2012年4月9日月曜日

20120409 JBJS(Br) The early management of patients w/ multiple injuries その7

乳酸の値を基準とした治療方針の決定

血中の乳酸の値は蘇生が順調に行っているかどうかを判定する良い指標の一つである。たいていの血ガス測定器で乳酸の値を測定することができるため、容易に測定も可能である。12時間から24時間以内にETCまたはDCOを行うかどうかということを決定するための情報を与えてくれる。

多発外傷の多くの患者では入院時に乳酸値が上昇する。救命措置を行なっている経過中にその乳酸値の変化が重要となってくる。救命措置を行なっている間は骨折はシーネなどで固定されている必要がある。経験上多発外傷の患者ではときどき驚くような乳酸の値を測定することがある。
アメリカのボルチモア外傷センターのガイドラインでは乳酸の値が2.0以下であればETCを行うことができ、2.5mmol/lでは蘇生を継続したほうが良い。としている。
ただ、最初の値が2.5mmol/lであっても低下傾向に有るようであれば患者さんの全身状態を鑑みてETCを考慮しても良い。ただし実際に手術を行うのは乳酸値が2.5mmol/lを切ってからの方がよい。2.5mmol以上で低下傾向にない場合には12時間から24時間は蘇生を継続し、整形外科的にはまずは創外固定のみを考慮し、その他の手術は数日後に再検討すると言う方針の方が良い。

実際に手術を行う際にはバイタルサインなどに十分に注意をして行う必要がある。ETCを予定して手術を行なっていても、その最中に容態の変化があれば即座にDCOに切り替えることのできる準備だけはしておく必要がある。様々なシチュエーションについて前もって外傷チーム全体で方針を確認しておく必要がある。

現在重症外傷における基礎的研究としてIL-6 が外傷の重症度を反映するのではと言われている。IL-6を測定することでDCOにするのか、ETCにするのかということを決定できるのではないかということが現在考えられている。ただし、現在の医療レベルでは身体所見が最もアテになる指標であることは変わりがない。


入院後の再診察

重症外傷で入院した患者全員に対して入院後12時間から36時間のあとにtertiary surveyを行う必要がある。頭頂からつま先まで再度入念にチェックし、神経学的欠損。感覚障害の有無、すべての関節の安定性について確認する必要がある。骨折の見逃しを避けるために必要なレントゲンはこの時点で全て撮影する。その結果はカルテにもらさず記載する。
イギリスでの研究で多発外傷の63%の患者に多発骨折を合併しており、多発外傷の患者の93%で一つ以上の骨折があることが知られている。

ガイドラインはあくまでもガイドラインであり、多発外傷の治療はその国のhealth care systemに大きく依存する。



0 件のコメント:

コメントを投稿