2013年6月12日水曜日

20130612 CORR Does Ipsilateral Knee pain improve after Hip arthroplasty?


抄録
股関節疾患は同側の膝の痛みの原因となることが知られている。しかしながらこれらは観察研究に基づいたものばかりであり、高いエビデンスレベルの研究に基づいたものではない。片方の股関節疾患を治療すると同側のひざ痛が改善するかを調査するために本研究を行った。
術前に股関節痛とひざ痛が関連しているかどうかを調査した。THAの術後に同側の膝の痛みが改善したかどうかを調査した。
2006年から2008年までの間にTHAを受けた255人の患者を後ろ向きに調査。WOMACの疼痛スコアを主たるアウトカムとして設定した。術前、術後3ヶ月、1年で評価した。255例中245例で1年の経過観察が可能であった。
反対側の膝の痛みよりも同側の膝の痛みのほうが術前には多く見られた。術前の膝の痛みは反対側の膝の痛みよりもひどかった。同側の膝の痛みは術後3ヶ月、1年でそれぞれ改善した。左右で違いは見られなかった。
本研究から股関節疾患は同側の膝の痛みと関連していることが示唆された。そしてTHA術後にその痛みは改善した。このことは術前のひざ痛、股関節痛の評価で注意が必要であることを示唆する。

考察
股関節疾患は同側のひざ痛の潜在的な原因であることは知られていたものの現在までにそれを明らかとするようなエビデンスレベルの高い報告は今までなされて来なかった。今回本研究では股関節疾患の術前に、同側のひざ痛が股関節痛と関連しているかどうか、また人工関節置換術後に同側のひざ痛が改善するかどうかを調査した。
この研究での限界はスタディデザインの問題、100例近い患者が除外されていること、62例の患者で多関節の手術が行われていて同側の膝の痛みの原因が不明であること、疼痛評価スコアでWOMACしか用いていないこと、短期間の経過観察しかおこなっていないことである。他の関節のOAのの進行による痛みの可能性もあるかもしれない。このように多数の研究の限界があることは最初に述べておく。
股関節疾患に伴った同側の膝の痛みは患者全体の55%で認めた。反対側の膝の痛みが17.6%であるのよりも高かった。Khanらによって同様の研究が行われており、股関節疾患術前の患者で68.6%が膝の前面の痛みを、50.9%が膝の後面の痛みを訴えているとする報告がある。同側の膝の痛みの原因は不明であるものの股関節疾患の患者ではよく見られる症状であることがわかる。
一つの可能性として同側の膝のOAの存在がある。股関節疾患の30%の患者に変形性ひざ関節症を合併する。しかしながら股関節疾患を治療すると膝の治療は何も行わなくても改善が見られる。他の可能性としては股関節疾患を治療することにより歩容が改善しそのために同側の膝関節痛が改善することが考えられる。しかしながら一般的にOAの患者では患肢に荷重をかけずに歩行しようとするもののTHA術後では同側の膝の使用頻度が増える。それ故に同側膝にかかる負担も大きくなることが予想されるが症状は改善が見られる。股関節疾患術後でひざ痛が改善したという報告は多数見られる。変形性股関節症の患者で股関節内麻酔をかけたら腰痛、ひざ痛が改善したとする報告もあるものの、症例数が少ないためすべての患者に当てはめることが可能であるとは考えにくい。また定量化した報告もなかったが本研究では定量化も行い、術前疼痛スコアが80点であったが術後3ヶ月、1年では96点にそれぞれ改善した。疼痛改善の原因を明らかにすると患者さんのよりいっそうの予後の改善につながるものと考えられる。
股関節疾患の関連痛として同側の膝の痛みとして生じている可能性はあるかもしれない。関連痛は古い概念であるがその原因、詳しい病態は不明である。脊髄視床路での信号のうけ間違いが提唱されているものの明らかではない。求心性回路としてL2,3,4が混在しているために疼痛が関連痛となるのかもしれないがこれも明らかでない。股関節痛、同側のひざ痛の原因を明らかにすることは非常に困難である。変形性股関節症の患者で30-40%に同側の膝OAがあることが知られているものの逆に40%の患者では典型的な変形性ひざ関節症の変化があっても疼痛に乏しいことがある。そこで股関節の疾患の診察の時には膝、股関節、骨盤後方、腰椎についても身体評価を行い、合わせて患者立脚型の調査を行うべきである。その上で画像評価を行ったほうがよい。同側のひざ痛を伴った股関節疾患ではまずは股関節の治療を行なって、その後に膝の再評価を行ったほうがよいものと考えられた。(90%の患者で改善が認められるため。)

論評
示唆にとむ論文であると思います。
変形性関節症の診療の難しさを端的に表したよい論文だと思います。
さて、今後はここに書かれているKahnさんというひとの論文をよんでみてカラですかね。
腰椎との関連が強いんじゃないかと個人的には思っているのでそこの評価は行いたいものです。

0 件のコメント:

コメントを投稿