2009年10月26日月曜日

Fracture of the base of the first metacarpal in children. Ann Hand surg 1999

要旨
小児の母指CM関節の骨折の不安定性を定義するために10カ月以上のフォローが可能であった30例についてreviewを行った。30度以上の転位、1mm以上の転位がある症例、開放骨折も含んだ。3つのグループに分けて検討を行った。グループAは純粋なCM関節での骨折(14例、10例手術、4例ギプス固定)。ブループB
Salterの2型。内側の骨片が外れている者。(10例、1例がピンニング、9例がギプス固定)。グループC、Salter2型。外側の骨片が外れているタイプ。(6例、2例ピンニング、4例ギプス固定).
二次的な早期転位の有無について調査した。グループBでは1例も転位が認められなかった。対照的にグループAとCでは半分に転位が認められた。そこでグループBはギプス固定でよいがグループAとCは早期のピンニングの方が好ましいと思われた。

図1 骨折の転位の分類
図2 グループAの骨折。基部での純粋な骨折
図3 内側に骨片が残っているタイプの骨折。
図4 外側に骨片が残っているタイプの骨折。

表1 治療方法の選択。17例について最初は救急外来で非観血的に整復し、thumb-spicaで固定した。ピンニングはIselin法を用い母指と示指をつなぐようにピンニングし、固定する。この方法が13例に行われた。ギプス固定は4-5週必要であった。

表2 転位の程度 ピンニングが13例でピンニング後の転位は0例であった。保存治療を行った群17例ではグループA,Cの半数が転位した。
長期フォローの結果では転位があっても完全な可動域に回復している。

考察
小児のCM関節近傍の骨折に対する報告はほとんどない。あっても手の外科全体での一部としての報告か、目録の中だけである。Leopardによれば手の外科全体の20%位にその外傷が存在するとなっている。20%しか手術が必要とならなかったということも同時に述べている。われわれの報告でもこのことについてはほぼ同様の結論であった。
整復を行うかどうかの基準は30度以下の転位、1mm程度の短縮は許容されるとされているのでそれを基準としている。どうしても解剖学的整復は困難である。関節自体が3次元の動きができるためそれほど大きな機能障害を残さない。加えてリモデリングが起こるし、そのリモデリングは成長軟骨の近いところで起こりやすいのでより許容される。それでもその整復には時間的な制約がある。大体2年くらいで自然な矯正がおこる。加えてこの部分の骨端線の閉鎖は女子で14.5歳、男子で16歳で起こる。
今回の分類はオブライエンの分類に従った。今回いわゆる小児のベネット骨折というものは除いた。これはSalter分類の3型を含むこととなり、いくつかの報告で観血的治療が必要であると述べられているからだ。
また成人で行われるピンニングが有用でないとする報告もある。
この研究は早期の二次的な転位についてその危険性について調べた。グループAだと骨折部が不安定であることもおおいことと内側の骨片がないことから不安定である。グループBは内側に骨片があることで安定し、ギプス固定だけでよかったのであろう。グループCは外側の骨片が残っており、内側の靱帯が破たんしているためギプスで指の間を固定するだけでは安定性は得られない。
骨折の固定に使うピンニングはiselinの方法を用いる。クロスピンニングでは成長軟骨を通過するため二次的に関節固定や矯正骨切りが必要となる可能性が出てくる。図6に手術の経過を示す。
すべてでopenにした症例はなかった。

結論
小児のCM関節近傍骨折での分類方法について示し、その分類ごとの治療方法を示した。内側の骨片が残っていると安定するのでギプス固定で、それ以外はピンニングがよい。


≪論評≫
小児のCM関節近傍の骨折についての小さなレビューである。内側の骨片がそれほど大きな役目を果たしているとは思わなかった。30度までのの変形が許容されるという部分についても驚きである。

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