2009年11月26日木曜日

2009.11.26.JBJS(Am) May 2009.Eye Protection in Orthopaedic Surgery. An in Vitro Study of Various Form of Eye protection and Their Effectiveness

整形外科手術中にdebrisが飛んで結膜にcontaminationすることは、執刀医をHIVやB型・C型肝炎などの感染症のリスクにさらす事になる。この研究の目的は様々な保護用のeyewearの結膜へのcontamination予防効果について比較するものである。

Methods:

 手術中の外科医の典型的な頭部の位置になるようにマネキンを用いてsimulation modelを作った。頭部は術野から適切な位置にし、死体の大腿部で大腿骨骨切りを行った。6つのグループで様々な目の保護用のwearを用いてその効果を検証した: (1)最近の既製品の眼鏡、(2)標準的な外科用ルーペ、(3)硬質プラスチックの弯曲をつけてある眼鏡、(4)disposableなプラスチックの眼鏡、(5)facemaskとeye shieldの組み合わせ、(6)保護なし(対照)。30例の大腿骨骨切りを行い、保護用deviceとsimulation用の結膜表面へのcontaminationを記録した。

Results:

テストしたすべてのdeviceにおいて完全な効果は得られなかった。(1)と(6)では結膜へのcontamination率は83%。他の保護deviceでは有意にcontaminationは減少し、(2)で50%、(5)で30%、(3)で17%、(4)で3%であった。

Conclusions:

 今回のモデルにおいて既製品の眼鏡は対照群と比べて有益性は認められなかった。そのため外科手術時に目の保護のために使用することは推奨できない。容易に入手できるdisposableのプラスチック眼鏡は最も結膜へのcontaminationが少なく(3%)、整形外科手術において結膜へのcontaminationからほごするには効果的な手段である。
Fig. 1

 手術中の写真を分析しモデルを作成した。(a)は30°、(b)は骨切り部中央から頭までの距離で垂直方向に40cm、(c)は斜めの面で53cm、(d)は水平面で28cm。3つのマネキンの頭部を一斉にテストし、骨切り部に対して1つは中央に、2つは30°斜めにしてある。

Fig. 2

6つのバリエーション(文中(1)-(6):A-F)

Fig. 3

テスト後のマネキン

Table Ⅰ

 それぞれのdeviceによる結果

Table Ⅱ

 対照と比べた効果の比較
Discussion

 術中の執刀医の眼へのdebrisの飛散率はよく報告されている。術式による違いはあるが、有病率は100%(23例中23例)と報告されている。イギリスの外科医の調査で、deviceを用いてない265名のうち59%(157名)でcontaminationがあったのと比較し、目の保護deviceを用いている535名ではcontaminationは27%(144名)であった。多くの研究でマスクと眼鏡で高いcontamination発生の危険があることが示されているが、我々の知る限りはどれくらいの割合でdebrisが保護deviceを通り抜け、結膜に接触するかは報告されていなかった。

 我々の研究では、モデルを用いることにより直接結膜表面にcontaminationがあるか測定し、様々なdeviceの効果について比較した。既製品の眼鏡では結膜へのcontaminationの割合は対照群と変わりなく、他のdeviceと比べて有意に高かった。BellとClemnetの結果とは対照的に、既製品の眼鏡は「保護eyewear」と考えるべきではなく、debrisが予想される場合唯一の目の保護deviceとして用いるべきでない。骨切り、高流量のパルス洗浄、drilling、reamingなどのリスクの高い手技で特に注意が必要である。

 特に注目されるのはeye shieldとfacemaskの組み合わせで結膜contaminationが30%であった点である。Eye shieldの上方縁は額近くには行っておらず、そのためにeye shieldを通り越して眼に達する。

 ルーペは結膜contaminationが50%に見られた。ルーペは既製品の眼鏡より表面が広いためよりよい保護が可能である。しかし、上方と下側方に脆弱性を認める。

 硬質プラスチックの弯曲のついた眼鏡とdisposableなプラスチックの眼鏡ではcontaminationは17%と3%であった。有意差をみるにはサンプルサイズが小さすぎた。これらのdeviceでは顔との間は数ミリ程度しか残っていない。このことがcontaminationを小さくする。しかし、リスクは完全には排除できない。Disposableの眼鏡の利点の一つは既製品の眼鏡の上に掛けられることと、湾曲をつけたものにすることができることである。

 問題点はいくつかあり、1つ目は、モデルは一定の位置だけであるが実際では、術者は顔の位置を動かしているということ。しかし、術者の顔の位置によらないdeviceの比較のためモデルは有用であったと考える。2つ目は、既製品の眼鏡と対照群は有意差がないことを見出したが、今回の研究では35%だけの違いで全て同定されているため、type-Ⅱ error(帰無仮説が偽であるときにそれを棄却しそこなう(採択してしまう)誤り)の可能性がある。3つ目は、deviceへのcontaminationが98%で見られたが、これは報告されている中でも多く、結膜へのcontaminationを過大評価している可能性がある。しかし、過大評価していてもdeviceの相対評価には影響しない。最後に、モデルの結膜表面は35×45mmと人の平均(10×35mm)より広い。

≪論評≫
普通のメガネだけではだめ!!ということで今まで結構油断していたなあと思います。大腿骨の手術のときには宇宙服の装着が必要かしら?
普段の骨折の手術のときはメガネ on メガネで行くかゴーグル型のメガネを新しくあつらえるかどちらかにすべきでしょう。

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