2012年10月4日木曜日

20121004 JBJS(Am) Early initiation of BP does NOT affect healing and outcome of volar plate fixation of osteoporotic distal radial Fx.

Typical 'Colles fracture', distal radial metaphysis, wrist, XR

 抄録

ビスフォスフォネート製剤は破骨細胞の骨吸収を抑制するため骨折の治癒機転に悪影響を与えると考えられている。しかしながら撓骨遠位端骨折後の患者で投与された場合にビスフォスフォネート製剤の悪影響があるかどうかは不明である。本研究の目的は掌側ロッキングプレートにて固定された撓骨遠位端骨折の患者にビスフォスフォネートが治癒、臨床機能に影響をおよぼすかどうかを調べることである。

方法
50人の骨粗鬆症と診断された50歳以上の女性。術後早期からビスフォスフォネート製剤を飲む第1群と3ヶ月後から飲む第2群の2群に分けた。レントゲン写真で骨癒合判定を行い、24週の時点でDASHスコア、握力を用いて機能判定を行った。
またレントゲン写真での変化も調査した。

結果
2群でレントゲン写真、機能に差は出なかった。すべての患者で骨癒合が得られた。骨癒合の期間はよく似ていた。骨癒合までの期間は骨粗鬆症の程度、骨折系と関連がなかった。

結論
術後早期からのビスフォスフォネート製剤の投与は撓骨遠位端骨折術後の骨折治癒に影響を与えない。

考察
今まで術後早期にビスフォスフォネート製剤を投与することが撓骨遠位端骨折に対して影響を与えるかどうかということは知られて居なかった。本研究によって撓骨遠位端骨折術後の患者でビスフォスフォネート製剤は骨折の治癒、機能に影響を与えないことがわかった。このことによって術後早期からの骨粗鬆症治療が可能となる。
幾つかの動物実験でビスフォスフォネートが骨折の治癒を遅らせるとする報告がある。
反対にビスフォスフォネート製剤にて骨折治癒が促進したとする報告も散見される。
骨密度が低いと骨折型が重篤になるとする報告もあるが、今回は関連が認められなかった。
本研究の幾つかの問題点として、骨癒合についての検者間信頼が低い。治療者がブラインドでないこと、アレンドロネートのみで治療を行なっていること、治療期間が短いこと、さまざまな除外基準を作ったため比較的健康な女性のみが対象となっていることがあげられる。

<論評>
骨折治療だけでなく、骨折の予防治療を行うことが現在の整形外科医には求められています。
骨折の予防のためには骨粗鬆症と診断し、的確に介入することが必要です。
骨粗鬆症と診断するのに比較的容易な方法としては”患者が脆弱性骨折の既往があること”ということがまず含まれている場合ではないでしょうか。
また、脆弱性骨折としては撓骨遠位端骨折、大腿骨頚部骨折、脊椎圧迫骨折、上腕骨近位端骨折などがあげられると思います。この中で最も若年に発症し、頻度が高いのが撓骨遠位端骨折です。
ですので、撓骨遠位端骨折を受傷した患者さんに対してBMDを測定もしくはFRAXによる判定を行い、骨粗鬆症であれば二次予防としてビスフォスフォネート製剤の投与を行うというのは臨床のプラクティスとして当然考えられるところであります。
ただ、外傷を取り扱う人間からして、高癒合に影響があるかもと考えると二の足をふむのもまた事実ですので、このような研究によって”差がないよ”といっていただくことで積極的に治療介入できるのではないかと思います。

ただし、骨粗鬆症治療の最終目標は生命予後、健康寿命の延伸です。撓骨遠位端骨折の患者で介入を開始してホントに生命予後、健康寿命が延伸するのかどうかという報告は学会発表でしかなかったような気がします。(不勉強であれば申し訳ありません)
ビスフォスフォネート製剤の長期投与での非定型骨折の危険性も併せて、どのタイミングで治療を開始するのか?というのはまた別の問題として考えられなければならないですねええ。。

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