2012年9月26日水曜日

20120926 JBJS(Br) The effectiveness of injection of hyaluronic acid or corticosteroid in Pts w/ subacromial impingement a three-arm randomised controlled trial

肩関節インピンジメント症候群に対するヒアルロン酸またはステロイドの肩峰下注射の効果

抄録
159人人の肩関節インピンジメント症候群の患者。女性84人、男性75人。平均年齢53歳。無作為に3群に分けた。リドカインのみの群、ヒアルロン酸を混ぜた群、ステロイドを混ぜた群の3軍である。26週間経過観察。主たる評価項目としては疼痛をVASスケールにて評価。その他評価項目としてConstant Murley score、肩関節疼痛スコア、金曜消化スコア、肩関節障害スコアを用いた。
施行後3週間、6週間、12週間の段階でステロイド注射がヒアルロン酸注射群の効果を上回っていた。プラセボを上回ったのは6週の段階のみであった。
12週の段階でのVASでの疼痛改善の割合はヒアルロン酸群が7%、ステロイド注射群が28%、プラセボ群が23%であった。
26週の段階で改善した患者の割合はヒアルロン酸群が63%、ステロイド群が72%、プラセボ群で69%で合った。
肩関節インピンジメント症候群の患者に対してヒアルロン酸を投与する効果はハッキリとしたものは見いだせなかった。ステロイドの注射は短期の疼痛改善効果があるものと思われた。しかしながら最も効果があったのはプラセボ群の注射であった。


考察
ステロイドの注射はプラセボよりも6週間は良かった。プラセボとヒアルロン酸の比較は26週の評価の時点で有意差を見いだせなかった。
本研究は施術者、患者、評価者の全てでブライドをかけた世界で初めての研究であることが価値深い。
今までヒアルロン酸の肩関節内注射は10編の報告があるが、どれも効果がある、とするもので合った。
ステロイドの投与についてはシステマティックレビューで短期の症状改善に有効であるが長期の安全性については保証されていないということが言われている。今回も短期間の症状改善には有効であった。


<論評>
ヒアルロン酸の肩峰下滑液包炎注射は無効。という報告ですね。
厳密なRCT、注射もエコーを用いて行ったりと丁寧にスタディデザインが組まれており評価できると思います。
じゃあ、肩の痛い人に何をしてあげたら良いのか?という疑問が出て参ります。
注射も無効となったらどうしてあげると良いのでしょうか?

2012年9月13日木曜日

20120913 JBJS(Am) Post-splinting radiographs of minimally displaces fractures; good medicine or medicolegal protection

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整復操作と打ち込むたびに制服捜査とおいらのPCでが変換するので、それっぽい画像をUPしてみました。苦笑。

抄録

背景
多くの施設では、整復操作を加えることなくギプス治療とし、その後レントゲンフォローとしている患者は結構いる。本研究の目的は特に整復操作を加えることなくただ単にギプス固定としたほとんど転位のない患者のギプス固定後のレントゲン上での変化について評価を行うことである。筆者らは特に整復操作を加えなくても良いような患者であればその後のレントゲン評価でずれなく経過するであろうという仮説を立てた。

方法
レベル1外傷センターで2008年から2010年までの間に整形外科にコンサルトが来た骨折について評価を行った。2862回のコンサルトがあり、1321の骨折がギプス固定によって治療がなされていた。342骨折(25.9%)が転位のない骨折であった。ここで転位がないというのは5mm以下のずれ、10°以下の角状変形を言う。204骨折がギプス後にレントゲン写真が撮影されていた。可能な限りのフォローを行い、その臨床症状についての評価を行った。

結果
204骨折のウチ、ギプス固定後に転位したものはなかった。2例ギプスの巻き直しが行われ、レントゲン撮像が行われていたがその理由については不明であった。患者は超急性期時に平均10枚のレントゲンを取られていた。そしてギプス固定後に平均3枚のレントゲン写真が撮像されていた。ギプス固定後から次の写真が撮られるまでの平均時間は3時間30分であった。受傷部位として多い骨折は手関節、手指の骨折であった。その患者さんたちの平均待ち時間は3時間。全部で9枚のレントゲン写真が撮られていることが多かった。ギプスをしないで帰る患者よりもERでの滞在時間は長くなる傾向にあった。82例でフォローが可能ですべての骨折にズレを認めなかった。

結論
ズレのない骨折に対してギプスを巻いたあとのレントゲン写真をとることは時間のむだであり、また無駄な被曝を増やしているだけとも言える。ズレのない骨折でむやみにギプス巻き後のレントゲンを取る必要はない。

考察
この研究では、転位がなく、整復操作をくわえていない骨折に対してギプス巻き後のレントゲン写真をとっている例が60%もあることが明らかになった。そのために10枚のレントゲン写真が撮影され、ERに8時間半以上滞在するハメになってしまうこともわかった。ギプスを巻いたくらいでは骨折のズレは出ないので、むやみにギプス巻き後のレントゲンを取る必要は無いものと思われる。
最近幾つかの研究で無駄なレントゲン写真を取ることをやめることで医療費の削減につながっているとする報告もある。
今回待ち時間についての研究も行ったが、ギプスを巻いてそのレントゲンを待ってその上でそのレントゲンの再評価をする。というところで余計に時間がかかっていることがわかった。
患者の無駄な被曝を減らすという意味でもむやみにレントゲンを取るのは良くないと考える。
評価することで教育的効果があるかもしれないという考えもあるが、ギプスを巻いた状態のレントゲン写真ではその厚みによってしっかりと評価ができない。
いままで慣習的にギプス巻き後のレントゲン写真を撮っていたが、これにはあまり意味がなく、特にERという環境下で人的資源を消費することを考えればさらに不要であると思われる。


<論評>
最後の方は端折っちゃいましたけど、同じような内容が延々と書かれておりました。まあ、とにかく早く帰ってもらわないと困るから、いちいちレントゲン取る必要あるの?という疑問に基づいた報告と思われます。
この研究はアメリカ、ニューヨークの外傷センターの報告です。ドラマ”ER”を見たことがおありになる方はご存知かと思いますが、アメリカではまずトリアージされて待たされます。その後各診療ブースで担当のレジデント、医師が診療。必要があれば専門家コール。結論が出るまでは帰れません。
この研究でも、ギプスを巻いて8時間待ち。。。。。(当然他の怪我の処置とかもあるのでしょうけども)というのにはまあ、彼の国の医療事情はそういうものかとびっくりした次第であります。

この論文の中で書かれていた文章で良いなと思ったのが
”その検査結果によって診療方針を変更する見込みのない検査をするべきではない。”という一文です。いや、確かにそのとおりだと思いました。
外来患者のレントゲン写真を取るときにはどのようになっているか、を検査する前に予想し、その上でオーダする。そうすることで見落としもへると思いますし。臨床力は向上していくのでは無いかと思います。
血液検査にしても抗生剤の変更などを考慮しないのであればむやみに取る必要はないと思っています。
ここの予想が立てられるかどうかが良い医者とまあ出来ない医者の境目じゃないかなんて勝手に思っています。ハイ。

2012年9月3日月曜日

更新サボっております。

更新サボっております。

一応自分の勉強は進めているつもりですので、JBJSの編集者が面白い論文を乗っけてくれれば。(ウソ)


ステロイド骨粗鬆症についてよくまとまった文章を見つけたので乗っけておきますね。

http://www.hakatara.net/images/no7/7-6.pdf


骨密度がアテにならない。というのが診療のピットフォールになるとおもいます。

RAなどでステロイドを処方している先生は要注意ですね。