位では骨盤傾斜の違いは認められなかったものの立位において固定術群が骨盤傾斜が大きかった。また股関節がより進展していた。脊椎固定とTHAの両方を行った群では脊椎骨盤動態がHypermobileである症例が多かった。このような骨盤動態が大きい群では患者立脚型評価が低く、また脱臼率が高かった。
結論
脊椎固定とTHAを両方行った患者においては、骨盤動態が大きいことが患者立脚型評価での低評価と関連していた。骨盤動態変化が大きな患者ではその理想とされるカップ設置角度が狭いので、ルーチンで骨盤動態変化の評価を行うべきである。

2019年3月18日月曜日

20190318 CORR Higher Volume Surgeons Have Lower Medicare Payments, Readmissions, and Mortality After THA

背景
外科医や病院は今まで以上に臨床成績や費用に対して責任を有するようになる”価値に基づいた医療”の時代の到来により、外科医ごと、病院ごとの臨床成績に注目が集まるようになった。しかしながら、質が高く、よりコストの低い医師を同定するための方法論については未だ議論がある。
目的
本研究では以下の点についての検討を行った。(1)THAを多く執刀する医師とメディケア、メディケイドの支払い、再入院率や死亡率に関連はあるのか。(2)アメリカで執刀数が少ない医師と多い医師がTHAを施行する割合はどの程度か 
方法
メディケア、メディケイドのデータからの後ろ向き解析。メリーランド州を除くアメリカ全土での初回THAについてメディケアを用いて実施された2013年から2016年までのデータを解析。409844例のTHAが実施され、77億ドル以上の直接費用が計上されていた。外科医を手術数に応じて5つのグループに分けて単変量解析、ロジスティック解析をおこない、費用、再入院率、死亡率について検討を行った。年齢、性別、人種、地理的要因、合併症をElixhauserの合併症指数を交絡因子として検討に加えた。
結果
最も執刀数が多いグループとその他の群とを比較すると、交絡因子を調整したあとでも低い群で支払い金額、再入院率、死亡率の上昇が認められた。最も執刀数が少ないグループでは一症例あたりの支払い金額が27.2%増加し、死亡率のオッズ比が4.7となった。いくつかの執刀数の少ないグループでは支払い金額が少なく、再入院率が低く、また死亡率が低いという群が認められた。中規模以上(年間11例以上)の病院でTHAの78%が行われ、それは全体の26%の術者で行われていたのに対して、小規模、最小規模(年間10例以下)の病院ではアメリカ全体の22%のTHAしか行われておらず、74%のそれぞれの術者で手術が行われていた。
結論
術者の執刀数と支払い金額の低下、再入院率の低下、死亡率の低下との間には強い双眼があることがわかった。年間10例以上のTHAを行う術者がアメリカでは大半であった。以前の結果と比較して、今回の結果はより症例数の多い術者に強い傾向を認めた。これらの結果は執刀数の多い術者に力を入れたほうが支払い金額を減らし、再入院を減らし、死亡率を低下させることを示唆している。しかしながらこれは全体の傾向にすぎず、重要なのは個々の術者について執刀数と実際の臨床成績を評価する必要がある。


<論評>
アメリカでは近年、費用対効果に目が向けられるようになってきています。執刀数の多い病院では周囲のスタッフも慣れていますので当然スムースに物事が運びますので余分な費用がかからない。ということなのでしょう。
メディケイドベースで年間10例以上というのが、実際他の保険も用いて何例くらいになるかはわかりませんが20例弱といったところでしょうか。
THAは良い手術です。ただ、医師の独りよがりではなく、しっかりとしたところでトレーニングを積んで周囲の教育も行った上で手術を行うとよい患者さんのためになるということかなと思って読みました。

2019年3月11日月曜日

20190310 Injury Periprostetic femoral fracture after total hip arthroplasty: an algorithm of treatment

<論評>
人工関節周囲骨折(PPF)についての論文です。単なるケースシリーズレポートですが、一つ一つの症例について丁寧に検討されているところが好感が持てます。
ケースシリーズならこうやって丁寧に検討してもらいたいものです。


背景
THAでの人工関節周囲骨折(PFF)に対する必要性が増大してきている。術者はまず大腿骨インプラントのゆるみ、骨欠損、骨折の分類についての評価が必要である。本研究の目的はVancouver分類に基づいた治療方針の決定が妥当かどうかを検討することである。
対象と方法
2010年から2014年まで、38例の大腿骨インプラント周囲の骨折を認めた。すべての骨折をVancouver分類に基づいて分類した。TypeB1が14例、TypeB2が8例、TypeB3が10例、TypeCが6例であった。年齢、性別、受傷機転、ASAスコア、手術の方法、合併症について検討を行った。レントゲン評価は1,3,6,12ヶ月で行った。臨床評価はMerle-d'Aubigne-Postel スコアにで行った。22例の骨接合、16例の再置換が行われた。また金属プレートの有無、同種骨プレートの有無についても検討を行った。
結果
平均フォロー期間は3.1年。平均年齢は71.2歳で最終フォロー時に6患者(15.7%)が死亡していた。術後16週で骨癒合が得られた。3例で再手術を必要とした。1例がステムの緩みで2例が再骨折であった。1例が高度の内反変形が残存した。術後のMerle-d'Aubigne-Postelスコアは13.2点であった。13例が優、14例が良、3例が可、2例が不可であった。20例の患者が術前の状態まで復帰した。12例の患者が歩行状態の低下を認め、補装具が必要となった。
結論
PFFは高い合併症率、死亡率を有する。しっかりとした治療アルゴリズムが必要である。

背景
PFFは人工関節の増加とともに増加している。疫学的には1から4%程度の骨折を生じると言われている。リスクファクターとしては骨粗鬆症、骨融解、年齢、女性、インプラントサイズなどが言われている。Vancouver分類がPFFの骨折の分類では広く用いられている。骨折治療については、骨折の部位、骨折した骨の状態、骨折部とインプラントの状態の3つを考慮する必要がある。治療の目標は早期骨癒合、安定したインプラント固定、解剖学的整復と正しい脚長、早期関節運動、また術前と同レベルの機能獲得、骨量の回復である。Vancouver分類で緩みをともなうType B2,B3と緩みを伴わないType B1、 Cで治療方針が異なる。骨接合のみを行えばよいのか再置換を含めた検討をおこなうのかの検討が必要である。本研究は後ろ向き3.1年のフォローで38例の人工関節周囲関節の評価を行うことである。
対象と方法
表1,2の通りである。TypeB114例、B22例が骨接合のみ、TypeB2の1例がセメントレスロングステム(Wagner revision long)にて置換、4例がセメントレスロングステムとプレート、ワイヤーとスクリュー固定、1例がこれに同種骨を追加。TypeB3に対しては全例セメントレスロングステム、プレート、ワイヤー固定と同種骨移植が行われた。TypeCに対しては6例ともプレート固定のみが行われた。
結果
1例の患者、2例の患者で創部からの浸出液が持続したものの3週間程度で収まった。深部感染例はなかった。術後12例の患者で合併症が行った。3例が尿路感染、3例が肺炎、2例が不整脈、1例が腹痛、1例が心筋梗塞、1例が脳血管障害、1例が腎機能障害であった。3年フォロー中に5例の患者が死亡した。術中死亡はなかった。3例が術後6ヶ月以内に死亡した。全例がASA3以上の重症な患者であった。TypeB1の1例で9度の内反を認めたものの再手術を希望しなかった。大腿骨側の合併症としては、1例で緩みをきたし、TypeCの2例で再骨折をきたした。Vanvouver TypeCのゆるみをきたした患者は、当初ステムが緩んでいないとはんだんされ、最初プレートとスクリュー、ケーブルのみで固定が行われた。8週間後のレントゲンでロングステム、プレート、スクリュー固定に変更となった。TypeCのもう一例は、当初ステム先端6センチのところでの骨折で、プレート固定が行われたが近位の固定力が不足していたために4ヶ月後にステムの先端で再骨折した。この患者はストラットの同種骨を用いて再固定し、ケーブル固定を行ったところ10度の内反変形を伴い6ヶ月後に骨癒合した。78歳女性のTypeB3骨折に対してロングステムとケーブル固定にて再置換したところ4年後にステム先端で新規骨折をきたした。これに対しては6本のケーブルを追加して骨癒合が得られた。11例で同種骨を用いた。4例が経過中に死亡した。3例が一部骨癒合が得られ、4例で完全な架橋が得られた(Emersonの分類)部分骨癒合にもかかわらずステムは安定していた。3例の患者でワイヤーの緩みが認められたが、それが原因で再手術になった患者はいなかった。ロングステムは全例で最遠位で固定が認められた。
臨床評価では、Type B21例とTyoeB3の2例が可。TypeB3とTypeCの1例ずつで不可であった。6例(15.7%)が経過中に死亡した。すべての患者が外来で何かしらの痛みを訴えていた。TypeCの患者が最も術後のトラブルが多かった。TypeB1は他の骨折よりも有意に臨床成績が良かった。年齢が高いほうが臨床成績は悪かった。
考察
PPFは人工股関節置換術後の重大な合併症の一つである。PPFが難しいのは最も正しい治療方法を選択することである。そのためには術前の評価が必要である。
インプラントの固定性でTypeB1かB2で分かれる。本研究でもB1と判断した2症例が実はステムが緩んでいて再置換術を必要とした。またステムが安定しているのでTypeCと判断した1例で実はステムが緩んでいたために再置換を必要とした。ステムの緩みの評価がPPFの治療の成否の鍵となる。そのためには術前のレントゲン写真の取り寄せが必要となるし、また術中にステムの緩みについてはしっかりと評価をする必要がある。
ゆるんでいるステムでは骨接合術を選んでは行けない。本シリーズでは患者のASAが4とアクティビティが低かったために骨接合術を選んだ。骨接合にはZimmerのNCBプレートとCable readyプレートを用いた。ロッキングプレートの優位性については多数の報告で述べられている。術者の経験は必要であるが固定性を増すためには有用な方法である。Type B1に対してさまざまな方法で固定を行ったものの各治療間に差を認めなかった。緩みがある場合には再置換が必要で、これは術者の技量が問われる。本シリーズではZimmerのセメントレスロングステムとしてWagnerのリビジョンロングステムを用いた。このようなステムでは骨折部のバイパスが必要であり、一般的には少なくとも7センチ、または大腿骨髄腔の2倍の長さは必要であると考えられている。本シリーズではセメントレスステムとプレートスクリュー固定を行ったTypeB2は非常に早く荷重を開始することができた。ただし、TypeB3では合併症が多かった。臨床成績は悪くは無かったが骨量回復の手段を講じる必要がある。
一般的な軟鋼線よりもケーブルのほうが固定性に優れることはいくつかの報告がある。ただし軟部組織の損傷、骨膜の損傷などには注意が必要である。本研究ではすべてプレートと一体化するようにケーブルを用いた。
セメントレスステムは再置換でも有用である。ロングステムでも髄内ロッドを用いることで初期固定性を得ることができる。ただし、セメントが残存していると骨癒合の阻害因子となりうる。ポーラスが全周性にコーティングされたロングステムの優秀な成績が報告されるようになってきた。本シリーズではこれらのステムの再置換は生じなかった。
また同種骨もPPFでは有用な方法である。骨癒合を獲得し、また骨量を獲得する方法として最も有用な方法である。一般的にはEmersonの分類が同種骨の癒合には用いられている。
PPFの治療評価は困難である。これは術前の患者の状態が大抵不明であることによる。今回MDPを用いて評価を行ったところ歩行能力の低下が目立った。また死亡率が15.7%にのぼったことも重要である。合併症率はまた高い。
的確な治療を行うためにはまず適切な術前評価が必要だろう


2019年2月23日土曜日

20190223 JBJS Development Of Squat-and-smile Test As Proxy For Femoral Shaft Fracture-healing In Patients In Dar Es Salaam, Tanzania

背景
医療資源の乏しい地域では、外傷後の骨折治癒を評価する方法がない。今回スクワットアンドスマイルテスト(以下S&Sテスト)が医療資源の乏しい地域で行われた髄内釘の骨折治癒評価として妥当かどうかの検討を行った。
方法
S&Sテストはスクワットの深さ、スクワットに補助が必要か、あとは表情の3つの項目にて評価する方法である。大腿骨骨幹部骨折の患者に対して術後6週、3ヶ月、6ヶ月、12ヶ月の時点でS&Sテストを実施した。二人の検者が写真で評価を行った。EQ5DとS&Sテストの相関を検討した。また検者間、検者内誤差の検定のためにκ検定を行った。感度と特異度についての検定を実施した。
結果
231患者の609例の写真についての評価を行った。S&SテストとEQ5Dとの間には相関が認められた。スクワットの深さとスクワットに補助がいるかどうかは再手術の必要性と相関を認めた。3項目全てで高い検者内、検者間の一致度を認めた。
結論
S&Sテストは低所得の国において大腿骨骨折の治癒を評価することのできるツールである。携帯やテキストメッセージによる遠隔地からの評価も可能とする。

<論評>
タンザニアで行われたスタディをアメリカから報告したものです。
現在の地球の人口70億人。その多くが発展途上国に在住しています。日本のような体系だった保健医療が受けられるのはほんの一部だと認識しています。
レントゲン写真もろくに撮れないような国でどのように術後評価をするかという論文です。
論者はいままでに、東南アジアの国ではイメージを使わず手術を行い髄内釘が髄外釘になっていたという笑えない話や、これとは別に、中央アジアの国では髄外釘にしないようにするために開放骨折部から上にまずネイルを挿入してそのネイルに遠位の骨片をさしこんでいたと言う話も聞きました。
いま自分が行っている医療が当たり前のものではない。ということを知るためにも海外に積極的にでかけ見聞を広めることは重要だと感じています。

2019年1月13日日曜日

20190113 CORR To Improve Your Surgical Drilling Skills, Make Use of Your Index Fingers

背景と目的
手術のテクノロジーは年々進化しているものの、手術は未だに経験のある術者による手技によるところが多い。ドリリングの技術向上についての報告は今までなく、両手の人差し指を用いることでドリリングの正確性が向上すると考えた。本研究の目的は、反対側の骨皮質に人差し指を置くとドリリングの正確性がますか?またこのテクニックを用いるとどの術者での技術が向上するかを検討した。
方法
研修病院にいる36人を対象とした。それぞれ手術経験によって12人ずつのグループに分けた。全く経験のないグループ、レジデント、上級医の三群である。参加者は病院外でのドリル使用がないことを確認した。4つの状況について検討を行った。(1)ドリルをグー
で握って反対の手を使わないもの(2)ドリルを人差し指を出して握って反対の手を使わない(3)グーで握って反対の人差し指を目標にするもの(4)人差し指を出して握って反対側の人差し指を目標とするものの4パターンを試した。参加者は普段は(1)手技を行っていた。被験者は各方法について5回ずつ行い、1ヶ月後に同様のテストを繰り返した。ターゲットポイントからドリルの出た穴との距離の違いを平均した。
結果
(3)と(4)が(1)と(2)よりも有意に正確にドリル穴を開けることができた。
上級医は経験のないフループ良いrもより正確にドリル穴を開けることができた。
結論
反対側の骨皮質に指をおくことができるのであれば指をおいてドリリングしたほうが正確なドリリングが可能となる。経験の有無はドリルの正確性に影響する

<論評>
自分は足関節外果骨折のときとかには、自然に人差し指をおいてドリリングしていたような気がします。そうするほうが良かったんですね。笑
ドリルの持ち方では有意差が出てませんので、好きな形で持てばよいのでしょう。笑