2018年3月25日日曜日

20180325 J arthroplasty How Much Pain Is Significant? Defining the Minimal Clinically Important Difference for the Visual Analog Scale for Pain After Total Joint Arthroplasty.

背景 人工関節置換術後の疼痛の変化は術後疼痛の管理を考える上で必須である。VASについてのMICD(臨床的に意味のある違い、変化)は今まで検討されたことはなかった。本研究の目的は人工関節置換術後の患者においてのVASを検討することで明日。
方法 139例のTHA、165例のTKAの患者を対象とした。患者ごとに入院時のVASを取得。最終フォロー時にもVASを取得。線形混合分析を行った。患者がよくなった、もしくは悪くなったと申告した時点をMCIDのアンカーポイントとした。
結果 THAの平均の疼痛VASは35から50.4ミリ、TKAでは42.6から61.1ミリであった。最小変化量はTHAで14.9ミリ、TKAで16.1ミリであった。MCIDはTHAで18.6ミリ、TKAで22.6ミリであった。逆に疼痛悪化時のスコアは23.6ミリから29.1ミリであった。
考察 人工関節置換術後の患者において、THAとTKAのMCIDには違いがある。THAでは18.6ミリ、TKAでは22.6ミリの違いがでることが必要であった。

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MCIDについてです。
いわゆる統計学的な有意差はT検定などででますが、その統計的な差が臨床的に意味があるかわからないよね。ということで考えられた手法がMCIDになります。
MCIDを超えないと統計的には差はあるけども、臨床的には意味がないんじゃないかというように捉えられます。
だいたいVASで20ミリ超えれば疼痛の改善がある。と認められるわけですので、1つのめやすとして考えればよいのかなと思います。

2018年3月20日火曜日

20180320 J arthroplasty Measurement of Patient's Perception on Limb-Length Discrepancy Compared With Weight-Bearing Orthoroentgenography in Total Hip Arthroplasty: A Prospective Study

  • 本研究の目的は、THA術後の立位のレントゲン写真と患者の自覚的脚長差について比較検討をおこなうことである
  • 方法は前向き研究。既にTHAを受けた患者を対象とした。足にブロックを挟むことで自覚的脚長差を測定した。立位全長、骨盤のレントゲン写真をX線学的パラメーターとした。違い、相関、信頼性についての調査を行った。
  • 結果 68例の患者が対象となった。立位全長レントゲン写真、自覚的脚長差、骨盤のレントゲン写真それぞれでの脚長差は60%、57.4%、52.9%存在していた。それぞれの長さの違いは充の方法で有意差を認めなかった。感度、特異度を測定したところ、立位全長では感度61%、特異度48%。骨盤のレントゲン写真では感度78.1%、特異度85.2%であった。立位全長と患者の自覚的脚長差の間にはほとんど相関を認めなかった。(相関係数0.22)しかしながら、立位全長と骨盤正面との間には高い相関を認めた。(相関係数0.85)。
  • 結論 患者の自覚的脚長差は立位全長との間に相関はなく、またその信頼性も低かった。術者はレントゲン写真によって脚長差を評価すべきである。


THAの術後に脚長差が生じないように股関節外科医は心を砕きます。
まずは脚長差とは何か?ということを調べた論文である。というように理解しました。
脚長差には自覚的脚長差とレントゲンによる他覚的脚長差(骨盤もしくは両下肢全長)があります。
本研究では、他覚的脚長差と自覚的脚長差の間には相関がなかった。そこで自覚的脚長差は信頼性に乏しいと結論づけています。
いやいや、ちょっと待ちなさい。
脚長差で困っているのは患者さんであり、自覚的脚長差と他覚的脚長差の間に相関がなければ、その測定方法に問題があると考えるべきではないでしょうか。

2018年3月15日木曜日

20180315 CORRThe Safe Zone Range for Cup Anteversion Is Narrower Than for Inclination in THA

CORRから

いわゆるLewinnekのSafe ZoneはSafeじゃないよね。といままでみんなが思っていたことを明らかにした論文です。
検定手法には疑問が残りますが、新しい検討方法として一考の余地があります。

  • 背景 カップの不適切な設置は、インピンジメント、ROM制限、Wearの進行、ライナーの破損、不安定性のゆ様な原因である。今までいわゆる”Safe zone”は2Dでの評価が行われていた。本研究はCTをもちいてTHAにおけるカップのSafe zoneについて安定したTHAと不安定なTHAでの検討をおこなうことである。
  • 臨床上の疑問 (1)CTで測定すると、不安定なTHAと安定したTHAの間には測定した値に違いはあるか(2)CTで測定した値はTHAにおける歴史的なSafe Zoneをサポートするか
  • 方法 2003年から2017年。頻回脱臼に対して再置換術を行った34例。175例の安定したTHAの患者に対して反対側の術前計画、術中ナビゲーションのCTを検討した。検討項目はカップの位置、大腿骨前捻、Combined anteversion、骨盤後傾、Total オフセット、骨頭頚、年齢、性別、BMIだった。これらの値を安定したTHAと不安定なTHAの間で測定を行った。術中の測定はすべてRadiographicに換算した。。不安定な股関節がLewinnekのSafeZoneに入っている割合を検討し、新しいSafe zoneについての検討を行った。
  • 結果 前方脱臼する関節では安定した関節よりも術中の前方開角が大きかった。骨盤後傾を修正した前方開角、Conbined anteversionも大きかった。後方脱臼するTHAでは安定した関節よりも前方開角が小さく、また骨盤後傾、解剖学的カップの前方開角も小さかった。脱臼した関節の32%はLewinnekのSafeZoneにあった。安定しているTHAでの術中の外方開角が43度±12度、前方開角31±8度であった。
  • 結論 LewinnekのSafezoneは将来に渡って安定しているとは言えない。骨盤後傾を修正した術中の前方開角、外方開角が脱臼しない関節となった。骨盤後傾を修正した前方開角は脱臼した関節とそうでない関節の間で有意に違っていた。すなわち術前の骨盤後傾の計測が必要である。患者特有のカップの設置位置について、CTによる評価が新たなSafezoneを導き出すものと考えられる。

2018年3月12日月曜日

20180312 CORR CORR Dual-mobility Constructs in Revision THA Reduced Dislocation, Rerevision, and Reoperation Compared With Large Femoral Heads

CORRから。
頻回脱臼に対する再置換術は非常に悩みます。設置の異常が原因であれば正しいインプラントの設置によって対応が可能となりますが、設置の異常がはっきりとしない場合には骨頭径の拡大にて対応せざるをえないと考えます。
最近Dual Mobilityが上梓されました。このような頻回脱臼の症例には有用なのかもしれません。ただし、あくまでも後ろ向き研究であり、そのフォローも短いことからその適応については慎重にあるべきと考えます。

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  • 背景 人工股関節再置換術後の主要な合併症の1つに脱臼がある。Dual mobilityは2つのコンポーネントによって制限なく、脱臼のリスクを低下させると考えられている。しかしながら大径骨頭による再置換よりもDual mobilityによる再置換が有用であるというのは明らかとなっていない。
  • 臨床上の疑問 大径骨頭よりもDual mobilityの方が再置換における脱臼を減少させるか
  • 方法 2011年から2014年。Dual mobilityによって再置換された146例、40ミリ骨頭によって再置換された209例。置換の基準は術者によって決定された。匡史Dual mobiltyは脱臼の危険が高いと考えられる患者で多くもちいられた。Dual mobility群は146例中二0例が術後2年のフォローが出来なかったものとDual mobilityをセメント固定したものを除外した。Dual Mobility 群は3.3年±0.8年、大径骨頭軍は3.9年±0.9年のフォローだった。Primaryエンドポイントは脱臼、脱臼にともなう再置換、または再手術とした。年齢、BMIは二群間で違いを認めなかった。Dual Mobility群で女性の割合が多かった。Dual Mobility群の33%が反復性脱臼によるものであったのに対し、大径骨頭群では9%であった。
  • 結果 脱臼の頻度はDual Mobility群が3%、大径骨頭群が10%と有意にDual Mobility 群が低かった。脱臼にともなう再再置換術の頻度はDual Mobility群が1%、大径骨頭群が6%であった。すべての理由による再手術はDual Mobility群が6%に対して大径骨頭群が15%であった。両群で合併症の発生率の差をみとめなかった。
  • 結論 Dual Mobilityによって再置換された患者群では第京骨頭によって再置換された群よりも脱臼率、脱臼にともなう再々置換術、あらゆる理由による再置換術のリスクが低かった。選択バイアスの存在にもかかわらず今回の結果が得られた。これらの結果を踏まえて脱臼による再置換術においてDual Mobilityの適応が拡大するのかもしれない。

2018年3月11日日曜日

20180311 JBJSAm The Acetabular Fossa May Not Be Located at the True Center of the Acetabulum: A Detailed Analysis Using Preoperative CT Images.

  • 信州大学からの報告。
  • 寛骨臼窩は寛骨臼の前の方についているんだよ。ということを明らかにしました。たしかに、その通りだと思います。
  • リーミングの際に寛骨臼窩をほぼ中心としてリーミングを行っていますから、このような報告は普段の自分の手技を見直すきっかけになります。
  • また、この研究の目の付け所の良さが素晴らしいですね。感服いたしました。

  • 背景 寛骨臼窩は寛骨臼の中心にあると考えられており、THAにおける寛骨臼の掘削の際にはそこを中心としてリーミングを行ってきた。しかしながら形成不全がある場合での寛骨臼の位置は不明である。本研究では家性不全の有無にかかわらず寛骨臼窩は寛骨臼の中心にあるのではないかと仮説を立てた
  • 方法50人の正常股関節とDDHに対してRAOを行った50人の股関節と、THAを行った46人の股関節をCTで評価を行った。大腿骨頭の中心を通るラインでの寛骨臼の前後縁から寛骨臼中心を求めた。角度と寛骨臼窩からの距離を求めた。前方からの距離と寛骨臼の大きさの比でも評価した。
  • One-wa ANOVAで三群間を比較した。
  • 結果 三つの群すべてで寛骨臼窩は中心よりも前方に位置した。寛骨臼の中心角は14度±3.8度、15.2度±5.6度、14.9度±5.5度であった。寛骨臼窩からの距離は5.6ミリ±1.8ミリ、5.8ミリ±2.3ミリ、6.1ミリ±2.2ミリであった。寛骨臼窩の平均センターは38.8%±3.3%、38.5%±4.2%、38.3%±3.9%であった。
  • OAのあるなしにかかわらず、寛骨臼窩は寛骨臼の中心より全ポイに位置していた。寛骨臼窩を寛骨臼の中心としてリーミングをおこなうと前方の壁の欠損につながる危険性がある。

2018年3月7日水曜日

20180307 CORR Randomized Clinical Trial of Direct Anterior and Miniposterior Approach THA Which Provides Better Functional Recovery?

  • どのアプローチをえらぶかというのは未だに議論のあるところである。幾つかの報告では後方アプローチに比べてDAAの萌芽筋肉のダメージが小さいと言うことを報告している。しかしながらDAAは技術的に難しく、コンポーネントのマルアライメントや合併症と関連していることから本当に早期の復帰が可能かといったエビデンスは殆ど無い。
  • 臨床上の問:1)DAAは後方アプローチに比べて早期の日常生活への復帰を可能とするか。2)後方アプローチよりもDAAのほうが患者立脚型評価がたかいのか。3)後方アプローチよりもDAAのほうがレントゲン評価ですぐれるか4)DAAは後方アプローチよりも合併症が少ないか
  • 方法 2013年から2016年。116例の片側初回THA。DAAと後方アプローチが無作為割付された。15例が無作為割付後に辞退した。1例が術後6ヶ月で脳梗塞のため死亡した。DAA群52例。後方アプローチ群49例。割付後に、DAAは1人の医師が、後方アプローチは3人の医師が行った。年齢、性別、BMIでは差を認めなかった。機能評価としては補装具無しでの歩行可能時間、痛み止めの使用なしで要られた時間、歩数計、日常生活強度を比較した。臨床評価としてはWOMAC,SF12、HHSにて評価を行った。最小評価期間は365日であった。
  • 結果 歩行器が外れる時間、補装具無しで歩ける時期についてDAAは後方アプローチよりも優れていた。術後1年での歩数計の結果は変わらなかった。レントゲン写真上の評価は変わらなかった。脚長差、インプラントの設置、オフセットなどでは大きな以上を認めなかった。合併症についてもDAAと後方アプローチ感では差を認めなかった。
  • 結論 DAA、後方アプローチのいずれも合併症率が低い結果となった。DAAの方が復帰がやや早い傾向にあった。歩数計によるデータでは術後2ヶ月で差が見られなくなった。DAAはまだ充分研究されたアプローチとは言えないので、1年以降で合併症が発生している可能性があり、定量化が重要で、もしかすると早期の有利な点を相殺する可能性がある。
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よく練られたRCTによってDAAと後方アプローチを比較した論文。
Primaryエンドポイントが何かわかりませんが、もし合併症であるならばもっとN数が必要だと思います。
得られた結論は妥当だと思います。




2018年3月5日月曜日

20180305 Acta orthopedica A randomized controlled trial on maximal strength training in 60 patients undergoing total hip arthroplasty.

昨年JBJSででた、”THAの患者にリハビリしても意味ないんじゃない?”に対するCounterpartだと思います。
http://orthotraumaresidency.blogspot.jp/2017/05/20170506-jbjsam-formal-physical-therapy.html


普通のリハビリで意味がないのなら、強化リハビリすればよいやん。というのが本研究の目的です。
強化リハビリを行って、外転筋力、下肢の挙上筋力が増しましたよ。はいいのですが、その他の臨床検討項目で差がないというのは少しさみしいですね。。。筋力の測定方法について記載がありませんが、測定方法に対する慣れ、不慣れでも結果が変わってきますし。

もうひと工夫あってもよいのかな。と思いました。


  • THA術後の患者では筋力が低下していることが知られている。以前の研究で術前4週間の強化トレーニングを行ったという報告がある。本研究の目的は、一般的なリハビリと、強化リハビリ群の間での筋力を評価することである。
  • 60例の患者。患肢の外転と術後週3回のリハビリテーションを受けた。もう一郡はリハビリによって今まで通りのリハビリを受け、余計な荷重をかけないようにして行った。術前、術後3ヶ月、6ヶ月、12ヶ月で筋力を測定、疼痛、6分歩行、HHS、HOOSを測定した。
  • 27例の患者が研究を完遂した。強化リハビリ群の患者の萌芽術後3ヶ月、6ヶ月での外転筋力が高かった。術後1年の時点では差を認めなかった。その他の値には違いを認めなかった。
  • 強化リハビリをおこなうことで術後6ヶ月までは筋力の上昇が認められた。THAの患者において強化訓練は受け入れられ、日常診療の中でも実施することが可能であろう。

2018年3月1日木曜日

20180301 CORR Do Stem Design and Surgical Approach Influence Early Aseptic Loosening in Cementless THA?

CORRから。
たしかに実際に手術をしているとこのあたりは当たり前だと思いますが、それを国家レジストリーで明らかにしたところが良い論文だと思います。
詳細は別に記載します。

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背景
幾つかの研究で、初回THAにおける前方または前側方アプローチでの早期のステムの緩みが報告されている。一方、アプローチは他の因子についてはリスクファクターとはなっていない。ステムデザインについて、いわゆるアナトミック(近位外側が曲面、または鈍角となっているデザイン)またはショルダー(肩の部分が直線的になっているデザイン)が初回THAの早期のステムルースニングと関連しているのかもしれない。しかし今までにそれらの危険性についてなされた研究はない。
臨床上の問い/目的
本研究では国家レベルのレジストリーを用いる。そのうえで、アプローチ別でのショルダータイプのステムとアナトミックステムとの間での早期のルースニングについて比較をおこなうこと
方法
オランダの人工関節レジストリー。2007年から2013年までの間の初回THAのうち、全ポウまたは前側方で手術が行なわれた63354例を調査。最低フォロー期間は2年間。アナトミック、ショルダー、その他の3つに分類した。47372例のTHAがショルダーまたはアナトミックで手術がされていた。1195例、2.5%がなにかしらの理由で再置換が行なわれており、340例、0.7%が無菌性の緩みを理由に再置換されていた。1558例の患者がフォロー期間中に死亡していた。後方アプローチと比較して、前方または前側方アプローチでのアナトミックまたはショルダーでの早期緩みについてハザード比を求めた。
結果
性別、ASA、手術の既往、ステムの材質、コーティングについて調整を行った後に、ステムとアプローチとの関連について調査を行った。後方アプローチを使用した場合に比べて、ショルダーでは前方アプローチ、前側方アプローチでの再置換率が高かった。(前方アプローチ HR 10.47、前側方アプローチ HR 2.28)。
結論
セメントレスTHAにおいて、ショルダーは後方アプローチに比べて前方または前側方アプローチでは早期の緩みと関連することがわかった。前方または前側方アプローチではアナトミックのほうが好ましいかもしれない。前方アプローチでのショルダーステムについての更なる症例の集積が必要である。