2010年4月28日水曜日

2010.4.28 Up to date Overview of the benefits and risks of exercise

はじめに
昔から健康に対する運動療法の有用性はいわれている。運動しないと不健康になるとはいわれていたものの、1996年の報告で運動と健康について述べられた。
この報告では運動することが健康や長寿に有用であることを示した。しかしながらリスクを抱えていたり、運動できなかったりする人も居るので、個々にたいして適切な運動療法を提供することが重要である。

定義
身体活動性と運動とは違う概念であることをはっきりとさせておく。
身体活動性とは基礎体力以上に身体を動かすことである。この身体活動性という言葉の中には仕事上身体を動かすこと、家事、余暇、移動などが含まれる。
運動とはしっかりと計画、構成されたものと定義される。また、運動とは身体のフィットネスを向上させるためのその内容そのものをさす場合もある。

身体活動性はMETS(metabolic equivalent)で測定される。1METsとは3.5 mL
O2/kg/minの酸素を消費するような運動量である。少しきついな、と感じる程度の運動で3-6METsに相当する。(アルゴリズム1参照)

フィットネスとは物事を継続して行えるからだの能力をさす。心血管系の持久力、筋肉の持久力、筋力、パワー、敏捷性などがフィットネスと直接かかわってくる。

公衆衛生上の問題としての運動
座ってばかりの生活のためにアメリカではこの生活習慣の関連した死亡が20万人に達すると考えられている。(糖尿病、心筋梗塞、大腸がん)
これに対して、日ごろから身体を動かしていたり、心血管のフィットネスが高い人では全体の死亡率が低かった。

アメリカの大多数の国民はほとんど運動しない生活を送っている。2004年の調査では全体の55%が座った生活をしていることがわかった。女性、老人、糖尿病持ち、収入が低い群が運動をしない傾向にあった。2008年になってその傾向は改善傾向にあり、64.5%の人がガイドラインがすすめる週に150分以上の中程度の運動または75分以上の運動を行っている。

運動量が低いことは脳血管障害のリスクと大きく関連している。

アメリカ健康計画2010では運動の習慣を持つ人を50%以上に、身体を動かすことのない人を20%まで減少させることを目標としている。
加えて週に2回以上筋力トレーニングをする割合を30%まで上昇させることも目標としている。

アメリカでは徐々に運動習慣を持つ人が増えていることが調査からも明らかになってきている。

長期間にわたって運動を続けることは身体のさまざまな器官に影響を与えることがわかっている。

筋骨格系への影響
中程度のトレーニングを積むことで筋線維が増え、筋への血流増加を認め有効にエネルギーを使うことが出来るようになる。抵抗運動を行うと筋線維が太く、強くなり一度に大きな力を発揮することが出来るようになる。

代謝系への影響
・ミトコンドリアの数とサイズが増え、筋肉量が増加する。
・耐久径のトレーニングを行うと筋肉内のグリコーゲン貯留量が増加する
・脂肪を効率よくエネルギーとして使うことが出来るようになる。
・脂肪滴から遊離脂肪酸を作り、脂肪を脂肪酸とすることが出来るようになる

運動することで酸素の摂取量が多くなる。

心血管系への影響
耐久系のトレーニングを行うことで心血管系には大きな変化が現れる。
・心拍出量の増加と心拍数の減少
・血漿成分の増加と拡張期のでも十分な血液量の確保
・心筋の肥大
・組織周囲の血流増加と酸素摂取、栄養摂取能力の向上
・血圧の低下
・運動によって冠動脈の平滑筋と血管抵抗のいずれでも改善が認められる。
・運動によってサイトカインを活性化
・心疾患を持った患者の心機能の改善

呼吸系への影響
・肺活量が増加し、肺血流量も増加する

その他の効果
免疫系を不活化させ、感染症やある種の癌にかかりにくくする効果があるとされている。

運動することのメリット
・死亡率:健康な群で心血管イベントを減らすということがわかっている。
図1:強度の高い運動をしている人たちはしていない人よりも23%死亡率が低い
図2:運動することによって死亡率が減少する

・心血管イベント
運動と心血管イベントとの間には関連が認められている。
図3:定期的に運動している群がもっとも死亡率が低い

・その他のメリット
血糖値のコントロールについても運動は有用である。
運動することによって乳がん、すい癌の発生率が下がる
肥満防止
禁煙
胆石の発生予防
機能、認知症予防効果
心理的にも有効で不安やうつが軽減する
医療経済上も有用(330ドルの違いがある。)

運動によるデメリット
・筋骨格系の負傷
1週間に64km走るランナーでは負傷する可能性のオッズ比は2.9!。
過ぎたるは及ばざるが如し
・不整脈
習慣的に運動している人の40%に何かしらの不整脈を認めたとの報告がある。運動することによって心筋の酸素摂取能力が上がることから不整脈は起こりにくくなるはずである。今後の議論が必要である。
・心臓突然死
ジョギングで40万時間分の1、フィットネスクラブで89万時間分の1で起こる。男女差なし
運動によって心臓突然死の可能性はわずかにあるものの運動によるメリットには変えられない。
・心筋梗塞
強度の高い運動をすることによって一時的に心筋梗塞のリスクが高まることが知られている。週に4回以上している軍よりも運動回数が少ない群で発症率が高かった。
・左心肥大
・横紋筋融解症
横紋筋融解が起こりやすい条件
・普段運動していない
・ひどく蒸し暑い日
・防具などを付けていて上手に熱の放散が出来ない
低カリウム血漿

喘息
運動鶴ことで7-8割の患者が喘息発作を起こす。なので吸入薬と、あまり強度の高い練習はしないようにしなければならない


その他
脱水など

運動前の医学的評価
臨床的に問題が無くても運動によって2.6倍の患者で心血管イベントが起こる。個々の医学的評価が必要である。と結論されている
・年齢
・全身状態
・運動歴
・整形外科疾患歴
・薬剤の治療歴
・肺病変
・運動への参加率
・身体障害の程度

程度の軽い運動を週6回か強度の高い運動を週3回か行うようにAHAは推奨している。
息切れ、発汗、疲労を元に運動を終了するかどうかをきめるとよい。心拍数は当てにならない。


準備運動には怪我を防止するといった明確なエビデンスはない

クールダウンを行うことによって筋肉内の乳酸量が減少する。

カウンセリングの効果
多くの研究でカウンセリングを行っても行動変容には至らないとする結果となっている。より積極的にかかわったり、個別のメニューを作成するなどすると効果が出てくる。
結果は出にくいもののプライマリケアの現場では常に運動療法の重要性について述べ続けなければならない

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