2012年6月21日木曜日

20120621 JBJS(Am) Large femoral heads decrease the incidence of dislocation after THA :RCT


抄録

THAにおいて脱臼予防として大径骨頭を使う、というのはひとつのコンセンサスが得られている。しかしながらこのコンセンサスに対する明確なエビデンスは不足している。本研究の目的は術後1年以内の早期脱臼について、多施設無作為割付研究を行うこと、そして28mm骨頭と36mm骨頭のいずれが脱臼予防に効果があるか、ということについての検討を行うことである。
方法
645人の初回人工関節もしくは再置換術の患者を36mm骨頭群、28mm骨頭群の2群に割付。サーフェイスはメタル、ハイクロスリンクポリエチレンとした。認知症、神経筋疾患を合併していたり、反復性脱臼、感染性人工関節など脱臼の危険群と思われる群は除外した。対象を年齢、診断、など脱臼の危険因子がありそうなところで層別化を行った。脱臼の診断は臨床医による診断とレントゲン写真の療法で確認することとした。
結果
手術方法で調整を行い検討したところ、1年間のフォローで36mm骨頭の脱臼率は1.3%、28mm骨頭の脱臼率は5.4%と36mm骨頭の方が有意に脱臼率が低かった。初回の人工関節置換では28mm骨頭よりも36mm骨頭の方が有意に脱臼率が低かった。(0.8%と4.4%)。再置換術については統計的に有意な差は得られなかったものの、28mm骨頭で12%、36mm骨頭で4.9%と低下する傾向を認めた。
結論
術後1年での早期の人工関節脱臼について、36mmの大径骨頭にすることで28mm骨頭よりも脱臼を減らすことができた。しかしながら今後は遅発性の脱臼、非感染性のゆるみ、摩耗、インプラント破損(ライナーの破損)についても慎重に検討する必要がある。

考察
36mm骨頭は本当に28mm骨頭よりも人工股関節置換術後の脱臼を減らすことができるのか、ということについての研究である。統計学的に有意に大径骨頭にすることで術後の早期脱臼を減らすことがわかった。

近年、大径骨頭の使用は増加している。これは大径骨頭が脱臼の予防に有用でないか、とする考えかたによるものである。本研究によってプライマリーの人工関節置換であれば有意に早期脱臼を予防することができた。再置換についてはサンプルサイズが小さく、有意な差が得られなかった

36mm骨頭は術後1年の早期脱臼を予防することがわかったが、10年後の長期成績に付いては不明である。36mm骨頭ではよりライナーの厚さが求められる。またライナーの摩耗が早い可能性も言われている。
同じ割合でライナーの摩耗が進み、摩耗粉が出るとすると摩耗粉の量は大径骨頭のほうが多いかもしれない。しかしながらこのことによって骨融解が進んだとする報告は今のところない。

無作為割付にすることで脱臼についての様々な因子を揃えることができたことが本研究の強みである。

1.1%の患者が追跡できなかったことが問題の一つである。また28mm骨頭での脱臼率が4.4%と他の報告に比べて高い。これは後方アプローチを採用していること、しっかりと追跡を行ったので脱臼がよりしっかりと分かったからである。

<論評>
今号のJBJS(Am)は股関節についての内容が多いようです。
さて、そのうちの一つです。オーストラリアで行われた大径骨頭の脱臼予防に対する優位性についてRCTを用いて行った研究です。
ステムはプライマリーTHAでセメント。再置換のときにはセメントとセメントレスの両方をつかっているようです。

この筆者も書いていますが、大径骨頭のメリットとしては早期脱臼予防があげられます。しかしながら長期成績についてはまだ不明です。大径骨頭にすることで摩耗量の増加はありそうです。また僕は骨頭を大きくすることでトルクが大きくなり、摩耗を余計に加速するのでは?と個人的には危惧しています。

またオーストラリアの研究です。一番小さなカップで50mmが選択されていました。50mmでもライナーの厚さはだいぶ薄くなってしまいます。(コレはメーカーによっても少しずつ違いがありますが)
ポリエチレンはクロスリンクにしてからその性能が急激に上がっていますが、それでも万能ではありえません。
また白人が一次性OAが多いのに比べ、日本人の場合には臼蓋形成不全をベースとした二次性OAが多いです。一次性OAに比べ二次性OAはカップの設置の難易度が高くなり、また大きなカップを入れにくくなります。(大きなカップを入れようとするとカップの高位設置を許容しなければなりません)

個人的には日本でなら28mmまででないかなあと思っています。ハイ。

あと、この研究は脱臼率が高いですね。。。。。言い訳がまた、さえません。。。。

術後のカップ設置確度、ステムの設置状況についての記載は本文中に一切ありません。ホントにいいところに正しく設置してたの?と疑っています。
また、追跡をしっかりしたら脱臼と分かった。ということは普段どんな術後のフォローをしてるのですか?と伺ってみたい!

なんていやらしいことばかり考えてしまうのがこのブログの管理人のいけないところですね。

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