2011年7月20日水曜日

20110720 Up to date Acute compartment syndrome 続き

ACSの解剖と臨床症状との関連



下腿は4つのコンパートメントに分かれる。前方、外側、後方、深部後方。
前方コンパートメントは最もACSが起こりやすい。4つの伸筋腱、前脛骨動脈、深腓骨神経を含む。
前方コンパートメントACSが起こると第1趾、第2趾のつま先の感覚低下、足関節の背屈が困難になり、時間経過と共に下垂足、鉤状足となる。
外側コンパートメントは足関節の外転、腓骨動脈、浅腓骨神経、深腓骨神経の近位を含む。深腓骨神経が傷害されると前方コンパートメントと同様の症状が起こる。浅腓骨神経の障害では下肢、足の感覚低下が起こる。
深部後方コンパートメントは足底の底屈、後脛骨動脈、ひ骨動脈、脛骨神経を含む。このコンパートメントの障害では足底の感覚低下、足指の屈曲力の低下、他動的に足指を曲げると疼痛が誘発されるといった症状がある。
後方コンパートメントでは神経血管束を含まない。この部分でおこるACSは頻度が低い。

(前腕、大腿についても記載がありますが、読者の皆さんが希望されれば提示します。笑)


ACSの臨床症状
起こりうる症状
・我慢できないほどの痛み
・長く続く深部の焼け付くような痛み
・感覚障害(ACSが発症してから30分から2時間程度で発現)

他覚所見
・コンパートメントに関連する筋を他動的に動かすと疼痛が誘発される
・触診で”木材を触るような”感覚がある
・動脈の拍動低下(ほとんどみられない)
・感覚の消失
・筋力低下
・麻痺

一般に古来から言われるACSの5P(pain, pallor, pulselessness, paresthesias, paralysis)は正しくない。
Systematic reviewで感度、特異度とも低いことが分かっている。コンパートメント圧の測定のみが確定診断に役立つ。
”我慢できないような疼痛”はACSの早期の発見に役立つ。しかしその特異度はあまり高くない。
患肢の屈曲による疼痛の誘発はACSの診断に有用であるとされているが、再現性に乏しい。圧痛はコンパートメントの上昇を示唆するが、深部コンパートメントの診断には役立たない。
神経学的所見としては、ACSとひ骨神経麻痺との鑑別が難しい。2点識別能の低下はACSの可能性が高いとされている。
筋力低下は外傷があると評価困難である。

臨床的に信じられているいくつかの誤解を下記に記す
・開放骨折ではACSにならない
・酸素飽和度の値を測っていれば良い

血液検査の値でACSを診断することは出来ない。CKが上がっていれば横紋筋融解を起こし、そのためにACSを起こす可能性はあるといえる。

測定方法

ACSの危険性があると考えられるような症例では継続的に繰り返しコンパートメント圧を測定する必要がある。
直接法と間接法がある。
直接法はコンパートメントに直接針をさして行う方法
間接法は正常コンパートメントが0-8mmHgであることを利用して、
・末梢毛細血管が20mmHgで阻害される
・20-30mHgまで圧をかけたら疼痛が誘発される
・30mmHgまで圧をかけたら虚血になる
ことを観察する方法である。

治療はとにかく覆っているものをなくすことが肝要である。
どのコンパートメント圧で筋膜切開を行なうかということについては一定した見解はない。

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